「データベース」という言葉を聞いたことはありますか?
スマホのアプリやWebサイトの裏側では、膨大な量の情報がデータベースに保存されています。例えば、SNSの投稿、オンラインショップの商品情報、会員の登録データなど、あらゆる情報がデータベースで管理されているんです。
では、このデータベースに「この情報を取り出して」とか「新しいデータを追加して」と指示するには、どうすればいいのでしょうか?
その答えがSQLステートメントです。
SQLステートメントとは、データベースに対して「こうしてほしい」という指示を出すための命令文のこと。人間が日本語や英語で会話するように、データベースとはSQLという言語で「会話」するんです。
この記事では、SQLステートメントの基本から具体的な使い方まで、初心者の方でも分かるように丁寧に解説していきますね。
そもそもSQLとは?基礎から理解しよう

SQLの意味と役割
SQLは「Structured Query Language(構造化問い合わせ言語)」の略称です。
読み方は「エスキューエル」または「シークェル」。どちらも正しい読み方として広く使われています。
SQLの役割:
- データベースにデータを保存する
- 保存されているデータを取り出す
- データを更新・変更する
- 不要なデータを削除する
- データベースの構造を作る・変更する
つまり、データベースに関するあらゆる操作を行うための言語なんです。
データベースの基本構造
SQLを理解するには、データベースの構造を知っておく必要があります。
データベースは表(テーブル)の集まり
エクセルの表をイメージしてください。データベースも同じように、行と列で構成された表(テーブル)にデータを保存します。
実例:「会員情報」テーブル
| ID | 名前 | メールアドレス | 登録日 |
|---|---|---|---|
| 1 | 田中太郎 | tanaka@example.com | 2024-01-15 |
| 2 | 佐藤花子 | sato@example.com | 2024-02-20 |
| 3 | 鈴木一郎 | suzuki@example.com | 2024-03-10 |
- 列(カラム):「ID」「名前」「メールアドレス」など、データの種類
- 行(レコード):1人分の情報が1行に入っている
- テーブル:この表全体のこと
この表に対して「佐藤花子さんの情報を取り出して」「新しい会員を追加して」といった指示を出すのが、SQLステートメントなんです。
SQLステートメントの基本構造
ステートメントとは「命令文」のこと
ステートメント(Statement)は英語で「文」や「声明」という意味。
プログラミングの世界では、コンピュータに対する「命令文」を指します。
SQLステートメントは、データベースに対する具体的な指示を1つの文章にまとめたものです。
SQLステートメントの基本ルール
SQLステートメントには、いくつかの基本的なルールがあります。
1. キーワードは大文字・小文字を区別しない
SELECTと書いても、selectと書いても同じ意味です。ただし、慣習としてキーワードは大文字で書くことが多いですね。
2. セミコロン(;)で終わる
SQLステートメントの最後には、セミコロンを付けるのが一般的です。
SELECT * FROM users;
3. 改行や空白は自由
読みやすさのために、適度に改行やスペースを入れることができます。
SELECT name, email
FROM users
WHERE id = 1;
4. コメントを入れられる
説明を加えたい場合は、コメントを使えます。
-- これはコメントです
SELECT * FROM users; -- 行末コメント
SQLステートメントの主な種類
SQLステートメントは、大きく分けて4つのカテゴリーがあります。
1. データ操作言語(DML:Data Manipulation Language)
最もよく使うステートメントがこのカテゴリーです。
データベースに保存されているデータを「読む・書く・変える・消す」操作を行います。
主なDML:
SELECT:データを取り出す
SELECT name, email FROM users;
「usersテーブルから、名前とメールアドレスを取り出して」という意味です。
INSERT:新しいデータを追加する
INSERT INTO users (name, email) VALUES ('山田次郎', 'yamada@example.com');
「usersテーブルに、山田次郎さんの情報を追加して」という意味。
UPDATE:既存のデータを更新する
UPDATE users SET email = 'new@example.com' WHERE id = 1;
「ID が 1 のユーザーのメールアドレスを変更して」という指示です。
DELETE:データを削除する
DELETE FROM users WHERE id = 3;
「ID が 3 のユーザー情報を削除して」という意味になります。
2. データ定義言語(DDL:Data Definition Language)
データベースやテーブルの構造そのものを作ったり、変更したりするステートメントです。
主なDDL:
CREATE:新しいテーブルを作る
CREATE TABLE users (
id INT PRIMARY KEY,
name VARCHAR(100),
email VARCHAR(100)
);
「usersという名前のテーブルを作成し、ID、名前、メールの列を用意して」という指示。
ALTER:テーブルの構造を変更する
ALTER TABLE users ADD COLUMN age INT;
「usersテーブルに、年齢を保存する列を追加して」という意味です。
DROP:テーブルを削除する
DROP TABLE old_users;
「old_usersテーブルを完全に削除して」という指示になります。
3. データ制御言語(DCL:Data Control Language)
データベースへのアクセス権限を管理するステートメントです。
主なDCL:
GRANT:権限を与える
GRANT SELECT ON users TO user_account;
「user_accountに、usersテーブルを読む権限を与えて」という意味。
REVOKE:権限を取り消す
REVOKE DELETE ON users FROM user_account;
「user_accountから、usersテーブルの削除権限を取り消して」という指示です。
4. トランザクション制御言語(TCL:Transaction Control Language)
複数の操作をまとめて処理するトランザクションを管理するステートメントです。
主なTCL:
COMMIT:変更を確定する
COMMIT;
「これまでの変更を確定して、データベースに反映して」という意味。
ROLLBACK:変更を取り消す
ROLLBACK;
「直前の変更を取り消して、元の状態に戻して」という指示になります。
よく使うSQLステートメントの実例
実際の使用場面を想定して、具体例を見ていきましょう。
実例1:ユーザー情報を検索する
状況: 「田中」という名字のユーザーをすべて検索したい
SELECT * FROM users WHERE name LIKE '田中%';
解説:
SELECT *:すべての列を取り出すFROM users:usersテーブルからWHERE name LIKE '田中%':名前が「田中」で始まる人
%は「何でもOK」という意味の記号(ワイルドカード)です。
実例2:商品の価格を更新する
状況: ID が 5 の商品の価格を3,000円に変更したい
UPDATE products SET price = 3000 WHERE id = 5;
解説:
UPDATE products:productsテーブルを更新SET price = 3000:価格を3,000に設定WHERE id = 5:ID が 5 の商品だけ
重要ポイント: WHEREを忘れると、すべての商品の価格が3,000円になってしまうので注意が必要です。
実例3:注文数で並び替える
状況: 商品を注文数が多い順に表示したい
SELECT name, order_count FROM products ORDER BY order_count DESC;
解説:
SELECT name, order_count:商品名と注文数を取り出すORDER BY order_count:注文数で並び替えDESC:降順(多い順)。昇順ならASC
実例4:条件に合うデータの件数を数える
状況: 2024年に登録した会員が何人いるか知りたい
SELECT COUNT(*) FROM users WHERE registration_date >= '2024-01-01' AND registration_date < '2025-01-01';
解説:
COUNT(*):データの件数を数えるWHERE registration_date >= '2024-01-01':2024年1月1日以降AND registration_date < '2025-01-01':かつ2025年より前
実例5:複数のテーブルを結合する
状況: 注文情報と顧客情報を一緒に表示したい
SELECT orders.id, customers.name, orders.amount
FROM orders
JOIN customers ON orders.customer_id = customers.id;
解説:
JOIN:テーブル同士を結合ON orders.customer_id = customers.id:注文の顧客IDと、顧客テーブルのIDが一致する行を結合
これにより、「誰が」「いくらの注文をしたか」が一度に分かります。
SQLステートメントを書くときの注意点
1. WHERE句を忘れない
UPDATE や DELETE を使うとき、WHERE句を忘れるとすべてのデータが対象になってしまいます。
❌ 危険な例:
DELETE FROM users;
これは「usersテーブルのすべてのデータを削除」という意味になります。
✅ 正しい例:
DELETE FROM users WHERE id = 10;
「ID が 10 のユーザーだけ削除」と明確に指定しましょう。
2. 大量データを扱うときは LIMIT を使う
SELECT文で大量のデータを取り出すと、処理に時間がかかったり、メモリ不足になったりします。
SELECT * FROM orders LIMIT 100;
LIMIT 100を付けると、最初の100件だけ取り出します。
3. シングルクォーテーション(’)の使い方
文字列を指定するときは、シングルクォーテーションで囲みます。
SELECT * FROM users WHERE name = '田中太郎';
数値の場合は、クォーテーション不要です。
SELECT * FROM users WHERE age = 30;
4. 大文字・小文字の区別
キーワード(SELECT、FROM など)は大文字・小文字を区別しませんが、データの内容は区別される場合があります。
データベースの設定によって異なるので、注意が必要です。
5. SQLインジェクション対策
Webアプリケーションで SQL を使う場合、SQLインジェクションという攻撃に注意が必要です。
ユーザーが入力した値を直接SQLに埋め込むと、悪意ある命令を実行されてしまう危険があります。
対策:
- プログラミング言語の用意している「プリペアドステートメント」を使う
- ユーザー入力を適切にエスケープする
- 入力値の検証を行う
これは開発者向けの高度な内容ですが、知識として覚えておきましょう。
SQLを学ぶ方法と練習環境

初心者におすすめの学習リソース
1. オンライン学習サイト
- Progate(日本語対応、ブラウザで実践)
- SQLBolt(英語、無料で体系的に学べる)
- ドットインストール(動画で学習)
2. 書籍
- 「スッキリわかるSQL入門」
- 「SQL 第2版 ゼロからはじめるデータベース操作」
3. 練習用データベース
実際に手を動かして練習できる環境もあります:
- SQLFiddle:ブラウザ上でSQL を実行できる
- DB Browser for SQLite:無料のデータベース管理ソフト
- MySQL Workbench:本格的なデータベース環境
学習のステップ
ステップ1:基本の4つを覚える
まずは SELECT、INSERT、UPDATE、DELETE の4つを使えるようになりましょう。
ステップ2:WHERE句で条件指定
特定の条件に合うデータだけを取り出す方法を学びます。
ステップ3:並び替えと集計
ORDER BY、GROUP BY、COUNT などを使った応用を練習します。
ステップ4:複数テーブルの結合
JOIN を使って、複数のテーブルを組み合わせる方法を習得します。
ステップ5:実践プロジェクト
簡単なデータベースを自分で設計し、実際に操作してみましょう。
SQLステートメントが使われる場面
SQLは、私たちが日常的に使う多くのサービスで活躍しています。
Webアプリケーション
ショッピングサイト
- 商品検索:「価格が5,000円以下の商品を表示」
- カート機能:「カートに商品を追加・削除」
- 注文履歴:「過去の注文情報を取り出す」
すべてSQLステートメントで実現されています。
スマートフォンアプリ
SNSアプリ
- タイムライン表示:最新の投稿を取得
- いいね機能:いいね数を更新
- フォロー管理:フォロー関係をデータベースに保存
これらの裏側でも、SQLが使われているんです。
業務システム
企業の管理システム
- 在庫管理:商品の在庫数を更新
- 顧客管理:顧客情報の登録・検索
- 売上分析:月別の売上データを集計
業務効率化に欠かせない技術となっています。
データ分析
ビジネス分析
- どの商品が人気か
- どの時間帯にアクセスが多いか
- 顧客の購買傾向
SQLを使えば、大量のデータから必要な情報を素早く取り出せます。
まとめ:SQLステートメントはデータベース操作の基本
SQLステートメントは、データベースに指示を出すための命令文です。
この記事のポイント:
✅ SQLステートメントとは
データベースに「こうしてほしい」と指示を出す命令文のこと
✅ 基本の4つの操作
SELECT(読む)、INSERT(追加)、UPDATE(更新)、DELETE(削除)を覚えよう
✅ ステートメントのカテゴリー
DML(データ操作)、DDL(構造定義)、DCL(権限管理)、TCL(トランザクション制御)の4種類
✅ 実用的な使い方
WHERE句で条件指定、ORDER BYで並び替え、JOINでテーブル結合など
✅ 注意すべきポイント
WHERE句の指定忘れ、SQLインジェクション対策、適切な LIMIT の使用
✅ 学習方法
オンライン学習サイトや練習環境を使って、実際に手を動かすことが大切
SQLは、現代のIT技術において非常に重要なスキルです。
Webエンジニア、データアナリスト、データベース管理者など、多くの職種で必須の知識となっています。
最初は難しく感じるかもしれませんが、基本の4つの操作(SELECT、INSERT、UPDATE、DELETE)から始めれば、確実に理解できますよ。
ぜひ実際に手を動かして、SQLステートメントを使ってみてください。データベースと「会話」できるようになると、できることの幅が大きく広がります。
データの世界への第一歩を、楽しみながら踏み出しましょう!


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