Macを使っていて、こんな症状に困ったことはありませんか?
- バッテリーの充電ができない、または表示がおかしい
- ファンが異常にうるさく回り続ける
- 電源ボタンを押しても反応しない
- 画面の明るさ調整ができない
- USB機器が認識されない
こうした問題の多くは、SMCリセット(エスエムシーリセット)で解決できる可能性があります。
SMCは「System Management Controller(システム管理コントローラ)」の略で、Macの電源管理やハードウェア制御を担当している重要なチップのこと。
このSMCをリセットすることで、ハードウェア関連の不具合が改善されることがあるんです。
この記事では、SMCリセットの基本から、各Macモデルでの具体的な手順、注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
SMC(システム管理コントローラ)とは?

まずは、SMCについて基本を理解しておきましょう。
SMCの役割
SMCは、Macの低レベルなハードウェア機能を管理している専用チップです。
具体的には、以下のような機能を制御しています:
電源管理:
- バッテリーの充電管理
- 電源ボタンの動作
- スリープとスリープ解除
- 電源アダプタの認識
温度管理:
- 内部温度のモニタリング
- ファンの回転速度制御
- 熱による自動シャットダウン
照明制御:
- ディスプレイのバックライト
- キーボードのバックライト
- スリープインジケータランプ
入出力機能:
- USB機器の電源供給
- Thunderboltポートの管理
- カメラの制御
SMCとPRAM/NVRAMの違い
Macのトラブルシューティングでは、PRAM/NVRAMリセットもよく出てきます。
混同しやすいので、違いを押さえておきましょう:
SMC(システム管理コントローラ):
- ハードウェアの低レベル制御
- 電源、バッテリー、ファン、照明など
- 物理的なチップ
PRAM/NVRAM:
- システム設定の保存領域
- 音量、画面解像度、起動ディスクなど
- メモリ領域
簡単に言うと、SMCは「ハードウェア」、PRAM/NVRAMは「設定」を管理しています。
SMCリセットが必要な症状
どんな時にSMCリセットを試すべきか、具体的な症状を見ていきましょう。
バッテリー関連の問題
- 充電できない、または充電が異常に遅い
- バッテリー残量の表示がおかしい(実際の残量と異なる)
- 電源アダプタを接続しても認識されない
- バッテリーの持ちが急激に悪くなった
- MagSafeコネクタのLEDが正しく点灯しない
電源・スリープの問題
- 電源ボタンを押しても反応しない
- スリープから復帰しない
- 勝手にスリープしてしまう
- シャットダウンできない
- 起動に異常に時間がかかる
ファン・温度管理の問題
- ファンが常に最高速度で回る
- 逆に、ファンが全く動かない
- Macが異常に熱くなる
- 何もしていないのに動作が重い
ディスプレイ・照明の問題
- 画面の明るさ調整ができない
- キーボードのバックライトが動作しない
- 外部ディスプレイが認識されない
- スリープインジケータランプが正常に動作しない
入出力デバイスの問題
- USB機器が認識されない
- Thunderbolt機器が動作しない
- 内蔵カメラが使えない
- サウンド出力がおかしい
これらの症状がある場合、SMCリセットを試す価値があります。
事前準備:SMCリセット前にやっておくこと
SMCリセットを実行する前に、いくつか確認しておきましょう。
1. データのバックアップ
SMCリセット自体でデータが消えることは通常ありません。
ただし、念のためTime Machineなどでバックアップを取っておくと安心です。
2. 簡単な対処法を試す
SMCリセットの前に、以下の基本的な対処法を試してみてください:
再起動:
Appleメニュー →「再起動」
単純な再起動で解決することもあります。
電源アダプタの確認:
- 電源アダプタがしっかり接続されているか
- コンセントに電気が来ているか
- 別のコンセントで試す
周辺機器の取り外し:
USB機器や外部ディスプレイなど、すべての周辺機器を取り外してから試してみます。
3. macOSのアップデート確認
「システム設定(またはシステム環境設定)」→「一般」→「ソフトウェアアップデート」
最新のアップデートがある場合は、先に適用してみましょう。
4. 自分のMacのモデルを確認
SMCリセットの手順は、Macのモデルによって異なります。
自分のMacが以下のどれか確認してください:
- Apple Siliconチップ搭載Mac(M1、M2、M3など)
- Intelプロセッサ搭載Mac
- T2チップ搭載モデル(2018年以降の多く)
- T2チップ非搭載モデル(それ以前)
- バッテリー取り外し可能なノート型
確認方法:
Appleメニュー →「このMacについて」
「チップ」または「プロセッサ」の項目を確認してください。
Apple Silicon Mac(M1/M2/M3など)のSMCリセット
実は、Apple Silicon搭載MacにはSMCリセットの手順がありません。
なぜSMCリセットが不要?
Apple Siliconチップでは、SMCの機能がチップに統合されているため、従来のような明示的なリセット手順が必要ないんです。
システムが自動的に管理してくれています。
Apple Silicon Macでのトラブル対処法
SMCリセットの代わりに、以下の方法を試してください:
方法1:通常のシャットダウンと起動
- Appleメニュー →「システム終了」
- Macが完全に電源オフになるまで待つ(約30秒)
- 電源ボタンを押して起動
方法2:強制再起動
Macが応答しない場合:
- 電源ボタンを10秒間長押し
- Macが完全にシャットダウンするまで待つ
- もう一度電源ボタンを押して起動
方法3:NVRAMリセット
- Macをシャットダウン
- 電源を入れる
- すぐにCommand + Option + P + Rを同時に押す
- 約20秒間押し続ける(Appleロゴが2回表示されるまで)
- キーを離す
これらの方法で、多くのハードウェア関連の問題が解決します。
Intel Mac(T2チップ搭載)のSMCリセット
2018年以降の多くのIntel Macには、T2セキュリティチップが搭載されています。
T2チップ搭載Macの確認方法
Appleメニュー →「このMacについて」→「システムレポート」→「コントローラ」
「Model Name」に「Apple T2 chip」と表示されていればT2チップ搭載です。
ノート型Mac(T2チップ搭載)のSMCリセット
MacBook Pro、MacBook Airなど。
手順:
- Macを完全にシャットダウン
- Shift(左側)+ Control(左側)+ Option(左側)の3つのキーを押す
- 上記3つを押したまま、電源ボタンも同時に押す
- 4つすべてのキーを10秒間押し続ける
- すべてのキーを離す
- 電源ボタンを押してMacを起動
ポイント:すべて左側のキーを使います。
デスクトップMac(T2チップ搭載)のSMCリセット
iMac Pro、Mac mini、Mac Proなど。
手順:
- Macを完全にシャットダウン
- 電源コードを抜く
- 15秒間待つ
- 電源コードを再接続
- 5秒間待つ
- 電源ボタンを押してMacを起動
Intel Mac(T2チップ非搭載)のSMCリセット
2018年より前の多くのMacは、T2チップを搭載していません。
ノート型Mac(バッテリー非取り外し式)
MacBook、MacBook Pro、MacBook Airの多く。
手順:
- Macを完全にシャットダウン
- Shift(左側)+ Control(左側)+ Option(左側)の3つのキーを押す
- 上記3つを押したまま、電源ボタンも同時に押す
- すべてのキーを10秒間押し続ける
- すべてのキーを離す
- 電源ボタンを押してMacを起動
T2チップ搭載モデルと同じ手順ですね。
ノート型Mac(バッテリー取り外し可能)
古いMacBook、MacBook Proの一部。
手順:
- Macを完全にシャットダウン
- バッテリーを取り外す
- 電源ボタンを5秒間押す
- バッテリーを再装着
- 電源ボタンを押してMacを起動
デスクトップMac(iMac、Mac mini、Mac Pro)
手順:
- Macを完全にシャットダウン
- 電源コードを抜く
- 15秒間待つ
- 電源コードを再接続
- 5秒間待つ
- 電源ボタンを押してMacを起動
シンプルですね。
SMCリセット後の確認
リセットが成功したか、以下の点を確認しましょう。
1. 起動の確認
Macが正常に起動するか確認します。
通常は、特にエラーメッセージなく起動するはずです。
2. 問題の症状が改善されたか
リセット前に困っていた症状が解消されているか確認してください:
- バッテリーが充電されるか
- ファンの音が正常になったか
- 画面の明るさ調整ができるか
- USB機器が認識されるか
3. 設定の確認
SMCリセットでは基本的に設定は変わりませんが、念のため以下を確認:
システム設定で確認:
- ディスプレイの明るさ
- 省エネルギー設定
- Bluetooth設定
- サウンド設定
必要に応じて再設定してください。
4. 日付と時刻の確認
まれに日付と時刻がずれることがあります。
「システム設定」→「一般」→「日付と時刻」で確認しましょう。
SMCリセットで解決しない場合

SMCリセットを試しても問題が解決しない場合は、別の対処法を試してみます。
1. PRAM/NVRAMリセット
設定関連の問題かもしれません。
手順(Intel Macの場合):
- Macをシャットダウン
- 電源を入れる
- すぐにCommand + Option + P + Rを同時に押す
- 起動音が2回鳴るまで(または約20秒間)押し続ける
- キーを離す
2. セーフモードで起動
手順(Intel Mac):
- Macをシャットダウン
- 電源を入れる
- すぐにShiftキーを押し続ける
- Appleロゴが表示されたら離す
手順(Apple Silicon Mac):
- Macをシャットダウン
- 電源ボタンを押し続ける
- 起動オプションが表示されるまで待つ
- 起動ディスクを選択
- Shiftキーを押しながら「セーフモードで続ける」をクリック
セーフモードで問題が起きない場合、ソフトウェアの問題の可能性が高いです。
3. macOSの再インストール
macOS自体に問題がある可能性があります。
macOSリカバリーモード:
Intel Mac:
起動時にCommand + R
Apple Silicon Mac:
電源ボタン長押しで起動オプション表示
リカバリーモードから「macOSを再インストール」を選択します。
データは消えませんが、念のためバックアップを取ってから実行してください。
4. Apple サポートに連絡
上記すべてを試しても解決しない場合は、ハードウェアの故障の可能性があります。
- Apple公式サポート
- Apple Store
- 正規サービスプロバイダ
に相談しましょう。
特にバッテリーやロジックボードの故障は、修理が必要なケースです。
SMCリセットの注意点
SMCリセットを行う際の注意点をまとめます。
頻繁にリセットする必要はない
SMCリセットは、トラブルシューティングの手段であり、定期的なメンテナンスではありません。
問題がない限り、頻繁に行う必要はないんです。
データは消えない
SMCリセットでは、ユーザーデータや設定が消えることはありません。
ただし、念のためバックアップを取っておくと安心です。
バッテリー駆動中の実施
ノート型Macの場合、できれば電源アダプタを接続した状態でSMCリセットを行うのが理想的です。
ただし、バッテリー関連の問題の場合は、アダプタを抜いた状態で試すこともあります。
複数回試してもOK
1回で改善しない場合、2〜3回繰り返してみるのも有効です。
ただし、何度やっても改善しない場合は、別の原因を疑いましょう。
保証期間内なら相談を
Macが保証期間内、またはAppleCare+に加入している場合は、自分で試す前にAppleサポートに相談するのも一つの選択肢です。
無償修理の対象になる可能性もあります。
よくある質問
SMCリセットに関してよく寄せられる質問をまとめました。
Q1: SMCリセットとPRAM/NVRAMリセット、どちらを先にやるべき?
A: 症状によりますが、一般的には:
- ハードウェア関連の問題(バッテリー、ファン、電源など)→ SMCリセット
- 設定関連の問題(音量、画面解像度、起動ディスクなど)→ PRAM/NVRAMリセット
両方試す場合は、SMCリセットを先に行うのが一般的です。
Q2: SMCリセット後、バッテリーの状態は変わる?
A: SMCリセットでバッテリーの物理的な状態は変わりませんが、充電管理がリセットされます。
そのため、バッテリー残量の表示が正確になったり、充電が正常に行われるようになることがあります。
Q3: SMCリセットでMacの動作が速くなる?
A: SMCリセットはハードウェア制御のリセットなので、直接的に処理速度が上がるわけではありません。
ただし、ファンが正常に動作するようになることで、熱によるパフォーマンス低下が解消される可能性はあります。
Q4: 何度もSMCリセットが必要な場合は?
A: 頻繁にSMCリセットが必要な場合は、ハードウェアの故障が疑われます。
特にバッテリーやロジックボードの問題の可能性があるため、Appleサポートに相談してください。
Q5: 古いMacでもSMCリセットは有効?
A: はい、Intel Macであれば有効です。
ただし、非常に古いモデルの場合、手順が異なることがあります。
Appleの公式サポートページで、自分のモデルの手順を確認してください。
まとめ:SMCリセットはMacのトラブル解決の基本
SMCリセットについて、重要なポイントをまとめます。
SMCとは:
- System Management Controller(システム管理コントローラ)
- 電源、バッテリー、ファン、照明などのハードウェアを制御
- Macの低レベル機能を管理
SMCリセットが必要な症状:
- バッテリーの充電や表示の問題
- ファンの異常動作
- 電源・スリープの問題
- 画面の明るさ調整ができない
- USB機器が認識されない
リセット方法(モデル別):
Apple Silicon Mac:
- 明示的なSMCリセット手順なし
- 通常のシャットダウン・起動で対応
- 強制再起動やNVRAMリセットを試す
Intel Mac(T2チップ搭載):
- ノート型:Shift + Control + Option + 電源ボタンを10秒
- デスクトップ:電源コードを抜いて15秒待つ
Intel Mac(T2チップ非搭載):
- ノート型(非取り外し式):Shift + Control + Option + 電源ボタンを10秒
- ノート型(取り外し式):バッテリーを外して電源ボタン5秒
- デスクトップ:電源コードを抜いて15秒待つ
注意点:
- データは消えない
- 頻繁に行う必要はない
- 改善しない場合は他の方法を試す
- 何度も必要な場合はハードウェア故障の可能性
次のステップ:
- SMCリセットで改善しない→PRAM/NVRAMリセット
- それでも改善しない→セーフモード起動
- 最終手段→macOS再インストール
- 解決しない→Appleサポートに相談
SMCリセットは、Macユーザーなら知っておきたい基本的なトラブルシューティング方法です。
難しい操作ではないので、ハードウェア関連の不具合が起きた時は、まずSMCリセットを試してみましょう。
多くの場合、これだけで問題が解決するはずですよ。
それでも改善しない場合は、無理をせず専門家に相談するのが賢明です。
大切なMacを長く快適に使うために、適切なトラブルシューティングを心がけてくださいね!

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