Slackでメッセージを送る際、データを表(テーブル)形式で見やすく整理したいと思ったことはありませんか?
「Slackでマークダウンの表記法が使えるのでは?」と考える方も多いでしょう。しかし実は、Slackは標準的なMarkdownの表記法には対応していません。
この記事では、Slackで表を作成する方法について、できること・できないことを明確にしながら、実用的な代替手段をすべて解説します。コードブロックを使った方法から、Canvas機能の活用まで、状況に応じた最適な方法をご紹介します。
Slackとマークダウンの関係

Slackは標準的なMarkdownに非対応
まず最初に知っておくべき重要な事実があります。
Slackは標準的なMarkdown記法をサポートしていません。
GitHubやQiitaなどで使える一般的なMarkdownのテーブル記法(|と-を使った表)は、Slackでは動作しません。
Slackが使う「mrkdwn」
Slackが使用するのは「mrkdwn(マクダン)」と呼ばれる独自の記法です。
これはMarkdownに似ていますが、別物です。Markdownから母音を抜いた「mrkdwn」という名前が、その微妙な違いを表しています。
Slackが公式に明言している方針
Slackメッセージの書式設定は、大多数のユーザーのニーズに対応するよう設計されています。マークダウン記法を使用されるユーザーは少数のため、対応は行っていません。
テーブル記法が使えない理由
Markdownのテーブル記法が使えない主な理由:
- Slackのチャット形式に最適化されていない
- 多くのユーザーにとって複雑すぎる
- WYSIWYGエディタ(ビジュアルエディタ)との相性が悪い
つまり、簡単に表を作りたい場合は、別の方法を使う必要があります。
代替手段1:コードブロックで表を作る
最も簡単な方法
コードブロック(“`)を使うのが、最も手軽な方法です。
等幅フォントで表示されるため、スペースで列を揃えることができます。
基本的な作り方
ステップ1:コードブロックを開始
メッセージ入力欄で、バッククォート3つ(“`)を入力します。
ステップ2:表を入力
スペースや記号を使って表を整形します。
ステップ3:コードブロックを閉じる
最後にもう一度バッククォート3つ(“`)を入力します。
例
```
名前 | 部署 | ステータス
----------|-----------|----------
田中太郎 | 開発部 | 対応中
佐藤花子 | 営業部 | 完了
鈴木一郎 | 企画部 | 保留
実際の表示:
| 名前 | 部署 | ステータス |
|---|---|---|
| 田中太郎 | 部署 | 対応中 |
| 佐藤花子 | 営業部 | 完了 |
| 鈴木一郎 | 企画部 | 保留 |
### 見栄えを良くするコツ
**1. 等幅スペースで揃える**
全角スペースと半角スペースを使い分けて、列を綺麗に揃えましょう。
**2. 区切り線を使う**
`-`(ハイフン)や`|`(パイプ)で区切り線を作ると見やすくなります。
**3. 列幅を統一**
各列の幅をできるだけ揃えると、よりテーブルらしく見えます。
### メリットとデメリット
**メリット**
- 追加のツールが不要
- すぐに作成できる
- モバイルでも表示される
**デメリット**
- 手動で整形する必要がある
- 等幅フォントでしか表示されない
- 列数が多いと崩れやすい
- データ量が多いと見づらい
### 実用的な例
**プロジェクト進捗表**
タスク名 | 担当者 | 期限 | 進捗
------------------|---------|---------|------
要件定義 | 山田 | 12/20 | ✅
設計書作成 | 田中 | 12/25 | 🔄
実装 | 佐藤 | 01/15 | ⏸️
テスト | 鈴木 | 01/25 | ⬜
**売上データ**
月 | 売上 | 前月比
------|----------|--------
10月 | 1,200万円 | +5%
11月 | 1,350万円 | +12.5%
12月 | 1,500万円 | +11.1%
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## 代替手段2:Slack Canvasを活用する
### Canvas機能とは
Slack Canvas(キャンバス)は、Slackに組み込まれた文書作成機能です。
実は、**CanvasではMarkdownのテーブル記法が使えます**。
### Canvasでの表作成手順
**ステップ1:Canvasを作成**
1. チャンネルを開く
2. 「+」ボタンをクリック
3. 「Canvas」を選択
**ステップ2:Markdownで表を作成**
Canvasのエディタで、標準的なMarkdownのテーブル記法が使えます。
**記法**
| 列1 | 列2 | 列3 |
|---|---|---|
| データ1 | データ2 | データ3 |
| データ4 | データ5 | データ6 |
**ステップ3:Canvasを共有**
作成したCanvasをチャンネルで共有します。
### Canvasの表でできること
**基本機能**
- 複数の列と行
- ヘッダー行
- セルの結合(一部制限あり)
**高度な機能**
- セル内に太字・斜体
- セル内にリンク
- セル内に画像
- セル内にチェックボックス
- セル内に絵文字
**例**
markdown
| 機能 | 詳細 |
|---|---|
| Canvas | 文書作成機能 |
| チェックボックス | タスク: – [ ] 未完了 – [x] 完了 |
| リンク | Slack公式 |
### Canvasのメリット・デメリット
**メリット**
- 標準的なMarkdownテーブルが使える
- 見栄えが良い
- セル内に画像やリンクを入れられる
- 更新が簡単
- チーム全員で編集可能
**デメリット**
- チャット内に直接表示されない
- Canvasを別途開く必要がある
- モバイルでの編集が少し面倒
### 使い分けのポイント
**Canvasが適している場合**
- データ量が多い表
- 頻繁に更新する表
- チームで共同編集する表
- 長期間保存する表
**コードブロックが適している場合**
- 簡単な表
- 一度だけ共有する表
- チャット内ですぐに確認したい表
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## 代替手段3:Google Sheets・Excelを連携
### スプレッドシートとの連携
複雑な表や計算が必要な場合は、Google SheetsやExcelを使うのが最適です。
### 連携方法
**方法1:リンクを貼る**
1. Google SheetsまたはExcelのURLをコピー
2. Slackのメッセージ欄に貼り付け
3. 権限設定を確認(チームメンバーが閲覧できるように)
**方法2:スクリーンショットを貼る**
1. スプレッドシートの表をスクリーンショット
2. 画像としてSlackにアップロード
3. 必要に応じて元ファイルのリンクも添付
**方法3:Google Sheetsアプリを連携**
1. Slackに Google Sheets アプリをインストール
2. `/sheets` コマンドで操作
3. 自動通知やリマインダーを設定
### メリット・デメリット
**メリット**
- 複雑な計算が可能
- グラフやチャートも作れる
- データの一元管理
- リアルタイム更新
- 複数人での同時編集
**デメリット**
- 外部ツールが必要
- Slack内で直接編集できない
- 権限管理が必要
- リンクを開く手間
---
## 代替手段4:Block Kit API(開発者向け)
### APIで本格的な表を作る
SlackアプリやBotを開発する場合、Block Kit APIを使って表を作成できます。
### Block Kitの表機能
2024年以降、Slack APIに`table`ブロックが追加されました。
**特徴**
- プログラムで表を生成
- 列の配置設定(左揃え・右揃え・中央揃え)
- テキストの折り返し設定
- リッチテキスト対応(太字・リンク・絵文字)
### 基本的なJSON構造
json
{
“blocks”: [
{
“type”: “table”,
“rows”: [
[
{“type”: “raw_text”, “text”: “名前”},
{“type”: “raw_text”, “text”: “部署”}
],
[
{“type”: “raw_text”, “text”: “田中太郎”},
{“type”: “raw_text”, “text”: “開発部”}
]
]
}
]
}
### 列設定の例
json
{
“type”: “table”,
“column_settings”: [
{“is_wrapped”: true}, // 1列目: テキスト折り返しON
{“align”: “right”} // 2列目: 右揃え
],
“rows”: […]
}
### 制限事項
- 1メッセージにつき1つの表まで
- 表は添付ファイルとしてメッセージ下部に追加される
- ユーザーが手動で作成することはできない
### 活用例
- 定期レポートの自動投稿
- データベースからのデータ表示
- ダッシュボード通知
- 集計結果の共有
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## 代替手段5:テキスト整形で擬似的な表
### シンプルなテキスト整形
表ほど厳密でなくても、見やすく整理する方法があります。
### 方法1:箇条書きを使う
売上レポート
- 10月: 1,200万円(前月比+5%)
- 11月: 1,350万円(前月比+12.5%)
- 12月: 1,500万円(前月比+11.1%)
表示例:
**売上レポート**
* 10月: 1,200万円(前月比+5%)
* 11月: 1,350万円(前月比+12.5%)
* 12月: 1,500万円(前月比+11.1%)
### 方法2:絵文字で視覚化
タスク状況
✅ 要件定義 – 山田 – 完了
🔄 設計 – 田中 – 進行中
⏸️ 実装 – 佐藤 – 保留
⬜ テスト – 鈴木 – 未着手
表示例:
**タスク状況**
✅ 要件定義 - 山田 - 完了
🔄 設計 - 田中 - 進行中
⏸️ 実装 - 佐藤 - 保留
⬜ テスト - 鈴木 - 未着手
### 方法3:引用ブロックで整理
プロジェクトA
担当: 山田チーム
期限: 2025/12/31
進捗: 60%
表示例:
> **プロジェクトA**
> 担当: 山田チーム
> 期限: 2025/12/31
> 進捗: 60%
### メリット
- 表ほど厳密ではないが見やすい
- モバイルでも問題なく表示
- 作成が簡単
- メンテナンスも楽
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## Slackで使えるMarkdown風の記法
### 基本的な装飾
Slackで使える主な記法をまとめます。
| 記法 | 結果 | 説明 |
|------|------|------|
| `*太字*` | **太字** | アスタリスクで囲む |
| `_斜体_` | *斜体* | アンダースコアで囲む |
| `~取り消し線~` | ~~取り消し線~~ | チルダで囲む |
| `` `コード` `` | `コード` | バッククォートで囲む |
| `> 引用` | > 引用 | 行頭に > |
### リスト
**箇条書き**
- 項目1
- 項目2
- サブ項目
**番号付きリスト**
- 最初
- 次
- 最後
### コードブロック
def hello():
print("Hello, Slack!")
### リンク
単純にURLを貼るだけでリンクになります。
通常のMarkdownの`[テキスト](URL)`記法は使えません。
---
## 状況別おすすめの方法
### 簡単な表(3列×5行程度)
**おすすめ:コードブロック**
理由:
- 作成が早い
- チャット内で完結
- モバイルでも見やすい
### 中規模の表(5列×20行程度)
**おすすめ:Slack Canvas**
理由:
- Markdown記法が使える
- 見栄えが良い
- 後から編集しやすい
### 大規模な表・複雑な計算
**おすすめ:Google Sheets連携**
理由:
- 計算や集計が可能
- グラフも作れる
- データ管理が容易
### 定期レポート(自動化)
**おすすめ:Block Kit API**
理由:
- プログラムで自動生成
- 毎日・毎週の投稿を自動化
- データベースと連携可能
### チームでの更新が必要
**おすすめ:Slack Canvas**
理由:
- 共同編集が可能
- 変更履歴が残る
- 権限管理ができる
---
## よくある質問と回答
### Q. Slackでマークダウンの表記法は使える?
A. 使えません。
Slackは標準的なMarkdownのテーブル記法(`|`と`-`を使った表)には対応していません。
ただし、Slack Canvasを使えば、Markdownのテーブル記法が使えます。
### Q. GitHubやQiitaで作った表をコピペできる?
A. できません。
通常のチャットメッセージでは、Markdownの表記法が認識されず、ただのテキストとして表示されます。
Slack Canvasにコピペすれば、表として表示される可能性があります。
### Q. 一番簡単な方法は?
A. コードブロックを使う方法です。
で囲んで、スペースで列を揃えるだけです。完璧な表ではありませんが、簡単なデータを共有するには十分です。
Q. スマホでも表を見られる?
A. 見られますが、制限があります。
- コードブロック:見られるが、列が多いと横スクロールが必要
- Canvas:見られるが、別ウィンドウで開く必要がある
- スクリーンショット:画像として見られる
モバイルでの閲覧を重視する場合は、列数を少なくするか、画像で共有するのがおすすめです。
Q. 既存のExcel表をSlackで共有するには?
A. 3つの方法があります。
- スクリーンショット:表を画像化してアップロード
- Excelファイルをアップロード:ファイルとして添付
- Google Sheetsに変換:リンクを共有
リアルタイム更新が必要ならGoogle Sheets、単発の共有ならスクリーンショットが便利です。
Q. 表の色を変えられる?
A. 基本的にできません。
Slackのメッセージでは、テキストの色変更に対応していません。
代わりに、絵文字を使って視覚的な区別をつける方法があります。
- ✅(緑) = 完了
- 🔄(青) = 進行中
- ⚠️(黄) = 注意
- ❌(赤) = エラー
Q. APIを使わずに綺麗な表を作れる?
A. Slack Canvasを使ってください。
Canvasなら、APIの知識がなくても、Markdownの表記法で綺麗な表が作れます。
Q. 表の列数に制限はある?
A. 公式の制限はありませんが、実用的な制限があります。
- コードブロック:5列程度が限界(それ以上は見づらい)
- Canvas:10列程度までなら問題なし
- Block Kit API:技術的には制限なし
画面幅の都合上、列が多すぎると表示が崩れるので、列数は最小限にしましょう。
まとめ
Slackで表を作成する方法について、重要なポイントをおさらいします。
基本的な事実
- Slackは標準的なMarkdownのテーブル記法には非対応
- 「mrkdwn」という独自記法を使用
- メッセージ内で完璧な表を作るのは難しい
代替手段
- コードブロック:最も簡単、小さい表向け
- Slack Canvas:Markdown表記法が使える、中規模向け
- Google Sheets連携:複雑な表、計算が必要な場合
- Block Kit API:開発者向け、自動化に最適
- テキスト整形:表ほど厳密でなくてOKな場合
選び方のポイント
- 簡単な表(3列×5行)→ コードブロック
- 中規模の表(5列×20行)→ Canvas
- 複雑な表・計算あり → Google Sheets
- 自動化したい → Block Kit API
- 共同編集が必要 → Canvas
実用的なヒント
- 列数は最小限に抑える
- モバイル表示を考慮する
- 更新頻度に応じて方法を選ぶ
- 絵文字で視覚的に情報を整理
- 必要に応じてスクリーンショットを活用
Slackで「完璧な表」を作るのは難しいですが、目的に応じた方法を選ぶことで、十分に見やすく情報を整理できます。
単発の簡単なデータ共有ならコードブロック、チームで更新する表ならCanvas、複雑な計算が必要ならGoogle Sheetsというように、状況に応じて使い分けましょう。
最も大切なのは、「見やすさ」と「更新のしやすさ」のバランスです。完璧を求めすぎず、チームにとって最も実用的な方法を選んでください。

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