「別のSlackワークスペースにメッセージを共有したい」「複数のワークスペースを統合したい」そんなニーズは意外と多いですよね。
でも実は、Slackでは同じワークスペース内のチャンネル間なら簡単に転送できますが、完全に別のワークスペースへの直接転送機能は標準では用意されていません。
この記事では、状況に応じた最適な方法を紹介します。リアルタイムで連携したい場合、大量のデータを移行したい場合、それぞれに適した解決策があるので安心してくださいね。
前提知識:ワークスペースとは?

まず基本を確認しておきましょう。
Slackワークスペースとは:
組織やプロジェクトごとに作られる独立したSlackの作業空間のことです。会社ごと、部署ごと、プロジェクトごとなどに分かれています。
例:
- 「株式会社A」のワークスペース
- 「B大学サークル」のワークスペース
- 「Cプロジェクト」のワークスペース
これらは基本的に完全に独立しており、異なるワークスペース間では直接メッセージをやり取りできません。
なぜ別のワークスペースに転送したいのか?
よくある状況:
- 複数の会社やプロジェクトに参加している
- フリーランスで複数のクライアントと仕事
- 業務委託で複数の企業のワークスペースに参加
- ワークスペースを統合したい
- 会社合併や組織再編
- テスト用から本番用への移行
- 社外パートナーと情報共有したい
- 取引先や協力会社との連携
- 外部コンサルタントとの協働
それぞれの状況に応じて、最適な方法が違います。
【方法1】同じワークスペース内での転送|基本機能を使う
まずは一番簡単な「同じワークスペース内」での転送方法を確認しましょう。
メッセージ転送機能を使う
Slackには標準で転送機能が搭載されています。
デスクトップでの手順:
- 転送したいメッセージにマウスカーソルを重ねる
- 「メッセージを転送する」アイコン(紙飛行機マーク)をクリック
- 転送先のチャンネルまたはDMを選択
- 必要に応じてコメントを追加
- 「転送する」をクリック
モバイルアプリでの手順:
- 転送したいメッセージを長押し
- 「メッセージを転送する」を選択
- 転送先を選択
- 必要に応じてコメントを追加
- 送信ボタンをタップ
この方法なら、メッセージの内容と送信者情報が引用形式で転送されます。
メッセージリンクをコピーする方法
リンクを共有するだけなら、さらに簡単です。
手順:
- メッセージの「…」(その他)メニューをクリック
- 「リンクをコピー」を選択
- 転送先のチャンネルにリンクを貼り付け
- Enterキーで送信
リンクを貼ると、メッセージのプレビューが自動的に表示されます。
注意点:
- プライベートチャンネルやDMのメッセージリンクは、そのチャンネルにアクセス権がある人だけが見られます
- 「メッセージを表示する」または「リンクのみ表示する」を選択できます
Reacji Channeler(リアクション転送)
絵文字リアクションで自動転送できる便利なアプリです。
できること:
特定の絵文字リアクションが付けられたメッセージを、自動的に別のチャンネルにコピーします。
使用例:
- 📣(メガホン)のリアクションで #重要情報 チャンネルに転送
- 🐛(虫)のリアクションで #バグ報告 チャンネルに転送
- ⭐(星)のリアクションで #良い事例 チャンネルに転送
設定方法:
- Reacji Channelerをワークスペースに追加
- チャンネルで
/reacji-channeler :絵文字: #転送先チャンネルと入力 - Enterキーで設定完了
設定例:
/reacji-channeler :mega: #big-news
これで、📣 リアクションが付いたメッセージが自動的に #big-news チャンネルにコピーされます。
【方法2】Slack Connect(共有チャンネル)で連携する
別のワークスペースとリアルタイムで連携したい場合は、Slack Connectが最適です。
Slack Connectとは?
異なるワークスペース間でチャンネルを共有できる機能です。まるで同じワークスペースにいるかのように、リアルタイムでメッセージをやり取りできます。
メリット:
- リアルタイムでの双方向コミュニケーション
- ファイル共有も可能
- 外部パートナーと簡単に連携
- それぞれのワークスペースを切り替える必要がない
注意点:
- 有料プラン限定の機能(無料プランでは使えません)
- 両方のワークスペースが有料プランである必要はありません
共有チャンネルの作成方法
ステップ1:共有チャンネルを作成
- ワークスペース名をクリック
- 「ツールと設定」→「共有チャンネル」を選択
- 「新しい共有チャンネルを作成」をクリック
- チャンネル名と説明を入力
- 「作成」をクリック
ステップ2:外部組織を招待
- 作成した共有チャンネルを開く
- チャンネル名をクリック
- 「組織を招待」を選択
- 相手のメールアドレスまたはワークスペースURLを入力
- 招待メッセージを送信
ステップ3:招待を承認
招待された側は:
- Slackから届いた招待通知を確認
- 「チャンネルに参加」をクリック
- 自分のワークスペースから共有チャンネルにアクセス可能に
使用例
クライアントとの連携:
- 自社ワークスペース:「ABC株式会社」
- クライアント:「XYZ商事」
- 共有チャンネル:「#xyz-project」
両社のメンバーが同じチャンネルで会話でき、メールのやり取りが不要になります。
複数社での共同プロジェクト:
3社以上でも共有チャンネルを使えば、全員が同じ場所でコミュニケーションできます。
【方法3】エクスポート/インポートでワークスペースを統合する
2つのワークスペースを完全に統合したい場合は、この方法を使います。
エクスポート/インポートとは?
一方のワークスペースからデータをエクスポート(書き出し)して、もう一方のワークスペースにインポート(読み込む)ことで、2つのワークスペースを1つに統合できます。
移行できるデータ:
- メンバー情報
- パブリックチャンネルとプライベートチャンネル
- メッセージ履歴
- ファイル
- ダイレクトメッセージ(条件付き)
重要な注意点:
- ワークスペースのオーナー権限が必要
- Enterprise Gridプランでは使えません
- プライベートチャンネルやDMのエクスポートには別途申請が必要
- 大規模な移行には数時間〜数日かかる場合がある
エクスポートの手順
ステップ1:データをエクスポート
- ワークスペース設定ページにアクセス
- 「データのエクスポート」を選択
- エクスポート範囲を選択(全期間または特定期間)
- 「エクスポートを開始」をクリック
- エクスポートが完了したらダウンロード
エクスポートにかかる時間:
- 小規模ワークスペース(数年分):5〜10分
- ファイルサイズ:通常100MB〜数GB
ステップ2:オンラインストレージにアップロード
エクスポートファイルが2GB以上の場合:
- Google Drive、Dropbox、Boxなどにアップロード
- 共有リンクを取得
- インポート時にこのリンクを使用
インポートの手順
ステップ1:インポートを開始
- 統合先のワークスペースにサインイン
- ワークスペース設定ページで「データのインポート」を選択
- エクスポートファイルをアップロード(またはリンクを入力)
ステップ2:ユーザーのマッピング設定
エクスポート元とインポート先で同じユーザーがいる場合、どう扱うか設定します:
選択肢:
- 統合する:同一人物として扱う(推奨)
- 新しいアカウントを作成する:別人として扱う
- メッセージのみインポート:ユーザーアカウントは作らず、メッセージだけ取り込む
- インポートしない:そのユーザーのデータをスキップ
ステップ3:チャンネルのマッピング設定
同名のチャンネルがある場合、どう扱うか設定します:
選択肢:
- 既存のチャンネルと統合する:メッセージを既存チャンネルに追加
- 新しいチャンネルを作成する:「general2」のように連番を付けて新規作成
- インポートしない:そのチャンネルをスキップ
ステップ4:インポート実行
- 設定を確認
- 「インポートを開始」をクリック
- 完了まで待つ(数時間〜半日程度)
インポート後の確認:
- メッセージが正しく移行されているか
- メンバーが適切に追加されているか
- ファイルがアクセス可能か
インポートの取り消し(ロールバック)
もし問題があった場合は、インポートを元に戻せます。
注意点:
- インポートしたチャンネルとメッセージは削除される
- ただし、追加されたメンバーは削除されない
- 「general2」などの新規チャンネルは削除されない
手順:
- インポート完了画面で「インポートを元に戻す」をクリック
- 確認画面で実行
【方法4】自動転送ボット・APIを使う

プログラミング知識がある方向けに、自動転送の仕組みを作る方法を紹介します。
Google Apps Script(GAS)を使った自動転送
あるワークスペースのメッセージを、別のワークスペースに自動転送するボットです。
基本的な仕組み:
- ワークスペースAでメッセージが投稿される
- Events APIがGASに通知
- GASがメッセージを受け取る
- Incoming WebhookでワークスペースBに転送
必要な準備:
- 2つのSlack App(送信元と送信先)
- Google Apps Scriptの基礎知識
- Events APIとIncoming Webhookの設定
概要コード例:
function doPost(e) {
var json = JSON.parse(e.postData.getDataAsString());
// Slack App認証用のチャレンジ応答
if (json.type === 'url_verification') {
return ContentService.createTextOutput(json.challenge);
}
// 重複実行を防止
var event_ts = json.event.ts;
var cache = CacheService.getScriptCache();
if (cache.get(event_ts)) {
return; // 既に処理済み
}
cache.put(event_ts, 'processed', 300);
// メッセージ内容を取得
var text = json.event.text;
var channel = json.event.channel;
// 無限ループ防止(自分が送信したメッセージは転送しない)
if (text && text.indexOf("(転送済み)") > -1) {
return;
}
// 転送先のIncoming Webhook URL
var postUrl = 'YOUR_WEBHOOK_URL';
// メッセージを転送
var options = {
"method": "post",
"contentType": "application/json",
"payload": JSON.stringify({
"text": text + " (転送済み)"
})
};
UrlFetchApp.fetch(postUrl, options);
}
Zapierを使った自動転送
ノーコードで自動転送を設定できます。
基本的な流れ:
- Zapierアカウントを作成
- 「Create Zap」をクリック
- トリガー:Slack – New Message Posted to Channel
- アクション:Slack – Send Channel Message(別のワークスペース)
- 両方のワークスペースに接続
- テストして公開
制限事項:
- Zapierの無料プランでは月100回まで
- 有料プランが必要な場合もある
【応用】メールやSMSをSlackに転送する
ワークスペース間の転送ではありませんが、関連する便利な機能を紹介します。
メールをSlackに転送
Slackには各チャンネル専用のメールアドレスを発行できます。
設定方法:
- チャンネルを開く
- チャンネル名をクリック
- 「インテグレーション」タブを選択
- 「このチャンネルにメールを送信」を選択
- 「メールアドレスを取得」をクリック
使い方:
取得したメールアドレスに転送設定すれば、メールが自動的にSlackチャンネルに投稿されます。
活用例:
- 顧客からの問い合わせメールを #サポート チャンネルに自動転送
- システムアラートメールを #監視 チャンネルに集約
- ニュースレターを #業界情報 チャンネルに投稿
SMSをSlackに転送
スマートフォンのSMSメッセージをSlackに転送するアプリもあります。
利用可能なアプリ:
- SMS Auto Forwarder(Android)
- AutoForward Text(Android/iPhone)
- ForwardSMS(Android)
基本的な設定:
- アプリをスマートフォンにインストール
- Slackの Incoming Webhook URLを取得
- アプリにWebhook URLを設定
- 転送ルールを設定(全てまたは特定のキーワード)
よくある質問(FAQ)
Q1:無料プランでも別のワークスペースに転送できますか?
直接転送は難しいです。 選択肢は:
- ✅ メッセージを手動でコピー&ペースト
- ✅ エクスポート/インポート(データ移行)
- ❌ Slack Connect(有料プラン限定)
- ❌ 自動転送ボット(技術的には可能だが推奨されない)
Q2:過去のメッセージも含めて全て転送できますか?
エクスポート/インポート機能を使えば可能です。 ただし:
- ワークスペースオーナー権限が必要
- プライベートチャンネルやDMは別途申請が必要
- フリープランでは90日以前のメッセージは保存されていない
Q3:転送したメッセージの送信者情報は保持されますか?
方法によって異なります:
- ✅ エクスポート/インポート:送信者情報が保持される
- ✅ 標準転送機能(同じワークスペース内):引用形式で表示
- ❌ 自動転送ボット:ボット名義で投稿される(元の送信者は本文に記載可能)
Q4:リアルタイムで常に同期させることはできますか?
Slack Connectを使えば可能です。 これが最も簡単で公式の方法です。
自動転送ボットでも実現できますが:
- 技術的な知識が必要
- メンテナンスが必要
- Slackの利用規約を確認してください
Q5:ファイルも一緒に転送されますか?
方法によって異なります:
- ✅ エクスポート/インポート:ファイルも移行される
- ✅ Slack Connect:ファイル共有可能
- ⚠️ 標準転送機能:ファイル添付メッセージはリンクのみ
- ⚠️ 自動転送ボット:設定次第(追加開発が必要)
Q6:Enterprise Gridプランでもワークスペース統合できますか?
Enterprise Grid内では特別な方法があります。
- OrG(オーガナイゼーション)内のワークスペース間でチャンネルを移動可能
- ただし、通常のエクスポート/インポート機能は使えません
- 詳しくはSlackサポートに問い合わせてください
Q7:転送設定を間違えた場合、元に戻せますか?
インポートの場合は可能です。
- インポート完了後に「インポートを元に戻す」ボタンが表示されます
- ただし、追加されたメンバーは削除されません
自動転送ボットの場合:
- ボットを停止すれば新しい転送は止まります
- 既に転送されたメッセージは手動で削除する必要があります
まとめ:状況に応じた最適な方法を選ぼう
Slackで別のワークスペースにメッセージを転送する方法を、状況別にまとめます。
この記事のポイント:
✅ 同じワークスペース内なら標準転送機能で簡単
✅ 外部組織とリアルタイム連携なら Slack Connect
✅ ワークスペース統合ならエクスポート/インポート
✅ 自動化したいならAPI・GAS・Zapier
✅ 無料プランでは選択肢が限られる
状況別おすすめの方法:
| 状況 | おすすめの方法 | 難易度 |
|---|---|---|
| 同じワークスペース内 | 標準転送機能 | ★☆☆☆☆ |
| 外部パートナーと常時連携 | Slack Connect | ★★☆☆☆ |
| ワークスペース統合 | エクスポート/インポート | ★★★☆☆ |
| リアルタイム自動転送 | API/GAS開発 | ★★★★☆ |
| ノーコード自動化 | Zapier | ★★☆☆☆ |
選び方のポイント:
- 無料プランか有料プランか
- 一度きりの移行か、継続的な連携か
- 技術的な知識があるか
- 管理者権限があるか
適切な方法を選んで、Slackをもっと便利に使いこなしましょう!


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