Slackで大切なメッセージや会話の履歴を保存しておきたいと思ったことはありませんか?
プロジェクトの記録を残したい、法的な理由でログが必要、あるいは無料プランの90日間制限に悩んでいる…理由はさまざまですが、Slackのログをエクスポート(書き出し)することで、これらの課題を解決できます。
この記事では、Slackのログエクスポート機能の使い方から、プランごとの違い、エクスポートしたデータの見方まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説していきます。
Slackのログエクスポートとは?

ログエクスポートとは、Slackのワークスペース内に保存されているメッセージやファイルのリンク、ユーザー情報などを、外部にダウンロードして保存する機能のことです。
エクスポートできる主なデータ
- チャンネルのメッセージ履歴
- ダイレクトメッセージ(DM)の内容
- ファイルへのリンク情報
- ユーザー情報
- チャンネル情報
エクスポートしたデータはZIP形式のファイルとしてダウンロードされ、中身はJSON形式(プログラムが読みやすいデータ形式)またはTXT形式(テキストファイル)で保存されています。
なぜログをエクスポートする必要があるのか?
Slackのログをエクスポートする理由は、人それぞれですが、代表的なものを見ていきましょう。
フリープランの90日間制限対策
Slackの無料プランでは、過去90日間のメッセージしか閲覧できません。それ以前のメッセージは見えなくなってしまうため、定期的にログをエクスポートしてバックアップを取る必要があります。
法的・コンプライアンス上の理由
企業によっては、法律や社内規定で、業務上のコミュニケーション記録を一定期間保存することが義務付けられている場合があります。
例えば、金融機関や医療機関では、厳格なデータ保管ルールがあるんです。
プロジェクトの記録保存
重要なプロジェクトの議論や決定事項を記録として残しておくことで、後から振り返ったり、新しいメンバーに共有したりできます。
他のツールへの移行
SlackからMicrosoft TeamsやDiscordなど、別のコミュニケーションツールに移行する際、過去の会話履歴を持ち出すためにエクスポートが必要になります。
紛争解決のための証拠
もし職場でトラブルが発生したとき、Slackでのやり取りが重要な証拠になることがあります。そのため、定期的にログを保存しておくことが推奨されます。
プランごとのエクスポート機能の違い
Slackのログエクスポート機能は、契約しているプランによって大きく異なります。
フリープラン
エクスポート可能なデータ
- パブリックチャンネル(誰でも参加できるチャンネル)のメッセージとファイルリンクのみ
- 過去90日間のデータのみ
制限事項
- プライベートチャンネルやDMはエクスポートできない
- ワークスペースのオーナーまたは管理者のみが実行可能
プロプラン
エクスポート可能なデータ
- パブリックチャンネルのメッセージとファイルリンク
- 全期間のデータ(データ保持ポリシーの設定による)
制限事項
- プライベートチャンネルやDMのエクスポートには、Slackへの申請が必要
- 申請には法的根拠や全メンバーの同意などが求められる
ビジネスプラスプラン
エクスポート可能なデータ
- パブリックチャンネル
- プライベートチャンネル(申請が承認された場合)
- ダイレクトメッセージ(申請が承認された場合)
- チャンネル監査レポート(CSVファイル)
追加機能
- エクスポートのスケジュール設定(定期的な自動エクスポート)
Enterprise Gridプラン
エクスポート可能なデータ
- すべてのチャンネルと会話
- カスタムデータエクスポート(会話の種類、メンバー、特定のワークスペースで選択可能)
- 単一ユーザーの会話(JSON形式またはTXT形式)
高度な機能
- Discovery API(サードパーティアプリを使った高度なエクスポート)
- データ損失防止(DLP)ソリューションとの連携
- eDiscovery(電子証拠開示)機能
Slackログエクスポートの手順(標準的な方法)
ここでは、Slack公式のエクスポート機能を使った基本的な手順を解説します。
パブリックチャンネルのエクスポート(全プラン対応)
手順1:ワークスペースの設定を開く
- デスクトップアプリまたはブラウザでSlackを開く
- 左上のワークスペース名をクリック
- 「設定と管理」を選択
- 「ワークスペースの設定」をクリック(ブラウザが開きます)
手順2:エクスポート画面に移動
- 設定ページで「データのインポート/エクスポート」をクリック
- 「エクスポート」タブを選択
手順3:エクスポート期間を選択
「日付範囲をエクスポートする」の下にあるドロップダウンメニューから、エクスポートしたい期間を選択します。
- すべての履歴
- 過去30日間
- 過去90日間
- カスタム範囲
手順4:エクスポートを開始
「エクスポート開始」ボタンをクリックします。
手順5:完了通知を待つ
エクスポートの準備が完了すると、次の2つの方法で通知が届きます。
- 登録メールアドレスに通知メールが届く
- Slack内でSlackbotから通知が来る
エクスポートの処理時間は、データ量によって数分から数時間かかることがあります。
手順6:ファイルをダウンロード
- 通知メールまたはSlackbotのメッセージにある「ワークスペースのエクスポートページにアクセスする」をクリック
- 「ダウンロードを開始する」ボタンをクリック
- ZIP形式のファイルがダウンロードされます
ビジネスプラス/Enterpriseプランでの追加手順
すべてのチャンネルと会話のエクスポート申請
- 上記の手順2まで進む
- エクスポートタイプを選択
- エクスポートするデータの種類を選択
- メッセージおよびファイルデータ
- チャンネル監査レポート
- 必要に応じて、法的根拠や同意書を提出
エクスポートのスケジュール設定
定期的に自動でエクスポートを実行することもできます。
- データのインポート/エクスポート画面で「エクスポートをスケジュールする」を選択
- 頻度を指定(毎週、毎月など)
- 設定を保存
設定した頻度で、自動的にエクスポートが実行され、完了通知が届きます。
エクスポートされるデータの構造と読み方
エクスポートしたZIPファイルを解凍すると、いくつかのフォルダとJSONファイルが含まれています。
フォルダ構成
各チャンネルのフォルダ
チャンネルごとに個別のフォルダが作成されます。フォルダ名はチャンネル名と同じです。
例:general、random、プロジェクトAなど
各フォルダの中には、日付ごとに分けられたJSONファイルが保存されています。
例:2024-01-15.json、2024-01-16.json
参照用JSONファイル
channels.json:パブリックチャンネルの一覧と詳細情報groups.json:プライベートチャンネルの一覧(該当する場合)dms.json:ダイレクトメッセージの一覧(該当する場合)users.json:ユーザー情報の一覧integration_logs.json:連携アプリのログ
JSONファイルの中身
JSONファイルは、プログラムが読み取りやすいデータ形式ですが、人間にとっては少し読みづらいです。
メッセージデータの例
{
"type": "message",
"user": "U0123ABCD",
"text": "プロジェクトの進捗を共有します",
"ts": "1705320000.123456"
}
type:データの種類(messageはメッセージ)user:投稿したユーザーのIDtext:メッセージの本文ts:タイムスタンプ(投稿日時)
ユーザー名を知るには、users.jsonでユーザーIDを照合する必要があります。
TXT形式でエクスポートした場合
Enterprise Gridプランで単一ユーザーのデータをTXT形式でエクスポートした場合、より読みやすい形式になります。
フォルダ構成
channels:参加しているチャンネルのメッセージdms:1対1のダイレクトメッセージgroups:グループダイレクトメッセージ
各フォルダには、会話ごとのTXTファイルが含まれ、メッセージが時系列で記載されています。
エクスポートデータを見やすく表示する方法
JSON形式のデータは、そのままでは読みにくいため、専用のビューワーツールを使うと便利です。
Slack Export Viewer
最も人気のあるオープンソースのビューワーツールです。
特徴
- エクスポートしたZIPファイルをそのまま読み込める
- Slackとほぼ同じ見た目で表示される
- チャンネルやユーザーごとに検索できる
- ローカル環境で動作するため、データが外部に送信されない
使い方
- Python(プログラミング言語)の実行環境を用意
pip install slack-export-viewerでインストール- コマンドラインで
slack-export-viewer -z [ZIPファイルのパス]を実行 - ブラウザが開き、見やすい形式で表示される
Slackdump2Html
エクスポートデータを静的なHTMLファイルに変換するツールです。
特徴
- HTMLファイルとして保存できるため、長期保存に適している
- 画像も含めて表示できる
- ブラウザだけで閲覧可能
SlackLogViewer
C++で書かれた高速なビューワーです。
特徴
- 動作が非常に速い
- 大量のデータでもスムーズに表示
- Windows、Mac、Linuxで動作
これらのツールを使えば、エクスポートしたデータを効率的に閲覧・検索できます。
エクスポートの制限事項と注意点
Slackのログエクスポートには、いくつかの制限があります。事前に理解しておきましょう。
ファイル本体は含まれない
エクスポートに含まれるのは、ファイルへの「リンク情報」だけです。ファイル本体はエクスポートされません。
ファイルをダウンロードするには、リンクをクリックしてSlackから個別にダウンロードする必要があります。
例外
- Enterprise GridプランでTXT形式エクスポートした場合、ファイルも含まれる
- Discovery APIを使った場合、ファイルのダウンロードリンクが含まれる
データ保持ポリシーの影響
ワークスペースで設定されているデータ保持ポリシー(メッセージを一定期間後に自動削除する設定)によって、エクスポートできるデータが制限されます。
例えば、「30日後にメッセージを削除」というポリシーが設定されていると、それ以前のデータはエクスポートされません。
削除されたメッセージの扱い
通常、削除されたメッセージはエクスポートに含まれません。
ただし、有料プランで「変更ログを保存する」設定を有効にしている場合、編集履歴や削除されたメッセージも含めてエクスポートできます。
Slack Connectチャンネルの制限
Slack Connect(他の組織とのチャンネル共有機能)を使っている場合、自分の組織のメンバーが共有したファイルのリンクのみがエクスポートに含まれます。
プライバシーと法的要件
プライベートチャンネルやDMをエクスポートする場合、以下のいずれかが必要です。
- 政府機関や規制当局からの正式な要求
- すべてのメンバーからの同意
- 適用される法律に基づく正当な理由
これらなしでは、プライバシー保護の観点からエクスポート申請が却下されます。
サードパーティツールを使ったエクスポート
管理者権限がない一般ユーザーでも、サードパーティツールを使ってログをエクスポートできる場合があります。
Slackdump
オープンソースの人気ツールで、管理者権限なしでもデータをエクスポートできます。
特徴
- ブラウザのトークン(認証情報)を使って認証
- パブリックチャンネル、参加しているプライベートチャンネル、DMをエクスポート可能
- 画像やファイルもダウンロードできる
使い方の概要
- GitHubから実行ファイルをダウンロード
- コマンドラインで実行
- ブラウザでSlackにログインして認証
- エクスポートしたいチャンネルやDMを選択
注意点
- 会社のプライバシーポリシーに違反する可能性がある
- 使用前に、必ず社内の規定を確認すること
- セキュリティリスクを理解した上で使用すること
商用バックアップツール
企業向けに、自動バックアップを提供する有料サービスもあります。
代表的なツール
- Backupery for Slack:定期的な自動バックアップ
- Pro Backup:削除されたメッセージの復元機能
- SysCloud:SaaSデータの包括的なバックアップ
これらのツールは、管理者が設定することで、チーム全体のデータを自動的にバックアップできます。
エクスポートデータの適切な管理方法
エクスポートしたデータには機密情報が含まれるため、適切に管理する必要があります。
セキュアな保存
推奨される保存方法
- パスワードで保護されたZIPファイルとして保存
- 暗号化されたクラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)に保管
- アクセス権限を制限し、必要な人だけが閲覧できるようにする
定期的なバックアップ
無料プランを使っている場合、90日ごとにエクスポートすることで、すべてのメッセージ履歴を保持できます。
推奨スケジュール
- 無料プラン:毎月1回
- 有料プラン:四半期ごと、または必要に応じて
データ保持期間の設定
法的要件や社内規定に基づいて、エクスポートデータを保持する期間を決めておきましょう。
不要になったデータは、適切に削除することも重要です。
プライバシーとGDPR対応
GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの法律に従う必要がある場合、以下の点に注意してください。
- メンバーにデータエクスポートについて通知する
- 個人データの取り扱いについて明確なポリシーを設ける
- データ主体からの削除要求に対応できるようにする
よくある質問(FAQ)
エクスポートにどのくらい時間がかかりますか?
データ量によって異なりますが、小規模なワークスペースなら数分、大規模な組織では数時間かかることもあります。
一般メンバーでもログをエクスポートできますか?
公式のエクスポート機能は、ワークスペースのオーナーまたは管理者のみが使用できます。
ただし、サードパーティツール(Slackdumpなど)を使えば、一般メンバーでも自分が参加しているチャンネルのログを取得できる場合があります。
フリープランで90日以前のデータをエクスポートできますか?
いいえ、フリープランでは過去90日間のデータしかエクスポートできません。
ただし、定期的(90日ごと)にエクスポートすることで、すべての履歴を手元に保存しておくことは可能です。
エクスポートしたデータを別のワークスペースにインポートできますか?
はい、Slackには「インポート機能」があり、エクスポートしたデータを別のワークスペースに取り込むことができます。
これは、ワークスペースを統合する際などに便利です。
削除されたメッセージもエクスポートされますか?
デフォルト設定では、削除されたメッセージはエクスポートされません。
ただし、有料プランで「変更ログを保存する」設定を有効にしている場合、削除されたメッセージや編集履歴も含めてエクスポートできます。
エクスポートファイルのサイズはどれくらいになりますか?
これもデータ量によりますが、1年分のアクティブなワークスペースで数百MB〜数GBになることがあります。
ファイル本体は含まれないため、メッセージだけなら比較的小さいサイズです。
JSONファイルをExcelで開けますか?
直接開くことは難しいですが、ExcelのPower Query機能を使えば、JSONファイルをインポートして表形式に変換できます。
ただし、ビューワーツールを使う方が簡単です。
エクスポートをキャンセルできますか?
一度エクスポートを開始すると、途中でキャンセルすることはできません。
完了を待つしかありませんが、完了後にダウンロードしなければ、データは自動的に削除されます。
まとめ
Slackのログエクスポートについて、基本から応用まで詳しく解説してきました。
重要なポイント
- エクスポート機能は、ワークスペースのオーナーまたは管理者のみが使用可能
- フリープランでは、パブリックチャンネルの過去90日分のみエクスポート可能
- 有料プランでは、すべてのデータをエクスポートできる(申請が必要な場合もある)
- エクスポートされるのはファイルへのリンク情報で、ファイル本体は含まれない
- エクスポートデータはZIP形式で、中身はJSON形式またはTXT形式
- ビューワーツールを使うと、データを見やすく表示できる
- サードパーティツールを使えば、管理者権限がなくてもエクスポート可能
- エクスポートデータには機密情報が含まれるため、適切に管理する必要がある
定期的にログをエクスポートしてバックアップを取ることで、大切な会話履歴を失うリスクを減らせます。
特にフリープランを使っている場合は、90日ごとのエクスポートを習慣化するのがおすすめです。法的要件やコンプライアンスのためにログが必要な場合は、有料プランへのアップグレードも検討しましょう。
適切なエクスポート方法を選んで、Slackの貴重なデータをしっかり守っていきましょう!


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