Slackで重要なやり取りをバックアップしたい、過去のメッセージを保存しておきたい、そんなときはありませんか?
プロジェクトの記録保存、監査対応、他ツールへの移行など、Slackのメッセージをエクスポートする必要がある場面は意外と多いものです。しかし、プランによって使える機能が大きく異なるため、混乱することも。
この記事では、Slackのやり取りをエクスポートする方法を、プラン別に詳しく解説します。無料プランから有料プランまで、それぞれのエクスポート方法と制限を理解して、必要なデータを確実に取得しましょう。
エクスポートとは

データのバックアップ機能
エクスポートとは、Slackに保存されているメッセージやファイルの情報を、ダウンロード可能な形式で取得することです。
取得したデータは、ZIPファイル形式でダウンロードでき、中にはJSON形式のテキストファイルが含まれています。
エクスポートが必要になる場面
以下のような状況で、エクスポートが必要になります。
業務上の理由
- プロジェクト完了後の記録保存
- 監査や法的対応のための証拠保全
- 他のツールへのデータ移行
- 重要な会話のバックアップ
プランの変更
- フリープランから有料プランへの移行
- ワークスペースの統合・分割
- サービスの解約前のデータ保存
プラン別エクスポート機能の比較
一覧表
プランによって、エクスポートできる範囲が大きく異なります。
| プラン | パブリックチャンネル | プライベートチャンネル | DM | ファイル |
|---|---|---|---|---|
| フリー | ○(全期間) | ×(申請が必要) | ×(申請が必要) | △(リンクのみ・90日間) |
| プロ | ○(全期間) | ×(申請が必要) | ×(申請が必要) | △(リンクのみ・全期間) |
| ビジネスプラス | ○ | ○(申請が必要) | ○(申請が必要) | △(リンクのみ・全期間) |
| Enterprise Grid | ○ | ○ | ○ | △(リンクのみ・全期間) |
重要な注意点
- ファイル本体はエクスポートされず、リンクのみが含まれる
- フリープランではファイルリンクも90日間のみ
- プライベートチャンネルとDMのエクスポートには特別な申請が必要(ビジネスプラス以下)
フリープランの制限
フリープランでは、以下の制限があります。
- エクスポート可能:パブリックチャンネルのメッセージのみ
- 期間:メッセージは全期間、ファイルリンクは90日間のみ
- 実行権限:ワークスペースオーナーと管理者のみ
有料プランの利点
プロプラン以上では、データ保持期間が大幅に拡張されます。
- ファイルリンク:全期間保存
- データ保持期間:無期限(設定変更可能)
- スケジュールエクスポート:ビジネスプラス以上で利用可能
標準エクスポートの手順(パブリックチャンネル)
前提条件
標準エクスポートを実行できるのは、ワークスペースオーナーまたは管理者のみです。
一般メンバーの場合は、管理者に依頼する必要があります。
フリー・プロ・ビジネスプラスプランの場合
デスクトップアプリまたはブラウザで実行します。
ステップ1:設定画面を開く
- 画面左上のワークスペース名をクリック
- 「設定と管理」を選択
- 「ワークスペースの設定」をクリック
- ブラウザで新しいタブが開く
ステップ2:エクスポートページへ移動
- 画面右上の「データのインポート/エクスポート」をクリック
- 「エクスポート」タブを選択
ステップ3:エクスポート範囲を指定
- 「日付範囲をエクスポートする」のドロップダウンメニューをクリック
- 以下から選択:
- 昨日
- 先週
- 先月
- カスタム範囲(日付を手動で指定)
ステップ4:エクスポートを開始
- 「エクスポート開始」をクリック
- 確認メッセージが表示される
- しばらく待つ(数分〜数時間)
ステップ5:ダウンロード
- 準備完了後、Slackbotから通知が届く
- 通知内のリンク「ワークスペースのエクスポートページにアクセスする」をクリック
- 「ダウンロードを開始する」をクリック
- ZIPファイルがダウンロードされる
Enterprise Gridプランの場合
組織レベルでのエクスポートが可能です。
手順
- サイドバーで組織名をクリック
- 「ツールと設定」→「組織設定」を選択
- 左サイドバーで「セキュリティ」→「エクスポート」を選択
- エクスポートオプションの横にある「エクスポート」をクリック
- 範囲・パラメータ・フォーマットを選択
- エクスポート開始ボタンをクリック
エクスポート期間の選び方
短期間(1週間〜1ヶ月)
- 最近の特定プロジェクトの記録
- ファイルサイズが小さく扱いやすい
- 処理時間が短い
長期間(3ヶ月〜1年)
- 監査対応や法的証拠保全
- ファイルサイズが大きくなる
- 処理に時間がかかる
おすすめ
一度に長すぎる期間を指定すると、ファイルが巨大になって扱いにくくなります。1〜2ヶ月ごとに区切ってエクスポートするのがおすすめです。
エクスポートデータの中身
ファイル構造
ダウンロードしたZIPファイルを展開すると、以下のような構造になっています。
ワークスペース名 Slack export 2025-01-01 - 2025-01-31/
├── channels.json(チャンネル情報)
├── users.json(ユーザー情報)
├── integration_logs.json(統合ログ)
├── チャンネル名/
│ ├── 2025-01-01.json
│ ├── 2025-01-02.json
│ └── ...
├── 別のチャンネル名/
│ └── ...
└── ...
各チャンネルごとにフォルダが作成され、その中に日付ごとのJSONファイルが格納されます。
JSONファイルの形式
メッセージは、JSON形式で保存されています。
メッセージの例
{
"type": "message",
"user": "U1234ABCD",
"text": "プロジェクトの進捗を共有します",
"ts": "1704067200.000100"
}
主なフィールド
type:メッセージの種類user:送信者のユーザーIDtext:メッセージ本文ts:タイムスタンプ(UNIX時間)
ユーザーIDとチャンネルIDの対応
JSONファイル内では、ユーザーやチャンネルがIDで表示されます。
実際の名前を確認するには、users.jsonとchannels.jsonを参照してください。
例:users.json
{
"id": "U1234ABCD",
"name": "tanaka",
"real_name": "田中太郎",
...
}
ファイルリンクについて
エクスポートには、ファイル本体ではなく、リンクのみが含まれます。
実際のファイルをダウンロードするには、リンクを手動で開く必要があります。
プライベートチャンネル・DMのエクスポート

ビジネスプラス・Enterprise Gridプランの場合
ビジネスプラス以上のプランでは、申請によりプライベートチャンネルとDMのエクスポートが可能です。
申請が必要な理由
プライバシーと法律の観点から、以下の条件を満たす場合のみ許可されます。
- 政府機関や規制当局からの正式な要求
- メンバー全員からの同意
- 適用法令に基づく正当な理由
申請方法
ビジネスプラスプランの場合
- ワークスペースの設定ページを開く
- 「データのインポート/エクスポート」を選択
- 「エクスポート」タブをクリック
- 「すべてのチャンネルと会話」セクションで「申請を提出」をクリック
- 申請フォームに必要事項を記入
- Slackによる審査(数日〜数週間)
- 承認されれば、セルフサービスツールへのアクセスが付与される
Enterprise Gridプランの場合
OrGオーナーは、Discovery APIまたはeDiscoveryツールを有効化することで、申請なしで直接エクスポートできます。
フリー・プロプランの場合
フリー・プロプランでも、限定的な状況下で申請できます。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 法的に有効な裁判所命令
- 全メンバーからの書面での同意
- 適用法令に基づく正当な権利
申請が却下される可能性が高いため、本当に必要な場合は有料プランへのアップグレードを検討しましょう。
スケジュールエクスポート(自動定期エクスポート)
ビジネスプラス以上で利用可能
ビジネスプラス以上のプランでは、定期的に自動でエクスポートするスケジュール機能が使えます。
設定方法
ビジネスプラスプランの場合
- ワークスペースの設定ページを開く
- 「データのインポート/エクスポート」を選択
- 「エクスポート」タブをクリック
- 「エクスポートをスケジュールする」を選択
- 頻度を指定(毎日・毎週・毎月)
- 保存
Enterprise Gridプランの場合
組織設定から、より詳細なスケジュール設定が可能です。
メリット
- 手動エクスポートの手間が省ける
- 定期的なバックアップで安心
- 監査対応が容易
エクスポートデータの閲覧方法
そのままでは読みにくい
エクスポートされたJSONファイルは、テキストエディタで開けますが、読みにくいです。
JSONビューアーを使う
オンラインのJSONビューアーで整形すると見やすくなります。
おすすめツール
- JSON Editor Online
- jsonformatter.org
- ブラウザの拡張機能(JSON Viewer)
Slack Export Viewerを使う
専用のビューアーアプリを使えば、Slackの画面に近い形で閲覧できます。
主なツール
- Slack Export Viewer(オープンソース)
- SlackLogViewer(C++製、高速)
- Slackdump2Html(HTML形式に変換)
これらのツールを使えば、チャンネルごと・日付ごとに見やすく表示されます。
スプレッドシートに変換
ExcelやGoogle スプレッドシートで開きたい場合は、JSON to CSV変換ツールを使います。
ただし、構造が複雑なので、一部の情報が失われる可能性があります。
ファイルのダウンロード
エクスポートにはリンクのみ
繰り返しになりますが、エクスポートにはファイルの本体ではなく、ダウンロードリンクのみが含まれます。
手動でダウンロード
JSON内のファイルURLを開いて、一つずつダウンロードする必要があります。
手順
- JSONファイル内の
url_private_downloadを探す - そのURLをブラウザで開く
- ファイルがダウンロードされる
ファイル数が多いと大変です。
スクリプトで一括ダウンロード
プログラミングの知識がある場合、スクリプトで自動化できます。
Pythonの例
import requests
import json
# JSONファイルを読み込む
with open('チャンネル名/2025-01-01.json') as f:
messages = json.load(f)
# ファイルリンクを抽出してダウンロード
for msg in messages:
if 'files' in msg:
for file in msg['files']:
url = file['url_private_download']
# ダウンロード処理
詳しくは、Slack APIのドキュメントを参照してください。
サードパーティツールを使う
「Backupery for Slack」などのサードパーティツールを使えば、ファイル本体も含めてエクスポートできます。
ただし、有料のものが多いです。
データ保持ポリシーとの関係
保持ポリシーとは
Slackでは、メッセージやファイルを自動削除する保持ポリシーを設定できます。
これにより、古いデータが定期的に削除されます。
エクスポートへの影響
保持ポリシーで削除されたデータは、エクスポートにも含まれません。
例
- 保持ポリシー:30日後に削除
- エクスポート期間:過去3ヶ月
この場合、30日より古いメッセージはすでに削除されているため、エクスポートされません。
編集・削除されたメッセージ
デフォルトでは、編集または削除されたメッセージはエクスポートに含まれません。
編集・削除履歴を保持したい場合は、保持ポリシーで明示的に設定する必要があります(有料プランのみ)。
プランごとの保持期間
| プラン | デフォルト保持期間 |
|---|---|
| フリー | 90日間または1年間(選択可) |
| 有料プラン | 無期限(設定変更可能) |
フリープランでは、1年以上前のデータは自動的に削除されます。
よくあるトラブルと解決方法
エクスポートが完了しない
原因
- データ量が多すぎる
- サーバーの一時的な問題
解決方法
- 期間を短く区切ってエクスポート
- 時間をおいて再度実行
- Slackサポートに問い合わせ
ダウンロードリンクが期限切れ
エクスポートファイルのダウンロードリンクは、一定期間後に期限切れになります。
解決方法
- エクスポートページに戻る
- 「ダウンロードを開始する」を再度クリック
- 期限切れの場合は、エクスポートを再実行
特定のチャンネルが含まれていない
原因
- そのチャンネルに該当期間のメッセージがない
- 保持ポリシーで削除済み
- アーカイブされたチャンネル
解決方法
channels.jsonでチャンネルIDを確認- エクスポート期間を調整
- アーカイブを解除してから再エクスポート
JSONファイルが開けない
原因
- ファイルサイズが大きすぎる
- 対応していないアプリで開こうとしている
解決方法
- 専用のJSONエディタを使用
- Slack Export Viewerなどのツールを使用
- 期間を短く区切って再エクスポート
サードパーティのバックアップツール
公式機能の制限を補う
公式エクスポート機能には制限があるため、サードパーティツールを使う選択肢もあります。
主なツール
Backupery for Slack
- ファイル本体も含めてバックアップ
- 選択的エクスポート(特定チャンネルのみ)
- HTML形式で読みやすく変換
- 有料(買い切り型)
Slackdump
- オープンソースの無料ツール
- 管理者権限不要で個人のデータをエクスポート
- GitHubで公開
- 技術的な知識が必要
その他の企業向けツール
- Mimecast
- Onna
- SysCloud
これらは大企業向けの高機能ツールで、価格も高額です。
注意点
サードパーティツールを使う場合、以下に注意してください。
- セキュリティとプライバシー
- 社内ポリシーとの整合性
- コストと機能のバランス
- ツールの信頼性
法的・コンプライアンス上の注意
プライバシー法への配慮
メンバーのプライベートな会話をエクスポートする場合、プライバシー法に抵触する可能性があります。
社内通知の義務
多くの国・地域では、従業員データをエクスポートする際に、事前通知が必要です。
日本でも、個人情報保護法の観点から適切な対応が求められます。
証拠としての利用
エクスポートしたデータは、法廷で証拠として使用できます。
ただし、改ざんされていないことを証明する必要があります。
推奨事項
- 社内規定を整備
- メンバーへの事前通知
- エクスポート理由の文書化
- データの適切な管理・保管
よくある質問と回答
Q. 一般メンバーでもエクスポートできる?
A. できません。
エクスポートは、ワークスペースオーナーまたは管理者のみが実行できます。
一般メンバーの場合は、管理者に依頼してください。
Q. フリープランでDMをエクスポートできる?
A. 基本的にはできません。
特別な法的理由があり、Slackに申請して承認された場合のみ可能です。
通常の用途では、有料プランへのアップグレードが必要です。
Q. エクスポートしたことはメンバーに通知される?
A. 通知されません。
Slackは、エクスポートが実行されたことをメンバーに自動通知しません。
ただし、法律や社内規定により、事前または事後に通知すべき場合があります。
Q. 削除したメッセージもエクスポートされる?
A. 設定によります。
デフォルトでは、削除されたメッセージはエクスポートされません。
削除済みメッセージを保持する設定を有効にしている場合のみ、エクスポートに含まれます(有料プランの機能)。
Q. 編集前のメッセージも見られる?
A. 設定によります。
編集履歴を保持する設定を有効にしている場合のみ、編集前のバージョンもエクスポートされます(有料プランの機能)。
Q. ファイル本体をエクスポートする方法は?
A. 公式機能ではリンクのみです。
ファイル本体を取得するには:
- リンクを手動またはスクリプトで開いてダウンロード
- サードパーティのバックアップツールを使用
のどちらかになります。
Q. エクスポートの処理時間はどれくらい?
A. データ量によります。
- 小規模(数百メッセージ):数分
- 中規模(数万メッセージ):30分〜1時間
- 大規模(数十万メッセージ):数時間〜半日
完了するとSlackbotから通知が届きます。
Q. 他社のツールにインポートできる?
A. 多くのツールが対応しています。
Slack Export形式は標準的なため、以下のツールへのインポートが可能です。
- Mattermost
- Discord(Slackord2などの変換ツール経由)
- Microsoft Teams(一部制限あり)
Q. エクスポートファイルのサイズはどれくらい?
A. 期間とメッセージ量によります。
目安:
- 1ヶ月・小規模:数MB
- 1年・中規模:数十MB〜数百MB
- 数年・大規模:数GB
ZIPで圧縮されているので、実際のテキストデータより小さくなります。
まとめ
Slackのやり取りをエクスポートする方法について、重要なポイントをまとめます。
プラン別の主な違い
- フリー:パブリックチャンネルのみ、ファイルリンクは90日間
- プロ:パブリックチャンネル、ファイルリンクは全期間
- ビジネスプラス:申請によりすべてのデータ、スケジュールエクスポート可
- Enterprise Grid:すべてのデータ、高度なエクスポート機能
標準エクスポートの手順
- ワークスペース名→設定と管理→ワークスペースの設定
- データのインポート/エクスポート→エクスポートタブ
- 日付範囲を選択→エクスポート開始
- Slackbotから通知→ダウンロード
エクスポートデータの特徴
- 形式:JSON(テキストベース)
- ファイル:リンクのみ(本体は別途ダウンロード必要)
- 構造:チャンネルごと・日付ごとに分割
- 閲覧:専用ビューアーの使用を推奨
重要な注意点
- エクスポートはオーナー・管理者のみ実行可能
- プライベートチャンネル・DMは申請が必要(ビジネスプラス以下)
- 保持ポリシーで削除されたデータはエクスポート不可
- ファイル本体は公式機能ではエクスポートされない
- プライバシー法・社内規定への配慮が必要
推奨される使い方
- 定期的なバックアップ(ビジネスプラス以上はスケジュール設定)
- プロジェクト完了時の記録保存
- 監査・法的対応の準備
- 適切な期間(1〜2ヶ月)に区切ってエクスポート
Slackのエクスポート機能は、プランによって大きく制限されます。自社の用途に合わせて、適切なプランを選択しましょう。
重要なデータは定期的にバックアップを取り、万が一に備えることが大切です。この記事を参考に、必要なデータを確実に保存してください。

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