コマンドプロンプトやターミナルで作業していて、「あれ?さっきの実行結果が見えなくなった」と困ったことはありませんか?
スクロールバッファは、画面から消えてしまった過去の表示内容を記憶しておく機能です。この設定を上手に使えば、長いコマンドの実行結果も後から確認できます。
この記事では、スクロールバッファの基本的な仕組みから設定変更の方法まで、初心者の方にも分かりやすく説明していきます。
スクロールバッファって何?

スクロールバッファとは、コマンドラインの画面で過去に表示された内容を一時的に保存しておくメモリ領域のことです。
具体的な働き
コマンドプロンプトやターミナルの画面には、一度に表示できる行数に限りがあります。
たとえばウィンドウの高さが30行分だとしましょう。
プログラムを実行して100行の結果が出力されると、最初の70行は画面の上にスクロールして見えなくなってしまいます。でもスクロールバッファがあれば、マウスのホイールやスクロールバーを使って、見えなくなった部分をさかのぼって確認できるんです。
身近な例で言うと
スマートフォンのチャット画面を想像してください。新しいメッセージが来ると古いメッセージは上に流れていきますが、スクロールすれば過去の会話を見られますよね。スクロールバッファも同じような役割を果たします。
どこで使われているの?
スクロールバッファは、文字ベースの画面を持つさまざまなツールで使われています。
Windowsのコマンドプロンプト
Windowsに標準で入っているコマンドプロンプト(cmd.exe)には、画面バッファーサイズという設定があります。
デフォルトでは、Windows 7では300行、Windows 10以降では9001行に設定されています。バージョンによって初期値が異なるんですね。
PowerShell
PowerShellも同様にスクロールバッファを持っています。設定方法はコマンドプロンプトとほぼ同じです。
MacやLinuxのターミナル
MacのターミナルやLinuxの各種ターミナルエミュレーター(iTerm2、GNOME端末など)も、スクロールバッファ機能を備えています。
アプリケーションによってデフォルトの行数は異なりますが、多くの場合は数千行程度に設定されています。
ターミナルマルチプレクサ
screenやtmuxといった、ターミナルを複数に分割できるツールにも独自のスクロールバッファがあります。
screenのデフォルトは100行と少なめなので、実用的には設定変更が必要になることが多いです。
なぜバッファサイズを変更する必要があるの?
デフォルトの設定では足りないケースがいくつかあります。
プログラムのエラーログ確認
テストやプログラムの実行で大量のログが出力される場合、重要なエラーメッセージが画面から消えてしまうことがあります。
たとえばPythonのpytestやJavaのJUnitでテストを実行すると、数百行から数千行の結果が表示されることも珍しくありません。
システム情報の確認
ハードウェア情報やネットワーク設定などを表示するコマンドの中には、非常に長い結果を返すものがあります。
全ての情報をきちんと確認するには、十分なバッファサイズが必要です。
ビルドやコンパイルの過程
ソフトウェアのビルド処理では、数千行のメッセージが出力されることがあります。エラーが発生した時に、どこで問題が起きたのか確認するためには、最初から最後までスクロールできる必要があります。
Windowsでの設定変更方法
Windowsのコマンドプロンプトでスクロールバッファを変更する方法を説明します。
プロパティから変更する(恒久的な変更)
手順1: プロパティを開く
コマンドプロンプトのウィンドウ左上にあるアイコンを右クリックして、「プロパティ」を選択します。
手順2: レイアウトタブを開く
表示されたプロパティ画面で「レイアウト」タブをクリックします。
手順3: 画面バッファーサイズを変更
「画面バッファーのサイズ」という項目の「高さ」の数値を変更します。
推奨値は用途によって異なりますが、一般的には5000〜9999行に設定すると良いでしょう。GUI(プロパティ画面)から設定できる最大値は9999行です。
手順4: 設定を保存
「OK」をクリックします。「このウィンドウのプロパティを変更」と「ショートカットを変更」のどちらかを選択する画面が出ますので、今後も同じ設定を使いたい場合は「ショートカットを変更」を選びましょう。
modeコマンドで変更する(一時的な変更)
実は、プロパティ画面で設定できる9999行よりも多くのバッファを確保する方法があります。
コマンドプロンプト上で以下のように入力してください:
mode con: lines=32766
この方法を使うと、最大で約32000行まで設定できます。ただし、この設定は現在開いているコマンドプロンプトにのみ有効で、新しくコマンドプロンプトを開くと元に戻ります。
現在の設定を確認したい場合は、次のコマンドを実行します:
mode con:
Macでの設定変更方法

Macのターミナルでスクロールバッファを変更する手順です。
手順1: 環境設定を開く
ターミナルのメニューバーから「ターミナル」→「設定」を選択します。
手順2: プロファイルを選択
設定画面の上部にある「プロファイル」タブをクリックします。左側のリストから、設定を変更したいプロファイル(通常は「Basic」や使用中のもの)を選びます。
手順3: スクロールバッファの設定
右側の設定エリアを下にスクロールして「スクロールバッファ」というセクションを探します。
手順4: 行数を変更
「行数を制限」にチェックを入れて、希望する行数を入力します。10000〜50000行程度が一般的な設定値です。
設定はすぐに反映されますが、変更前に開いていたターミナルウィンドウには適用されないので注意してください。
iTerm2の場合
MacでiTerm2を使っている場合は、以下の手順で設定します。
手順1: メニューバーから「iTerm2」→「Preferences」を選択
手順2: 「Profiles」タブを選択
手順3: 左側のプロファイルリストから設定したいプロファイルを選択
手順4: 右側のサブタブで「Terminal」を選択
手順5: 「Scrollback Buffer」セクションの「Lines of scrollback」の数値を変更
iTerm2では、デフォルトで1000〜2000行程度に設定されていることが多いです。
Linux(screen)での設定変更方法
GNU screenを使っている場合の設定方法を紹介します。
現在のセッションで一時的に変更
手順1: Ctrl + A を押した後、コロン(:)を押します
手順2: コマンド入力モードになるので、次のように入力します:
scrollback 10000
10000の部分は希望する行数に変更してください。この設定は現在のウィンドウにのみ適用されます。
恒久的に変更(.screenrcファイル)
全ての新しいscreenセッションで設定を有効にするには、ホームディレクトリの.screenrcファイルに設定を追加します。
ターミナルで以下のコマンドを実行してください:
echo "defscrollback 10000" >> ~/.screenrc
この設定により、今後作成される全ての新しいscreenウィンドウのスクロールバッファが10000行になります。
既に開いているセッションには影響しないため、新しくscreenを起動する必要があります。
現在の設定を確認する方法
Ctrl + A を押した後、i(アイ)キーを押すと、画面の左下に簡単な情報が表示されます。その中の最初の+記号の右側に表示されている数値が、現在のスクロールバッファの行数です。
スクロールバッファのクリア方法
長時間作業していると、スクロールバッファに大量のデータが溜まってメモリを圧迫することがあります。
Windows
コマンドプロンプトでclsコマンドを実行すると画面がクリアされますが、スクロールバッファはクリアされません。
スクロールバッファを完全にクリアするには、コマンドプロンプトを一度閉じて開き直すのが確実です。
Mac
標準ターミナルの場合:
- Command + K: 画面とスクロールバッファの両方をクリア
- Option + Command + K: スクロールバッファのみをクリア
- Control + L または
clearコマンド: 画面のみクリア(バッファは残る)
iTerm2の場合も同様のショートカットが使えます。
Linux(screen)
Ctrl + A を押した後、C(大文字)を押すとスクロールバッファがクリアされます。
バッファサイズと使用メモリの関係
スクロールバッファのサイズを大きくすると、その分メモリも多く使用します。
どれくらいメモリを使うの?
正確な使用量は文字コードや表示内容によって異なりますが、目安として:
- 10000行: 数MB程度
- 50000行: 数十MB程度
- 100000行以上: 100MBを超えることも
現代のパソコンであれば、50000行程度なら問題なく設定できます。ただし、複数のターミナルを同時に開く場合は、合計のメモリ使用量に注意しましょう。
適切なサイズの決め方
用途に応じて適切なサイズは異なります:
一般的な作業: 3000〜5000行で十分
プログラム開発: 10000〜20000行を推奨
大規模なテスト実行: 30000〜50000行
ログの詳細な分析: 50000行以上
あまりに大きな値を設定すると、ターミナルの動作が遅くなることがあります。実際の作業内容に合わせて調整しましょう。
ファイルへの出力という選択肢
スクロールバッファを大きくする代わりに、コマンドの出力をファイルに保存する方法もあります。
リダイレクトを使う
Windows、Mac、Linuxのどれでも使える方法です:
コマンド > 出力.txt
こうすると、コマンドの結果が出力.txtというファイルに保存されます。画面には何も表示されませんが、後からファイルを開いて確認できます。
画面にも表示しつつファイルにも保存したい場合は、teeコマンド(MacやLinux)やPowerShellのTee-Objectを使います。
いつファイル出力を選ぶべきか
- 数万行を超える非常に長い出力の場合
- 後で詳細に分析したい場合
- 複数回の実行結果を比較したい場合
- 他の人と結果を共有したい場合
こういった状況では、スクロールバッファに頼るよりもファイル出力の方が確実です。
よくある問題と解決方法
スクロールバッファに関してよくある問題とその対処法を紹介します。
スクロールできない
症状: マウスホイールやスクロールバーで過去の表示をさかのぼれない
原因: 画面バッファサイズがウィンドウサイズと同じ、または小さい
解決方法: 上記の方法でバッファサイズを大きくしてください。ウィンドウの高さが30行なら、バッファは最低でもその倍以上に設定する必要があります。
設定したのに反映されない
症状: 設定を変更したはずなのに、スクロールバッファが増えていない
原因: 設定変更前に実行した内容には適用されない
解決方法: 設定変更後に新しくコマンドを実行してください。過去の表示内容を遡りたい場合は、コマンドをもう一度実行する必要があります。
ターミナルの動作が遅い
症状: バッファサイズを大きくしたら、ターミナルの反応が悪くなった
原因: メモリ不足、または極端に大きなバッファサイズ
解決方法: バッファサイズを少し小さくしてみてください。また、不要なターミナルウィンドウは閉じましょう。メモリに余裕がない古いパソコンでは、20000行程度に抑えることをおすすめします。
まとめ
スクロールバッファは、コマンドプロンプトやターミナルで過去の表示内容を保存しておく機能です。
デフォルトの設定では数百行から数千行ですが、プログラム開発やテストなど大量の出力を扱う場合は、10000行以上に設定すると便利です。
Windowsではプロパティ画面またはmodeコマンド、Macでは環境設定、screenでは.screenrcファイルで変更できます。
適切なバッファサイズは用途によって異なりますが、一般的には10000〜50000行程度が実用的です。メモリ使用量とのバランスを考えながら、自分の作業スタイルに合った設定を見つけてください。
非常に長い出力の場合は、スクロールバッファに頼るよりもファイルに出力する方法も検討しましょう。

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