AMD Ryzen 7 9800X3Dを搭載したPCが突然起動しなくなる問題が報告されています。
この記事では、9800X3Dが起動しない原因と、具体的な対処法を詳しく解説します。
Ryzen 7 9800X3D起動問題の概要
2024年11月に発売されたRyzen 7 9800X3Dは、優れたゲーミング性能で人気を集めていますが、一部のユーザーから起動しないという報告が相次いでいます。
報告されている問題の規模
Redditを中心とするコミュニティでは、100件以上の起動不良が報告されています。
報告数は全体の出荷台数から見ればごく一部ですが、高価なCPUであるため、ユーザーの不安が広がっています。
主な症状
PCを起動しても、以下のような症状が発生します。
- POSTに到達しない(BIOSが起動しない)
- マザーボードのデバッグLEDが「CPU」と「DRAM」を同時に点灯
- 画面に何も表示されない
- 数時間から数週間の使用後に突然起動しなくなる
- 再起動やシャットダウン後に起動できなくなる
起動しない主な原因
調査の結果、複数の原因が特定されています。
BIOSとメモリの互換性問題
最も多く報告されている原因です。
問題の詳細
古いBIOSバージョンが、Ryzen 7 9800X3Dと特定のメモリの組み合わせに対応していません。
特にBIOSバージョン3.15、3.16、3.18で問題が多く報告されています。
なぜ起動しないのか
メモリ相性問題により、SoC電圧が異常に低い値に設定され、正常に起動できなくなります。
AMDとASRockの共同調査でも、この問題が確認されています。
CPUソケット内の異物
意外に多いのが、この原因です。
問題の詳細
CPUソケット内にホコリや細かいゴミが入り込むと、ピンとCPUの接触不良が発生します。
ASRockの調査では、焼損したと報告されたマザーボードを清掃したところ、正常に起動したケースがあります。
特定のBIOSバージョンの不具合
一部のBIOSバージョンに起動を妨げる不具合があります。
報告されているバージョン
BIOS 3.15、3.16、3.18で特に多く報告されています。
これらのバージョンでは、EXPO(AMD版XMP)設定時に問題が発生しやすくなります。
マザーボードとの相性
特定のマザーボードで多く発生しています。
ASRock製マザーボードでの発生が多い
報告の約80%がASRock製マザーボード、特にX870、B850、B650シリーズで発生しています。
ただし、ASUS、MSI、Gigabyte製でも少数ながら報告があります。
CPU個体の不良
一部のCPU個体に製造上の問題がある可能性も指摘されています。
バッチ番号
CF 2442PGY、CF 2443PGYのバッチで複数の報告がありますが、これらのバッチでも正常に動作している個体が多数存在します。
必ずしもバッチ全体の問題とは断定できません。
すぐに試せる対処法
起動しない場合、以下の対処法を順番に試してください。
1. BIOSフラッシュバック機能を使う
最も効果的な対処法です。
必要なもの
- USBメモリ(FAT32形式でフォーマット済み)
- 最新のBIOSファイル(マザーボードメーカーの公式サイトからダウンロード)
- マザーボードにBIOSフラッシュバック機能が搭載されていること
手順(ASRock製マザーボードの場合)
- マザーボードメーカーの公式サイトから最新のBIOSファイルをダウンロード
- BIOSファイル名を指定の名前にリネーム(マニュアルで確認)
- USBメモリのルートディレクトリにBIOSファイルをコピー
- PCの電源を切り、電源ケーブルを抜く
- USBメモリをBIOSフラッシュバック専用ポートに挿入
- 電源ケーブルを接続
- BIOSフラッシュバックボタンを3〜5秒間長押し
- LEDが点滅を開始したら、ボタンから手を離す
- 更新が完了するまで待つ(5〜10分程度、LEDが消灯したら完了)
- USBメモリを抜き、通常通り起動を試みる
推奨BIOSバージョン
ASRock製マザーボードの場合、BIOS 3.20以降にアップデートしてください。
このバージョンでメモリ互換性の問題が修正されています。
2. CPUソケットを清掃する
簡単ですが効果的な方法です。
手順
- PCの電源を完全に切り、電源ケーブルを抜く
- CPUクーラーを取り外す
- CPUを慎重に取り外す
- CPUソケット内を懐中電灯で照らし、ゴミやホコリがないか確認
- エアダスターでソケット内を清掃(強く吹きすぎないように注意)
- CPUのピン側も確認し、必要に応じて清掃
- CPUを再度取り付ける(正しい向きを確認)
- CPUクーラーを適切な力で取り付ける(締めすぎに注意)
- 電源を接続して起動を試みる
注意点
CPUソケットのピンは非常に繊細です。
金属製の工具は使用せず、エアダスターや柔らかいブラシのみを使用してください。
3. 放電処理を行う
帯電が原因の場合に効果があります。
手順
- PCの電源を切る
- 電源ケーブルを抜く
- 電源ボタンを15〜30秒間長押しして放電
- 5〜10分間待つ
- 電源ケーブルを接続し直す
- 起動を試みる
バッテリー取り外しが可能な場合
マザーボードのCMOSバッテリーを取り外し、5分間放置してから再度取り付けると、より確実に放電できます。
4. 最小構成で起動を試す
原因を切り分けるための方法です。
最小構成
- CPU
- CPUクーラー
- マザーボード
- メモリ1枚(最も互換性が高いスロットに挿入)
- 電源ユニット
- グラフィックカード(9800X3Dには内蔵GPUがないため必須)
手順
- 上記の最小構成のみでPCを組み立てる
- SSD、HDD、光学ドライブ、拡張カードなどはすべて取り外す
- 起動を試みる
- 起動する場合、1つずつパーツを追加して原因を特定
5. メモリを1枚ずつテストする
メモリ不良や相性問題を確認します。
手順
- すべてのメモリを取り外す
- 1枚目のメモリをスロットA2(CPUに近い方から2番目)に挿入
- 起動を試みる
- 起動しない場合、別のスロット(B2)に移動して試す
- 2枚目のメモリでも同様にテスト
- 特定のメモリまたはスロットで問題が発生するか確認
6. メモリの動作設定を変更する
EXPO設定が原因の場合があります。
手順(BIOSに入れる場合)
- BIOSに入る(起動時にDELキーまたはF2キーを連打)
- EXPO/XMP設定を無効にする
- メモリクロックをJEDEC標準(4800MHzまたは5600MHz)に設定
- 設定を保存して再起動
BIOSに入れない場合
CMOSクリアを実行すると、BIOS設定が初期化されます。
マザーボードのCMOSクリアジャンパーを使用するか、CMOSバッテリーを5分間取り外してください。
7. 古いBIOSバージョンに戻す
新しいBIOSで問題が発生した場合に有効です。
手順
- BIOSフラッシュバック機能を使用
- BIOS 3.10、3.11などの古いバージョンをダウンロード
- フラッシュバック手順でインストール
- 起動を試みる
注意点
古いBIOSバージョンでは、9800X3Dのすべての機能が正しく動作しない可能性があります。
起動を確認したら、安定版の最新BIOSに更新することを推奨します。
8. モニターの省電力モードを無効にする
意外な原因ですが、実際に報告されています。
症状
BIOSやログイン画面が表示されないが、実際には起動している場合があります。
手順
- モニターの電源を入れ直す
- モニターの設定メニューから省電力モードを無効にする
- 別のモニターで動作確認する(可能な場合)
- HDMIとDisplayPortの両方を試す
マザーボード別の注意点
ASRock製マザーボード
対応BIOSバージョン
BIOS 3.20以降への更新が強く推奨されます。
このバージョンでメモリ互換性の問題が修正されています。
公式声明
ASRock Japanは「CPUが壊れているわけではなく、メモリ相性問題で起動しないケース」と説明しています。
特に影響を受けやすいモデル
- X870シリーズ
- X870Eシリーズ
- B850シリーズ
- B650シリーズ
ASUS製マザーボード
報告数は少ないですが、同様の問題が発生する可能性があります。
対処法
- 最新のBIOSにアップデート
- ASUS公式サイトで9800X3D対応状況を確認
- メモリのQVLリスト(対応メモリ一覧)を確認
MSI製マザーボード
こちらも報告数は少数です。
対処法
- 最新のAGESA(AMDが提供するBIOS基盤)を含むBIOSにアップデート
- MSI公式サイトで対応状況を確認
Gigabyte製マザーボード
最も報告が少ないメーカーです。
対処法
基本的な対処法は他のメーカーと同様ですが、Gigabyte独自のBIOS更新方法を確認してください。
メモリ相性問題の詳細
メモリ互換性の確認方法
マザーボードメーカーの公式サイトでQVL(Qualified Vendor List)を確認してください。
確認手順
- マザーボードの型番を確認
- メーカー公式サイトのサポートページにアクセス
- 「Memory QVL」または「対応メモリ一覧」をダウンロード
- 使用中のメモリが対応リストに含まれているか確認
推奨されるメモリ設定
安全な設定
- EXPO/XMPを無効化
- メモリクロックを5600MHz以下に設定
- 電圧を自動(Auto)に設定
高クロックメモリを使用する場合
段階的にクロックを上げていき、安定性を確認しながら設定してください。
DDR5メモリの注意点
DDR5メモリは高速ですが、相性問題が発生しやすい傾向があります。
特に注意が必要な構成
- DDR5-6400MHz以上のメモリ
- 4枚挿し構成
- ノンブランド品のメモリ
それでも起動しない場合
AMDカスタマーサポートに連絡する
公式のサポートに問い合わせましょう。
連絡前に準備する情報
- CPU型番とシリアル番号
- マザーボードの型番とBIOSバージョン
- メモリの型番と容量
- 発生している症状の詳細
- 試した対処法のリスト
RMA(返品・交換)申請
BIOS更新などの対処法で解決しない場合、CPUの交換対応を受けられる可能性があります。
通常、申請から10〜14日程度で交換品が届きます。
購入店に相談する
購入してから間もない場合は、購入店での交換や返金も検討してください。
保証期間
国内正規品の場合、通常3年間のメーカー保証が付いています。
並行輸入品の場合でも、AMDは保証対応を行う場合があります。
マザーボードの交換を検討する
ASRock製マザーボードで解決しない場合、他メーカーのマザーボードに交換することも選択肢です。
推奨メーカー
報告数が少ないGigabyte、MSI、ASUSの製品を検討してください。
ただし、マザーボード交換には相応のコストがかかります。
予防策と今後の対応
新規購入時の注意点
BIOSバージョンの確認
マザーボードを購入する際は、9800X3D対応BIOSがリリースされているか事前に確認してください。
メモリ選び
マザーボードのQVLリストに掲載されているメモリを選ぶと、トラブルを回避しやすくなります。
初期動作確認
PCを組み立てたら、まず最小構成で起動確認を行い、その後パーツを追加していくと問題の切り分けが容易です。
BIOS更新のタイミング
更新が推奨される場合
- 起動しない、または不安定な場合
- メーカーが重大な不具合の修正を告知した場合
- 新機能を使用したい場合
更新を避けるべき場合
安定して動作している場合、無理にBIOSを更新する必要はありません。
ASRock Japanも「不必要なBIOS更新をしないよう」注意喚起しています。
定期的なメンテナンス
推奨される作業
- 3〜6ヶ月ごとにPC内部のホコリを清掃
- CPUクーラーの取り付け状態を確認
- 各種ケーブルの接続を確認
よくある質問
Q: BIOSフラッシュバック機能がないマザーボードではどうすればいいですか?
A: 以下の方法を試してください。
- 別のCPU(対応する古いRyzen)を一時的に借りてBIOSを更新
- PCショップでBIOS更新サービスを利用(有料の場合あり)
- マザーボードメーカーのサポートに問い合わせ
Q: BIOS更新中に失敗したらどうなりますか?
A: BIOSフラッシュバック機能を使用すれば、PCが起動しない状態でも更新できるため、失敗のリスクは低いです。
ただし、更新中に絶対に電源を切らないでください。
Q: 中古で購入した9800X3Dは保証を受けられますか?
A: AMDのメーカー保証は製品に紐付いており、中古品でも保証期間内であれば対応してもらえる可能性があります。
ただし、購入証明を求められる場合があります。
Q: ASRock製マザーボードは避けるべきですか?
A: 最新のBIOSでは問題が修正されているため、必ずしも避ける必要はありません。
ただし、購入後すぐに最新BIOSに更新することを強く推奨します。
Q: メモリのEXPO設定は使えますか?
A: 最新BIOSにアップデート後であれば、多くの場合使用できます。
ただし、安定性に不安がある場合は無効にして使用してください。
Q: CPUが物理的に焼損している場合はどうすればいいですか?
A: すぐに使用を中止し、AMDまたは購入店にRMAを申請してください。
焼損が認められた場合、交換対応を受けられる可能性が高いです。
まとめ
Ryzen 7 9800X3Dの起動問題は、主にBIOSとメモリの互換性、CPUソケットの汚れが原因です。
最も効果的な対処法は以下の通りです。
- BIOSフラッシュバック機能で最新BIOS(3.20以降)に更新
- CPUソケットを清掃
- 放電処理を実行
- メモリ設定を見直す
これらの対処法を試しても解決しない場合は、AMDカスタマーサポートに連絡し、RMA申請を検討してください。
新規に購入する場合は、マザーボードのBIOSバージョンとメモリの互換性を事前に確認することで、トラブルを回避できます。
9800X3Dは優れた性能を持つCPUですので、適切な対処を行えば快適に使用できます。

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