レガシーソフトとは?古いシステムを使い続けるリスクと対処法を解説

プログラミング・IT

「会社で使っているシステムが古すぎて、誰もメンテナンスできない…」

企業のIT部門で働いていると、「レガシーソフト」という言葉を聞くことがありますよね。20年前、30年前に作られたシステムが、今でも現役で動いているケースは珍しくありません。

レガシーソフト(レガシーソフトウェア)とは、古い技術で作られ、長年使われ続けているソフトウェアやシステムのことです。「動いているから」という理由でそのまま使われていますが、実は様々なリスクを抱えているんです。

この記事では、レガシーソフトの基本的な意味から、なぜ問題になるのか、どう対処すべきかまで、初心者にも分かりやすく解説します。企業のシステム担当者だけでなく、ITの現場で働く方にも役立つ内容です。

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  1. レガシーソフトとは?基本を理解しよう
    1. レガシーソフトの定義
    2. レガシーソフトの例
    3. なぜレガシーソフトが存在するのか
  2. レガシーソフトの問題点・リスク
    1. 問題点1:セキュリティリスク
    2. 問題点2:メンテナンスコストの増大
    3. 問題点3:ビジネスの機会損失
    4. 問題点4:法令遵守の問題
    5. 問題点5:システムダウンのリスク
  3. レガシーソフトのメリット
    1. メリット1:安定性
    2. メリット2:業務との適合性
    3. メリット3:即座の移行コスト不要
  4. レガシーソフトへの対処方法
    1. 対処法1:モダナイゼーション(近代化)
    2. 対処法2:段階的な移行
    3. 対処法3:ハイブリッド運用
    4. 対処法4:適切な延命措置
    5. 対処法5:計画的な廃止
  5. レガシーソフト移行の成功ポイント
    1. ポイント1:経営層の理解とコミット
    2. ポイント2:現行システムの可視化
    3. ポイント3:段階的なアプローチ
    4. ポイント4:業務部門との連携
    5. ポイント5:リスク管理
  6. 日本におけるレガシーソフトの現状
    1. 「2025年の崖」問題
    2. 日本企業の特徴
    3. 政府の支援策
  7. よくある質問と回答
    1. レガシーソフトは必ず移行しなければならない?
    2. 移行にはどれくらいの期間がかかる?
    3. 移行中に業務は止まる?
    4. 小規模企業でもレガシーソフト問題はある?
    5. クラウドに移行すればすべて解決する?
  8. まとめ:レガシーソフトと向き合い計画的に対処しよう

レガシーソフトとは?基本を理解しよう

まず、レガシーソフトの基本的な概念を理解しておきましょう。

レガシーソフトの定義

レガシーソフト(Legacy Software)とは、以下のような特徴を持つソフトウェアを指します。

  • 古い技術や言語で開発されている
  • 長期間(10年以上)使われ続けている
  • 現在の技術標準に合っていない
  • メンテナンスや更新が難しい
  • それでも業務に不可欠で使い続けられている

「Legacy」という英語は「遺産」「遺物」という意味です。つまり、過去から引き継がれた、古いけれど価値があるもの、というニュアンスがあるんですね。

レガシーソフトの例

具体的には、以下のようなシステムがレガシーソフトとして扱われることが多いです。

基幹系システム

  • 銀行の勘定系システム
  • 製造業の生産管理システム
  • 小売業の販売管理システム
  • 会計・経理システム

古いプログラミング言語で書かれたシステム

  • COBOL(コボル)で書かれた業務システム
  • Visual Basic 6.0のアプリケーション
  • Perl、FORTRANなどの古い言語

古いOS・環境に依存するソフト

  • Windows XPでしか動かないソフト
  • MS-DOSのプログラム
  • 古いデータベース(dBASE、FoxProなど)

なぜレガシーソフトが存在するのか

レガシーソフトが生まれる主な理由は、以下の通りです。

理由1:開発当時は最新技術だった

20〜30年前に作られたシステムは、当時としては最新の技術を使っていました。しかし、技術の進化が速いIT業界では、すぐに古くなってしまうんです。

理由2:「動いているから」という保守的な姿勢

システムの入れ替えにはコストとリスクが伴います。「今動いているものをわざわざ変える必要はない」という考えで、そのまま使い続けるケースが多いです。

理由3:移行コストが高い

新しいシステムへの移行には、莫大な費用と時間がかかります。特に、長年使われてきた基幹システムの場合、数億円、数十億円の投資が必要になることもあります。

理由4:業務プロセスに深く組み込まれている

長年使われてきたシステムは、企業の業務プロセスと一体化しています。システムを変えるということは、業務プロセス全体を見直すことになり、大きな労力が必要になるんです。

理由5:技術者の不足

古い技術を理解している技術者が減少しています。新しいシステムに移行するにも、現行システムを理解できる人材が必要なのですが、その人材が確保できないという問題があります。

レガシーソフトの問題点・リスク

レガシーソフトを使い続けることには、多くのリスクがあります。

問題点1:セキュリティリスク

古いソフトウェアは、セキュリティアップデートが提供されなくなることが多いです。

脆弱性が放置される

新しい脆弱性が発見されても、修正パッチが提供されません。サイバー攻撃の標的になりやすく、データ漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。

古いOSのサポート終了

Windows XPやWindows 7など、サポートが終了したOSで動くソフトは、OSレベルでもセキュリティリスクを抱えています。

問題点2:メンテナンスコストの増大

古いシステムほど、維持管理にコストがかかります。

技術者の確保が困難

COBOLやVisual Basic 6.0など、古い言語を扱える技術者は年々減少しています。限られた技術者に高い報酬を払う必要があり、人件費が高騰するんです。

属人化のリスク

特定の技術者だけがシステムを理解している「属人化」が起きやすいです。その技術者が退職すると、誰もメンテナンスできなくなるリスクがあります。

部品やハードウェアの入手困難

古いハードウェアが故障しても、交換部品が入手できないことがあります。特殊な機器を使っている場合、システム全体が停止する危険性もあります。

問題点3:ビジネスの機会損失

技術の進化についていけず、ビジネスチャンスを逃すことがあります。

新技術との連携ができない

クラウド、AI、モバイルアプリなど、新しい技術と連携できません。競合他社が最新技術で効率化を進める中、取り残されてしまいます。

ユーザー体験の悪化

古いインターフェース、遅い処理速度、使いにくい操作性など、ユーザー体験が現代の基準に合っていません。従業員の生産性が下がり、顧客満足度も低下します。

データ活用ができない

古いシステムのデータは、形式が古かったり、他のシステムと連携できなかったりします。ビッグデータ分析やAI活用など、データを活かした経営判断ができません。

問題点4:法令遵守の問題

法律や規制の変更に対応できないリスクがあります。

例えば、消費税率の変更、インボイス制度の導入、個人情報保護法の改正など、法改正のたびにシステム改修が必要になります。古いシステムでは、この改修が困難だったり、コストが膨大になったりするんですよ。

問題点5:システムダウンのリスク

古いシステムは突然の故障のリスクが高くなります。

予期しない障害

長年の蓄積で、システムの内部構造が複雑化・ブラックボックス化しています。予期しない障害が発生したとき、原因究明や復旧に時間がかかります。

バックアップの問題

古いシステムのバックアップ方式が、現代の基準に合っていないことがあります。災害時の復旧計画(BCP)が機能しない可能性もあります。

レガシーソフトのメリット

問題ばかりではなく、レガシーソフトにもメリットはあります。

メリット1:安定性

長年使われてきた実績があり、バグが出尽くしているため、動作が安定しています。

基幹業務で「絶対に止まってはいけない」システムの場合、新しいシステムより、実績のあるレガシーシステムの方が信頼できることもあるんです。

メリット2:業務との適合性

長年の改善で、業務プロセスに完全に適合しています。

独自のカスタマイズが積み重ねられ、企業の業務に最適化されているため、新しいパッケージシステムよりも使いやすい場合があります。

メリット3:即座の移行コスト不要

今すぐ新システムに移行する必要がなければ、当面の投資を抑えられます。

ただし、これは問題の先送りであり、長期的には移行コストがさらに膨らむリスクがありますね。

レガシーソフトへの対処方法

レガシーソフトをどう扱うべきか、主な対処法を紹介します。

対処法1:モダナイゼーション(近代化)

モダナイゼーションとは、既存のシステムを新しい技術に移行することです。

いくつかのアプローチがあります。

リホスト(Lift and Shift)

システムをそのまま新しいプラットフォーム(クラウドなど)に移動する方法。最も簡単ですが、根本的な問題は解決しません。

リプラットフォーム

プログラムコードは維持しつつ、動作環境を新しいものに置き換える方法。例えば、オンプレミスからクラウドへ移行するなど。

リファクタリング

プログラムの機能は変えずに、内部のコードを書き直して整理する方法。メンテナンス性が向上します。

リアーキテクト

システムのアーキテクチャ(設計思想)を根本から見直す方法。マイクロサービス化、API化など、現代的な設計に変更します。

リビルド(再構築)

システムを一から作り直す方法。最も時間とコストがかかりますが、最新技術を活用できます。

リプレース(置き換え)

既製のパッケージソフトやSaaSに置き換える方法。開発コストを抑えられますが、業務プロセスの変更が必要になることもあります。

対処法2:段階的な移行

一度にすべてを変えるのではなく、段階的に移行する戦略です。

ストラングラーパターン

新しいシステムで古いシステムを徐々に「絞め殺す」ように置き換えていく手法。リスクを分散できます。

機能単位での移行

重要度の低い機能から順に新システムに移行していく方法。失敗しても影響が小さい部分から始められます。

対処法3:ハイブリッド運用

古いシステムと新しいシステムを並行稼働させる方法です。

ラッパー(Wrapper)の作成

古いシステムの外側に新しいインターフェースを用意して、他のシステムと連携しやすくします。内部は古いままでも、外部からは新しいシステムのように見えるんです。

API化

古いシステムの機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として公開し、他のシステムから利用できるようにします。

対処法4:適切な延命措置

すぐに移行できない場合、安全に使い続けるための対策を取ります。

セキュリティ対策の強化

  • ネットワークを分離して、外部からのアクセスを制限
  • ファイアウォールやウイルス対策ソフトで防御
  • アクセスログの監視を強化

技術者の育成・確保

  • 社内でレガシー技術の研修を実施
  • 外部のベンダーと保守契約を結ぶ
  • ドキュメント整備を進める

ハードウェアの予備確保

  • 故障に備えて、予備のハードウェアを確保
  • 仮想化して、特定のハードウェアへの依存を減らす

対処法5:計画的な廃止

本当に必要か見直し、不要なら廃止することも選択肢です。

使われていない機能、代替手段がある業務などは、システムごと廃止することで、メンテナンスコストを削減できます。

レガシーソフト移行の成功ポイント

移行プロジェクトを成功させるためのポイントです。

ポイント1:経営層の理解とコミット

レガシーシステムの刷新には、経営層の強いリーダーシップが必要です。

予算確保、リソース配分、組織の協力体制など、経営判断として取り組む必要があります。

ポイント2:現行システムの可視化

まず、現在のシステムがどうなっているかを把握します。

  • システムの構成図
  • データの流れ
  • 依存関係
  • 業務プロセスとの関連

「分からないシステム」を移行することはできません。ドキュメント化を徹底しましょう。

ポイント3:段階的なアプローチ

一度にすべてを変えようとせず、小さく始めて徐々に拡大する戦略が有効です。

初期の成功体験が、プロジェクト全体の推進力になりますよ。

ポイント4:業務部門との連携

IT部門だけでなく、実際に業務を行う部門との密な連携が不可欠です。

新しいシステムが業務に合っているか、使いやすいか、現場の声を取り入れながら進めましょう。

ポイント5:リスク管理

移行には必ずリスクが伴います。

  • バックアップ体制の確立
  • ロールバック計画の準備
  • 並行稼働期間の設定
  • 十分なテスト期間の確保

何かあっても元に戻せる体制を整えておくことが重要です。

日本におけるレガシーソフトの現状

日本企業のレガシーシステム事情について触れておきましょう。

「2025年の崖」問題

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、日本企業の多くがレガシーシステムを抱え、このままでは2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告しました。

これが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。

日本企業の特徴

日本企業では、以下のような特徴があります。

  • 基幹システムのブラックボックス化が進んでいる
  • IT予算の8割以上が既存システムの維持に使われている
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資が不足
  • 技術者の高齢化が進んでいる

政府の支援策

政府も、企業のシステム刷新を支援する施策を打ち出しています。

  • DX投資促進税制
  • IT導入補助金
  • ガイドラインの整備

これらを活用して、計画的な移行を進めることが推奨されています。

よくある質問と回答

レガシーソフトは必ず移行しなければならない?

絶対ではありませんが、長期的にはリスクが高まります。少なくとも、移行計画を立てておくことが重要です。

移行にはどれくらいの期間がかかる?

システムの規模によりますが、大規模な基幹システムでは3〜5年かかることも珍しくありません。

移行中に業務は止まる?

適切に計画すれば、業務を止めずに移行できます。並行稼働やカットオーバーのタイミングを工夫することが重要です。

小規模企業でもレガシーソフト問題はある?

はい、あります。むしろ小規模企業の方が、特定のベンダーや技術者に依存していることが多く、リスクが高い場合もあります。

クラウドに移行すればすべて解決する?

クラウド移行は有効な選択肢ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。業務プロセスの見直しや、システム設計の刷新も必要です。

まとめ:レガシーソフトと向き合い計画的に対処しよう

レガシーソフトについて詳しく解説しました。

重要なポイントをおさらい

  • レガシーソフトは古い技術で作られ、長年使われているシステム
  • セキュリティリスク、メンテナンスコスト増大などの問題がある
  • 一方で、安定性や業務適合性というメリットもある
  • モダナイゼーションや段階的移行で対処できる
  • 経営層のコミットと計画的なアプローチが成功の鍵
  • 日本では「2025年の崖」問題が指摘されている

レガシーソフトは、多くの企業が抱える共通の課題です。「動いているから」と放置せず、計画的に向き合うことが大切ですね。

完全な移行が難しくても、リスクを把握し、適切な延命措置を取るだけでも、将来の選択肢が広がります。この記事を参考に、あなたの組織のレガシーシステムについて考えるきっかけになれば幸いです!

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