パソコンで音楽を聴いたり、動画を見たり、ゲームをプレイしたりするとき、当たり前のように音が聞こえてきます。この「音」を処理しているのが、Realtek Audioです。
Realtek Audio(リアルテック・オーディオ)は、台湾のRealtek社が製造しているオーディオチップ(音声処理用の半導体)とそれに関連するドライバーソフトウェアの総称です。
世界中のパソコンで使われている定番のオーディオソリューションで、特にマザーボードに内蔵されたサウンド機能では圧倒的なシェアを誇ります。
今回は、Realtek Audioとは何か、どんな機能があるのか、トラブルシューティングの方法まで分かりやすく解説していきます。
Realtek社とは?世界トップシェアの半導体メーカー

台湾発の半導体メーカー
Realtek Semiconductor(瑞昱半導體股份有限公司)は、1987年に台湾の新竹サイエンスパークで創立された半導体企業です。
主な事業内容
- 通信ネットワーク用IC(有線LAN、無線LANチップなど)
- コンピュータ周辺機器用IC
- マルチメディア用IC(オーディオコーデックなど)
2022年時点で従業員約6,400名を抱え、そのうち78%が研究開発に従事している技術志向の企業です。
オーディオ分野での圧倒的シェア
Realtekは、オーディオコーデック市場で世界トップシェアを獲得しています。
市場シェアの推移
- 2003年:50%のシェア
- 2004年:60%のシェア
- 現在:マザーボードのオンボードオーディオ市場でほぼ独占状態
特に低価格から中価格帯の市場では、「Realtekが搭載されていないマザーボードを探す方が困難」と言われるほど普及しています。
「カニチップ」の愛称
Realtekのロゴは、カニのような形をしているため、台湾や日本では「カニチップ」という愛称で親しまれています。
この愛称は、特にPC自作愛好家の間で広く使われています。
Realtek Audioの基礎知識
オーディオチップとは?
オーディオチップは、パソコンの音声処理を担当する半導体チップ(IC)です。
オーディオチップの役割
- デジタル信号をアナログ信号に変換:パソコン内部のデジタル音声データを、スピーカーやヘッドホンで再生できるアナログ信号に変換
- 音声エフェクトの処理:サラウンドサウンドやイコライザーなどの音響効果を処理
- マイク入力の処理:マイクからの音声をデジタル信号に変換
- 複数チャンネルの管理:ステレオからサラウンドまで、複数のスピーカー出力を管理
オンボードサウンドとサウンドカードの違い
オンボードサウンド
マザーボードに最初から組み込まれているサウンド機能です。Realtek製のオーディオチップが搭載されていることがほとんどです。
- 追加コスト不要
- ほとんどのパソコンに標準搭載
- 一般的な用途には十分な音質
サウンドカード
拡張スロットに追加で取り付ける専用のサウンド処理カードです。
- より高音質
- より多機能
- ゲーマーやオーディオマニア向け
- 追加コストが必要
かつてはサウンドカードを追加しないと十分な音質が得られませんでしたが、現在のRealtek製オンボードサウンドは性能が大幅に向上しており、一般的な用途では十分な音質を提供します。
Realtek Audioチップの種類と性能
Realtekは、さまざまな性能のオーディオチップを製造しています。主要なシリーズをご紹介します。
ALCシリーズの型番について
Realtekのオーディオチップは、「ALC」という型番で始まります。これは、かつてRealtekが買収したAvance Logic社の技術を継承しているためです。
歴史的背景
- 1995年:RealtekがAvance Logic社を買収
- 2002年:Avance LogicをRealtekブランドに完全統合
- 型番の「ALC」は「Avance Logic Codec」の略
主要なオーディオチップモデル
ALC892(エントリーモデル)
- 最も普及しているモデル
- 7.1チャンネルサラウンド対応
- 低価格マザーボードに多く採用
- 一般的な用途には十分な性能
ALC887
- 8チャンネルHDオーディオ対応
- 中価格帯マザーボードで採用
- バランスの取れた性能
ALC898
- やや高音質なタイプ
- 現在はあまり見られない
ALC1150(ハイエンドモデル)
- より高音質な上位モデル
- 高級マザーボードに採用
- ゲーミングマザーボードに多い
ALC1220(最上位モデル)
- Realtekのフラグシップオーディオコーデック
- 最高品質のオーディオ性能
- ハイエンドゲーミング・オーディオマザーボード向け
- より高いS/N比(信号対雑音比)
HD Audio規格とは?
Realtekのオーディオチップは、HD Audio(High Definition Audio)規格に対応しています。
HD Audio規格は、Intelが2004年に策定した音声規格で、それ以前のAC’97規格の後継となるものです。
AC’97規格(旧規格)
- 1990年代後半に開発
- 5.1チャンネルサラウンド対応
- 最大96kHz/20bitの音声処理
HD Audio規格(現行規格)
- 2004年に登場
- 7.1チャンネルサラウンド対応
- 最大192kHz/32bitの音声処理
- 複数の音声ストリームを同時処理可能
- ハイレゾ音源に対応
Realtek製チップは、この高度な規格に対応することで、高音質なサウンドを実現しています。
Realtek Audioの主な機能

高品質な音声再生
対応スペック
- サンプリングレート:最大192kHz
- ビット深度:最大32bit
- チャンネル数:最大7.1チャンネル(8チャンネル)
これらのスペックにより、CD品質(44.1kHz/16bit)を大きく上回る、ハイレゾ音源の再生も可能です。
サラウンドサウンド対応
Realtek Audioは、複数のスピーカーを使った立体的な音響を実現できます。
対応チャンネル構成
- 2チャンネル(ステレオ):最も一般的な構成
- 5.1チャンネル:フロント左右、センター、リア左右、サブウーファー
- 7.1チャンネル:5.1チャンネル+サイド左右スピーカー
映画鑑賞やゲームで、臨場感あふれるサウンド体験が楽しめます。
マルチストリーム機能
複数の音声を同時に異なるデバイスに出力できる機能です。
使用例
- スピーカーで音楽を再生しながら、ヘッドセットでボイスチャット
- 前面パネルと背面パネルで異なる音声を同時出力
デジタル出力対応
Realtek Audioは、アナログ出力だけでなくデジタル出力にも対応しています。
対応デジタル出力
- S/PDIF(光デジタル/同軸デジタル):デジタルアンプやAVアンプへの接続
- HDMI:モニターやテレビへの音声出力
デジタル出力を使うことで、ノイズの少ないクリアな音質を実現できます。
入力機能
マイク入力
- アナログマイク入力対応
- ノイズ抑制機能
- 音響エコーキャンセル機能
これらの機能により、Web会議やゲーム配信でもクリアな音声を相手に届けられます。
ライン入力
外部オーディオ機器からの音声を録音できます。
Realtek HD Audio Managerとは?
サウンド設定を管理するソフトウェア
Realtek HD Audio Managerは、Realtekオーディオチップの設定を行うための専用ソフトウェアです。
ドライバーをインストールすると、一緒にインストールされます。
主な設定項目
再生デバイスの管理
- スピーカー構成の設定(2ch/5.1ch/7.1ch)
- 各スピーカーの音量調整
- イコライザー設定
- 音響エフェクトの設定
録音デバイスの管理
- マイクの音量調整
- ノイズ抑制のオン/オフ
- 音響エコーキャンセルの設定
- ステレオミキサーの設定
デジタル出力の設定
- 出力フォーマットの選択(ステレオ/5.1ch)
- 圧縮形式の設定
端子の設定
- 前面パネルと背面パネルの設定
- 端子の用途変更(ジャック検出機能)
Windowsのサウンド設定だけでは変更できない、細かい調整がRealtek HD Audio Managerで可能になります。
Realtek Audioドライバーのインストールと更新
ドライバーとは?
ドライバーは、オペレーティングシステム(Windows)とハードウェア(Realtekオーディオチップ)の間を仲介するソフトウェアです。
正しいドライバーがインストールされていないと、音が出ない、機能が制限されるなどの問題が発生します。
ドライバーの入手方法
方法1:マザーボードメーカーのサイトからダウンロード
最も確実で推奨される方法です。
- 使用しているマザーボードのメーカーサイト(ASUS、MSI、Gigabyteなど)にアクセス
- 製品サポートページで、自分のマザーボードモデルを検索
- 「ドライバー」または「サポート」セクションから、最新のRealtekオーディオドライバーをダウンロード
- ダウンロードしたファイルを実行してインストール
方法2:Windows Updateで自動更新
Windowsが自動的に適切なドライバーを見つけてインストールすることがあります。ただし、最新版ではない場合があります。
方法3:デバイスマネージャーから更新
- Windowsキー+Xを押して、「デバイスマネージャー」を開く
- 「サウンド、ビデオ、およびゲームコントローラー」を展開
- 「Realtek High Definition Audio」を右クリック
- 「ドライバーの更新」を選択
- 「ドライバーを自動的に検索」を選択
インストール手順
標準的なインストール方法
- ダウンロードしたファイル(通常はZIP形式)を解凍
- 解凍したフォルダ内の「setup.exe」をダブルクリック
- インストールウィザードの指示に従う
- インストール完了後、パソコンを再起動
注意点
- インストール中に「デジタル署名が見つかりません」というメッセージが表示される場合がありますが、「はい」を選択して続行してください
- 画面解像度が1024×768未満の場合、警告が表示されることがあります
アンインストール方法
問題が発生した場合や、クリーンインストールしたい場合のアンインストール手順です。
Windows 10/11の場合
- 「設定」→「アプリ」→「アプリと機能」を開く
- 「Realtek High Definition Audio Driver」を探す
- クリックして「アンインストール」を選択
- 確認画面で「はい」をクリック
- アンインストール完了後、パソコンを再起動
Realtek Audioのトラブルシューティング
音が出ない場合の対処法
ステップ1:音量設定を確認
最も基本的なチェックです。
- タスクバーのスピーカーアイコンをクリック
- 音量がミュートになっていないか確認
- 音量スライダーが最小になっていないか確認
ステップ2:既定のデバイスを確認
- タスクバーのスピーカーアイコンを右クリック
- 「サウンドの設定」を開く
- 「出力デバイスを選択してください」で、正しいデバイスが選択されているか確認
ステップ3:デバイスマネージャーで確認
- デバイスマネージャーを開く
- 「サウンド、ビデオ、およびゲームコントローラー」を確認
- Realtekデバイスに黄色い警告マークが表示されていないか確認
- 警告マークがある場合は、右クリックして「デバイスのアンインストール」後、パソコンを再起動
ステップ4:ドライバーを再インストール
上記の方法で解決しない場合、ドライバーを再インストールしてみます。
ノイズが発生する場合
原因と対処法
電源からのノイズ
- 電源ケーブルとオーディオケーブルを離す
- 別の電源コンセントを試す
ケーブルの問題
- オーディオケーブルを交換してみる
- シールド付きの高品質なケーブルを使用
ソフトウェア設定
- Realtek HD Audio Managerで「ノイズ抑制」機能を有効にする
- サンプリングレートを変更してみる(48kHz、96kHzなど)
マイクが認識されない場合
ステップ1:正しい端子に接続
- ピンク色の端子がマイク入力(通常)
- 前面パネルと背面パネル、両方試してみる
ステップ2:デバイスを有効化
- 「サウンドの設定」を開く
- 「入力」セクションで、マイクが表示されているか確認
- 表示されていない場合、「無効なデバイスを表示」を確認
ステップ3:マイクのプロパティを確認
- 「サウンド」→「録音」タブ
- マイクを右クリックして「プロパティ」
- 「レベル」タブで音量が適切か確認
- 「拡張」タブで「すべてのサウンドエフェクトをオフにする」を試す
Realtek HD Audio Managerが開けない場合
対処法
方法1:タスクバーから起動
- タスクバーの通知領域(右下)にRealtekアイコンがあるか確認
- アイコンをダブルクリック
方法2:コントロールパネルから起動
- コントロールパネルを開く
- 「ハードウェアとサウンド」
- 「Realtek HD Audio Manager」をクリック
方法3:ドライバーを再インストール
上記で開けない場合、ドライバーを再インストールしてください。
Realtek AudioとUSB DACの違い
より高音質を求める場合の選択肢
音質にこだわりたい場合、USB DAC(Digital to Analog Converter)という外付けデバイスを使う選択肢もあります。
USB DACのメリット
ノイズの少ない環境
パソコン内部は電気的ノイズが多い環境です。USB DACは外付けのため、このノイズから離れた場所で音声処理を行えます。
より高品質なコンポーネント
専用設計のUSB DACは、より高品質なパーツを使用していることが多く、音質が向上します。
ヘッドホンアンプ内蔵
多くのUSB DACはヘッドホンアンプを内蔵しており、高インピーダンスのヘッドホンも十分に駆動できます。
Realtek Audioで十分な場合
以下のような用途では、Realtek Audioで十分な音質が得られます。
- 一般的な音楽鑑賞
- 動画視聴
- Web会議
- カジュアルなゲームプレイ
- YouTubeやSpotifyでの音楽ストリーミング
本格的なオーディオ環境を構築したい、ハイレゾ音源を最高の音質で楽しみたい、という場合にのみ、USB DACへの投資を検討すれば良いでしょう。
まとめ:Realtek Audioはパソコンサウンドの定番
Realtek Audioは、世界中のパソコンで使われている信頼性の高いオーディオソリューションです。
Realtek Audioのポイント
- 台湾Realtek社が製造する、世界トップシェアのオーディオチップ
- マザーボードのオンボードサウンドでほぼ標準装備
- HD Audio規格対応で、最大192kHz/32bit、7.1チャンネルに対応
- ALCシリーズ(ALC892、ALC887、ALC1220など)が主要製品
- Realtek HD Audio Managerで詳細な設定が可能
- 一般的な用途には十分な音質を提供
- ドライバーのインストールと更新が重要
トラブル時の対処
- 音が出ない→デバイス設定とドライバーを確認
- ノイズが発生→ケーブルや電源、ソフトウェア設定を見直す
- マイクが認識されない→端子、デバイスの有効化を確認
- Realtek HD Audio Managerが開けない→再インストールを検討
音質向上のために
- より高音質を求める場合は、USB DACやサウンドカードを検討
- 一般的な用途ではRealtek Audioで十分
- スピーカーやヘッドホンの品質も音質に大きく影響
Realtek Audioは、高性能でありながらコストパフォーマンスに優れた、現代パソコンに欠かせないオーディオソリューションです。基本を理解しておけば、トラブルが発生したときも適切に対処できるでしょう!

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