「リレーショナルデータベース」という言葉を聞いたことはありますか?
ITの世界では当たり前のように使われている技術ですが、「難しそう」「自分には関係ない」と思っている方も多いかもしれません。
実は、あなたが毎日使っているスマホアプリやWebサイトの裏側では、ほぼ確実にリレーショナルデータベースが活躍しているんです。
ネットショッピングの商品情報、SNSの投稿データ、銀行の口座情報……これらすべてがリレーショナルデータベースで管理されています。
この記事では、リレーショナルデータベースの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、実際の使用例まで、初心者の方でも理解できるように分かりやすく解説していきます。
データベースの世界を少しのぞいてみませんか?
リレーショナルデータベース(RDB)とは?

リレーショナルデータベース(Relational Database、略してRDB)とは、データを表形式で管理し、複数の表同士を関連付けて情報を整理するデータベースのことです。
「リレーショナル」という言葉は英語で「関係性のある」という意味を持ちます。つまり、データ同士に関係性を持たせて管理できるのが最大の特徴なんですね。
例えば、Excelのような表をイメージしてください。縦に項目名、横にデータが並んでいる形式です。リレーショナルデータベースでは、このような表(テーブルと呼びます)を複数用意し、それぞれを結びつけることでデータを効率的に管理できます。
Excelとの違いは何でしょうか?
一番の違いは、大量のデータを高速に処理できる点と、複数の人が同時にアクセスしても問題なく動作する点です。また、データの整合性(矛盾のない状態)を保つ機能も充実しています。
リレーショナルデータベースの基本構造
リレーショナルデータベースを理解するには、いくつかの基本用語を知っておく必要があります。
テーブル(表)
データを格納する基本単位です。Excelのシートのようなものと考えてください。
例えば、ECサイトなら「商品テーブル」「顧客テーブル」「注文テーブル」のように、目的ごとに複数のテーブルを作成します。
レコード(行)
テーブルの1行を「レコード」と呼びます。
商品テーブルなら、1つの商品情報が1レコードになるイメージです。
フィールド(列)
テーブルの1列を「フィールド」または「カラム」と呼びます。
商品テーブルなら「商品名」「価格」「在庫数」などがフィールドにあたります。
主キー(プライマリーキー)
各レコードを一意に識別するための特別なフィールドです。
商品テーブルなら「商品ID」のように、絶対に重複しない値を設定します。これによって「どの商品か」を確実に特定できるんですね。
外部キー(フォーリンキー)
別のテーブルのレコードを参照するためのフィールドです。
例えば「注文テーブル」に「商品ID」を記録しておけば、商品テーブルと結びつけて「どの商品が注文されたか」が分かります。
リレーショナルデータベースの仕組みを実例で理解
言葉だけでは分かりにくいので、具体例を見ていきましょう。
実例:オンライン書店のデータベース
オンライン書店を運営する場合、以下のようなテーブル構成が考えられます。
【書籍テーブル】
- 書籍ID(主キー)
- 書籍名
- 著者ID(外部キー)
- 価格
- 出版日
【著者テーブル】
- 著者ID(主キー)
- 著者名
- 生年月日
- プロフィール
【注文テーブル】
- 注文ID(主キー)
- 顧客ID(外部キー)
- 書籍ID(外部キー)
- 注文日
- 数量
【顧客テーブル】
- 顧客ID(主キー)
- 顧客名
- メールアドレス
- 住所
このように分けることで、例えば「著者名を変更したい」場合、著者テーブルの1か所を修正するだけで済みます。もし全部を1つの大きな表にまとめていたら、同じ著者の全書籍データを一つずつ修正しなければなりません。
この「データを適切に分割して管理する」考え方を正規化と呼びます。
SQLとは?データベースを操作する言語
リレーショナルデータベースを操作するには、SQL(Structured Query Language)という専用の言語を使います。
SQLは「構造化問い合わせ言語」という意味で、データベースに対して「このデータを取り出して」「このデータを保存して」といった指示を出すための言語です。
基本的なSQL操作の例
データを取得する
SELECT 書籍名, 価格 FROM 書籍テーブル WHERE 価格 < 2000;
(意味:書籍テーブルから、価格が2000円未満の書籍名と価格を取り出す)
データを追加する
INSERT INTO 書籍テーブル (書籍名, 価格) VALUES ('データベース入門', 2800);
データを更新する
UPDATE 書籍テーブル SET 価格 = 2500 WHERE 書籍ID = 101;
SQLの文法は英語に近く、比較的理解しやすい設計になっています。
リレーショナルデータベースのメリット
1. データの整合性が保たれる
複数のテーブルを関連付けることで、データの矛盾を防げます。
例えば、存在しない著者IDを書籍テーブルに登録しようとすると、エラーが出る仕組みを作れるんです。これによって「著者不明の書籍」が登録されるミスを防げます。
2. データの重複を減らせる
正規化によって、同じ情報を何度も記録する必要がなくなります。
ストレージ容量の節約になるだけでなく、データ更新時のミスも減らせるでしょう。
3. 柔軟なデータ検索ができる
SQLを使えば、複雑な条件でのデータ検索が可能です。
「2023年に出版された、価格が1500円以上3000円以下の書籍を、売上順に表示」といった複雑な要求にも対応できます。
4. 信頼性が高い
トランザクション管理という機能により、データベース操作の途中でエラーが起きても、確実に元の状態に戻せます。
例えば銀行の送金処理で、「口座Aから引き落とし」は成功したのに「口座Bへの入金」が失敗した場合、両方の操作をなかったことにできるんですね。
5. 複数人での同時利用が可能
何百人、何千人が同時にアクセスしても、データの整合性を保ちながら処理できます。
リレーショナルデータベースのデメリット
1. 設計が複雑
テーブル構造をしっかり設計しないと、後から大変な目に遭います。
特に大規模なシステムでは、データベース設計に多くの時間がかかることも珍しくありません。
2. 大量データの処理速度
適切にチューニングしないと、データ量が増えた時に処理速度が遅くなることがあります。
正規化しすぎると、複数のテーブルを結合する処理が増えて、パフォーマンスが低下する可能性もあるんですね。
3. スケーラビリティの課題
データ量が爆発的に増えた場合、サーバーを横に増やす(水平スケーリング)のが難しいケースがあります。
この点は、後述するNoSQLデータベースの方が有利な場合もあります。
4. 柔軟性の制限
テーブル構造を一度決めると、後から変更するのが大変です。
スキーマ(データ構造の設計図)に縛られるため、頻繁に構造が変わるデータには不向きな面があります。
代表的なRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)
リレーショナルデータベースを実際に動かすためのソフトウェアをRDBMS(Relational Database Management System)と呼びます。
MySQL
世界で最も人気のあるオープンソースRDBMSです。
WordPressをはじめ、多くのWebアプリケーションで採用されています。無料で使えて、情報も豊富なので初心者にもおすすめです。
PostgreSQL
高機能で拡張性に優れたオープンソースRDBMSです。
複雑なデータ処理が必要な業務システムでよく使われています。標準SQLへの準拠度が高く、信頼性も抜群です。
Oracle Database
エンタープライズ(大企業)向けの商用RDBMSです。
金融機関や大規模なシステムで採用されることが多く、高い性能と信頼性を誇ります。ただし、ライセンス費用が高額なのが特徴です。
SQL Server
マイクロソフトが提供する商用RDBMSです。
Windowsサーバーとの相性が良く、.NETアプリケーションとの連携に強みがあります。
SQLite
ファイルベースの軽量RDBMSです。
サーバー不要で動作するため、スマホアプリや小規模なシステムでよく使われています。
NoSQLとの違いは?
近年、「NoSQL」というタイプのデータベースも注目を集めています。
NoSQLは「Not Only SQL」の略で、リレーショナルデータベースとは異なるアプローチでデータを管理します。
主な違い
【リレーショナルデータベース(RDB)】
- データを表形式で管理
- スキーマが固定されている
- データの整合性を重視
- 複雑な検索や集計が得意
【NoSQL】
- キー・バリュー、ドキュメント、グラフなど様々な形式
- スキーマレス(構造を柔軟に変更可能)
- 大量データの高速処理を重視
- 水平スケーリングが容易
使い分けのポイント
RDBが向いているケース
- データの整合性が重要な業務システム(銀行、在庫管理など)
- 複雑な検索条件や集計が必要
- トランザクション処理が必須
NoSQLが向いているケース
- 大量のログデータやセンサーデータ
- リアルタイム処理が必要
- データ構造が頻繁に変わる
- 超大規模システム
どちらが優れているというわけではなく、用途に応じて使い分けることが大切です。
リレーショナルデータベースの学習方法

リレーショナルデータベースを学びたい方は、以下のステップで進めるのがおすすめです。
ステップ1:SQLの基礎を学ぶ
まずは基本的なSQL文(SELECT、INSERT、UPDATE、DELETE)を覚えましょう。
オンライン学習サイトや書籍で基礎文法を学び、実際に手を動かして練習するのが効果的です。
ステップ2:データベース設計を理解する
正規化の概念や、主キー・外部キーの使い方を学びます。
「どうテーブルを分割すべきか」という設計力が身につくと、実務でも大いに役立ちます。
ステップ3:実際のRDBMSを使ってみる
MySQLやPostgreSQLをインストールして、自分でデータベースを作ってみましょう。
簡単なアプリケーション(例:住所録、日記帳)を作ることで、実践的なスキルが身につきます。
ステップ4:パフォーマンスチューニングを学ぶ
インデックスの使い方や、クエリの最適化方法を学びます。
この段階まで来れば、プロフェッショナルとして通用するレベルに到達できるでしょう。
まとめ
リレーショナルデータベース(RDB)は、データを表形式で管理し、複数の表を関連付けることで効率的にデータを整理する技術です。
私たちが日常的に使うWebサービスやアプリの多くが、裏側でリレーショナルデータベースを活用しています。
この記事のポイント
- リレーショナルデータベースはデータを表形式で管理し、表同士を関連付けられる
- テーブル、レコード、フィールド、主キー、外部キーなどの基本用語を理解しよう
- SQLという言語を使ってデータベースを操作する
- データの整合性、柔軟な検索、高い信頼性がメリット
- 設計の複雑さや、大量データ処理時の速度がデメリットになることも
- MySQL、PostgreSQL、Oracleなど様々なRDBMSが存在する
- NoSQLとは用途に応じて使い分けることが重要
データベースの知識は、エンジニアだけでなくビジネスパーソンにとっても有益です。
「自社のシステムがどう動いているか」を理解することで、より効果的なIT活用ができるようになります。
まずは基本的なSQLから学び始めてみてはいかがでしょうか?
データベースの世界は奥深く、学べば学ぶほど新しい発見があるはずです!


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