プログラミングを始める時に大切なのが、使いやすい開発環境の構築です。
そして、Python初心者におすすめのエディタとして特に人気が高いのが「Visual Studio Code(VSCode)」です。
でも、最初は戸惑うことも多いですよね:
- 「何から始めればいいの?」
- 「必要なソフトがたくさんあって分からない…」
- 「インストールしたけど、エラーばかりで動かない」
- 「補完機能やデバッグがうまく動かない」
この記事では、Python初心者がVSCodeを使って快適にプログラミングを始めるための設定方法を、初めての方でも迷わないように段階的に説明していきます。
何が必要?まずは全体像を把握しよう

Python開発に必要なもの
Pythonでプログラミングを始めるには、以下の3つが必要です:
項目 | 役割 | 必要性 |
---|---|---|
Python本体 | プログラムを実行するためのソフト | 必須 |
VSCode本体 | コードを書くためのエディタ | 必須 |
拡張機能 | VSCodeでPythonを使いやすくする機能 | ほぼ必須 |
なぜVSCodeがおすすめなの?
VSCodeが初心者におすすめな理由:
- 無料で使える:完全に無料のオープンソースソフト
- 軽くて高機能:動作が軽快で、必要な機能がすべて揃っている
- 拡張機能が豊富:Pythonだけでなく、他の言語にも対応
- 初心者にやさしい:直感的で分かりやすいインターフェース
- 情報が多い:困った時の解決策がインターネットで見つけやすい
この章のまとめ
Python開発には「Python本体」「VSCode」「拡張機能」の3つが必要です。
段階的に設定していけば、初心者でも確実に環境を構築できます。
基本ソフトのインストール方法

ステップ1:Pythonをインストールしよう
Pythonの公式サイトにアクセス
- ブラウザで https://www.python.org/ にアクセス
- 「Downloads」をクリック
- あなたのOS(Windows、Mac、Linux)に合ったバージョンをダウンロード
Windowsの場合の注意点
インストール画面で「Add Python to PATH」に必ずチェックを入れてください。
これを忘れると、後で面倒なことになります。
インストール確認方法
インストールが完了したら、正しくインストールされたかを確認しましょう:
Windowsの場合:
- 「Windowsキー + R」を押す
- 「cmd」と入力してEnter
- 以下のコマンドを入力:
python --version
Mac/Linuxの場合:
- ターミナルを開く
- 以下のコマンドを入力:
python3 --version
正常にインストールされていれば、「Python 3.11.0」のようにバージョンが表示されます。
ステップ2:VSCodeをインストールしよう
VSCodeの公式サイトにアクセス
- ブラウザで https://code.visualstudio.com/ にアクセス
- 「Download for Windows/Mac/Linux」をクリック
- ダウンロードされたファイルを実行してインストール
初回起動時の設定
VSCodeを初めて起動すると、いくつか設定画面が表示されますが、基本的にはデフォルトのままでOKです。日本語化したい場合は、後で説明します。
日本語化(オプション)
VSCodeを日本語で使いたい場合:
- VSCodeを起動
- 左側のアイコンから「拡張機能」(四角が4つ重なったアイコン)をクリック
- 検索欄に「Japanese」と入力
- 「Japanese Language Pack for Visual Studio Code」をインストール
- VSCodeを再起動
インストール確認
両方のソフトが正しくインストールされたかを確認しましょう:
- VSCodeが起動するか:デスクトップやスタートメニューからVSCodeを開く
- Pythonが動作するか:先ほどのコマンドでバージョンが表示される
PythonとVSCodeのインストールが完了しました。
Pythonのインストール時は「PATHに追加」を忘れずに、VSCodeは基本的にデフォルト設定でOKです。
VSCodeにPython開発機能を追加しよう

必須拡張機能:Python by Microsoft
VSCodeでPythonを快適に使うには、拡張機能が必要です。
まずは必須の拡張機能をインストールしましょう。
インストール手順
- VSCodeを起動
- 左側のメニューから「拡張機能」アイコンをクリック(Ctrl+Shift+X でも可)
- 検索欄に「Python」と入力
- 「Python」(作成者:Microsoft)を見つけてクリック
- 「インストール」ボタンをクリック
追加でおすすめの拡張機能
Python拡張機能をインストールすると、関連する拡張機能も自動的に提案されます。
以下もあわせてインストールしておくと便利です:
Pylance(超おすすめ)
- 役割:高速で賢い自動補完・エラーチェック
- 効果:タイプミスやコードの問題を教えてくれる
- インストール:通常はPython拡張機能と一緒に自動インストールされます
Code Runner(便利)
- 役割:右上に「実行」ボタンを追加
- 効果:ワンクリックでPythonファイルを実行できる
- インストール:拡張機能で「Code Runner」を検索してインストール
Jupyter(発展的)
- 役割:ノートブック形式での開発をサポート
- 効果:データ分析や機械学習に便利
- インストール:今すぐは不要ですが、将来的におすすめ
インストール完了後の確認
拡張機能がちゃんと動いているかを確認しましょう:
- VSCodeで新しいファイルを作成(Ctrl+N)
- 「test.py」という名前で保存(Ctrl+S)
- 以下のコードを入力してみてください:
print("Hello, Python!")
print
と入力した時に候補が出てくれば成功です
拡張機能が動かない場合
もし自動補完などが動かない場合は:
- VSCodeを一度閉じて、再起動してみる
- 拡張機能がちゃんとインストールされているか確認
- Pythonが正しくインストールされているか再確認
Microsoft製のPython拡張機能をインストールすることで、VSCodeがPython開発に最適化されました。
Pylanceも一緒にインストールされ、高機能な補完とエラーチェックが使えるようになります。
Python実行環境の設定と切り替え

Pythonインタープリターとは?
インタープリターとは、あなたが書いたPythonコードを実際に実行してくれるプログラムのことです。
VSCodeに「どのPythonを使って実行するか」を教える必要があります。
インタープリターの選択方法
手順1:コマンドパレットを開く
- Windows/Linux:Ctrl + Shift + P
- Mac:Cmd + Shift + P
手順2:インタープリターの選択
- コマンドパレットに「Python: Select Interpreter」と入力
- 候補から「Python: Select Interpreter」を選択
- 利用可能なPythonのバージョン一覧が表示される
- 適切なものを選択(通常は最新バージョン)
正しい選択の見分け方
以下のような表示があります:
Python 3.11.0 ('base': conda) ~/anaconda3/bin/python
Python 3.11.0 C:\Users\あなたの名前\AppData\Local\Programs\Python\Python311\python.exe
Python 3.10.0 /usr/bin/python3
基本的には最も新しいバージョンを選択すればOKです。
仮想環境について(重要)
仮想環境って何?
仮想環境とは、プロジェクトごとに独立したPython環境を作る仕組みです。
初心者には少し難しく感じるかもしれませんが、覚えておくと後々とても便利です。
なぜ仮想環境が必要?
- プロジェクトごとに異なるライブラリを使える
- バージョンの競合を避けられる
- 他の人と環境を共有しやすい
仮想環境の作成方法
ステップ1:プロジェクトフォルダを作る
- デスクトップなどに「my_python_project」フォルダを作成
- VSCodeでそのフォルダを開く(ファイル→フォルダーを開く)
ステップ2:仮想環境を作成 VSCodeのターミナルを開いて(表示→ターミナル)、以下のコマンドを入力:
Windows:
python -m venv venv
Mac/Linux:
python3 -m venv venv
ステップ3:VSCodeに仮想環境を認識させる
- VSCodeを一度閉じて、再度開く
- 先ほどの「Python: Select Interpreter」で仮想環境のPythonを選択
- 「./venv/Scripts/python.exe」(Windows)や「./venv/bin/python」(Mac/Linux)のような表示があればOK
設定が正しくできているかの確認
ステータスバーをチェック
VSCode画面の下の方にある青いバーに「Python 3.11.0 (‘venv’: venv)」のような表示があれば、正しく設定されています。
簡単なテストコードで確認
import sys
print(sys.executable)
print("Python設定完了!")
このコードを実行して、venvフォルダ内のPythonのパスが表示されれば成功です。
Pythonインタープリターの選択ができれば、VSCodeが正しいPythonでコードを実行してくれます。
仮想環境は最初は難しく感じますが、慣れてくると必須の機能です。
VSCodeでPythonを快適に書くための設定

自動補完機能(IntelliSense)を使いこなそう
自動補完機能とは、コードの途中まで入力すると、続きを提案してくれる便利な機能です。
基本的な使い方
- 新しい.pyファイルを作成
- 以下のように入力してみてください:
# 「pr」まで入力すると...
pr # ←ここで候補が表示される
# 「str.」まで入力すると...
text = "hello"
text. # ←文字列のメソッド一覧が表示される
補完が表示されない場合の対処法
- Python拡張機能がインストールされているか確認
- 正しいインタープリターが選択されているか確認
- ファイルが.py拡張子で保存されているか確認
構文チェック(リンター)の設定
リンターとは、コードの文法エラーや問題点を自動的に見つけて教えてくれる機能です。
自動的な設定
Python拡張機能をインストールすると、VSCodeが自動的にリンターの使用を提案してきます:
Python extension is installed. Install pylint for linting?
このような表示が出た場合は、「Install」をクリックしてください。
手動でのインストール
提案が出ない場合は、ターミナルで以下のコマンドを実行:
pip install pylint
リンターの効果を確認
以下のコードを書いてみてください(わざと間違いを含んでいます):
# 変数名のタイプミス例
message = "Hello"
print(mesage) # ←赤い波線が表示されるはず
正しく設定されていれば、mesage
の下に赤い波線が表示され、マウスを乗せるとエラーの内容が表示されます。
コードの実行方法
VSCodeでPythonコードを実行する方法はいくつかあります:
方法1:実行ボタンを使う
- Python ファイルを開く
- 右上の「▶」ボタン(Run Python File in Terminal)をクリック
方法2:ショートカットキーを使う
- Windows/Linux:Ctrl + F5
- Mac:Cmd + F5
方法3:ターミナルから実行
- 表示→ターミナルでターミナルを開く
- 以下のコマンドを入力:
python ファイル名.py
デバッグ機能の基本
デバッグとは、プログラムの動作を詳細に確認しながら、問題を見つける機能です。
基本的なデバッグの使い方
- コードの行番号の左をクリック(赤い点が表示される)
- F5キーを押してデバッグ開始
- プログラムがその行で一時停止する
- F10キーで一行ずつ実行できる
初心者におすすめのデバッグ方法
最初はprint()
文を使った単純なデバッグがおすすめです:
def calculate(x, y):
result = x + y
print(f"計算結果: {result}") # ←この行で値を確認
return result
answer = calculate(5, 3)
print(answer)
便利なVSCode設定
settings.jsonの基本設定
- Ctrl+Shift+P でコマンドパレットを開く
- 「Preferences: Open Settings (JSON)」を選択
- 以下の設定を追加:
{
"python.linting.enabled": true,
"python.linting.pylintEnabled": true,
"python.formatting.provider": "black",
"editor.formatOnSave": true,
"python.defaultInterpreterPath": "./venv/bin/python"
}
この設定により:
- リンター機能が有効になる
- ファイル保存時に自動でコードが整形される
- デフォルトで仮想環境のPythonが使われる
自動補完、構文チェック、実行方法、基本的なデバッグ機能が使えるようになりました。
これで快適なPython開発環境が整いました。
初心者がつまずきやすいトラブルと解決方法

トラブル1:「Pythonが見つからない」エラー
症状
'python' is not recognized as an internal or external command
または
python: command not found
原因
- PythonがPATHに追加されていない
- Pythonがインストールされていない
解決方法
Windows の場合:
- Pythonを再インストール(「Add Python to PATH」にチェック)
- または環境変数を手動で設定
Mac/Linux の場合:
python3
コマンドを使用.bashrc
や.zshrc
にエイリアスを追加
すぐに試せる対処法:
# Windows
py --version
# Mac/Linux
python3 --version
トラブル2:「モジュールが見つからない」エラー
症状
ModuleNotFoundError: No module named 'requests'
原因
- 必要なライブラリがインストールされていない
- 仮想環境とグローバル環境の混同
解決方法
# まず、正しい環境にいるか確認
python -m pip list
# ライブラリをインストール
python -m pip install requests
# 仮想環境の場合
# 1. 仮想環境がアクティブか確認
# 2. VSCodeで正しいインタープリターが選択されているか確認
トラブル3:自動補完が動かない
症状
print
と入力しても候補が出ない- エラーの赤線が表示されない
原因
- Python拡張機能がインストールされていない
- 間違ったインタープリターが選択されている
- ファイルが.py拡張子で保存されていない
解決方法
# 1. 拡張機能の確認
# VSCodeの拡張機能タブで「Python」を検索し、Microsoftのものがインストール済みか確認
# 2. インタープリターの再選択
# Ctrl+Shift+P → "Python: Select Interpreter"
# 3. ファイルの保存形式確認
# ファイル名が「test.py」になっているか確認
トラブル4:実行ボタンが表示されない
症状
- 右上の▶ボタンが見当たらない
- F5を押しても何も起こらない
解決方法
- ファイルの確認:.py拡張子で保存されているか
- 拡張機能の確認:Python拡張機能がインストール済みか
- Code Runnerのインストール:実行ボタンを追加するため
トラブル5:日本語の文字化け
症状
print("こんにちは") # → ???????????
解決方法
ファイルの先頭に以下を追加:
# -*- coding: utf-8 -*-
print("こんにちは")
またはVSCodeの設定で:
- ファイル → 基本設定 → 設定
- 「encoding」で検索
- 「Files: Encoding」を「utf8」に設定
トラブル6:デバッグが開始されない
症状
- F5を押してもデバッグが始まらない
- 「launch.json」の設定エラー
解決方法
- シンプルな実行を試す:まずはCtrl+F5で通常実行
- launch.jsonの自動生成:
- 実行とデバッグタブ
- 「create a launch.json file」をクリック
- 「Python File」を選択
一般的なトラブル解決のステップ
何か問題が起きた時は、以下の順番で確認してください:
ステップ1:基本環境の確認
- [ ] Pythonがインストールされている(
python --version
) - [ ] VSCodeが起動する
- [ ] ファイルが.py拡張子で保存されている
ステップ2:拡張機能の確認
- [ ] Python拡張機能(Microsoft製)がインストール済み
- [ ] 拡張機能が有効になっている
ステップ3:インタープリターの確認
- [ ] 正しいPythonインタープリターが選択されている
- [ ] 仮想環境を使っている場合は、その環境が選択されている
ステップ4:再起動
- [ ] VSCodeの再起動
- [ ] コンピューターの再起動(場合によって)
初心者がよく遭遇するトラブルの大部分は、基本的な設定の確認で解決できます。
まとめ
これで、Python初心者に最適なVSCode開発環境が完成しました。
基本環境
- Python本体:プログラムを実行できる
- VSCode:快適にコードを書ける
- Python拡張機能:補完やエラーチェックが使える
便利機能
- 自動補完:コードを途中まで書くと候補を提案
- 構文チェック:エラーを自動で発見してお知らせ
- ワンクリック実行:ボタン一つでプログラムを実行
- デバッグ機能:プログラムの動作を詳しく確認
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