Pythonでプログラムを書いていて、こんなことを思ったことはありませんか?
- 「もっと効率よくコードを書きたい」
- 「エラーを早く見つけたい」
- 「プロの開発者が使っているツールを試してみたい」
そんな人におすすめなのが PyCharm(パイチャーム) という開発ツールです。
PyCharmとは
- Python専用の統合開発環境(IDE)
- チェコのJetBrains社が作った有名なソフト
- 世界中の開発者に愛用されている
- 無料版と有料版がある
IDE(統合開発環境)って何?
- コードを書く
- 実行する
- エラーを調べる
- ファイルを管理する
これらを1つのソフトで全部できるツールのことです。
この記事では、PyCharmの基本から実際の使い方まで、初心者にも分かりやすく説明します。
PyCharmの魅力

なぜPyCharmが人気なのか?
1. コードが書きやすい
- 途中まで入力すると、続きを予想して提案してくれる
- スペルミスやエラーをすぐに教えてくれる
- 変数名や関数名を一括で変更できる
2. デバッグが簡単
- プログラムを1行ずつ実行できる
- 変数の中身をリアルタイムで確認できる
- エラーの原因を見つけやすい
3. 便利な機能がたくさん
- Git(バージョン管理)が使いやすい
- ターミナルが内蔵されている
- プラグインで機能を追加できる
他のエディタとの違い
機能 | メモ帳 | VSCode | PyCharm |
---|---|---|---|
コードの色分け | × | ○ | ○ |
自動補完 | × | ○ | ◎ |
エラーチェック | × | ○ | ◎ |
デバッグ | × | ○ | ◎ |
Python特化 | × | △ | ◎ |
PyCharmは特にPythonに特化しているので、Python開発には最適です。
PyCharmのインストール方法
ダウンロードとインストール
手順1:公式サイトからダウンロード
- https://www.jetbrains.com/pycharm/ にアクセス
- 「Download」ボタンをクリック
- 2つの版から選択:
- Community(コミュニティ版):無料
- Professional(プロフェッショナル版):有料
初心者におすすめ:まずは無料のCommunity版から始めましょう。
手順2:インストール
- ダウンロードしたファイルを実行
- 「Next」を押して進む
- インストール場所を選択(通常はそのままでOK)
- 追加オプションを選択:
- 「Create Desktop Shortcut」にチェック
- 「Add launchers dir to the PATH」にチェック
- インストール完了
初回起動と設定
初回起動時の設定
- PyCharmを起動
- 「Data Sharing」画面:「Don’t Send」でOK
- テーマの選択:
- Darcula:黒いテーマ(目に優しい)
- IntelliJ Light:白いテーマ(明るい)
- 「Skip Remaining and Set Defaults」をクリック
プロジェクトの作成
- 「New Project」をクリック
- プロジェクト名を入力(例:my_first_project)
- 保存場所を選択
- Python環境の設定:
- 「New environment using Virtualenv」を選択(推奨)
- 「Create」をクリック
PyCharmの基本的な使い方

画面の構成
メイン画面の説明
┌─────────────────────────────────────┐
│ ファイル 編集 表示 移動 コード... │ ← メニューバー
├─────────────────────────────────────┤
│ プロジェクト │ エディタ部分 │
│ ツリー │ │
│ │ │
│ │ │
│ │ │
├─────────────────────────────────────┤
│ ターミナル/出力エリア │
└─────────────────────────────────────┘
プロジェクトツリー
- 左側にファイルとフォルダの一覧
- ファイルをダブルクリックで開く
- 右クリックで新規作成・削除・名前変更
エディタ部分
- コードを書く部分
- タブで複数ファイルを開ける
- 行番号が表示される
初めてのPythonファイル作成
新しいPythonファイルを作る
- プロジェクトツリーでプロジェクト名を右クリック
- 「New」→ 「Python File」
- ファイル名を入力(例:hello.py)
- Enterキーを押す
簡単なコードを書いてみる
# hello.py
name = "世界"
print(f"こんにちは、{name}!")
# 数字の計算
numbers = [1, 2, 3, 4, 5]
total = sum(numbers)
print(f"合計は {total} です")
プログラムを実行する
- エディタで右クリック
- 「Run ‘hello’」をクリック
- 下部に結果が表示される
PyCharmの便利な機能
自動補完機能
PyCharmの最も便利な機能の一つが自動補完です。
基本的な使い方
# 「pr」と入力して Ctrl + Space を押すと...
pr # → print() が候補に出る
# リストの場合
my_list = [1, 2, 3]
my_list. # ← 「.」を入力すると、使えるメソッドが表示される
実際の例
# 文字列の操作
text = "Hello World"
text. # ← upper(), lower(), replace() など候補が出る
# 数学の関数
import math
math. # ← sqrt(), sin(), cos() など候補が出る
便利なショートカット
ショートカット | 動作 |
---|---|
Ctrl + Space | 補完候補を表示 |
Tab | 候補を選択 |
Esc | 候補ウィンドウを閉じる |
エラーチェック機能
PyCharmは、コードを書いている最中にエラーを見つけて教えてくれます。
エラーの表示
# スペルミス(波線で表示される)
prin("Hello") # ← 'prin' は存在しない
# 正しい書き方
print("Hello") # ← エラーが消える
警告の種類
- 赤い波線:エラー(実行できない)
- 黄色い波線:警告(動くけど改善推奨)
- グレーの波線:使われていない変数など
エラーの修正
- 赤い波線の部分にマウスを置く
- エラーの説明が表示される
- 電球アイコンをクリック
- 修正案が表示される(場合によって)
デバッグ機能

プログラムの動作を詳しく調べることができます。
ブレークポイントの設定
- エディタの行番号をクリック
- 赤い丸(ブレークポイント)が表示される
- プログラムがその行で一時停止する
デバッグの実行
# デバッグしたいコード
def calculate_total(prices):
total = 0
for price in prices: # ← ここにブレークポイント
total += price
return total
# テスト用のデータ
items = [100, 200, 300]
result = calculate_total(items)
print(result)
デバッグの手順
- ブレークポイントを設定
- 「Debug」ボタンをクリック
- プログラムが停止したら:
- 変数の値を確認
- 「Step Over」で次の行へ
- 「Resume」で実行継続
Gitとの連携
PyCharmはGit(バージョン管理システム)と連携できます。
Gitの初期設定
- 「VCS」メニュー → 「Enable Version Control Integration」
- 「Git」を選択
- プロジェクトがGitリポジトリになる
基本的なGit操作
ファイルの変更 → 緑色で表示
新しいファイル → 赤色で表示
削除したファイル → グレーで表示
コミット(変更の保存)
- 「VCS」メニュー → 「Commit」
- 変更したファイルを選択
- コミットメッセージを入力
- 「Commit」をクリック
プラグインで機能を拡張
PyCharmにプラグインを追加して、さらに便利にできます。
プラグインの管理
- 「File」→ 「Settings」(Windowsの場合)
- 「Plugins」を選択
- 「Marketplace」で新しいプラグインを検索
おすすめプラグイン
プラグイン名 | 機能 |
---|---|
Japanese Language Pack | 日本語化 |
Markdown | Markdownファイルのプレビュー |
Rainbow Brackets | 括弧を色分け |
Key Promoter X | ショートカットキーを覚えるサポート |
日本語化の手順
- Pluginsで「Japanese Language Pack」を検索
- 「Install」をクリック
- PyCharmを再起動
- メニューが日本語になる
無料版と有料版の違い
PyCharmには2つの版があります。
Community版(無料)
使える機能
- Python開発の基本機能
- デバッグ、テスト実行
- Git連携
- プラグイン追加
- ターミナル
- コード補完・エラーチェック
向いている人
- Python学習者
- 個人開発者
- 基本的なPython開発をする人
Professional版(有料)
追加される機能
- Webフレームワーク(Django、Flask)のサポート
- データベースツール
- リモート開発(SSH接続)
- Jupyter Notebook統合
- 科学技術計算ライブラリのサポート
- プロファイラー(性能分析)
料金
- 年間約$89(約12,000円)
- 月額約$8.90(約1,200円)
無料で使える場合
- 学生:学生証明で無料ライセンス取得可能
- 教育機関:教育目的なら無料
- オープンソース開発:条件を満たせば無料
どちらを選ぶべき?
Community版がおすすめの人
- Python初心者
- 学習目的
- 基本的なPythonスクリプト開発
- 予算を抑えたい
Professional版がおすすめの人
- Webアプリ開発(Django、Flask)
- データサイエンス(Jupyter Notebook使用)
- 商用プロジェクト
- チーム開発
効率的な使い方のコツ

覚えておくべきショートカット
ショートカット | 動作 | 説明 |
---|---|---|
Ctrl + / | コメント化 | 選択行をコメントアウト |
Ctrl + D | 行複製 | 現在行を複製 |
Ctrl + Y | 行削除 | 現在行を削除 |
Ctrl + F | 検索 | ファイル内検索 |
Ctrl + R | 置換 | 文字列の置換 |
Shift + F10 | 実行 | プログラムを実行 |
Shift + F9 | デバッグ | デバッグモードで実行 |
設定のカスタマイズ
フォントサイズの変更
- 「File」→ 「Settings」
- 「Editor」→ 「Font」
- 「Size」を変更(推奨:12〜16)
テーマの変更
- 「File」→ 「Settings」
- 「Appearance & Behavior」→ 「Appearance」
- 「Theme」を選択
コードスタイルの設定
- 「File」→ 「Settings」
- 「Editor」→ 「Code Style」→ 「Python」
- インデントやスペースの設定
プロジェクトの効率的な管理
仮想環境の活用
# プロジェクトごとに独立した環境を作る
# PyCharmが自動で作成・管理してくれる
ファイル構成の例
my_project/
├── main.py # メインプログラム
├── utils.py # 共通関数
├── tests/ # テストファイル
│ └── test_main.py
├── data/ # データファイル
│ └── sample.csv
└── requirements.txt # 必要なライブラリ一覧
よくある問題と解決方法
Pythonインタープリターが見つからない
症状 「No Python interpreter configured for the project」
解決方法
- 「File」→ 「Settings」
- 「Project」→ 「Python Interpreter」
- 歯車アイコン → 「Add」
- Pythonのインストール場所を指定
プログラムが実行できない
症状 右クリックしても「Run」が表示されない
解決方法
- ファイルの拡張子が「.py」になっているか確認
- シンタックスエラーがないか確認
- プロジェクトの設定を確認
PyCharmが重い・遅い
対処法
- 不要なプラグインを無効化
- メモリサイズを増やす:
- 「Help」→ 「Change Memory Settings」
- 値を増やす(例:2048MB)
- インデックス作成を待つ
- キャッシュをクリア:
- 「File」→ 「Invalidate Caches and Restart」
まとめ
PyCharmは、Python開発を劇的に効率化してくれる素晴らしいツールです。
PyCharmの魅力まとめ
- 初心者にやさしい:エラーを早期発見、コード補完で学習をサポート
- プロも使用:本格的な開発にも対応
- 無料から始められる:Community版で十分な機能
- 継続的な改善:定期的にアップデートされる
最初のステップ
- Community版をダウンロード・インストール
- 簡単なPythonプログラムを書いてみる
- 自動補完やエラーチェックを体験
- 慣れてきたらデバッグ機能を使ってみる
- 必要に応じてプラグインを追加
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