プログラミング言語の歴史:コンピューターとの対話方法の進化

プログラミング・IT

コンピューターと人間がコミュニケーションを取る方法は、過去80年間で劇的に変化しました。

最初は0と1の羅列だけだったものが、今では自然な言葉に近い形でプログラムを書けるようになりました。
そして2025年現在では、AIがプログラミングを手伝ってくれる時代になっています。

この記事では、プログラミング言語がどのように生まれ、進化してきたのか、そして今後どこへ向かうのかを探っていきます。

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  1. 機械と直接対話した時代:1940年代〜1950年代
    1. ENIACと最初のプログラマーたち
    2. 機械語とアセンブリ言語の苦労
  2. 高級言語の誕生:科学とビジネスに革命をもたらした1950年代〜1960年代
    1. FORTRAN(1957年):科学計算の扉を開いた言語
    2. COBOL(1959年):ビジネスの言葉で話すコンピューター
    3. LISP(1958年):人工知能の先駆け
    4. BASIC(1964年):プログラミングをみんなのものに
  3. 構造化からオブジェクト指向へ:1970年代〜1990年代の大変革
    1. C言語(1972年):現代プログラミングの基礎
    2. オブジェクト指向の革命:C++とJava
    3. Python(1991年):読みやすさを重視した言語
  4. Web時代の到来:1990年代〜2000年代
    1. JavaScript(1995年):たった10日で作られた言語が世界を変えた
    2. PHP(1995年)とRuby(1995年):Web開発を簡単に
  5. 現代の革新的な言語たち:2010年代〜2025年現在
    1. メモリ安全性を重視:RustとGo
    2. 型の安全性を追加:TypeScriptとKotlin
  6. プログラミングパラダイムの進化:異なる考え方の共存
    1. 手続き型から関数型まで
  7. 言語の系譜:どの言語がどの言語に影響を与えたか
    1. C言語ファミリーの巨大な影響
    2. アイデアの相互影響
  8. 2025年の最新動向:AIがプログラミングを変える
    1. プログラミング言語人気ランキング(2025年)
    2. AIアシスタントの衝撃
    3. ローコード・ノーコードの台頭
  9. 今後の展望:プログラミングはどこへ向かうのか
    1. 次の5〜10年の予測
    2. プログラミングの未来像
  10. まとめ:80年の進化が教えてくれること

機械と直接対話した時代:1940年代〜1950年代

ENIACと最初のプログラマーたち

みなさんは、最初のコンピューターがどのように動いていたか想像できますか?

1946年に完成した世界初の電子計算機ENIACは、現在のプログラミングとはまったく異なる方法で動作していました。プログラムを「書く」のではなく、6,000個のスイッチを手動で設定し、ケーブルを物理的に繋ぎ変える必要があったんです。

単純な計算でも2〜3日、複雑な問題では数週間かかることもありました。
今なら一瞬で終わる計算に、何日もかかっていたなんて信じられませんよね。

興味深いことに、この困難な作業を担当したのは6人の女性プログラマーでした。

彼女たちは機械の内部に実際に入り込んで、配線を確認しながらデバッグ(エラーの修正)を行っていました。まさに「手作業」でコンピューターを動かしていたわけです。

機械語とアセンブリ言語の苦労

機械語では、すべてが0と1の数字で表現されます。

たとえば「2+3を計算して結果を保存する」という簡単な処理でも、「00110010 00000011 10000001」のような意味不明な数字の羅列になってしまいます。
プログラマーは、どの命令がメモリのどこに保存されているかを手動で管理する必要があり、少しでも間違えるとプログラム全体が動かなくなってしまいました。

1940年代後半になると、少しだけ人間に優しい「アセンブリ言語」が登場します。

これは0と1の代わりに「ADD」(足し算)や「SUB」(引き算)といった略語を使えるようにしたものです。でも、それでも「3+4を計算する」だけで何行もの命令を書く必要があり、とても効率的とは言えませんでした。

こんな大変な時代を経て、もっと簡単にプログラムを書ける方法が求められるようになります。次の章では、その願いがどのように実現されたかを見ていきましょう。

高級言語の誕生:科学とビジネスに革命をもたらした1950年代〜1960年代

FORTRAN(1957年):科学計算の扉を開いた言語

「数式をそのまま書けるプログラミング言語があったらいいのに」

そんな願いを実現したのが、IBMのジョン・バッカスが率いるチームでした。
FORTRANという名前は「Formula Translation(数式の翻訳)」から来ています。

それまで1,000行の機械語が必要だった計算が、FORTRANではたった47行で書けるようになりました。これは革命的な変化でした。

科学者たちは複雑な方程式をほぼそのままの形でコンピューターに入力できるようになり、ミサイルの軌道計算やNASAの宇宙飛行計算など、現代科学の基礎となる計算が可能になったんです。

驚くことに、FORTRANは実は今でも使われており、最も長く生き残っているプログラミング言語の一つなんですよ。

COBOL(1959年):ビジネスの言葉で話すコンピューター

グレース・ホッパーという女性科学者は、素晴らしい考えを持っていました。

「プログラミングは技術者だけのものではなく、ビジネスマンも使えるべきだ」

彼女が中心となって開発されたCOBOLは、英語に近い形でプログラムを書けるようにした画期的な言語でした。

たとえば「MOVE CUSTOMER-NAME TO REPORT-LINE」(顧客名をレポート行に移動する)のように、何をしているのか一目で分かる命令を書けるようになったんです。
COBOLは銀行や政府機関で広く採用され、世界中のビジネスシステムの基盤となりました。

実は2000年問題(Y2K)が大騒ぎになったのも、世界中で何十億行ものCOBOLプログラムが動いていたからなんです。

LISP(1958年):人工知能の先駆け

MITのジョン・マッカーシーが開発したLISPは、他の言語とはまったく違う考え方で作られました。

すべてをリスト(かっこで囲まれたデータの並び)として扱い、プログラム自体もデータとして扱えるという革新的な設計でした。

LISPは「ガベージコレクション」という、使わなくなったメモリを自動的に解放する仕組みを最初に導入した言語でもあります。この機能は現在のほとんどのプログラミング言語に採用されています。人工知能研究の基礎となり、現代のAI技術にもその影響が見られるんです。

BASIC(1964年):プログラミングをみんなのものに

「すべての学生がプログラミングを学べるようにしたい」

ダートマス大学の二人の教授が、この理想を掲げて作ったのがBASICです。名前は「初心者向け汎用記号命令コード」の略で、わずか2時間の学習で簡単なプログラムが書けるようになるという画期的な言語でした。

BASICの成功により、1968年までにダートマス大学の学生の80%がプログラミングできるようになりました。後にマイクロソフトの最初の製品もBASICインタープリターだったことからも、その重要性がわかりますね。

こうして高級言語が次々と登場し、プログラミングがより身近なものになっていきました。次は、プログラミングの考え方そのものが大きく変わった時代を見ていきましょう。

構造化からオブジェクト指向へ:1970年代〜1990年代の大変革

C言語(1972年):現代プログラミングの基礎

ベル研究所のデニス・リッチーが開発したC言語は、UNIXオペレーティングシステムを書き直すために作られました。

高級言語の使いやすさと、機械語に近い効率性を両立させた画期的な言語だったんです。

C言語の特徴は、ハードウェアを直接制御できる「ポインタ」という仕組みです。これにより、オペレーティングシステムやデバイスドライバーなど、コンピューターの中核部分を効率的に書けるようになりました。

現在でもLinux、Windows、macOSの中核部分はC言語で書かれています。つまり、みなさんが使っているコンピューターの心臓部分は、50年以上前に作られた言語で動いているんです。

オブジェクト指向の革命:C++とJava

1980年代になると、プログラムが巨大化し、管理が困難になってきました。

そこで登場したのが「オブジェクト指向プログラミング」という新しい考え方です。

これはどういうことでしょうか?

C++(1985年)は、C言語にオブジェクト指向の機能を追加した言語です。現実世界の「もの」(オブジェクト)として考えることで、複雑なプログラムを整理しやすくしました。

たとえば「車」というオブジェクトには「色」や「速度」といったデータと、「走る」「止まる」といった動作をまとめて定義できます。現実世界をそのままプログラムに置き換えるような感覚ですね。

Java(1995年)は、サン・マイクロシステムズが「一度書けばどこでも動く」というコンセプトで開発しました。

Java仮想マシン(JVM)という仕組みにより、WindowsでもMacでもLinuxでも同じプログラムが動くようになったんです。現在、30億台以上のデバイスでJavaが動いており、特にAndroidスマートフォンの基盤技術となっています。

Python(1991年):読みやすさを重視した言語

オランダのグイド・ヴァン・ロッサムは面白い考えを持っていました。

「プログラマーの時間はコンピューターの時間より貴重だ」

この考えから、読みやすく書きやすい言語としてPythonを開発したんです。

Pythonのコードは英語の文章のように読めます。たとえば「if temperature > 30: print(“暑い!”)」のように、プログラミング経験がない人でも何をしているか理解できるのが特徴です。

最初はスクリプト言語として使われていましたが、現在ではAI開発の主力言語となり、2024年にはGitHubで最も使用される言語になりました。

プログラミングの考え方が大きく変わったこの時代を経て、次はインターネットがプログラミングをどう変えたかを見ていきましょう。

Web時代の到来:1990年代〜2000年代

JavaScript(1995年):たった10日で作られた言語が世界を変えた

信じられないかもしれませんが、今や世界中で使われているJavaScriptは、わずか10日間で作られました。

ネットスケープ社のブレンダン・アイクが開発したこの言語は、当時のブラウザ戦争の真っ只中で、急いで開発する必要があったんです。

JavaScriptによって、それまで静的だったウェブページが動的になりました。ボタンをクリックしたり、マウスを動かしたりすると反応するインタラクティブなウェブサイトが作れるようになったのです。

現在、世界の97%のウェブサイトがJavaScriptを使用しており、ウェブには欠かせない存在となっています。

PHP(1995年)とRuby(1995年):Web開発を簡単に

PHPは個人のホームページ管理ツールとして始まりましたが、動的なウェブサイトを簡単に作れることから急速に普及しました。

WordPressをはじめ、現在でも約80%のサーバーサイドウェブサイトがPHPで動いています。みなさんが見ているブログやウェブサイトの多くも、PHPで作られているんですよ。

Rubyは日本人のまつもとゆきひろさんが「プログラマーの幸せ」を重視して開発した言語です。

2005年にRuby on Railsというフレームワークが登場すると、ウェブ開発の生産性が劇的に向上しました。GitHubやShopifyなど、多くの有名サービスがRubyで構築されています。日本発の言語が世界中で使われているのは、誇らしいことですね。

ウェブの時代を経て、さらに新しい課題に取り組む言語が登場します。次は現代の革新的な言語たちを見ていきましょう。

現代の革新的な言語たち:2010年代〜2025年現在

メモリ安全性を重視:RustとGo

最近のプログラミング言語は、「安全性」を重視するようになってきました。

Rust(2010年)は、Mozillaが開発した「メモリ安全」を保証する言語です。

メモリ安全とは何でしょうか?簡単に言うと、プログラムがコンピューターのメモリを間違って使わないようにする仕組みです。C言語のような低レベルの制御が可能でありながら、メモリエラーを防ぐ仕組みを持っています。

Stack Overflowという開発者向けサイトの調査で、9年連続「最も愛される言語」第1位を獲得しています。アメリカ政府も2024年にセキュリティの観点からRustの使用を推奨しました。

Go(2009年)は、Googleがクラウド時代のインフラ開発用に作った言語です。

並行処理(複数の処理を同時に実行すること)が得意で、シンプルな文法が特徴です。2025年1月にはついにTIOBEインデックス(プログラミング言語の人気ランキング)のトップ10入りを果たしました。

型の安全性を追加:TypeScriptとKotlin

「型」って何だろう?と思うかもしれませんね。

型とは、データの種類(数値、文字列など)を明確にする仕組みです。これがあると、間違いを事前に防げるようになるんです。

TypeScript(2012年)は、JavaScriptに「型」という概念を追加した言語です。大規模なウェブアプリケーション開発では必須となりつつあります。

Kotlin(2011年)は、Javaの代替として開発され、Googleが2017年にAndroidの公式言語に採用しました。現在、プロのAndroid開発者の60%がKotlinを使用しています。

現代の言語は、過去の言語の良いところを取り入れながら、新しい課題を解決しているんです。次は、プログラミングの「考え方」そのものについて見ていきましょう。

プログラミングパラダイムの進化:異なる考え方の共存

手続き型から関数型まで

プログラミングには複数の「考え方」(パラダイム)があります。

それぞれ違うアプローチで問題を解決するんです。

手続き型プログラミング

料理のレシピのように、手順を順番に書いていく方法です。「まず野菜を切って、次に炒めて、最後に味付けする」というような感じですね。C言語やPascalがこの方式を採用しています。

オブジェクト指向プログラミング

現実世界の「もの」として考える方法です。データと動作をまとめて管理することで、大規模なプログラムを整理しやすくします。

関数型プログラミング

数学の関数のように「入力に対して必ず同じ出力を返す」ことを重視します。データを変更せず、新しいデータを作ることで、バグを減らせます。LISPやHaskellがこの方式の代表です。

現代の言語の多くは、これらの複数のパラダイムを組み合わせて使えるようになっています。状況に応じて最適な方法を選べるんです。

プログラミングの考え方がわかったところで、言語同士がどのように影響し合ってきたかを見ていきましょう。

言語の系譜:どの言語がどの言語に影響を与えたか

C言語ファミリーの巨大な影響

プログラミング言語も、家族のように系譜があります。

C言語から派生した言語は数え切れません。C++ → Java → C#という流れは特に重要で、現在の主要な言語の多くがこの系統に属します。

JavaScriptも名前にJavaが入っていますが、実際にはScheme(LISP系)とSelf(プロトタイプベース)の影響も強く受けた独特な言語なんです。名前だけで判断してはいけませんね。

アイデアの相互影響

興味深いのは、言語同士がお互いに良いアイデアを取り入れ合っていることです。

ガベージコレクション:LISPで発明され、Java、Python、Goなどに広まりました ラムダ式:関数型言語の概念が、Java 8やC++11など主流言語にも採用されました ジェネリクス:MLで始まった概念が、Java、C#、TypeScriptなどに広がりました

プログラミング言語は、お互いに学び合いながら進化してきたんです。

言語の歴史を振り返ったところで、いよいよ現在と未来の話に入っていきましょう。

2025年の最新動向:AIがプログラミングを変える

プログラミング言語人気ランキング(2025年)

現在最も人気のある言語トップ5を見てみましょう。

  1. Python(23.88%)- AI/ML開発の主力、史上最高の支持率
  2. C++(11.37%)- システムプログラミングで健在
  3. Java(10.66%)- 企業システムの定番
  4. C(9.84%)- 組み込みシステムで不動
  5. C#(4.12%)- Microsoftエコシステムの中核

特筆すべきは、PythonがJavaScriptを抜いてGitHub上で最も使用される言語になったことです。これはAI開発の爆発的な成長によるものです。

AIアシスタントの衝撃

2025年現在、開発者の80%がAIツールを使用しています。

GitHub Copilotは2000万人以上のユーザーを持ち、コードを55%速く書けるようになりました。すごい変化ですよね。

AIは単にコードを書くだけでなく、以下のような革新をもたらしています:

自然言語でプログラムの意図を説明すると、AIがコードを生成してくれます。「ユーザーの年齢を計算する関数を作って」と言えば、AIが書いてくれるんです。

バグの自動検出と修正提案もしてくれます。間違いを見つけて、「ここはこう直した方がいいですよ」と教えてくれるんです。

複数のAIモデルから最適なものを選択して使用することもできます。

約30秒でコードレビューを完了することも可能になりました。

ローコード・ノーコードの台頭

プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップでアプリケーションを作れる時代が来ています。

「ローコード・ノーコード」プラットフォームが急成長しており、2026年までに新規アプリケーションの75%がローコードで作られると予測されています。プログラミングの民主化が進んでいるんです。

現在の革新的な変化を見たところで、これからプログラミングはどこへ向かうのか考えてみましょう。

今後の展望:プログラミングはどこへ向かうのか

次の5〜10年の予測

専門家たちは、どんな未来を予測しているのでしょうか。

言語の進化について、以下のような予測があります。

Pythonは AI/ML分野での優位性を維持するでしょうが、パフォーマンスの課題に直面する可能性があります。

Rustは2026-2027年にはトップ10入りし、セキュリティ重視の流れを牽引すると予想されています。

WebAssemblyが新たな実行環境として普及し、どの言語でもウェブアプリが作れるようになるかもしれません。

量子コンピューター用の専門言語(Q#、Qiskitなど)が徐々に普及する可能性もあります。

プログラミングの未来像

最も興味深い変化は、プログラミングそのものの概念が変わりつつあることです。

AIアシスタントが当たり前になり、自然言語でプログラムの意図を説明すれば、AIがコードを生成してくれる時代が来ています。

でも、これはプログラマーが不要になることを意味しません。

むしろ、何を作るか、どう設計するかという創造的な部分がより重要になります。コンピューターサイエンスの基礎知識、問題解決能力、システム設計の理解は、AIの時代でも変わらず重要なんです。

まとめ:80年の進化が教えてくれること

プログラミング言語の歴史を振り返ると、技術の進歩は常に「人間にとって使いやすく」という方向に向かってきたことがわかります。

機械語の0と1から始まり、英語に近い高級言語へ、そして今やAIが手伝ってくれる時代になりました。

それぞれの時代に登場した言語は、その時代特有の問題を解決するために生まれました。FORTRANは科学計算を、COBOLはビジネス処理を、JavaScriptはウェブの対話性を、そしてRustはセキュリティの問題を解決してきました。

2025年の今、私たちは歴史上最もエキサイティングな時代にいます。

AIによる支援、量子コンピューティング、そして誰でもプログラミングできる環境。これらすべてが、次の80年でプログラミングがどのように進化するかを想像させてくれます。

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