インターネットでWebサイトを見たり、メールを送受信したりする時、実は裏側で「ポート番号」という数字が大活躍しているって知っていましたか?
ポート番号は、コンピュータ上で動いている複数のプログラムを区別するための番号です。マンションの部屋番号のようなイメージですね。同じ建物(IPアドレス)の中に、たくさんの部屋(ポート)があって、それぞれ違うサービスが動いているんです。
この記事では、ポート番号の基本から、よく使われる重要なポート番号の一覧、セキュリティの注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
ポート番号って何?基本を理解しよう

ポート番号は、コンピュータ内で動いている様々なプログラムやサービスを識別するための番号です。
マンションのたとえで理解しよう
分かりやすく例えると、こんな感じです。
- IPアドレス = マンションの住所
- ポート番号 = 部屋番号
- サービス = 各部屋に住んでいる人
郵便を届ける時、マンションの住所だけでは誰に渡せばいいか分かりませんよね。部屋番号があって初めて、正確に届けられます。
同じように、コンピュータに届いたデータは、IPアドレスで「どのコンピュータに送るか」が決まり、ポート番号で「そのコンピュータの中のどのプログラムに渡すか」が決まるんです。
実際の例
あなたがWebブラウザでサイトを見る時:
- ブラウザが「192.168.1.100のポート80番」にアクセス
- サーバーのポート80番でWebサーバーソフトが待機
- Webサーバーがページを返す
このポート80番は、HTTP(Webサイト)専用の標準的なポート番号なんです。
ポート番号の範囲:3つのカテゴリー
ポート番号は、0番から65535番まであります。この範囲は、3つのカテゴリーに分類されています。
ウェルノウンポート(Well-Known Ports):0~1023番
システムポートとも呼ばれる、最も重要なポート番号です。
IANA(インターネット番号割り当て機関)が管理していて、主要なサービスに予約されています。HTTP、FTP、SSHなど、誰もが使う基本的なサービスがここに割り当てられているんです。
通常、管理者権限がないと使えません。
登録済みポート(Registered Ports):1024~49151番
特定のアプリケーションやサービスのために登録されているポート番号です。
企業が自社のソフトウェア用に登録したり、データベースサーバーなどが使ったりします。ウェルノウンポートほど厳格ではありませんが、一般的に認識されている番号が多いですね。
動的・プライベートポート(Dynamic/Private Ports):49152~65535番
エフェメラルポートとも呼ばれ、自由に使える範囲です。
クライアント側のプログラムが、通信の際に一時的に使う番号として、この範囲から自動的に選ばれます。
主要なポート番号一覧:覚えておきたい重要な番号

よく使われる代表的なポート番号を、カテゴリー別に紹介します。
Web関連
ポート20・21(FTP)
- プロトコル:TCP
- 用途:ファイル転送プロトコル
- 説明:ファイルをアップロード・ダウンロードする時に使います。20番がデータ転送用、21番が制御用です。
ポート22(SSH)
- プロトコル:TCP
- 用途:セキュアシェル
- 説明:サーバーに安全にリモートログインする時に使います。暗号化されているので、パスワードなどが盗まれにくいんです。
ポート23(Telnet)
- プロトコル:TCP
- 用途:遠隔ログイン
- 説明:昔使われていたリモート接続。暗号化されていないので、現在はセキュリティ上推奨されません。
ポート25(SMTP)
- プロトコル:TCP
- 用途:メール送信
- 説明:メールを送る時に使うプロトコル。メールサーバー同士の通信にも使われます。
ポート53(DNS)
- プロトコル:TCP/UDP(主にUDP)
- 用途:ドメイン名解決
- 説明:「google.com」のような人間が読める名前を、IPアドレスに変換するサービス。インターネットの電話帳のような役割です。
ポート80(HTTP)
- プロトコル:TCP
- 用途:Web閲覧
- 説明:普通のWebサイトを見る時に使います。最も有名なポート番号の1つですね。
ポート110(POP3)
- プロトコル:TCP
- 用途:メール受信
- 説明:メールサーバーからメールをダウンロードする時に使います。
ポート143(IMAP)
- プロトコル:TCP
- 用途:メール受信
- 説明:POP3より高機能なメール受信プロトコル。サーバー上でメールを管理できます。
ポート443(HTTPS)
- プロトコル:TCP
- 用途:暗号化Web閲覧
- 説明:SSL/TLSで暗号化されたWebサイト。鍵マークが付いているサイトは、このポートを使っています。
ポート465(SMTPS)
- プロトコル:TCP
- 用途:暗号化メール送信
- 説明:SSL/TLSで暗号化されたSMTP。安全にメールを送信できます。
ポート587(SMTP Submission)
- プロトコル:TCP
- 用途:メール送信(クライアント用)
- 説明:メールクライアントからメールサーバーへの送信に推奨されるポート。STARTTLS暗号化に対応しています。
ポート993(IMAPS)
- プロトコル:TCP
- 用途:暗号化メール受信
- 説明:SSL/TLSで暗号化されたIMAP。
ポート995(POP3S)
- プロトコル:TCP
- 用途:暗号化メール受信
- 説明:SSL/TLSで暗号化されたPOP3。
データベース関連
ポート1433(Microsoft SQL Server)
- プロトコル:TCP
- 用途:データベース接続
- 説明:Microsoftのデータベースサーバーへの接続に使います。
ポート3306(MySQL/MariaDB)
- プロトコル:TCP
- 用途:データベース接続
- 説明:世界中で使われているオープンソースデータベース。WordPressなども使っています。
ポート5432(PostgreSQL)
- プロトコル:TCP
- 用途:データベース接続
- 説明:高機能なオープンソースデータベース。
ポート27017(MongoDB)
- プロトコル:TCP
- 用途:NoSQLデータベース接続
- 説明:JSONのようなドキュメント形式でデータを保存するデータベース。
ポート6379(Redis)
- プロトコル:TCP
- 用途:キャッシュ・データストア
- 説明:高速なインメモリデータストア。キャッシュやセッション管理に使われます。
リモート接続・管理
ポート3389(RDP)
- プロトコル:TCP
- 用途:リモートデスクトップ
- 説明:WindowsのリモートデスクトップProtocol。遠隔地からWindowsを操作できます。
ポート5900(VNC)
- プロトコル:TCP
- 用途:画面共有
- 説明:コンピュータの画面を遠隔から見たり操作したりできます。
ゲーム・メディア関連
ポート25565(Minecraft)
- プロトコル:TCP
- 用途:ゲームサーバー
- 説明:Minecraftのマルチプレイサーバーのデフォルトポート。
ポート27015(Steam/Source Engine)
- プロトコル:TCP/UDP
- 用途:ゲームサーバー
- 説明:Counter-Strikeなど、Valve社のゲームサーバーで使われます。
プロキシ・キャッシュ
ポート3128(Squid)
- プロトコル:TCP
- 用途:プロキシサーバー
- 説明:Webプロキシサーバーのデフォルトポート。
ポート8080(代替HTTP)
- プロトコル:TCP
- 用途:開発用Webサーバー、プロキシ
- 説明:ポート80が使えない時の代替として、よく使われます。開発環境でもよく見かけますね。
その他の重要なポート
ポート123(NTP)
- プロトコル:UDP
- 用途:時刻同期
- 説明:コンピュータの時計を正確に保つためのプロトコル。
ポート161・162(SNMP)
- プロトコル:UDP
- 用途:ネットワーク機器管理
- 説明:ルーターやスイッチなどのネットワーク機器を監視・管理します。
ポート389(LDAP)
- プロトコル:TCP/UDP
- 用途:ディレクトリサービス
- 説明:ユーザー情報などを一元管理するディレクトリサービス。企業のActive Directoryなどで使われます。
ポート636(LDAPS)
- プロトコル:TCP
- 用途:暗号化ディレクトリサービス
- 説明:SSL/TLSで暗号化されたLDAP。
TCPとUDPの違い
ポート番号には、TCPとUDPという2つのプロトコルがあります。
TCP(Transmission Control Protocol)
特徴:
- 信頼性が高い
- データが順番通りに届く
- 届いたか確認する仕組みがある
- 接続を確立してから通信する
用途:
Webサイト閲覧、メール送受信、ファイル転送など、「データが確実に届かないと困る」場合に使います。
たとえ:
書留郵便のようなもの。確実に届けるけど、少し時間がかかります。
UDP(User Datagram Protocol)
特徴:
- 高速
- 届いたか確認しない
- データが失われる可能性がある
- 接続確立の手順がない
用途:
動画配信、音声通話、オンラインゲームなど、「多少のデータ欠損より速度が大事」な場合に使います。
たとえ:
普通の郵便。速いけど、たまに届かないこともあります。
同じポート番号でも別物
ポート53番(DNS)のように、TCPとUDPの両方で使われるポート番号もあります。でも、TCPのポート53番とUDPのポート53番は別々のものとして扱われるんです。
ポート番号の確認方法
自分のコンピュータで、どのポート番号が使われているか確認できます。
Windowsの場合
コマンドプロンプトまたはPowerShellで次のコマンドを実行します。
netstat -anoオプションの意味:
- -a:すべての接続とリスニングポートを表示
- -n:アドレスとポート番号を数値で表示
- -o:各接続のプロセスIDを表示
特定のポートだけ調べたい場合:
netstat -ano | findstr :80macOS/Linuxの場合
ターミナルで次のコマンドを実行します。
netstat -anまたは、より詳細な情報を見るには:
lsof -i -P特定のポートだけ調べたい場合:
lsof -i :80ファイアウォールとポート番号

ファイアウォールは、不正なアクセスからコンピュータを守る防火壁です。ポート番号を使って、通信を許可したりブロックしたりします。
ポート開放とは?
「ポートを開ける」とは、特定のポート番号への外部からの接続を許可することです。
例えば、自宅でゲームサーバーを立てる場合、ルーターのファイアウォール設定で、そのゲームのポート番号への接続を許可する必要があります。
セキュリティの基本原則
必要最小限のポートだけ開く
使わないポートは閉じておきましょう。開いているポート番号が多いほど、攻撃者に狙われる可能性が高まります。
危険なポートは特に注意
Telnet(23番)やSMB(445番)など、攻撃に悪用されやすいポートは、必要がなければ閉じるべきです。
ポートスキャンに注意
攻撃者は、開いているポートを探すために「ポートスキャン」を行います。
不審なアクセスがないか、ログを定期的に確認しましょう。
ポート番号のカスタマイズ
標準のポート番号を変更することもできます。
なぜ変更するの?
セキュリティ向上
標準ポートを使っていると、自動スキャンで簡単に見つかってしまいます。別のポートに変更すれば、少し目立ちにくくなるんです。
ポート競合の回避
同じポートを使いたいプログラムが複数ある場合、どちらかを別のポートに変更する必要があります。
変更の例
SSHをポート22番から2222番に変更したり、Webサーバーをポート80番から8080番に変更したりできます。
ただし、標準ポート以外を使う場合、接続する側もポート番号を指定する必要があります。
ssh user@example.com -p 2222ポート転送(ポートフォワーディング)
ポート転送は、あるポート番号に来た通信を、別の場所に転送する技術です。
使う場面
自宅サーバーの公開
自宅のルーター(グローバルIPアドレス)のポート80番に来たアクセスを、内部のWebサーバー(プライベートIPアドレス)に転送します。
リモート開発
開発用サーバーの特定のポートに、ローカルからアクセスできるようにします。
SSHトンネリング
SSH接続を使って、安全にポート転送ができます。
ssh -L 8080:localhost:80 user@remote-serverこれで、自分のパソコンのlocalhost:8080にアクセスすると、リモートサーバーのポート80番に転送されます。
ポート番号に関するトラブルシューティング
よくある問題と解決方法を紹介します。
ポートが既に使用されている
エラーメッセージ:「Address already in use」「ポートは既に使用されています」
原因:
同じポート番号を使おうとしているプログラムが既に動いています。
解決法:
- そのプログラムを終了する
- 別のポート番号を使う
- どのプログラムが使っているか調べる(netstatやlsofコマンド)
ファイアウォールでブロックされている
サーバーは動いているのに接続できない場合、ファイアウォールが原因かもしれません。
確認方法:
- Windowsファイアウォールの設定を確認
- セキュリティソフトの設定を確認
- ルーターのファイアウォール設定を確認
接続がタイムアウトする
指定したポート番号にサービスが起動していないか、ネットワーク経路上でブロックされている可能性があります。
確認方法:
telnetやncコマンドで接続テストができます。
telnet example.com 80接続できれば、そのポートは開いています。
ポート番号の標準化と管理
ポート番号は、誰がどのように決めているのでしょうか。
IANA(Internet Assigned Numbers Authority)
インターネットの番号を管理する組織が、ポート番号を割り当てています。
ウェルノウンポート(0-1023)と登録済みポート(1024-49151)は、IANAに申請して登録できます。
RFC(Request for Comments)
多くの標準的なプロトコルとポート番号は、RFCという技術文書で定義されています。
例えば、HTTP(ポート80)はRFC 2616、HTTPS(ポート443)はRFC 2818で規定されているんです。
まとめ:ポート番号はネットワーク通信の要
ポート番号は、コンピュータ内のサービスを識別するための重要な番号です。
この記事のポイント:
- ポート番号は0~65535番まであり、3つのカテゴリーに分類される
- ウェルノウンポート(0-1023)には主要サービスが割り当てられている
- HTTP(80)、HTTPS(443)、SSH(22)、FTP(21)などが代表的
- TCPとUDPという2つのプロトコルがある
- データベースやゲームなど、様々なサービスが独自のポート番号を使う
- netstatやlsofコマンドで使用中のポートを確認できる
- ファイアウォールでポート番号を制御してセキュリティを保つ
- 必要最小限のポートだけ開き、不要なポートは閉じるのが原則
- ポート転送で柔軟なネットワーク構成ができる
ネットワークのトラブルシューティングやサーバー構築の際、ポート番号の知識は必ず役に立ちます。この記事で紹介した主要なポート番号を覚えておけば、IT関連の仕事でも大いに活用できますよ!
 
  
  
  
   
               
               
               
               
              

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