「PDFにalt属性を設定する方法が分からない」「アクセシビリティに配慮したPDFを作りたい」そんな悩みはありませんか?
実は、PDFにも画像のalt属性のような代替テキスト機能があります。視覚障害者の方やスクリーンリーダーを使用する方にとって、この設定は非常に重要なアクセシビリティ機能なんです。
この記事では、PDFの属性設定とalt属性の追加方法を、初心者の方にも分かりやすく解説します。法的な要求事項や実践的な設定テクニックも併せてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
PDFの属性とアクセシビリティの基本

PDFアクセシビリティとは
PDFアクセシビリティとは、障害のある方を含むすべての人がPDF文書を利用できるようにする仕組みです。
主要な要素
- 代替テキスト(alt属性):画像や図表の説明
- 見出し構造:論理的な文書構造
- 読み上げ順序:適切な情報の順番
- 色以外の情報伝達:色に依存しない表現
恩恵を受ける人々
- 視覚障害者の方
- 認知障害のある方
- 高齢者の方
- スクリーンリーダー使用者
誰もがアクセスできる文書作りが重要です。
PDFの属性情報
PDFには様々な属性情報を設定できます。
基本的な属性
- タイトル:文書の題名
- 作成者:文書の作成者名
- 件名:文書の概要
- キーワード:検索用のキーワード
アクセシビリティ関連属性
- 言語設定:文書の主言語
- タグ構造:論理的な文書構造
- 代替テキスト:画像や図表の説明
- タブ順序:フォーカス移動の順序
これらの設定により、支援技術が適切に動作します。
Adobe Acrobat でのalt属性設定
画像への代替テキスト追加
Adobe Acrobat Pro DC を使った代替テキストの設定方法を詳しく説明します。
基本的な設定手順
- PDFファイルを開く
- 「ツール」→「アクセシビリティ」を選択
- 「代替テキストを設定」をクリック
- 画像を選択して説明文を入力
効果的な代替テキストの書き方
- 画像の内容を簡潔に説明
- 文脈に応じた適切な詳細レベル
- 装飾的な画像は空白に設定
- グラフや表は数値情報も含める
例:「2023年売上グラフ:1月100万円から12月200万円へ右肩上がり」
タグ構造の設定
適切なタグ構造を設定する方法をご紹介します。
タグ構造の基本
- 「ツール」→「アクセシビリティ」→「読み上げ順序」
- 文書の論理的な構造を確認
- 見出しレベル(H1、H2など)を適切に設定
- リストや表の構造を正しく配置
構造化のポイント
- 見出しの階層を論理的に設定
- 段落と見出しを明確に区別
- リストは適切なタグで構造化
- 表にはヘッダーとデータセルを設定
読み上げ順序の調整
スクリーンリーダーでの読み上げ順序を最適化しましょう。
調整手順
- 「ツール」→「アクセシビリティ」→「読み上げ順序」
- ページ内の要素順序を確認
- ドラッグアンドドロップで順序を調整
- 「プレビュー」で読み上げ順序をテスト
順序設定のコツ
- 論理的な情報の流れに沿う
- 重要な情報を優先する
- ヘッダー・フッターの扱いに注意
- 多段組みレイアウトでの配慮
適切な順序により理解しやすい文書になります。
アクセシビリティチェック
設定後のアクセシビリティを確認する方法です。
チェック手順
- 「ツール」→「アクセシビリティ」→「フルチェック」
- チェック項目を選択して実行
- 問題箇所を確認して修正
- 再チェックで改善を確認
主要なチェック項目
- 代替テキストの設定状況
- 文書構造の適切性
- カラーコントラストの十分性
- フォームフィールドのラベル設定
Word からのアクセシブルPDF作成
Word での事前設定
Microsoft Word からアクセシブルなPDFを作成する方法をご紹介します。
文書作成時の注意点
- 見出しスタイルを適切に使用
- 画像に代替テキストを設定
- 表にはヘッダー行を指定
- 色以外の情報伝達手段を確保
代替テキストの設定
- 画像を右クリック
- 「図の書式設定」を選択
- 「レイアウトとプロパティ」タブ
- 「代替テキスト」に説明を入力
Word段階での設定が重要です。
アクセシブルなPDF出力
Word からアクセシブルなPDF を出力する手順です。
出力設定
- 「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPSの作成」
- 「オプション」をクリック
- 「アクセシビリティ用の文書構造タグ」にチェック
- 「PDF/A準拠」も選択を検討
出力後の確認
- 代替テキストが適切に転送されているか
- 見出し構造が保持されているか
- 読み上げ順序が正しいか
- 必要に応じて追加調整
PowerPoint での設定
PowerPoint からのアクセシブルPDF作成についても説明しましょう。
スライド作成時の配慮
- スライドタイトルを必ず設定
- 図表には詳細な代替テキストを追加
- 色だけでなく形や文字で情報を表現
- 読みやすいフォントサイズを使用
PDF出力設定 Word と同様に、アクセシビリティタグの出力を有効にして PDF を作成します。
無料ソフトでのアクセシビリティ設定
LibreOffice でのalt属性設定
無料のオフィススイート LibreOffice での設定方法をご紹介します。
Writer での設定
- 画像をダブルクリック
- 「画像」ダイアログボックスを開く
- 「オプション」タブを選択
- 「代替」フィールドに説明文を入力
PDF出力設定
- 「ファイル」→「PDFとしてエクスポート」
- 「一般」タブで「タグ付きPDF」にチェック
- 「ユーザーインターフェース」タブで詳細設定
- エクスポート実行
無料でもある程度のアクセシビリティ対応が可能です。
NVDA での読み上げテスト
無料のスクリーンリーダー NVDA を使った確認方法です。
テスト手順
- NVDA をダウンロード・インストール
- 作成したPDFを開く
- NVDA を起動してPDFを読み上げ
- 代替テキストや構造が適切か確認
確認ポイント
- 画像の代替テキストが読み上げられるか
- 見出し構造でナビゲーションできるか
- 情報の順序が論理的か
- 必要な情報が欠落していないか
実際の使用環境でのテストが重要です。
法的要求事項とガイドライン
WCAG 2.1 ガイドライン
Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1 の主要な要求事項をご紹介します。
レベルA要求事項
- すべての画像に代替テキスト
- 適切な見出し構造
- キーボードでの操作可能性
- 十分なカラーコントラスト
レベルAA要求事項
- より詳細な代替テキスト
- 複雑な表の適切な構造化
- フォーカス表示の明確化
- エラー修正の支援
多くの組織でレベルAA準拠が求められています。
日本の法的要件
日本におけるアクセシビリティ関連の法的要件について説明します。
JIS X 8341-3
- 日本のWebアクセシビリティ規格
- WCAG 2.0をベースに策定
- 公的機関では準拠が求められる場合がある
障害者差別解消法
- 合理的配慮の提供義務
- 情報アクセシビリティの確保
- 公的機関と一部民間企業が対象
法的な要求を理解した上で対応することが重要です。
企業での実装
企業でアクセシビリティ対応を進める際のポイントです。
導入段階
- 現状の課題把握
- 優先順位の設定
- 担当者の教育
- ツールや環境の整備
継続的な改善
- 定期的な監査実施
- ユーザーからのフィードバック収集
- 技術の更新に合わせた対応
- 組織全体での意識向上
実践的な設定テクニック
効果的な代替テキストの作成
質の高い代替テキストを作成するためのテクニックをお伝えします。
内容別の書き方
- 写真:重要な視覚的情報を簡潔に
- グラフ:傾向や重要な数値を含める
- 図表:構造や関係性を説明
- 装飾画像:空白または「装飾画像」と設定
長い説明が必要な場合
- 短い代替テキスト+詳細説明への誘導
- 本文中での詳細説明
- 別ファイルでの詳細データ提供
- 音声解説ファイルの提供
文脈に応じた適切な対応を選択しましょう。
複雑な表の構造化
複雑な表をアクセシブルにする方法を説明します。
表の構造設定
- ヘッダーセルの明確な指定
- データセルとの関連付け
- 結合セルの適切な処理
- 表のキャプション設定
スクリーンリーダー対応
- 行と列の見出しを明確に
- セルの内容を理解しやすく
- 必要に応じて表の説明を追加
- 複雑すぎる場合は分割を検討
フォームのアクセシビリティ
PDF フォームのアクセシビリティ向上方法です。
フォームフィールドの設定
- 各フィールドに分かりやすいラベル
- 必須項目の明確な表示
- エラーメッセージの適切な関連付け
- タブ順序の論理的な設定
使いやすさの向上
- 十分なフィールドサイズ
- 明確な入力形式の指示
- 確認・修正の機会提供
- 送信前の内容確認機能
検証とテスト方法
自動チェックツール
アクセシビリティを自動でチェックできるツールをご紹介します。
Adobe Acrobat の機能
- フルアクセシビリティチェック
- 代替テキストチェック
- 読み上げ順序の確認
- カラーコントラストの測定
外部ツール
- PAC 3(PDF Accessibility Checker)
- WebAIM の各種ツール
- axe DevTools(ブラウザ拡張)
- Lighthouse アクセシビリティ監査
複数のツールで確認することをおすすめします。
手動テスト
人による手動テストも重要な確認方法です。
キーボード操作テスト
- マウスを使わずにすべての操作が可能か
- タブ順序が論理的か
- フォーカス表示が明確か
- ショートカットキーが機能するか
スクリーンリーダーテスト
- NVDA、JAWS、VoiceOver等での確認
- 代替テキストの適切性
- 見出しナビゲーションの動作
- 情報の欠落がないか
実際の使用場面での検証が不可欠です。
まとめ
PDFの属性設定とalt属性の追加は、アクセシブルな文書作成の基本です。
重要なポイント
- 代替テキストは簡潔で分かりやすく
- 論理的な文書構造の設定
- 作成段階からのアクセシビリティ配慮
- 定期的な検証とテストの実施
設定のメリット
- より多くの人がアクセス可能
- 法的要求事項への対応
- SEO効果の向上
- ユニバーサルデザインの実現
継続的な改善
- 利用者からのフィードバック活用
- 新しい技術への対応
- 組織全体での意識向上
- 専門知識の継続的な学習
アクセシビリティは一度設定すれば終わりではなく、継続的な改善が必要です。まずは基本的な代替テキストの設定から始めて、徐々に高度な機能を活用していくことをおすすめします。
すべての人にとって使いやすい文書作りを心がけることで、より良い情報社会の実現に貢献できるでしょう。ぜひ実践してみてくださいね。
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