パソコンを使っていると、こんな状況に遭遇することがあります。
「突然動作が遅くなった…」
「ファンの音がうるさくなってきた…」
「何かのプログラムが暴走している気がする…」
「メモリが足りないのか、CPUが忙しいのか分からない…」
そんな時に役立つのが リアルタイム監視ツール です。
この記事では、パソコンの状態を常に監視できる便利なツールについて、Windows・Linux・macOS別に、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
リアルタイム監視ツールとは何か?
リアルタイム監視ツールとは、パソコンの動作状況を常に表示し続けるソフトウェアのことです。
一言で言うと、パソコンの「健康診断」を常に行い、状態をリアルタイムで見せてくれる道具です。
車のメーターに例えると分かりやすい
車の運転席には、様々なメーターがありますよね。
- スピードメーター:速度
- タコメーター:エンジンの回転数
- 燃料計:ガソリン残量
- 水温計:エンジンの温度
これらは、車の状態を常に教えてくれます。
パソコンのリアルタイム監視ツールも同じです:
- CPU使用率:プロセッサーの負荷
- メモリ使用量:RAMの使用状況
- ディスクI/O:ストレージの読み書き
- ネットワーク使用量:通信量
何が監視できるのか?
リアルタイム監視ツールで確認できる主な情報:
CPU(プロセッサー):
- 使用率(何%使われているか)
- 各コアの使用状況
- どのプログラムがCPUを使っているか
- 動作周波数
- 温度(ツールによる)
メモリ(RAM):
- 使用量と空き容量
- 使用率(何%使われているか)
- どのプログラムがメモリを使っているか
- スワップの使用状況
ディスク(ストレージ):
- 読み書き速度
- 使用中のプログラム
- I/O待ち状態のプロセス
ネットワーク:
- 送信速度と受信速度
- どのプログラムが通信しているか
- 接続数
プロセス(実行中のプログラム):
- 実行中のプログラム一覧
- 各プログラムのリソース使用量
- プログラムの起動時間
- プログラムの優先度
なぜ必要なのか?
理由1:問題の特定
「重い」という感覚を、具体的な数値で確認できます。
理由2:トラブルシューティング
どのプログラムが問題を起こしているか、すぐに分かります。
理由3:パフォーマンスの最適化
どのリソースがボトルネック(障害)になっているか把握できます。
理由4:予防保守
問題が深刻になる前に、兆候を察知できます。
理由5:学習
パソコンの動作原理を理解する助けになります。
Windows向けリアルタイム監視ツール
Windowsで使える監視ツールを紹介します。
タスクマネージャー(標準搭載)
起動方法:
- Ctrl + Shift + Esc
- またはCtrl + Alt + Delete → タスクマネージャー
- タスクバー右クリック → タスクマネージャー
特徴:
- Windows標準装備
- 追加インストール不要
- 基本的な情報を確認可能
見るべきタブ:
プロセスタブ:
- 実行中のプログラム一覧
- CPU、メモリ、ディスク、ネットワークの使用量
パフォーマンスタブ:
- CPUの詳細グラフ
- メモリの使用状況
- ディスクとネットワークの統計
詳細タブ:
- より詳しいプロセス情報
- プロセスIDやユーザー名
使い方のコツ:
- 「CPU」列をクリックして使用率でソート
- 使用率が高いプログラムを特定
- 不要なら右クリック → タスクの終了
リソースモニター(標準搭載)
起動方法:
- タスクマネージャー → パフォーマンスタブ → 「リソースモニターを開く」
- または「perfmon /res」をファイル名を指定して実行
特徴:
- タスクマネージャーより詳細
- リアルタイムグラフ
- ネットワーク接続の詳細
確認できる情報:
- どのプロセスがどのファイルを開いているか
- ディスクの読み書きをしているプロセス
- ネットワーク接続とポート
Process Explorer(無料・高機能)
提供元: Microsoft(元Sysinternals)
ダウンロード:
Microsoft公式サイトから無料でダウンロード可能
特徴:
- タスクマネージャーの上位版
- プロセスの親子関係が分かる
- 各プロセスが使っているDLLやハンドルを表示
- カラフルで見やすい
おすすめポイント:
- どのプログラムがファイルをロックしているか分かる
- CPUやメモリの履歴グラフ
- プロセスツリー表示が便利
Process Hacker 2(無料・オープンソース)
特徴:
- Process Explorerに似た高機能ツール
- オープンソース
- 軽量で高速
機能:
- 詳細なプロセス情報
- ネットワーク接続の監視
- サービスの管理
- GPU使用率の表示
HWiNFO(無料・ハードウェア監視特化)
特徴:
- ハードウェアの温度監視に特化
- センサー情報が非常に詳細
- ログ記録機能
監視できる情報:
- CPU温度
- GPU温度
- マザーボード温度
- ファン回転数
- 電圧
用途:
- オーバークロック時の監視
- 冷却システムのチェック
- 温度によるトラブルシューティング
Open Hardware Monitor(無料・オープンソース)
特徴:
- 軽量なハードウェア監視ツール
- 温度、電圧、ファン速度を表示
- タスクトレイに常駐可能
メリット:
- インストール不要で動作
- シンプルで分かりやすい
Linux向けリアルタイム監視ツール
Linuxで使える強力な監視ツールです。
top(標準搭載)
起動方法:
top
特徴:
- ほぼすべてのLinuxに標準装備
- ターミナル上で動作
- リアルタイム更新
基本的な見方:
top - 10:45:23 up 5 days, 3:21, 2 users, load average: 0.15, 0.20, 0.18
Tasks: 245 total, 1 running, 244 sleeping, 0 stopped, 0 zombie
%Cpu(s): 5.2 us, 2.1 sy, 0.0 ni, 92.5 id, 0.1 wa, 0.0 hi, 0.1 si, 0.0 st
MiB Mem : 15889.5 total, 8234.6 free, 4123.2 used, 3531.7 buff/cache
MiB Swap: 2048.0 total, 2048.0 free, 0.0 used. 11234.5 avail Mem
PID USER PR NI VIRT RES SHR S %CPU %MEM TIME+ COMMAND
1234 user 20 0 1234567 123456 12345 S 5.2 0.8 1:23.45 firefox
主要な情報:
- load average:システム負荷(1分、5分、15分の平均)
- %CPU:CPU使用率
- %MEM:メモリ使用率
- PID:プロセスID
- COMMAND:プログラム名
便利なキー操作:
- 1:各CPUコアを個別表示
- Shift + M:メモリ使用量でソート
- Shift + P:CPU使用率でソート
- k:プロセスを終了(kill)
- q:topを終了
htop(topの改良版)
インストール:
# Ubuntu/Debian
sudo apt install htop
# Fedora/RHEL
sudo dnf install htop
# Arch Linux
sudo pacman -S htop
起動方法:
htop
特徴:
- topより見やすくカラフル
- マウス操作が可能
- CPUやメモリの視覚的なバー表示
- プロセスツリー表示
操作方法:
- F1:ヘルプ
- F2:設定
- F3:検索
- F4:フィルター
- F5:ツリー表示
- F6:ソート項目変更
- F9:プロセスを終了
- F10:終了
glances(総合監視ツール)
インストール:
# Ubuntu/Debian
sudo apt install glances
# Fedora/RHEL
sudo dnf install glances
# pipでインストール
pip install glances
起動方法:
glances
特徴:
- 1画面にすべての情報を表示
- カラフルで見やすい
- 自動的に問題箇所を強調表示
- Webインターフェースも提供
表示される情報:
- CPU使用率(コア別)
- メモリとスワップ
- ネットワークトラフィック
- ディスクI/O
- ファイルシステムの使用率
- プロセス一覧
- センサー情報(温度など)
- Dockerコンテナ(ある場合)
操作キー:
- 1:CPU詳細表示
- d:ディスク詳細
- n:ネットワーク詳細
- s:センサー情報
- q:終了
iotop(ディスクI/O監視特化)
インストール:
# Ubuntu/Debian
sudo apt install iotop
# Fedora/RHEL
sudo dnf install iotop
起動方法:
sudo iotop
特徴:
- ディスクの読み書きに特化
- どのプロセスがディスクを使っているか一目瞭然
- 読み書き速度をリアルタイム表示
用途:
- ディスクが遅い原因を特定
- バックグラウンドで動くプロセスの発見
nethogs(ネットワーク監視特化)
インストール:
# Ubuntu/Debian
sudo apt install nethogs
# Fedora/RHEL
sudo dnf install nethogs
起動方法:
sudo nethogs
特徴:
- プロセスごとのネットワーク使用量を表示
- どのプログラムが通信しているか分かる
- 送信・受信を分けて表示
用途:
- 帯域を占有しているプログラムの特定
- 不正な通信の検出
nmon(IBM製の総合監視ツール)
インストール:
# Ubuntu/Debian
sudo apt install nmon
# Fedora/RHEL
sudo dnf install nmon
起動方法:
nmon
特徴:
- IBMが開発した監視ツール
- 対話的なメニュー
- データをファイルに記録可能
操作方法:
- c:CPUグラフ表示
- m:メモリ統計
- d:ディスク統計
- n:ネットワーク統計
- t:上位プロセス
- q:終了
btop++(最新の美しい監視ツール)
インストール:
# snapを使う場合
sudo snap install btop
# ソースからビルド
git clone https://github.com/aristocratos/btop.git
cd btop
make
sudo make install
特徴:
- 非常に美しいUI
- マウス操作対応
- グラフが見やすい
- テーマのカスタマイズ可能
- 最新の技術で作られている
dstat(統計情報の総合表示)
インストール:
# Ubuntu/Debian
sudo apt install dstat
起動方法:
dstat
特徴:
- vmstat、iostat、netstatの機能を統合
- カスタマイズ性が高い
- 複数の統計を1行で表示
macOS向けリアルタイム監視ツール
macOSで使える監視ツールです。
アクティビティモニタ(標準搭載)
起動方法:
- アプリケーション → ユーティリティ → アクティビティモニタ
- またはSpotlightで「アクティビティモニタ」と検索
特徴:
- macOS標準装備
- 分かりやすいGUI
- リアルタイムグラフ
5つのタブ:
- CPU:プロセッサー使用率
- メモリ:RAM使用状況
- エネルギー:バッテリー消費
- ディスク:ストレージの読み書き
- ネットワーク:通信量
iStat Menus(有料・高機能)
特徴:
- メニューバーに常駐
- カスタマイズ性が高い
- 美しいデザイン
監視できる情報:
- CPU使用率と温度
- メモリ使用量
- ネットワーク速度
- ディスクアクティビティ
- バッテリー情報
- 天気予報(おまけ機能)
Stats(無料・オープンソース)
特徴:
- iStat Menusの無料代替
- メニューバーに表示
- 軽量
ダウンロード:
GitHub(github.com/exelban/stats)から無料で入手可能
Terminal(標準搭載のtopコマンド)
起動方法:
top
macOS版のtopは、Linux版と少し異なりますが基本は同じです。
htop for macOS
インストール(Homebrewが必要):
brew install htop
起動:
htop
クロスプラットフォームツール
どのOSでも使えるツールです。
Netdata(Webベース監視)
特徴:
- ブラウザで確認できる
- リアルタイムグラフが美しい
- サーバー監視に最適
- 警告機能付き
インストール(Linux):
bash <(curl -Ss https://my-netdata.io/kickstart.sh)
アクセス:
ブラウザで http://localhost:19999
Grafana + Prometheus(本格的な監視システム)
特徴:
- エンタープライズレベルの監視
- カスタマイズ可能なダッシュボード
- 長期的なデータ保存
- 警告通知機能
用途:
- サーバー監視
- 複数マシンの統合監視
- 本格的な運用環境
実践的な使用例
実際の場面での使い方を紹介します。
例1:パソコンが重い原因を特定する
ステップ1:全体像を把握
Windowsの場合:
Ctrl + Shift + Esc でタスクマネージャーを開く
→ パフォーマンスタブを確認
Linuxの場合:
htop
ステップ2:ボトルネックを特定
- CPUが100%近い → CPU負荷が高い
- メモリが90%以上 → メモリ不足
- ディスクが100% → ディスクI/Oの問題
ステップ3:原因プロセスを特定
使用率でソートして、上位のプロセスを確認します。
例2:メモリリークを発見する
メモリリークとは:
プログラムがメモリを解放せず、使用量が増え続ける現象
確認方法:
# Linuxの場合
htop
# Shift + M でメモリ使用量でソート
# 時間経過でメモリ使用量が増え続けるプロセスを探す
対処:
問題のプロセスを再起動する
例3:ネットワーク通信を監視する
目的: どのプログラムがインターネットを使っているか確認
Linuxの場合:
sudo nethogs
Windowsの場合:
- タスクマネージャー → プロセスタブ → ネットワーク列でソート
例4:温度を監視する(オーバーヒート対策)
目的: CPUやGPUが熱暴走していないか確認
Windowsの場合:
- HWiNFOを起動してセンサー情報を表示
Linuxの場合:
# sensorsコマンドをインストール
sudo apt install lm-sensors
sudo sensors-detect # 初回のみ
# 温度を表示
sensors
危険なサイン:
- CPU温度が80℃以上
- GPU温度が85℃以上
例5:ディスクが遅い原因を特定
目的: どのプログラムがディスクを酷使しているか
Linuxの場合:
sudo iotop
Windowsの場合:
- リソースモニターを開く → ディスクタブ
トラブルシューティングでの活用
具体的な問題への対処法です。
問題1:パソコンの起動が遅い
確認方法:
Windowsの場合:
- タスクマネージャー → スタートアップタブ
- 起動時に自動実行されるプログラムを確認
- 不要なものを無効化
Linuxの場合:
systemd-analyze blame
起動時間がかかっているサービスが表示されます。
問題2:突然動作が重くなる
確認手順:
- 監視ツールを起動したまま待機
htop
- 重くなった瞬間を確認
- どのプロセスがリソースを使っているか
- CPU、メモリ、ディスクのどれが問題か
- 問題のプロセスに対処
- 不要なら終了
- 必要なら設定を見直す
問題3:ファンがうるさい
原因の特定:
- 温度を確認
- 高温が原因でファンが全力回転
- CPUやGPU使用率を確認
- 何かのプログラムが負荷をかけている
- バックグラウンドプロセスをチェック
- Windows Update
- ウイルススキャン
- バックアップソフト
問題4:インターネットが遅い
確認方法:
Linuxの場合:
sudo nethogs
Windowsの場合:
- タスクマネージャー → パフォーマンスタブ → イーサネット/Wi-Fi
- どのプロセスが帯域を使っているか確認
ベストプラクティス
効果的に監視ツールを使う方法です。
1. 常時監視は必要ない
やるべきこと:
- 問題が起きた時に起動
- 定期的に状態をチェック
やらないこと:
- 監視ツール自体がリソースを使う
- 24時間起動しっぱなし(サーバー以外)
2. 複数のツールを使い分ける
総合監視: htop、glances
ディスク専門: iotop
ネットワーク専門: nethogs
温度監視: sensors、HWiNFO
3. ベースラインを把握する
平常時の状態を知る:
- 通常時のCPU使用率
- 通常時のメモリ使用量
- アイドル時の温度
異常を判断するための基準になります。
4. ログを記録する
長期的な問題の発見:
# glancesでログ記録
glances --export-csv /tmp/glances.csv
# nmonでログ記録
nmon -f -s 10 -c 360
5. 警告閾値を設定
自動的に通知:
- CPU使用率が80%を超えたら警告
- メモリ使用率が90%を超えたら警告
- 温度が75℃を超えたら警告
NetdataやGrafanaで設定可能です。
まとめ:適切な監視でパソコンを快適に
リアルタイム監視ツールは、パソコンの健康状態を把握するための必須ツールです。
この記事のポイント:
- 監視ツールでCPU、メモリ、ディスク、ネットワークを確認
- WindowsならタスクマネージャーとProcess Explorer
- Linuxならhtop、glances、iotop
- macOSならアクティビティモニタとStats
- 問題が起きたらまず監視ツールで原因を特定
OS別おすすめツール:
Windows:
- 標準:タスクマネージャー
- 高機能:Process Explorer
- 温度監視:HWiNFO
Linux:
- 総合:htop、glances
- ディスク:iotop
- ネットワーク:nethogs
macOS:
- 標準:アクティビティモニタ
- 常駐型:Stats(無料)
基本的な使い方:
# Linux
htop # 総合監視
sudo iotop # ディスク監視
sudo nethogs # ネットワーク監視
# Windows
タスクマネージャー(Ctrl + Shift + Esc)
覚えておきたいこと:
- 問題が起きたらまず監視ツールを起動
- CPU、メモリ、ディスクのどれがボトルネックか確認
- 原因のプロセスを特定して対処
- 平常時の状態を把握しておく
- 必要に応じて複数のツールを使い分ける
リアルタイム監視ツールは、パソコンの「今」を教えてくれる頼もしい相棒です。
「なんか重い」という曖昧な感覚を、具体的な数値とプロセス名に変えてくれます。
ぜひこの記事で紹介したツールを使って、あなたのパソコンを快適に保ってくださいね!
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