毎日大量に届くメールを自動で整理してくれる、Outlookの「仕分けルール」。とても便利な機能ですよね。
ところが、新しいルールを作ろうとしたら、こんなエラーメッセージが表示された。
「現時点ではルールを作成できません」
「1つ以上のルールをMicrosoft Exchangeにアップロードできず、非アクティブ化されています」
「レジストリまたはインストールに問題があるため、操作は失敗しました」
せっかく便利に使っていたのに、突然使えなくなるなんて…。手動でメールを仕分けするのは、時間がかかって大変です。
でも安心してください。このエラーは、ほとんどの場合、適切な対処をすれば解決できます。
この記事では、「現時点ではルールを作成できません」というエラーの原因と、状況に応じた解決方法を、初心者の方にも分かりやすく説明していきます。
- まず理解しよう:Outlookのルールって何?
- なぜ「現時点ではルールを作成できません」エラーが出るの?
- 【解決法1】既存のルールを確認・整理する(最も基本的)
- 【解決法2】すべてのルールを削除して再作成する
- 【解決法3】ルールの容量制限を増やす(管理者権限が必要)
- 【解決法4】クライアント側ルールをサーバー側ルールに変換
- 【解決法5】20人以上の条件を配布グループに置き換える
- 【解決法6】削除されたフォルダーを参照するルールを修正
- 【解決法7】新しいOutlookプロファイルを作成する
- 【解決法8】Outlookを最新バージョンに更新する
- 【解決法9】Exchangeキャッシュモードを有効にする
- 【解決法10】Outlookを修復する
- トラブルシューティング:よくある質問と回答
- 予防策:今後エラーを起こさないために
- まとめ:焦らず段階的に解決しよう
まず理解しよう:Outlookのルールって何?

エラーの解決方法に入る前に、Outlookのルールについて簡単に理解しておきましょう。
ルールの基本的な仕組み
Outlookのルールとは、メールを自動的に処理するための指示書のようなものです。
例えば:
- 特定の人からのメールを専用フォルダーに移動
- 件名に「重要」が含まれるメールにフラグを立てる
- 特定のメールを自動的に削除
- メールが届いたときに音で知らせる
こうした処理を、あなたが何もしなくても自動的に実行してくれます。
サーバー側ルールとクライアント側ルール
実は、Outlookのルールには2種類あります。
サーバー側ルール:
- Exchangeサーバー上で実行される
- Outlookを起動していなくても動作する
- どのデバイスからアクセスしても同じルールが適用される
- 基本的なメール操作(移動、削除、フラグなど)が可能
クライアント側ルール:
- パソコン上のOutlookアプリで実行される
- Outlookを起動している時だけ動作する
- 音を鳴らす、デスクトップ通知など、パソコン固有の機能を使える
- ローカルの.pstファイルへの移動が可能
重要:新しいOutlookやWeb版Outlookでは、クライアント側ルールはサポートされていません。これがエラーの原因になることもあります。
なぜ「現時点ではルールを作成できません」エラーが出るの?
エラーが発生する主な原因は、以下の7つです。
原因1:ルールの容量制限に達している
Exchangeサーバーには、ルールを保存できる容量に制限があります。
- デフォルトの制限:64KB
- 最大制限:256KB
ルールは一つ一つが小さなファイルのようなもので、長い名前や複雑な条件を設定すると、どんどん容量を消費します。
制限に達すると、新しいルールが作れなくなり、既存のルールも無効化されることがあります。
原因2:破損したルールが存在する
何らかの理由でルールのデータが壊れると、新しいルールの作成がブロックされることがあります。
破損の原因:
- Outlookの強制終了
- ネットワーク接続の突然の切断
- Officeの不完全なアップデート
- ルールの移行中のエラー
原因3:クライアント側ルールの互換性問題
従来のOutlookで作ったクライアント側ルールを、新しいOutlookやWeb版で使おうとすると、エラーが発生します。
新しいOutlookは、クライアント側ルールをサポートしていないためです。
原因4:20人以上が条件に含まれている
クライアント側ルールで、グローバルアドレスリスト(GAL)から20人以上を選択すると、エラーが発生します。
例:「AさんとBさんと…(合計20人以上)からのメール」という条件を設定した場合。
原因5:参照先のフォルダーが削除されている
ルールで指定した移動先フォルダーが削除されていると、ルールがエラーになり、新しいルールの作成もできなくなることがあります。
原因6:Outlookのプロファイルが破損
Outlookプロファイル(アカウント設定)自体に問題があると、ルール機能全体が動作しなくなります。
原因7:Outlookのバージョンが古い
古いバージョンのOutlookでは、既知のバグによりルールが正常に機能しないことがあります。
【解決法1】既存のルールを確認・整理する(最も基本的)
まずは、現在のルールの状態を確認しましょう。
ルール管理画面を開く
- Outlookを起動
- 「ファイル」タブをクリック
- 「ルールと通知の管理」を選択(または「ルールの管理とアラート」)
ここに、すべてのルールが一覧表示されます。
エラーになっているルールを探す
リストを見て、以下のような表示がないか確認してください:
- 赤い文字で表示されている
- 「(エラー)」というラベルが付いている
- チェックボックスがグレーアウトしている
これらは破損したルールです。
エラーになっているルールを削除
- エラーのルールを選択
- 「削除」ボタンをクリック
- 確認画面で「はい」をクリック
破損したルールを削除すると、新しいルールが作成できるようになることがあります。
不要なルールを削除して容量を確保
もう使っていないルールや、同じ処理を複数のルールで行っている場合は、整理しましょう。
削除の手順:
- 不要なルールを選択
- 「削除」ボタンをクリック
- 「はい」をクリック
ルール名を短くする
ルールの名前が長いと、それだけで容量を消費します。
名前変更の手順:
- ルールを選択
- 「ルールの変更」→「ルール名の変更」
- 短い名前を入力(例:「山田さんからのメール」→「山田」)
- 「OK」をクリック
【解決法2】すべてのルールを削除して再作成する
ルールが破損している場合、一度すべて削除して、ゼロから作り直すのが確実です。
重要な注意事項
この方法は、すべてのルールを削除します。複数のアカウントを設定している場合、すべてのアカウントのルールが削除されます。
事前に、現在のルール設定をメモしておくか、スクリーンショットを撮っておきましょう。
すべてのルールを削除する手順
ステップ1:Outlookを終了
タスクマネージャーで、Outlookのプロセスが完全に終了していることを確認してください。
ステップ2:ファイル名を指定して実行
- Windowsキー + R を押す
- 「outlook.exe /cleanrules」と入力
- Enterキーを押す
ステップ3:Outlookが起動
すべてのルールが削除された状態でOutlookが起動します。
ステップ4:新しいルールを作成
メモやスクリーンショットを見ながら、必要なルールを一つずつ再作成します。
注意:再作成時は、以前のルールをインポートするのではなく、必ず新規に作成してください。インポートすると、破損したデータも一緒に戻ってしまう可能性があります。
【解決法3】ルールの容量制限を増やす(管理者権限が必要)
会社のExchangeサーバーを使っている場合、IT管理者にルールの容量制限を増やしてもらえます。
個人で確認できること
現在のルール容量がどのくらい使われているかは、一般ユーザーでは確認できません。
ただし、「すべてのルールを格納するための領域が不足している」というエラーメッセージが表示されている場合、ほぼ確実に容量不足です。
IT管理者への依頼内容
IT部門やシステム管理者に、以下のように依頼してください:
「Outlookのルール容量制限を現在の設定から増やしていただけますか?可能であれば最大の256KBまで増やしていただけると助かります。」
管理者が実行するコマンド(参考情報)
IT管理者は、Exchange管理シェルで以下のコマンドを実行します:
Set-Mailbox メールアドレス -RulesQuota 256KB
これにより、そのメールボックスのルール容量が256KBに設定されます。
容量を増やせない場合の対策
管理者が容量を増やせない場合は、以下の方法でルールのサイズを削減しましょう:
- ルール名を短くする
- 類似したルールを統合する
- 不要なルールを削除する
- 複雑な条件を簡略化する
【解決法4】クライアント側ルールをサーバー側ルールに変換
新しいOutlookやWeb版Outlookを使っている場合、クライアント側ルールが原因でエラーが出ることがあります。
クライアント側ルールの見分け方
ルール管理画面で、ルール名の横に「(クライアント専用)」と表示されているものが、クライアント側ルールです。
サーバー側ルールへの変換手順
残念ながら、直接変換する機能はありません。同じ内容をサーバー側ルールとして再作成する必要があります。
ステップ1:現在のルール内容をメモ
クライアント専用ルールの設定内容(条件、処理、例外)をメモします。
ステップ2:クライアント専用ルールを削除
- ルール管理画面でクライアント専用ルールを選択
- 「削除」をクリック
ステップ3:新しいルールを作成
- 「新しいルール」をクリック
- メモした内容を元に設定
- サーバー側でできる処理のみを使用(音を鳴らす、などのクライアント専用機能は使わない)
どうしてもクライアント側の機能が必要な場合
音を鳴らす、デスクトップ通知など、クライアント側でしかできない処理が必要な場合:
- 従来のOutlook(デスクトップ版)を使い続ける
- 新しいOutlookやWeb版では使用しない
新しいOutlookとクラシックOutlookは、同じパソコンに共存させることができます。
【解決法5】20人以上の条件を配布グループに置き換える

クライアント側ルールで20人以上を指定している場合のエラー解決方法です。
問題のあるルールの例
「AさんとBさんとCさんと…(合計25人)からのメール」という条件を設定している場合、エラーが発生します。
配布グループを使った解決方法
ステップ1:配布グループを作成
これはIT管理者に依頼する必要があります。
「営業部メンバー」のような配布グループを作成してもらい、その中に25人全員を登録してもらいます。
ステップ2:ルールで配布グループを指定
- 新しいルールを作成
- 条件で「差出人」を選択
- 個別の人ではなく、配布グループを指定
- これで20人以上でもエラーが出ません
【解決法6】削除されたフォルダーを参照するルールを修正
移動先フォルダーが削除されているルールは、エラーの原因になります。
エラーになっているルールの確認
クラシックOutlookの場合、削除されたフォルダーを参照するルールは、赤い文字で表示され「(エラー)」というラベルが付きます。
ルールの修正手順
ステップ1:ルールを選択
- 「ファイル」→「ルールと通知の管理」
- エラーになっているルールを選択
ステップ2:フォルダーを変更
- ルールの説明文の中で、フォルダー名が下線付きで表示されている部分をクリック
- 新しい移動先フォルダーを選択
- 「OK」をクリック
ステップ3:ルールを保存
「適用」→「OK」をクリックして、変更を保存します。
新しいOutlookの場合
新しいOutlookでは、削除されたフォルダーを参照するルールは視覚的に分かりにくいです。
ルールが動作しない場合:
- ルール設定画面を開く
- 鉛筆アイコンをクリックして編集
- 「アクションを追加」の部分が空白になっていたら、フォルダーが削除されています
- 新しいフォルダーを選択して保存
【解決法7】新しいOutlookプロファイルを作成する
プロファイル(アカウント設定)自体が破損している場合、新しいプロファイルを作成します。
プロファイル作成の前準備
新しいプロファイルを作成すると、現在のプロファイルの設定は引き継がれません。
事前に以下をメモしておきましょう:
- メールアカウントの情報(メールアドレスとパスワード)
- 現在のルール設定
- 署名の内容
新しいプロファイルの作成手順
ステップ1:Outlookを終了
Outlookを完全に終了し、タスクマネージャーでプロセスが残っていないことを確認します。
ステップ2:コントロールパネルを開く
- Windowsの検索ボックスに「コントロールパネル」と入力
- コントロールパネルを開く
- 表示方法を「大きいアイコン」に変更
- 「メール(Microsoft Outlook)」をクリック
ステップ3:プロファイルを追加
- 「プロファイルの表示」ボタンをクリック
- 「追加」ボタンをクリック
- プロファイル名を入力(例:「Outlook新規」)
- 「OK」をクリック
ステップ4:アカウントを設定
- メールアドレスとパスワードを入力
- ウィザードの指示に従って設定を完了
ステップ5:新しいプロファイルを既定に設定
- プロファイル一覧画面で「常に使用するプロファイル」を選択
- ドロップダウンから新しいプロファイルを選択
- 「OK」をクリック
ステップ6:Outlookを起動
新しいプロファイルでOutlookが起動します。ルールを再作成してみてください。
【解決法8】Outlookを最新バージョンに更新する
古いバージョンのOutlookには、ルール関連のバグがあることがあります。
更新プログラムのインストール
方法1:Outlook内から更新
- Outlookを起動
- 「ファイル」→「Officeアカウント」
- 「更新オプション」→「今すぐ更新」
方法2:Windows Updateから更新
- Windowsの「設定」を開く
- 「Windows Update」を選択
- 「更新プログラムのチェック」をクリック
- Officeの更新があればインストール
更新後の確認
更新後、Outlookを再起動して、ルールが作成できるか試してみてください。
【解決法9】Exchangeキャッシュモードを有効にする
Exchangeキャッシュモードを有効にすると、ルールがローカルに保存され、動作が安定します。
キャッシュモードの確認と有効化
- 「ファイル」→「アカウント設定」→「アカウント設定」
- Exchangeアカウントを選択して「変更」をクリック
- 「Exchangeキャッシュモードを使用する」にチェックが入っているか確認
- チェックが入っていない場合はチェックを入れる
- 「次へ」→「完了」をクリック
- Outlookを再起動
【解決法10】Outlookを修復する
Outlookのインストール自体に問題がある場合の対処法です。
クイック修復の手順
ステップ1:コントロールパネルを開く
- Windowsの検索で「コントロールパネル」と入力
- 「プログラム」→「プログラムのアンインストール」を選択
ステップ2:Officeを修復
- リストから「Microsoft Office」または「Microsoft 365」を探す
- 右クリックして「変更」を選択
- 「クイック修復」を選択して「修復」をクリック
- 修復が完了したら「閉じる」をクリック
ステップ3:Outlookを起動
修復後、Outlookを起動して、ルールが作成できるか確認します。
オンライン修復(クイック修復で解決しない場合)
- 上記の手順で「オンライン修復」を選択
- インターネット接続が必要で、時間がかかります
- より徹底的に修復されます
トラブルシューティング:よくある質問と回答
Q. 「レジストリまたはインストールに問題がある」というエラーが出る
A. Outlookの再インストールは必要ありません
このエラーメッセージは誤解を招きやすいのですが、実際には再インストールが必要なケースはまれです。
まず「解決法2」のすべてのルールを削除する方法を試してください。多くの場合、これで解決します。
Q. ルールを削除したくない。バックアップできる?
A. ルールをエクスポートできます
エクスポート手順:
- 「ファイル」→「ルールと通知の管理」
- 「オプション」ボタンをクリック
- 「ルールのエクスポート」を選択
- 保存場所を選択してファイル名を入力
- 「保存」をクリック
.rwzファイルとして保存されます。
注意:ただし、破損したルールをエクスポート→インポートすると、問題も一緒に戻ってきます。新規作成することをおすすめします。
Q. 新しいOutlookとクラシックOutlookで、ルールが同期されない
A. クライアント側ルールは同期されません
サーバー側ルールはどちらでも動作しますが、クライアント側ルールは作成したバージョンでしか動作しません。
新しいOutlookでは、クライアント側ルールは作成できません。クラシックOutlookのみで使用してください。
Q. Web版Outlookでルールを作成できない
A. 破損したルールが原因かもしれません
Web版Outlookでルール作成ができない場合:
- デスクトップ版Outlookでルール管理画面を開く
- エラーになっているルールを削除
- 再度Web版で試す
または、MFCMAPIというツールを使って破損したルールを削除する方法もありますが、これは上級者向けです。IT管理者に相談してください。
Q. どのルールがどれくらい容量を使っているか知りたい
A. 一般ユーザーには確認する方法がありません
残念ながら、個々のルールのサイズを確認する機能は、Outlookにありません。
ただし、一般的に以下のルールはサイズが大きくなります:
- ルール名が長い
- 複数の条件を組み合わせている
- 多くの例外を設定している
予防策:今後エラーを起こさないために
ルール作成時のベストプラクティス
1. ルール名は短く
「営業部の山田太郎さんからの重要なメール」→「山田」
2. ルールを定期的に見直す
月に一度、不要なルールがないかチェックしましょう。
3. 似たルールは統合する
- 悪い例:「Aさんからのメール→営業フォルダ」「Bさんからのメール→営業フォルダ」
- 良い例:「AさんまたはBさんからのメール→営業フォルダ」
4. クライアント側ルールは最小限に
できる限りサーバー側ルールで対応しましょう。
5. 配布グループを活用
複数の人からのメールを仕分ける場合、IT管理者に配布グループの作成を依頼しましょう。
定期的なメンテナンス
毎月:
- 不要なルールを削除
- ルールが正しく動作しているか確認
3ヶ月ごと:
- ルール名を見直して短縮できないか検討
- 似たルールを統合できないか確認
年に一度:
- すべてのルールの必要性を見直す
- 使っていないルールを削除
まとめ:焦らず段階的に解決しよう
「現時点ではルールを作成できません」というエラーは、複数の原因が考えられますが、適切な対処で必ず解決できます。
推奨する対処順序:
- まず確認:既存のルールをチェック(解決法1)
- 簡単な方法:エラーのルールを削除(解決法1)
- 効果的な方法:すべてのルールを削除して再作成(解決法2)
- 容量が原因:ルールの整理または容量制限の増加(解決法3)
- 互換性問題:クライアント側ルールの変換(解決法4)
- 特殊なケース:20人以上の制限対策(解決法5)
- フォルダー関連:削除されたフォルダーの修正(解決法6)
- プロファイル問題:新しいプロファイルの作成(解決法7)
- ソフトウェア更新:Outlookの更新(解決法8)
- その他の対策:キャッシュモード有効化、修復(解決法9・10)
最も効果的な方法:
多くの場合、「解決法2」のすべてのルールを削除する方法が最も確実です。少し手間はかかりますが、ほぼ確実に解決します。
重要なポイント:
- 会社のパソコンの場合、IT部門に相談するのが最も安全
- ルールを削除する前に、必ず設定内容をメモやスクリーンショットで記録
- 新しいOutlookではクライアント側ルールが使えないことを理解する
- ルールは定期的にメンテナンスして、容量を節約する
メール仕分けルールは、一度設定すれば、その後ずっと自動で処理してくれる便利な機能です。エラーを解決して、快適なメール環境を取り戻しましょう!

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