「会社を転職するので、個人のOneDriveアカウントにデータを移したい」「仕事用と個人用のアカウントを整理したい」そんな状況でお困りではありませんか?
OneDriveのアカウント間でのデータ移行は、意外と複雑な作業です。単純にファイルをコピーするだけでは、共有設定や権限情報が失われてしまったり、容量制限に引っかかったりする場合があります。また、間違った手順で進めると、大切なデータを失ってしまうリスクもあります。
この記事では、OneDriveのデータを別のアカウントに安全に移行する方法を、様々なシナリオ別に詳しく解説します。個人から個人、ビジネスから個人、その逆パターンまで、すべてのケースに対応していますよ。
アカウント移行の基本概念を理解しよう

移行が必要になるシナリオ
よくある移行パターン:
転職・退職時:
- 会社のOneDrive for Businessから個人アカウントへ
- 個人データの引き継ぎ
- 私物ファイルの分離
アカウント統合:
- 複数の個人アカウントを一つにまとめる
- 使わなくなったアカウントの整理
- 容量の大きいアカウントへの統合
組織変更:
- 部署異動に伴うアカウント変更
- 新しい組織のOneDriveへの移行
- 権限レベルの変更対応
移行時の注意点
データ保護の重要性:
- 元データの保護:移行中も元のデータを保持
- 段階的移行:一度にすべてを移行せず、重要度順に実施
- 検証作業:移行後のデータ整合性確認
- バックアップ:万が一に備えた外部バックアップ
権限・共有情報の変化:
- 共有リンクは新しいアカウントでは無効になる
- アクセス権限は再設定が必要
- 共同編集者への通知が必要
移行前の準備作業
データの棚卸しと整理
移行対象の特定:
- 重要度によるファイル分類
- 最重要:絶対に移行が必要なファイル
- 重要:できれば移行したいファイル
- 参考:アーカイブとして残すファイル
- 不要:削除しても問題ないファイル
- ファイル種類別の確認
- Office文書:Word、Excel、PowerPoint
- 画像・動画:写真、動画ファイル
- PDF文書:契約書、資料、レポート
- その他:圧縮ファイル、プログラムファイル等
容量確認と計画
移行先アカウントの容量チェック:
個人アカウント:
- 無料版:5GB
- Microsoft 365 Personal:1TB
- Microsoft 365 Family:6TB(家族6人分)
ビジネスアカウント:
- Business Basic:1TB
- Business Standard:1TB
- Business Premium:1TB
容量不足の場合の対策:
- 不要ファイルの事前削除
- 大容量ファイルの外部保存
- プランのアップグレード検討
- 段階的移行の実施
バックアップの作成
安全な移行のための事前準備:
- 外部バックアップの作成
- 外付けハードディスクへのダウンロード
- 他のクラウドサービスへの一時保存
- USBメモリやDVDへの重要ファイル保存
- 共有状況の記録
- 現在の共有設定をスクリーンショット
- 共有相手のリスト作成
- アクセス権限レベルの記録
移行方法1:手動でのファイル移行
ブラウザを使った基本的な移行
ステップバイステップ手順:
- 両方のアカウントでブラウザにサインイン
- 異なるブラウザまたはプライベートモードを活用
- Chrome:移行元、Firefox:移行先など
- ファイルのダウンロード
- 移行元OneDriveでファイル・フォルダを選択
- 「ダウンロード」ボタンをクリック
- ZIPファイルとしてパソコンに保存
- ファイルのアップロード
- 移行先OneDriveを開く
- 「アップロード」→「ファイル」または「フォルダー」
- ダウンロードしたファイルを選択してアップロード
小容量ファイル向けの効率的方法:
- 複数ファイルの一括選択:Ctrl+クリック
- フォルダ単位での操作:構造を維持した移行
- 段階的な移行:重要度順の実施
デスクトップアプリを活用した移行
OneDriveデスクトップアプリの活用:
- 両アカウントの同期設定
- 移行元アカウントの同期を確認
- 移行先アカウントの追加設定
- 異なるフォルダ名での同期設定
- ローカルフォルダ間のコピー
- エクスプローラーで両方のOneDriveフォルダを開く
- Ctrl+AまたはCtrl+クリックでファイル選択
- Ctrl+CでコピーしてCtrl+Vで貼り付け
- 同期完了の確認
- 移行先OneDriveの同期状況を確認
- すべてのファイルがクラウドに反映されるまで待機
この方法のメリット:
- フォルダ構造が保持される
- 大容量ファイルでも効率的
- オフラインでも作業可能
移行方法2:共有機能を使った移行
自分自身への共有設定
効率的な共有移行:
- 移行元での共有設定
- 移行したいフォルダを選択
- 「共有」ボタンをクリック
- 移行先アカウントのメールアドレスを入力
- 権限レベルの設定
- 「編集可」権限を付与
- 必要に応じて有効期限を設定
- 共有リンクを生成
- 移行先での受け取り
- 移行先アカウントでOneDriveにアクセス
- 「共有」セクションで共有されたフォルダを確認
- 自分のOneDriveにコピーまたは移動
大容量フォルダの段階的移行
大きなデータセットの効率的移行:
- フォルダの分割
- 大容量フォルダを年度別・プロジェクト別に分割
- 各フォルダを個別に共有設定
- 並行での移行作業実施
- 優先度順の移行
- 最重要フォルダから開始
- 移行完了確認後に次のフォルダへ進行
- エラー発生時の対応余地を確保
移行方法3:サードパーティツールの活用
専用移行ツールの紹介
推奨される移行ツール:
MultCloud(マルトクラウド):
- 複数クラウドサービス間でのデータ転送
- OneDriveからOneDriveへの直接移行
- スケジュール機能による自動化
Mover(Microsoftが買収):
- 企業向けのデータ移行サービス
- 大規模なデータセットの移行
- 最小限のダウンタイム
CloudMounter:
- クラウドストレージをローカルドライブとしてマウント
- 直感的なファイル操作
- 複数アカウントの同時管理
ツール使用時の注意点
セキュリティ面での考慮:
- 信頼できるサービス:実績のあるツールの選択
- データ暗号化:転送中のデータ保護確認
- アクセス権限:最小限の権限のみ付与
- 利用後の設定削除:移行完了後の連携解除
ビジネスアカウント間の移行

Microsoft 365テナント間移行
企業環境での移行:
IT管理者との協力:
- 移行計画の策定
- IT部門との事前相談
- 移行スケジュールの調整
- セキュリティポリシーの確認
- PowerShellを使った移行
- Microsoft 365 PowerShellモジュールの活用
- 大容量データの効率的移行
- バッチ処理による自動化
- SharePoint Migrationの活用
- SharePoint Migration Tool(SPMT)の使用
- OneDrive for Businessの移行
- メタデータの保持
権限・共有設定の再構築
移行後の設定作業:
共有関係の再設定:
- 移行前の共有リストを基に再設定
- 新しいアカウントでの共有リンク生成
- チームメンバーへの新しいリンク通知
アクセス権限の調整:
- 適切な権限レベルの設定
- セキュリティグループの再構築
- 条件付きアクセスの設定
個人アカウント間の移行
Microsoft個人アカウントの統合
複数個人アカウントの整理:
- メインアカウントの決定
- 容量・機能が最も充実したアカウント
- 長期的に使用する予定のアカウント
- 他のMicrosoftサービスとの連携状況
- サブアカウントからの移行
- 重要ファイルの特定と移行
- 不要データの削除
- アカウントの無効化
- 統合後の整理
- 重複ファイルの削除
- フォルダ構造の最適化
- 共有設定の見直し
家族アカウントでの活用
Microsoft 365 Familyの活用:
家族間でのデータ共有:
- 家族フォルダの作成
- 写真・動画の共有
- 各メンバーの個人領域確保
子供アカウントの管理:
- 年齢に応じたアクセス制限
- 安全なインターネット利用の設定
- 学習用リソースの共有
移行後の確認と整理
データ整合性の確認
移行完了後のチェックリスト:
- ファイル数・容量の確認
- 移行前後のファイル数比較
- 総容量の一致確認
- 重要ファイルの個別確認
- フォルダ構造の確認
- 階層構造の正確性確認
- ファイル名の文字化け確認
- 特殊文字の処理確認
- ファイル内容の確認
- Office文書の開閉テスト
- 画像・動画の再生確認
- リンク・参照の動作確認
共有設定の再構築
新しいアカウントでの共有環境構築:
段階的な共有再設定:
- 重要度の高い共有から開始
- 関係者への新しいリンク通知
- 古い共有リンクの無効化
- 新しい権限設定の動作確認
旧アカウントの処理
安全な旧アカウント処理:
段階的な削除プロセス:
- 移行確認期間の設定(30-90日)
- 重要データの最終確認
- 共有設定の完全移行
- 旧アカウントの無効化
注意事項:
- 急いで削除せず、十分な確認期間を設ける
- 法的要件(データ保持義務)の確認
- 他のMicrosoftサービスへの影響確認
トラブルシューティング
よくある移行エラーと対処法
「ファイルがアップロードできません」エラー:
原因と対処法:
- 容量超過:不要ファイルの削除またはプランアップグレード
- ファイル名制限:特殊文字の削除または置換
- ファイルサイズ制限:大容量ファイルの分割または圧縮
- ネットワーク問題:安定した接続環境での再試行
同期エラーの解決
「同期が停止しています」エラー:
解決手順:
- OneDriveアプリの再起動
- 同期設定の確認
- 競合ファイルの解決
- キャッシュのクリア
権限エラーの対処
「アクセス権限がありません」エラー:
確認事項:
- 移行元アカウントでの適切な権限
- 移行先アカウントの受け入れ設定
- 組織ポリシーによる制限
- 一時的なサービス障害
セキュリティとコンプライアンス
データ保護の考慮事項
移行中のセキュリティ対策:
暗号化とアクセス制御:
- 移行中のデータ暗号化確保
- アクセスログの監視
- 不正アクセスの検知
- インシデント対応計画
個人情報保護:
- GDPRなどのプライバシー法規制遵守
- 個人データの適切な取り扱い
- データ主体の権利尊重
- 越境データ転送の考慮
企業環境でのコンプライアンス
法的要件への対応:
データ保持ポリシー:
- 業界固有の保持要件確認
- 法的ホールドの適用
- 監査証跡の維持
- eDiscoveryへの対応
セキュリティ監査:
- 移行プロセスの文書化
- リスクアセスメントの実施
- セキュリティレビューの実施
- インシデント報告体制
効率化のコツとベストプラクティス
大規模移行の戦略
企業レベルでの移行計画:
段階的移行アプローチ:
- パイロット移行:小規模グループでの試験実施
- 部門別移行:部門ごとの順次移行
- 全社展開:全体的な移行実施
- フォローアップ:移行後のサポートと最適化
自動化の活用
効率的な移行のための自動化:
PowerShellスクリプト:
- 大量ファイルの一括処理
- 権限設定の自動化
- 進捗状況の監視
- エラーハンドリング
Microsoft Power Automate:
- 定期的な同期処理
- 移行状況の通知
- 承認ワークフローの自動化
- レポート生成の自動化
まとめ
OneDriveの別アカウントへの移行について、様々な方法と注意点を詳しく解説しました。重要なポイントをおさらいしましょう:
移行前の準備:
- データの棚卸しと重要度分類
- 容量確認と移行計画策定
- 外部バックアップの作成
移行方法の選択:
- 手動移行:小規模・確実性重視
- 共有機能活用:中規模・効率性重視
- サードパーティツール:大規模・自動化重視
アカウント種別対応:
- 個人から個人:家族統合・アカウント整理
- ビジネス間:企業移転・組織変更
- 個人⇔ビジネス:転職・退職対応
移行後の作業:
- データ整合性の確認
- 共有設定の再構築
- 旧アカウントの適切な処理
セキュリティ配慮:
- データ保護とプライバシー
- コンプライアンス要件遵守
- アクセス制御と監査
効率化のポイント:
- 段階的移行による リスク軽減
- 自動化ツールの活用
- 適切な計画と準備
OneDriveの移行は複雑な作業ですが、適切な計画と手順により安全に実行できます。この記事を参考に、自分の状況に最適な移行方法を選択してくださいね。
重要なデータを扱う作業ですので、不安がある場合は専門家やIT部門に相談することをおすすめします。慎重に進めて、安全で成功する移行を実現しましょう。
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