「異なるGISソフト同士でデータをやりとりできない」──そんな課題を解決するために生まれたのがOGIS(Open Geodata Interoperability Specification、オープン地理データ相互運用仕様)です。
GIS(地理情報システム)を扱う開発者や研究者なら一度は耳にする用語ですが、その背景や仕組みまで把握している人は意外と少ないもの。
この記事では、OGISとは何か、なぜ必要とされたのか、どんな仕組みで成り立っているのかを順を追って解説します。
OGISとは
OGIS(オージス)は、Open Geodata Interoperability Specification(オープン地理データ相互運用仕様)の略称です。
異なるGISソフトウェアや地理データシステムが、共通のインターフェースを通じてデータをやりとりできるようにするためのソフトウェア仕様です。
策定したのは国際標準化団体のOpen Geospatial Consortium(OGC)公式サイトで、GIS分野における相互運用性の基盤として位置づけられています。
OGISが生まれた背景
GISデータの「壁」問題
1980〜1990年代のGIS業界では、ソフトウェアごとにデータ形式やインターフェースがバラバラでした。
あるGISソフトで作ったデータを別のソフトで開こうとしても、変換作業が必要だったり、そもそも読み込めないケースが頻繁に発生していました。
政府機関・企業・研究機関がそれぞれ異なるGISを使う中で、データの共有や連携が大きなボトルネックになっていたのです。
GRASS財団からOGCへ
このような背景から、米国陸軍工兵隊が開発したオープンソースGIS「GRASS(Geographic Resource and Analysis Support System)」のコミュニティが中心となり、1992年に非営利団体「Open GRASS Foundation(OGF)」が設立されました。
OGFは1992年に「Open GIS Application Environment(OGAE)」プロジェクトを立ち上げ、複数のGIS製品が連携できる統合開発環境の構想を推進しました。
この構想はさらに進化し、1993年6月にOGISプロジェクトとして正式に発表されました。
その後、仕様の策定には「業界コンソーシアム」の形態が適切と判断されたため、1994年にOGFは「OGIS Ltd.」として法人化され、同年末に現在のOpen Geospatial Consortium, Inc.(OGC)へと名称変更されました。
OGISの仕組み:3つの構成要素
OGISの仕様は、以下の3つのモデルで構成されています。
1. Open Geodata Model(OGM):共通データモデル
地球や地球上の現象をデジタルで表現するための共通データモデルです。
さまざまなGISシステムが異なる内部形式を使っていても、OGMが「共通語」として機能することで、システム間のデータ交換が可能になります。
OGISの中核をなす要素です。
2. OGIS Services Model:サービス共通仕様
地理データへのアクセス・管理・操作・表現・共有に関するサービスの共通仕様です。
クライアントとサーバーがどのように地理データをやりとりするか、どのような処理を要求・提供するかを定義しています。
3. Information Communities Model:制度的課題への対応
技術的な相互運用性の問題だけでなく、組織・制度レベルでの課題も解決するためのフレームワークです。
異なる機関が異なる「地理的語彙(フィーチャーの定義)」を持っている場合でも、情報共有が実現できるよう設計されています。
OGCとOGISの関係
OGISはあくまでもプロジェクト名・仕様名であり、その仕様を策定・推進する組織がOGC(Open Geospatial Consortium)です。
OGCはその後も活動を拡大し、現在では以下のような標準規格を無償公開しています。
- WMS(Web Map Service):地図画像をWeb経由で提供する規格
- WFS(Web Feature Service):地物の説明を取得・変更するための規格
- GML(Geography Markup Language):地理情報をXMLで表現するための言語
- GeoJSON:Webに適した軽量な地理データ形式
これらはいずれもOGISの思想を引き継ぎ、ISO標準にも採用されています。
詳細はOGC公式サイトで確認できます。
まとめ
OGISは、異なるGISシステム間のデータ相互運用を実現するために、1993年に発表されたオープン仕様です。
Open Geodata Model・OGIS Services Model・Information Communities Modelの3要素で構成されており、GIS業界の「データの壁」を取り除くための共通基盤として機能しました。
このOGISプロジェクトが発展したOGCは、現在もWMS・WFS・GMLといった国際標準を策定し続けており、GISの相互運用性を支える中核的な存在となっています。
GISや地理空間データを扱う開発・研究の場面では、OGCの標準規格に準拠しているかどうかが相互運用性の重要な指標になります。
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