Office展開ツールの使い方を初心者向けに完全解説

プログラミング・IT

会社や学校で複数のパソコンにOfficeをインストールする必要がある。そんな時、一台ずつ手作業でインストールするのは大変ですよね。

特に10台、20台、あるいはそれ以上のパソコンに同じ設定でOfficeを入れなければならない場合、何時間もかかってしまいます。

そんな時に役立つのが「Office展開ツール」です。このツールを使えば、事前に設定を作っておいて、効率的に複数のパソコンへOfficeをインストールできます。

この記事では、Office展開ツールの基本的な使い方を、初めて使う方でも分かるように丁寧に解説していきます。

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  1. Office展開ツール(ODT)とは?
  2. このツールは誰向け?
    1. 推奨される使用者
    2. 個人ユーザーには通常不要
  3. 準備するもの
    1. 必須項目
    2. あると便利なもの
  4. ステップ1:Office展開ツールのダウンロード
    1. ダウンロード手順
    2. ツールの展開
  5. ステップ2:設定ファイル(XMLファイル)の作成
    1. 基本的なXMLファイルの構造
    2. よく使うProduct ID
    3. XMLファイルの作成方法
  6. ステップ3:Officeインストールファイルのダウンロード
    1. コマンドプロンプトでの実行
    2. ダウンロードの確認
  7. ステップ4:Officeのインストール実行
    1. インストールコマンド
    2. インストールの確認
  8. 応用的な設定例
    1. 例1:特定のアプリだけをインストール
    2. 例2:複数の言語をインストール
    3. 例3:既存のOfficeをアンインストールしてから新規インストール
    4. 例4:更新設定のカスタマイズ
  9. 複数のパソコンに展開する方法
    1. 方法1:ネットワーク共有を利用
    2. 方法2:USBメモリやDVDを使用
    3. 方法3:展開ソフトウェアを活用
  10. トラブルシューティング
    1. エラー:「このアプリはお使いのPCでは実行できません」
    2. エラー:「ソースファイルが見つかりません」
    3. インストールが進まない・完了しない
    4. XMLファイルのエラー
  11. Office構成ツールを使う簡単な方法
    1. Office カスタマイズ ツールの使い方
  12. アンインストールする方法
    1. アンインストール用XMLファイル
    2. 特定のアプリだけ削除
  13. 便利なコマンドオプション
    1. /download:ダウンロードのみ実行
    2. /configure:設定に基づいてインストール
    3. /packager:オフラインインストーラーを作成
  14. まとめ:Office展開ツールで効率的な管理を

Office展開ツール(ODT)とは?

Office展開ツール(Office Deployment Tool、略してODT)は、Microsoftが提供する無料のコマンドラインツールです。

主な特徴:

  • Microsoft 365やOffice 2019以降のインストールに対応
  • カスタマイズした設定でインストール可能
  • 複数のパソコンに同じ設定を適用できる
  • ネットワーク経由でのインストールに対応

コマンドラインツールとは、文字でコマンド(命令)を入力して操作するプログラムのことです。グラフィカルな画面ではなく、黒い画面に文字を入力して使います。

このツールは誰向け?

Office展開ツールは、主に以下のような方々に向いています。

推奨される使用者

  • 企業のIT管理者
  • 学校や組織のシステム担当者
  • 複数台のパソコンを管理する必要がある方
  • カスタマイズしたOffice設定を統一したい方

個人ユーザーには通常不要

1台のパソコンにOfficeをインストールするだけなら、office.comから直接インストールする方が簡単です。

このツールは、効率化や設定の統一が必要な場合に真価を発揮します。

準備するもの

Office展開ツールを使用する前に、以下を準備しましょう。

必須項目

  1. インターネット接続
  • Office展開ツールのダウンロード
  • Officeインストールファイルのダウンロード
  1. 管理者権限
  • パソコンの管理者アカウントが必要
  1. Microsoft 365またはOfficeのライセンス
  • 有効なライセンスが必要
  • ボリュームライセンスがあると便利
  1. 基礎的なコマンドライン知識
  • コマンドプロンプトの基本操作
  • ファイルパスの理解

あると便利なもの

  • XMLファイルの編集経験
  • ネットワーク共有フォルダの知識
  • Officeの各エディションの違いについての理解

ステップ1:Office展開ツールのダウンロード

まずは、Office展開ツール本体をダウンロードします。

ダウンロード手順

  1. Microsoftの公式ダウンロードページにアクセス
  • 検索エンジンで「Office展開ツール ダウンロード」と検索
  • Microsoft公式サイトのページを選択
  1. ダウンロードボタンをクリック
  2. 実行ファイル(officedeploymenttool.exe)を保存
  3. 保存した場所を覚えておく

ツールの展開

  1. ダウンロードしたofficedeploymenttool.exeを実行
  2. 展開先のフォルダを指定(例:C:\ODT)
  3. 「OK」をクリック
  4. 以下のファイルが展開されます:
  • setup.exe(メインプログラム)
  • 複数のサンプル設定ファイル(XMLファイル)

ステップ2:設定ファイル(XMLファイル)の作成

Office展開ツールは、XMLファイルで動作を制御します。このファイルに、インストールしたいOfficeの種類や言語、オプションなどを記述します。

基本的なXMLファイルの構造

最もシンプルな設定ファイルの例:

<Configuration>
  <Add SourcePath="C:\ODT" OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
    </Product>
  </Add>
</Configuration>

各要素の説明:

  • SourcePath: Officeファイルを保存する場所
  • OfficeClientEdition: 32ビット版か64ビット版か(”32″または”64″)
  • Channel: 更新チャネル(Currentは最新機能が提供される)
  • Product ID: インストールするOfficeの種類
  • Language ID: インストールする言語(ja-jpは日本語)

よく使うProduct ID

  • O365ProPlusRetail: Microsoft 365 Apps for enterprise
  • O365BusinessRetail: Microsoft 365 Apps for business
  • ProPlus2019Volume: Office Professional Plus 2019
  • Standard2019Volume: Office Standard 2019

XMLファイルの作成方法

  1. メモ帳を開く
  2. 上記のサンプルをコピー&ペースト
  3. 必要に応じて内容を編集
  4. ファイル名を「configuration.xml」として保存
  • 保存場所はODTフォルダ(C:\ODT)
  1. 保存時の注意:
  • 「ファイルの種類」を「すべてのファイル」に変更
  • 文字コードは「UTF-8」を選択

ステップ3:Officeインストールファイルのダウンロード

設定ファイルができたら、Officeのインストールファイルをダウンロードします。

コマンドプロンプトでの実行

  1. コマンドプロンプトを管理者として実行
  • スタートメニューで「cmd」と検索
  • 右クリック→「管理者として実行」
  1. ODTフォルダに移動
   cd C:\ODT
  1. ダウンロードコマンドを実行
   setup.exe /download configuration.xml
  1. ダウンロードが開始される
  • インターネット速度によって時間が異なる
  • 通常は10〜30分程度

ダウンロードの確認

ダウンロードが完了すると、ODTフォルダ内に「Office」という名前のフォルダが作成され、その中にインストールファイルが保存されます。

ステップ4:Officeのインストール実行

インストールファイルのダウンロードが完了したら、いよいよインストールを実行します。

インストールコマンド

  1. コマンドプロンプトを管理者として実行(開いたままなら続けて使用可能)
  2. ODTフォルダにいることを確認
  3. インストールコマンドを実行
   setup.exe /configure configuration.xml
  1. インストールが開始される
  • 進行状況は表示されない場合が多い
  • バックグラウンドで処理が進行

インストールの確認

  1. インストール完了後、スタートメニューを確認
  2. Word、Excel、PowerPointなどのアイコンが表示されていればOK
  3. アプリを起動して正常に動作するか確認

応用的な設定例

例1:特定のアプリだけをインストール

Accessを除外してインストールする場合:

<Configuration>
  <Add SourcePath="C:\ODT" OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
      <ExcludeApp ID="Access" />
    </Product>
  </Add>
</Configuration>

ExcludeAppタグで不要なアプリを指定できます。

例2:複数の言語をインストール

日本語と英語をインストールする場合:

<Configuration>
  <Add SourcePath="C:\ODT" OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
      <Language ID="en-us" />
    </Product>
  </Add>
</Configuration>

Languageタグを複数記述できます。

例3:既存のOfficeをアンインストールしてから新規インストール

古いバージョンを削除してからインストールする場合:

<Configuration>
  <Add SourcePath="C:\ODT" OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
    </Product>
  </Add>
  <Remove All="TRUE" />
</Configuration>

Removeタグで既存のOfficeを削除できます。

例4:更新設定のカスタマイズ

自動更新を無効にする場合:

<Configuration>
  <Add SourcePath="C:\ODT" OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
    </Product>
  </Add>
  <Updates Enabled="FALSE" />
</Configuration>

Updatesタグで更新動作を制御できます。

複数のパソコンに展開する方法

方法1:ネットワーク共有を利用

  1. ネットワーク上の共有フォルダにODTとダウンロード済みのOfficeファイルを配置
  2. 各パソコンから共有フォルダにアクセス
  3. setup.exeを実行

この方法なら、各パソコンで個別にダウンロードする必要がありません。

方法2:USBメモリやDVDを使用

  1. ODTフォルダ全体をUSBメモリやDVDにコピー
  2. 各パソコンにメディアを接続
  3. setup.exeを実行

オフライン環境や、インターネット接続が遅い環境で有効です。

方法3:展開ソフトウェアを活用

企業向けの展開ソフトウェア(Microsoft Endpoint Configuration Managerなど)を使えば、リモートで一斉にインストールできます。

ただし、これらのソフトウェアには専門知識が必要です。

トラブルシューティング

エラー:「このアプリはお使いのPCでは実行できません」

原因:
32ビット版のWindowsで64ビット版のOfficeをインストールしようとしている

解決方法:
XMLファイルのOfficeClientEditionを”32″に変更

エラー:「ソースファイルが見つかりません」

原因:
SourcePathの指定が間違っている、またはダウンロードが完了していない

解決方法:

  1. SourcePathを確認
  2. ダウンロードコマンドを再実行
  3. Officeフォルダが作成されているか確認

インストールが進まない・完了しない

原因:
他のOfficeプロセスが実行中、または既存のOfficeとの競合

解決方法:

  1. すべてのOfficeアプリを閉じる
  2. タスクマネージャーでOffice関連のプロセスを終了
  3. パソコンを再起動してから再度実行

XMLファイルのエラー

原因:
XMLの記述に文法エラーがある

解決方法:

  1. タグの開始と終了が正しいか確認
  2. 半角スペースや記号が正しいか確認
  3. オンラインのXMLバリデーターでチェック

Office構成ツールを使う簡単な方法

XMLファイルの手動作成が難しい場合、Microsoftが提供する「Office カスタマイズ ツール」を使うと便利です。

Office カスタマイズ ツールの使い方

  1. ブラウザで「Office カスタマイズ ツール」と検索
  2. Microsoft公式のツールページにアクセス
  3. ブラウザ上で設定を選択
  • 製品とリリース
  • 言語
  • インストールオプション
  • 更新とアップグレード
  1. 設定が完了したら「エクスポート」をクリック
  2. XMLファイルが自動生成される
  3. ダウンロードしたXMLファイルをODTフォルダに配置

この方法なら、XMLの文法を知らなくても正確な設定ファイルが作れます。

アンインストールする方法

Office展開ツールでインストールしたOfficeも、同じツールでアンインストールできます。

アンインストール用XMLファイル

<Configuration>
  <Remove All="TRUE" />
</Configuration>

このファイルを「uninstall.xml」として保存し、以下のコマンドを実行:

setup.exe /configure uninstall.xml

すべてのOfficeアプリケーションが削除されます。

特定のアプリだけ削除

<Configuration>
  <Remove>
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
    </Product>
  </Remove>
</Configuration>

Product IDを指定することで、特定の製品だけを削除できます。

便利なコマンドオプション

/download:ダウンロードのみ実行

setup.exe /download configuration.xml

インストールせず、ファイルのダウンロードだけを行います。

/configure:設定に基づいてインストール

setup.exe /configure configuration.xml

最も基本的なインストールコマンドです。

/packager:オフラインインストーラーを作成

setup.exe /packager configuration.xml output.exe

スタンドアロンのインストーラーファイルを作成します。

まとめ:Office展開ツールで効率的な管理を

Office展開ツールは、複数のパソコンにOfficeを効率的にインストールするための強力なツールです。

Office展開ツールの利点:

  • インストール設定の統一
  • 時間と労力の大幅な削減
  • カスタマイズされた展開が可能
  • ネットワーク帯域幅の効率的な使用

使用手順のまとめ:

  1. Office展開ツールをダウンロード・展開
  2. XMLファイルで設定を作成
  3. Officeファイルをダウンロード
  4. インストールを実行

初めて使う方へのアドバイス:

  • まずは小規模(1〜2台)でテスト
  • XMLファイルはサンプルを修正して使う
  • Office カスタマイズ ツールを活用する
  • 設定ファイルは保存して再利用

注意点:

  • 管理者権限が必須
  • ライセンスの準備を忘れずに
  • 初回は時間に余裕を持って実行
  • トラブル時はログファイルを確認

Office展開ツールは最初は難しく感じるかもしれませんが、一度使い方を覚えれば、組織全体のOffice管理が劇的に楽になります。

小規模な環境から始めて、徐々に慣れていくことをおすすめします。効率的なOffice管理で、IT管理業務の負担を軽減しましょう!

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