Office展開ツール(ODT)とは?使い方から設定まで徹底解説

プログラミング・IT

会社でたくさんのパソコンにOfficeをインストールしなければならない――そんな状況に直面したことはありませんか?

1台ずつ手作業でインストールしていたら、何時間もかかってしまいますよね。しかも、WordとExcelだけインストールしたい、日本語版が欲しい、といった細かい要望に応えるのも大変です。

そこで役立つのが「Office展開ツール(ODT)」です。このツールを使えば、Officeのインストールを細かくカスタマイズして、効率的に展開できます。

この記事では、Office展開ツールの基本から使い方、設定方法までを、初心者の方にも分かりやすく解説します。IT管理者の方はもちろん、これから複数台にOfficeをインストールする予定がある方も、ぜひ参考にしてください。


スポンサーリンク
  1. Office展開ツール(ODT)とは?
    1. ODTの基本
    2. ODTが必要な場面
  2. ODTの構成と仕組み
    1. 1. setup.exe
    2. 2. configuration.xml
  3. Office展開ツールのダウンロード方法
    1. 手順1:Microsoft公式サイトにアクセス
    2. 手順2:ダウンロードと実行
    3. 手順3:ファイルの確認
  4. 設定ファイル(configuration.xml)の作成
    1. 方法1:Office Customization Toolを使う(推奨)
    2. 方法2:テンプレートを編集する
    3. 設定ファイルの記述例
  5. 主な設定項目の解説
    1. OfficeClientEdition(ビット数)
    2. Channel(更新チャネル)
    3. Product ID(製品)
    4. Language ID(言語)
    5. ExcludeApp(除外するアプリ)
    6. Display Level(画面表示)
    7. AcceptEULA(ライセンス条項)
  6. Officeのダウンロード手順
    1. 手順1:コマンドプロンプトを開く
    2. 手順2:ODTのフォルダに移動
    3. 手順3:ダウンロードコマンドを実行
    4. 手順4:ダウンロード完了を確認
  7. Officeのインストール手順
    1. 手順1:コマンドプロンプトで実行
    2. 手順2:インストールコマンドを実行
    3. 手順3:インストール完了を待つ
    4. 手順4:完了確認
  8. 複数台への展開方法
    1. 方法1:ネットワーク共有フォルダを使う
    2. 方法2:グループポリシーを使う
    3. 方法3:バッチファイルを作る
  9. トラブルシューティング
    1. エラー:「アクセスが拒否されました」
    2. エラー:インストールが途中で止まる
    3. 設定ファイルが正しく読み込まれない
    4. 言語パックがダウンロードできない
    5. 既存のOfficeと競合する
  10. 応用的な使い方
    1. 特定のアプリだけをインストール
    2. 既存のOfficeを残したまま追加インストール
    3. オフライン環境へのインストール
  11. よくある質問
    1. ODTは誰でも使えますか?
    2. ODTで個人版のMicrosoft 365もインストールできる?
    3. Windows 7でも使えますか?
    4. Macでも使えますか?
    5. 設定ファイルは何度も使い回せる?
    6. インストール後に設定を変更できる?
  12. まとめ

Office展開ツール(ODT)とは?

ODTの基本

Office展開ツール(ODT)は、「Office Deployment Tool」の略称です。

簡単に言うと、Microsoft 365 AppsやOffice 2019、Office 2021などを、コマンドライン(文字入力)でダウンロードしてインストールできるツールのこと。

通常のインストール方法と違って、以下のような細かい設定ができるんです。

ODTでできること:

  • インストールするアプリを選択(WordとExcelだけ、など)
  • 言語の選択(日本語版、英語版など)
  • ビット数の指定(32ビット版、64ビット版)
  • 更新チャネルの設定(最新版か安定版か)
  • 複数台への一括インストール
  • インストール画面の表示/非表示

ODTが必要な場面

ODTは、主に以下のような状況で使われます。

こんな時にODTが役立つ:

  • 会社で複数台のパソコンにOfficeをインストールする
  • 「WordとExcelだけ」など特定のアプリだけ入れたい
  • すでに入っている古いOfficeを削除しながら新しいOfficeを入れたい
  • オフライン環境(インターネットに繋がっていない環境)でインストールしたい
  • インストール設定を統一して管理したい

個人で1台だけインストールするなら、通常の方法で十分です。でも、複数台や特殊な設定が必要な場合は、ODTが強力な味方になります。


ODTの構成と仕組み

ODTは、主に2つのファイルで動きます。

1. setup.exe

これが実際にインストールを実行するプログラムファイルです。

コマンドプロンプト(黒い画面)から、このファイルを実行してOfficeをダウンロードしたりインストールしたりします。

2. configuration.xml

設定ファイルです。XML形式(テキストファイルの一種)で、インストールの詳細を記述します。

設定ファイルに書く内容:

  • インストールする製品(Microsoft 365 Apps、Office 2021など)
  • インストールするアプリ(Word、Excel、PowerPointなど)
  • 言語(日本語、英語など)
  • ビット数(32ビット、64ビット)
  • 更新方法
  • インストール画面の表示設定

この2つを組み合わせて、自分の好きなようにOfficeをインストールできるわけですね。


Office展開ツールのダウンロード方法

まずは、ODTを入手しましょう。

手順1:Microsoft公式サイトにアクセス

以下のMicrosoft公式サイトからダウンロードできます。

ダウンロードURL:
https://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=49117

注意:
ODTは英語版のみの提供です。ただし、インストールされるOfficeは設定ファイルで指定した言語になるので、日本語版Officeもインストールできます。

手順2:ダウンロードと実行

  1. ダウンロードページで「Download」をクリック
  2. ダウンロードした実行ファイル(.exe)をダブルクリック
  3. ライセンス条項が表示されるので、チェックを入れて「Continue」をクリック
  4. ファイルの保存先を選ぶ(例:C:\ODT)
  5. 「OK」をクリック

手順3:ファイルの確認

指定したフォルダに、以下のファイルが展開されます。

主なファイル:

  • setup.exe:実行ファイル
  • configuration-Office365-x64.xml:Microsoft 365 Apps(64ビット)用テンプレート
  • configuration-Office365-x86.xml:Microsoft 365 Apps(32ビット)用テンプレート
  • configuration-Office2021Enterprise.xml:Office 2021用テンプレート
  • その他のテンプレートファイル

これらのテンプレートファイルを参考にして、自分用の設定ファイルを作成します。


設定ファイル(configuration.xml)の作成

ODTの核心部分である設定ファイルを作りましょう。

方法1:Office Customization Toolを使う(推奨)

Microsoftが提供する公式のウェブツールを使えば、GUIで簡単に設定ファイルを作れます。

Office Customization Tool:
https://config.office.com/deploymentsettings

使い方:

  1. 上記URLにアクセス
  2. インストールしたいOffice製品を選択
  3. 言語を選択(日本語など)
  4. インストールするアプリを選択(Wordだけ、Excelだけ、など)
  5. 更新チャネルを選択
  6. その他の設定を行う
  7. 「エクスポート」ボタンで設定ファイル(.xml)をダウンロード

この方法なら、XMLの知識がなくても簡単に設定ファイルを作れます。

方法2:テンプレートを編集する

展開されたテンプレートファイルを、メモ帳などのテキストエディタで開いて編集する方法もあります。

編集手順:

  1. configuration-Office365-x64.xmlを右クリック
  2. 「プログラムから開く」→「メモ帳」を選択
  3. 必要な部分を編集
  4. 名前をつけて保存(例:MyOffice.xml)

設定ファイルの記述例

以下は、基本的な設定ファイルの例です。

<Configuration>
  <Add OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
    </Product>
  </Add>
  <Display Level="None" AcceptEULA="TRUE" />
</Configuration>

この設定の意味:

  • OfficeClientEdition=”64″:64ビット版をインストール
  • Channel=”Current”:最新チャネル(最新版)を使用
  • Product ID=”O365ProPlusRetail”:Microsoft 365 Appsをインストール
  • Language ID=”ja-jp”:日本語版
  • Display Level=”None”:インストール画面を表示しない
  • AcceptEULA=”TRUE”:ライセンス条項に自動で同意

主な設定項目の解説

設定ファイルで指定できる項目を詳しく見ていきましょう。

OfficeClientEdition(ビット数)

設定値:

  • “64”:64ビット版
  • “32”:32ビット版

どちらを選ぶ?

  • パソコンのメモリが4GB以上なら、基本的に64ビット版がおすすめ
  • 古いアドインを使う必要がある場合は32ビット版

Channel(更新チャネル)

更新チャネルは、Officeの更新頻度を決める設定です。

主なチャネル:

  • Current:最新チャネル(毎月更新、新機能がすぐ使える)
  • MonthlyEnterprise:月次エンタープライズチャネル(毎月更新、安定性重視)
  • SemiAnnual:半期エンタープライズチャネル(年2回更新、最も安定)

どれを選ぶ?

  • 常に最新機能を使いたい:Current
  • 安定性を重視したい:SemiAnnual
  • バランスを取りたい:MonthlyEnterprise

Product ID(製品)

インストールする製品を指定します。

主な製品ID:

  • O365ProPlusRetail:Microsoft 365 Apps(旧Office 365 ProPlus)
  • ProPlus2021Volume:Office LTSC Professional Plus 2021
  • VisioProRetail:Visio
  • ProjectProRetail:Project

Language ID(言語)

インストールする言語を指定します。

主な言語ID:

  • ja-jp:日本語
  • en-us:英語(米国)
  • zh-cn:中国語(簡体字)

複数の言語を同時にインストールすることもできます。

ExcludeApp(除外するアプリ)

特定のアプリをインストールしたくない場合に使います。

例:OneNoteを除外する

<Product ID="O365ProPlusRetail">
  <Language ID="ja-jp" />
  <ExcludeApp ID="OneNote" />
</Product>

除外できるアプリID:

  • Access
  • Excel
  • OneNote
  • Outlook
  • PowerPoint
  • Publisher
  • Teams
  • Word

Display Level(画面表示)

インストール中の画面表示を制御します。

設定値:

  • None:何も表示しない(サイレントインストール)
  • Full:通常の画面を表示

AcceptEULA(ライセンス条項)

ライセンス条項への同意を自動化します。

設定値:

  • TRUE:自動で同意
  • FALSE:ユーザーに表示して同意を求める

Officeのダウンロード手順

設定ファイルができたら、まずOfficeのインストールファイルをダウンロードします。

手順1:コマンドプロンプトを開く

  1. スタートメニューで「cmd」と検索
  2. 「コマンドプロンプト」を右クリック
  3. 「管理者として実行」を選択

手順2:ODTのフォルダに移動

コマンドプロンプトで、ODTを展開したフォルダに移動します。

cd C:\ODT

(フォルダのパスは、自分が保存した場所に置き換えてください)

手順3:ダウンロードコマンドを実行

以下のコマンドを入力します。

setup.exe /download configuration.xml

説明:

  • setup.exe:実行ファイル名
  • /download:ダウンロードモードで実行
  • configuration.xml:設定ファイル名(自分がつけた名前に置き換える)

手順4:ダウンロード完了を確認

コマンドを実行すると、ODTのフォルダ内に「Office」というフォルダが作成され、その中にインストールファイルがダウンロードされます。

所要時間:
インターネット速度によりますが、5分~1時間程度かかります。


Officeのインストール手順

ダウンロードが完了したら、インストールを実行します。

手順1:コマンドプロンプトで実行

先ほどと同じように、管理者権限でコマンドプロンプトを開き、ODTフォルダに移動します。

手順2:インストールコマンドを実行

以下のコマンドを入力します。

setup.exe /configure configuration.xml

説明:

  • setup.exe:実行ファイル名
  • /configure:インストールモード(構成モード)で実行
  • configuration.xml:設定ファイル名

手順3:インストール完了を待つ

設定で画面表示を「Full」にしている場合は、インストール画面が表示されます。

「None」に設定している場合は、バックグラウンドで静かにインストールが進みます。

手順4:完了確認

インストールが完了すると、コマンドプロンプトに「正常に構成された製品」と表示されます。

スタートメニューから、WordやExcelが起動できるか確認してみましょう。


複数台への展開方法

ODTの真価は、複数台のパソコンへの一括展開で発揮されます。

方法1:ネットワーク共有フォルダを使う

  1. ダウンロードした「Office」フォルダとODTを、ネットワーク上の共有フォルダに配置
  2. 各パソコンから、共有フォルダ上のsetup.exeを実行

例:

\\server\share\ODT\setup.exe /configure \\server\share\ODT\configuration.xml

方法2:グループポリシーを使う

Active Directoryのグループポリシーを使えば、ドメインに参加している全パソコンに自動でインストールできます。

手順概要:

  1. グループポリシー管理エディタを開く
  2. スタートアップスクリプトにODTのコマンドを追加
  3. パソコンを再起動すると自動でインストールされる

方法3:バッチファイルを作る

バッチファイル(.bat)を作成して、ダブルクリックするだけでインストールできるようにする方法もあります。

install.bat の例:

@echo off
cd /d %~dp0
setup.exe /configure configuration.xml
pause

このファイルをODTと同じフォルダに保存して、右クリック→「管理者として実行」すればインストールが始まります。


トラブルシューティング

よくあるトラブルと解決方法をまとめました。

エラー:「アクセスが拒否されました」

原因:
管理者権限でコマンドプロンプトを実行していない

解決方法:
コマンドプロンプトを「管理者として実行」で開き直す

エラー:インストールが途中で止まる

原因:
インターネット接続が不安定、または古いバージョンのODTを使っている

解決方法:

  1. 最新版のODTをダウンロードし直す
  2. ファイアウォールやセキュリティソフトを一時的に無効化
  3. %temp%フォルダ内のログファイルを確認

設定ファイルが正しく読み込まれない

原因:
XMLの構文エラー

解決方法:

  1. Office Customization Toolで作り直す
  2. メモ帳で開いて、全角スペースや記号がないか確認
  3. サンプルファイルと比較して、タグの閉じ忘れがないかチェック

言語パックがダウンロードできない

原因:
ネットワーク帯域の問題、または指定した言語が対応していない

解決方法:

  1. Fallback属性を設定して、バックアップ言語を指定
  2. AllowCdnFallBack=”True”を追加して、CDNからのダウンロードを許可

既存のOfficeと競合する

原因:
古いOfficeが残っている

解決方法:

設定ファイルに以下を追加して、古いOfficeを自動削除

<RemoveMSI All="TRUE" />

応用的な使い方

特定のアプリだけをインストール

WordとExcelだけをインストールする例:

<Configuration>
  <Add OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="O365ProPlusRetail">
      <Language ID="ja-jp" />
      <ExcludeApp ID="Access" />
      <ExcludeApp ID="OneNote" />
      <ExcludeApp ID="Outlook" />
      <ExcludeApp ID="PowerPoint" />
      <ExcludeApp ID="Publisher" />
    </Product>
  </Add>
</Configuration>

既存のOfficeを残したまま追加インストール

VisioやProjectを既存のOfficeに追加する場合は、以下のように設定します。

<Configuration>
  <Add OfficeClientEdition="64" Channel="Current">
    <Product ID="VisioProRetail">
      <Language ID="MatchInstalled" />
    </Product>
  </Add>
</Configuration>

Language ID=”MatchInstalled”で、既存のOfficeと同じ言語が自動選択されます。

オフライン環境へのインストール

インターネットに接続できないパソコンにインストールする場合:

  1. インターネットに接続できるパソコンでOfficeをダウンロード
  2. 「Office」フォルダとODTをUSBメモリなどにコピー
  3. オフラインのパソコンでUSBメモリから実行

よくある質問

ODTは誰でも使えますか?

はい、無料で誰でも使えます。ただし、Officeのライセンスは別途必要です。

ODTで個人版のMicrosoft 365もインストールできる?

できます。Product IDを「O365HomePremRetail」などに設定すれば、個人向けMicrosoft 365もインストール可能です。

Windows 7でも使えますか?

Office展開ツール自体は使えますが、最新のMicrosoft 365 AppsはWindows 10以降が必要です。

Macでも使えますか?

いいえ、ODTはWindows専用です。Mac版Officeには別のインストール方法があります。

設定ファイルは何度も使い回せる?

はい、一度作った設定ファイルは、何度でも、別のパソコンでも使えます。

組織で標準的な設定を決めて、その設定ファイルを共有するのがおすすめです。

インストール後に設定を変更できる?

できます。設定ファイルを編集して、もう一度setup.exe /configureを実行すれば、設定が更新されます。


まとめ

Office展開ツール(ODT)の使い方を解説しました。

おさらい:

  • ODTはMicrosoft公式の無料ツール
  • コマンドラインでOfficeをインストールできる
  • 設定ファイル(XML)で細かくカスタマイズ可能
  • インストールするアプリ、言語、ビット数などを自由に選べる
  • 複数台への一括展開に最適
  • Office Customization Toolを使えばGUIで簡単に設定できる

基本的な流れ:

  1. ODTをダウンロード
  2. 設定ファイルを作成(Office Customization Tool推奨)
  3. setup.exe /downloadでインストールファイルをダウンロード
  4. setup.exe /configureでインストール実行

ODTを使えば、会社や学校での大規模なOffice展開が、驚くほどスムーズになります。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、一度設定ファイルを作ってしまえば、後は何度でも使い回せます。

まずはテスト環境で試してから、本番環境に適用するのがおすすめですよ。ぜひチャレンジしてみてください!

コメント

タイトルとURLをコピーしました