会社のファイルサーバーや共有フォルダに頻繁にアクセスする方、毎回「\サーバー名\共有フォルダ」という長いパスを入力するのは面倒ですよね。
そんな時に便利なのがnet useコマンドです。
このコマンドを使えば、ネットワーク上の共有フォルダを、あなたのパソコンの「Zドライブ」や「Yドライブ」のように扱えるようになります。毎回長いパスを入力する必要がなくなり、作業効率が大幅にアップします。
この記事では、net useコマンドの基本から応用まで、初心者でも分かるように詳しく解説します。
net useコマンドとは?【基本の説明】

簡単に言うと何?
net useコマンドとは、Windowsでネットワーク上の共有フォルダやプリンターに接続・切断するためのコマンドです。
主な機能
- ネットワークドライブの割り当て(マッピング)
- ネットワークドライブの切断
- 現在の接続状況の確認
- プリンターへの接続
具体的にできること
会社のファイルサーバー(例:\\FileServer\Documents)を、自分のパソコンの「Zドライブ」として使えるようにする、といったことが簡単にできます。
どんな場面で使う?
よくある使用シーン
- 会社の共有フォルダに毎日アクセスする
- 複数の共有フォルダを頻繁に使う
- NAS(ネットワークストレージ)を自宅で使っている
- リモートワークで会社のサーバーにアクセスする
- バッチファイルで自動化したい
GUIとの違いは?
エクスプローラーの「ネットワークドライブの割り当て」でも同じことができますが、net useコマンドには以下のメリットがあります。
コマンドのメリット
- バッチファイルで自動化できる
- 複数のドライブを一括で設定できる
- スクリプトに組み込める
- リモート操作で使える
- 詳細なオプション設定が可能
net useコマンドの基本構文【書き方のルール】
基本の書き方
net use [ドライブ文字:] [\\サーバー名\共有フォルダ名] [パスワード] [/USER:ユーザー名]
それぞれの意味
- ドライブ文字:割り当てるドライブの文字(Z:、Y:など)
- サーバー名:接続先のサーバー名またはIPアドレス
- 共有フォルダ名:アクセスしたい共有フォルダの名前
- パスワード:認証に必要なパスワード(省略可能)
- /USER:ユーザー名:認証に使うユーザー名(省略可能)
最もシンプルな例
net use Z: \\FileServer\Documents
この例では、\\FileServer\Documentsという共有フォルダを、Zドライブとして割り当てています。
net useコマンドの主な使い方【6つの基本パターン】
使い方1:ネットワークドライブを割り当てる【基本】
コマンド例
net use Z: \\192.168.1.100\share
何が起きるか
- IPアドレス192.168.1.100のサーバーにある「share」フォルダが、Zドライブとして使えるようになります
- エクスプローラーで「PC」を開くと、Zドライブが表示されます
サーバー名でも指定できます
net use Z: \\FileServer\Documents
使い方2:ユーザー名とパスワードを指定して接続
認証が必要な共有フォルダに接続する場合です。
コマンド例
net use Z: \\192.168.1.100\share /user:yamada password123
解説
/user:yamada:ユーザー名「yamada」で認証password123:パスワード
ドメイン環境の場合
net use Z: \\FileServer\Documents /user:COMPANY\yamada password123
COMPANYの部分がドメイン名です。
使い方3:永続的な接続にする(再起動後も有効)
コマンド例
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes
何が起きるか
- パソコンを再起動しても、Zドライブの割り当てが残ります
- 毎回コマンドを実行する必要がなくなります
注意点
/persistent:yesを付けないと、再起動するとドライブの割り当てが消えてしまいます。
使い方4:ネットワークドライブを切断する
コマンド例
net use Z: /delete
何が起きるか
- Zドライブの割り当てが解除されます
- エクスプローラーからZドライブが消えます
すべてのネットワークドライブを一括で切断
net use * /delete
*(アスタリスク)を使うと、すべてのネットワークドライブが切断されます。
使い方5:現在の接続状況を確認する
コマンド例
net use
パラメータなしで実行すると、現在接続されているネットワークドライブの一覧が表示されます。
表示される内容の例
状態 ローカル名 リモート名
-------------------------------------------------------------------------------
OK Z: \\FileServer\Documents Microsoft Windows Network
OK Y: \\192.168.1.100\share Microsoft Windows Network
使い方6:次に使えるドライブ文字を自動で割り当て
コマンド例
net use * \\FileServer\Documents
何が起きるか
- ドライブ文字の部分に
*を指定すると、Windowsが自動的に空いているドライブ文字を選んでくれます - 例えば、Z、Y、Xがすでに使われていたら、自動的にWドライブが割り当てられます
オプション一覧【詳しい説明】
/USER:ユーザー名
認証に使うユーザー名を指定します。
書き方のパターン
/USER:yamada (ローカルユーザー)
/USER:COMPANY\yamada (ドメインユーザー)
/USER:yamada@company.local (UPN形式)
/PERSISTENT:{YES | NO}
接続を永続化するかどうかを指定します。
YES:再起動後も接続が残る
NO:再起動すると接続が消える
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes
/DELETE
ネットワークドライブの接続を切断します。
net use Z: /delete (Zドライブのみ切断)
net use * /delete (すべて切断)
/SAVECRED
資格情報(ユーザー名とパスワード)を保存して、次回以降は自動的に認証します。
net use Z: \\FileServer\Documents /user:yamada password123 /savecred
注意
セキュリティ上のリスクがあるため、重要なサーバーには使わないでください。
/HOME
Active Directoryで設定されているホームディレクトリに接続します。
net use H: /home
実践例【よくある使い方10選】
例1:会社のファイルサーバーにZドライブとして接続
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes
再起動後も接続が維持されます。
例2:IPアドレスで指定して接続
net use Y: \\192.168.1.50\share /user:admin password123
サーバー名が分からない時は、IPアドレスで指定できます。
例3:ドメインユーザーで接続
net use Z: \\FileServer\Documents /user:COMPANY\yamada password123 /persistent:yes
会社のActive Directory環境での典型的な使い方です。
例4:NAS(自宅のネットワークストレージ)に接続
net use N: \\192.168.0.10\photos /user:nas_user mypassword /persistent:yes
自宅のNASに「Nドライブ」として接続する例です。
例5:複数の共有フォルダに一括で接続
バッチファイル(connect_drives.bat)を作成:
@echo off
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes
net use Y: \\FileServer\Projects /persistent:yes
net use X: \\FileServer\Archives /persistent:yes
echo すべてのドライブの割り当てが完了しました。
pause
このバッチファイルを実行すると、3つのドライブが一度に割り当てられます。
例6:パスワードを毎回入力する方式
セキュリティを重視する場合、パスワードを*にすると、実行時に入力を求められます。
net use Z: \\FileServer\Documents /user:yamada *
実行すると、パスワードの入力画面が表示されます。
例7:ドライブレターを自動選択
net use * \\FileServer\Documents /persistent:yes
空いているドライブ文字が自動的に割り当てられます。
例8:ドライブレターなしで接続(デバイスレス接続)
net use \\FileServer\Documents /user:yamada password123
ドライブ文字を指定しないと、UNCパスで直接アクセスできるようになります。
例9:既存の接続を確認してから新しい接続を作る
@echo off
echo 現在の接続状況:
net use
echo.
echo 新しい接続を作成します...
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes
echo 完了しました!
pause
例10:接続を切断してから再接続
@echo off
echo 既存の接続を切断します...
net use Z: /delete /yes
echo 新しい接続を作成します...
net use Z: \\FileServer\Documents /user:yamada password123 /persistent:yes
echo 完了しました!
pause
トラブルシューティング【よくあるエラーと対処法】

エラー1:「システムエラー5が発生しました。アクセスが拒否されました。」
原因
- ユーザー名またはパスワードが間違っている
- 権限がない
- 管理者権限が必要
対処法
- ユーザー名とパスワードを確認する
- コマンドプロンプトを「管理者として実行」で開く
- 正しい形式でユーザー名を指定する
net use Z: \\FileServer\Documents /user:COMPANY\yamada password123
エラー2:「システムエラー53が発生しました。ネットワークパスが見つかりません。」
原因
- サーバー名またはIPアドレスが間違っている
- サーバーが起動していない
- ネットワークに接続されていない
対処法
- サーバー名が正しいか確認
- pingコマンドで接続確認
ping FileServer
- IPアドレスで試してみる
net use Z: \\192.168.1.100\share
エラー3:「システムエラー67が発生しました。ネットワーク名が見つかりません。」
原因
- 共有フォルダ名が間違っている
- 共有が無効になっている
対処法
- 共有フォルダ名を確認
- サーバー側で共有が有効か確認
- 利用可能な共有を確認
net view \\FileServer
エラー4:「複数の接続はサポートされていません」
原因
同じサーバーに対して、異なる資格情報で接続しようとしている
対処法
既存の接続を切断してから、再接続します。
net use \\FileServer /delete
net use Z: \\FileServer\Documents /user:yamada password123
エラー5:「ローカルデバイス名は既に使用されています」
原因
指定したドライブ文字が既に使われている
対処法
- 現在の接続を確認
net use
- 別のドライブ文字を使う、または既存の接続を切断
net use Z: /delete
エラー6:再起動後にドライブが消える
原因
/persistent:yesを指定していない
対処法
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes
エラー7:「パスワードまたはユーザー名が無効です」(実際は正しい)
原因
- パスワードにスラッシュ(
/)が含まれている - 特殊文字が正しく解釈されていない
対処法
パスワードをダブルクォーテーションで囲む
net use Z: \\FileServer\Documents "/user:yamada /p@ss123"
コマンドプロンプトの開き方【初心者向け】
net useコマンドを使うには、コマンドプロンプトを開く必要があります。
開き方1:検索から開く
Windows 10/11
- スタートメニューを開く
- 「cmd」と入力
- 「コマンドプロンプト」をクリック
管理者権限で開く場合
- 「cmd」と入力
- 「コマンドプロンプト」を右クリック
- 「管理者として実行」をクリック
開き方2:ファイル名を指定して実行
Windowsキー +Rキーを同時に押す- 「cmd」と入力
Enterキーを押す
開き方3:Windows Terminal(Windows 11)
Windows 11では、Windows Terminalが標準です。
- スタートメニューから「ターミナル」を開く
- net useコマンドを入力
バッチファイルで自動化【応用編】
バッチファイルとは?
.batという拡張子のファイルで、複数のコマンドを自動実行できます。
基本的なバッチファイルの作り方
手順
- メモ帳を開く
- 以下のような内容を書く
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」
- ファイル名:
connect_drives.bat - ファイルの種類:「すべてのファイル」
- 保存
実用的なバッチファイル例1:ログイン時に自動接続
ファイル名:auto_connect.bat
@echo off
echo ネットワークドライブに接続しています...
net use Z: \\FileServer\Documents /user:COMPANY\yamada password123 /persistent:yes
if %errorlevel% neq 0 (
echo Zドライブの接続に失敗しました。
) else (
echo Zドライブの接続に成功しました。
)
net use Y: \\FileServer\Projects /persistent:yes
if %errorlevel% neq 0 (
echo Yドライブの接続に失敗しました。
) else (
echo Yドライブの接続に成功しました。
)
echo.
echo すべての処理が完了しました。
pause
実用的なバッチファイル例2:接続を切断
ファイル名:disconnect_drives.bat
@echo off
echo すべてのネットワークドライブを切断します...
net use * /delete /yes
echo 切断が完了しました。
pause
実用的なバッチファイル例3:接続状況を確認
ファイル名:check_drives.bat
@echo off
echo 現在のネットワークドライブ接続状況:
echo ==========================================
net use
echo ==========================================
pause
バッチファイルの実行方法
- 作成した
.batファイルをダブルクリック - または、コマンドプロンプトからファイル名を入力
スタートアップに登録して自動実行
Windows起動時に自動的にバッチファイルを実行する方法です。
手順
Windowsキー +Rキーを押すshell:startupと入力してEnter- バッチファイルのショートカットを作成
- 作成したショートカットをスタートアップフォルダに置く
次回のWindows起動時から、自動的にネットワークドライブが接続されるようになります。
セキュリティ上の注意点【重要】
注意1:パスワードを平文で書かない
バッチファイルにパスワードを直接書くのは危険です。
悪い例
net use Z: \\FileServer\Documents /user:yamada password123
誰でもバッチファイルを開けば、パスワードが見えてしまいます。
より安全な方法
net use Z: \\FileServer\Documents /user:yamada *
*を使うと、実行時にパスワード入力を求められます。
注意2:/SAVECREDの危険性
/SAVECREDオプションは便利ですが、資格情報がWindowsに保存されるため、他の人がパソコンにアクセスできる環境では使わないでください。
注意3:共有パソコンでは永続接続を避ける
/persistent:yesを使うと、他の人がパソコンを使った時にもドライブが見えてしまいます。
注意4:管理者権限の必要性
システムの重要な共有フォルダに接続する場合は、「管理者として実行」でコマンドプロンプトを開いてください。
よくある質問
Q1. net useとネットワークドライブの割り当て(GUI)の違いは?
A: 基本的には同じことができます。
GUIの利点
- 視覚的に分かりやすい
- 初心者でも使いやすい
net useコマンドの利点
- バッチファイルで自動化できる
- スクリプトに組み込める
- 複数のドライブを一括で設定できる
- リモートで実行できる
Q2. 割り当てられるドライブ文字に制限はある?
A: はい、使えるのはA〜Zの26文字です。
通常使われないドライブ文字
- A:フロッピードライブ(古いパソコン)
- B:フロッピードライブ(古いパソコン)
- C:システムドライブ
ネットワークドライブでよく使われる文字
- Z、Y、X、W、V など
Q3. パスワードに特殊文字が含まれる場合は?
A: ダブルクォーテーションで囲んでください。
net use Z: \\FileServer\Documents "/user:yamada p@ss#123"
特にスラッシュ(/)が含まれる場合は必須です。
Q4. 同じサーバーに複数のユーザーで接続できる?
A: いいえ、できません。
Windowsは同じサーバーに対して、一度に1つの資格情報しか使えません。
対処法
既存の接続を切断してから、別のユーザーで接続します。
net use \\FileServer /delete
net use Z: \\FileServer\Documents /user:別のユーザー パスワード
Q5. net useコマンドが使えない場合は?
A: 以下を確認してください。
- Windowsのバージョン:古すぎるバージョンでは動作しないことがあります
- ネットワーク接続:インターネットやネットワークに接続しているか確認
- 管理者権限:「管理者として実行」で開いているか確認
- ファイアウォール:セキュリティソフトが接続をブロックしていないか確認
Q6. Macでも使える?
A: いいえ、net useはWindowsのコマンドです。
Macでネットワークドライブに接続する場合は、Finderの「サーバへ接続」機能を使います。
Q7. PowerShellでも使える?
A: はい、PowerShellでもnet useコマンドは使えます。
ただし、PowerShellには専用のコマンドレットNew-PSDriveもあります。
PowerShellでの例
New-PSDrive -Name "Z" -PSProvider FileSystem -Root "\\FileServer\Documents" -Persist
Q8. 接続が遅い場合の対処法は?
A: いくつかの原因が考えられます。
対処法
- ネットワーク速度を確認
- サーバーの応答速度を確認
- 不要なネットワークドライブを切断
- セッションタイムアウトを調整(高度な設定)
Q9. 接続したドライブが勝手に切断される
A: セッションタイムアウトが原因の可能性があります。
Windowsは、15分間使用されないネットワークドライブを自動的に切断することがあります。
対処法
レジストリを編集してタイムアウト時間を延長する(高度な操作のため、慎重に行ってください)。
Q10. エラーコードの意味は?
A: 主なエラーコードとその意味は以下の通りです。
- エラー5:アクセス拒否(認証エラー)
- エラー53:ネットワークパスが見つからない(サーバーに接続できない)
- エラー67:ネットワーク名が見つからない(共有フォルダが存在しない)
- エラー85:ローカルデバイス名が既に使用されている
- エラー86:指定されたネットワークパスワードが間違っている
- エラー1219:同じユーザーで複数の接続は不可
まとめ:net useコマンドでネットワークドライブを快適に管理
net useコマンドの3つの重要ポイント
1. 基本的な使い方は3パターン
- 接続:
net use Z: \\FileServer\Documents /persistent:yes - 切断:
net use Z: /delete - 確認:
net use
この3つを覚えれば、基本的な操作はすべてできます。
2. 再起動後も接続を維持するには/persistent:yes
毎回コマンドを実行するのが面倒な場合は、必ず/persistent:yesオプションを付けましょう。
3. バッチファイルで自動化すると便利
複数のネットワークドライブを使う場合は、バッチファイルを作っておくと、ワンクリックで全部接続できて便利です。
最後に
net useコマンドは、一見難しそうに見えますが、基本的な使い方を覚えてしまえばとても便利です。会社のファイルサーバーや自宅のNASを快適に使いこなして、作業効率をアップさせましょう!
トラブルが発生した場合は、この記事のトラブルシューティングセクションを参考にしてください。ほとんどの問題は、ユーザー名やパスワードの確認、ネットワーク接続の確認で解決できます。


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