「MySQLでデータベースを作ったけど、コマンドだけでは操作が大変…」
「テーブルの構造を図で確認しながら作業したい」
そんな時に最適なのが、MySQL Workbench(マイエスキューエル・ワークベンチ)です。
MySQL Workbenchは、MySQLデータベースを管理するための公式ツールで、無料で使えます。複雑なSQLコマンドを覚えなくても、マウス操作でデータベースを作成・編集できます。この記事では、MySQL Workbenchの基本から実際の使い方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
データベース管理を、もっと簡単に、もっと分かりやすくしましょう。
MySQL Workbenchとは何か

MySQL Workbenchは、Oracle社が提供する、MySQL用の統合開発環境(IDE)です。
MySQLとは
まず、MySQLについて簡単に説明しましょう。
MySQL(マイエスキューエル)は、世界で最も人気のあるオープンソースのデータベース管理システムです。ウェブサイトからスマートフォンアプリまで、あらゆる場所で使われています。
Facebook、Twitter、YouTubeなど、有名なサービスの多くがMySQLを使っています。
MySQL Workbenchの役割
MySQLは基本的に、コマンドライン(文字だけの黒い画面)で操作します。
しかし、これは初心者には難しく、ミスも起きやすいです。そこで役立つのがMySQL Workbenchです。
MySQL Workbenchの特徴
- MySQLの公式ツール
- 完全無料で利用可能
- グラフィカルな操作画面
- データベース設計からクエリ実行まで一貫して行える
- ER図(テーブル間の関係図)を自動生成
- Windows、Mac、Linuxに対応
他の管理ツールとの違い
MySQLを管理するツールは他にもありますが、MySQL WorkbenchはMySQL開発元の公式ツールです。
そのため、MySQLの最新機能にいち早く対応し、最も安定して動作します。
MySQL Workbenchの主な機能
MySQL Workbenchには、大きく分けて3つの機能があります。
SQL開発
クエリエディタ
SQLクエリ(データベースへの命令)を書いて実行する環境です。
- シンタックスハイライト(色分け表示)
- オートコンプリート(自動補完)
- 実行結果の表示
- クエリの実行時間測定
データの閲覧・編集
テーブルのデータを、Excelのような表形式で表示・編集できます。
- セルをダブルクリックして編集
- 行の追加・削除
- フィルター機能
- ソート(並べ替え)
データベース管理
データベースやテーブルの作成・変更・削除を、GUIで簡単に行えます。
データモデリング
ER図の作成
データベースの設計図であるER図(Entity Relationship Diagram)を、ビジュアルに作成できます。
ER図とは、テーブル同士の関係を矢印や線で表した図のことです。設計段階でデータベースの構造を整理するのに役立ちます。
リバースエンジニアリング
既存のデータベースから、自動的にER図を生成する機能です。
データベースの構造を視覚的に理解したい時に便利です。
フォワードエンジニアリング
ER図から、実際のデータベースを自動生成する機能です。
設計図を描いたら、それをそのままデータベースとして作成できます。
サーバー管理
サーバーの起動・停止
MySQLサーバーを、画面上のボタンで起動・停止できます。
ユーザー管理
データベースにアクセスできるユーザーを管理します。
- 新規ユーザーの作成
- 権限の設定
- パスワードの変更
パフォーマンス監視
データベースのパフォーマンスをリアルタイムで確認できます。
- 実行中のクエリ
- 接続数
- CPU使用率
- メモリ使用量
バックアップと復元
データベースのバックアップを作成したり、バックアップから復元したりできます。
インストール方法
MySQL Workbenchをインストールする手順を、OS別に説明します。
事前準備:MySQLのインストール
MySQL Workbenchを使うには、まずMySQLサーバーがインストールされている必要があります。
MySQLがまだインストールされていない場合は、先にMySQLをインストールしましょう。
Windowsへのインストール
ステップ1:公式サイトにアクセス
ブラウザで「dev.mysql.com」にアクセスし、Downloadsページに進みます。
ステップ2:MySQL Workbenchを選択
「MySQL Workbench」を探してクリックします。
ステップ3:Windows版をダウンロード
「Microsoft Windows」の項目で、「Download」ボタンをクリックします。
「MySQL Installer for Windows」を使うのが最も簡単です。
ステップ4:ログインをスキップ
「No thanks, just start my download」をクリックして、ダウンロードを開始します。
Oracleアカウントがなくても、ダウンロードできます。
ステップ5:インストーラーを実行
ダウンロードした.msiファイルをダブルクリックします。
ステップ6:セットアップタイプを選択
「Custom」を選択すると、MySQL Workbenchだけをインストールできます。
ステップ7:インストール実行
「Execute」をクリックして、インストールを開始します。
ステップ8:完了
インストールが完了したら、「Finish」をクリックします。
macOSへのインストール
ステップ1:公式サイトからダウンロード
MySQL Workbenchのダウンロードページで、「macOS」を選択します。
ステップ2:CPUアーキテクチャを選択
- Intel Mac:「macOS (x86, 64-bit)」
- Apple Silicon Mac(M1/M2/M3):「macOS (ARM, 64-bit)」
自分のMacがどちらか分からない場合は、Appleメニュー→「このMacについて」で確認できます。
ステップ3:dmgファイルをダウンロード
「Download」ボタンをクリックして、.dmgファイルをダウンロードします。
ステップ4:dmgファイルを開く
ダウンロードしたファイルをダブルクリックします。
ステップ5:インストーラーを実行
表示されたウィンドウで、「MySQLWorkbench.pkg」をダブルクリックします。
ステップ6:セットアップウィザード
画面の指示に従って進めます。
- 使用許諾契約に同意
- インストール先を選択
- 管理者パスワードを入力
- インストール実行
ステップ7:完了
インストールが完了すると、アプリケーションフォルダに追加されます。
Linuxへのインストール
Linuxの場合、ディストリビューションごとに方法が異なります。
Ubuntu/Debianの場合
sudo apt update
sudo apt install mysql-workbench
Fedora/CentOS/RHELの場合
sudo dnf install mysql-workbench-community
または公式サイトから.rpmファイルをダウンロードしてインストールします。
初期設定と起動

インストールが完了したら、MySQL Workbenchを起動しましょう。
初回起動
ステップ1:MySQL Workbenchを起動
スタートメニュー(Windows)またはアプリケーションフォルダ(Mac)から起動します。
ステップ2:ホーム画面を確認
初回起動時、ホーム画面が表示されます。
画面は大きく3つのセクションに分かれています:
- MySQL Connections:データベース接続の管理
- Models:データモデル(ER図)の管理
- Shortcuts:よく使う機能へのショートカット
インターフェースの日本語化
残念ながら、MySQL Workbenchは日本語に完全対応していません。
メニューなどは英語表示ですが、基本的な英単語が分かれば問題なく使えます。
データベースへの接続
MySQL Workbenchから、MySQLサーバーに接続する方法を説明します。
新規接続の作成
ステップ1:接続を追加
ホーム画面の「MySQL Connections」セクションで、「+」アイコン(またはプラスマーク)をクリックします。
ステップ2:接続情報を入力
「Setup New Connection」ウィンドウが表示されます。
Connection Name(接続名)
分かりやすい名前を付けます。
例:「Local MySQL」「開発サーバー」など
Connection Method(接続方法)
通常は「Standard (TCP/IP)」を選択します。
Parameters(パラメータ)
- Hostname:サーバーのアドレス(ローカルなら「localhost」または「127.0.0.1」)
- Port:ポート番号(デフォルトは3306)
- Username:MySQLのユーザー名(通常は「root」)
- Password:「Store in Keychain…」または「Store in Vault…」をクリックしてパスワードを設定
ステップ3:接続テスト
「Test Connection」ボタンをクリックして、接続が成功するか確認します。
「Successfully made the MySQL connection」と表示されれば成功です。
ステップ4:保存
「OK」をクリックして、接続設定を保存します。
接続の開始
ステップ1:接続をクリック
ホーム画面の「MySQL Connections」セクションで、作成した接続をダブルクリックします。
ステップ2:パスワード入力(必要な場合)
パスワードを保存していない場合は、入力を求められます。
ステップ3:接続完了
接続に成功すると、SQLエディタ画面が開きます。
基本的な使い方
MySQL Workbenchの基本操作を説明します。
データベースの作成
ステップ1:スキーマを作成
MySQL Workbenchでは、データベースを「スキーマ」と呼びます。
左側の「Schemas」パネルの空白部分を右クリックして、「Create Schema…」を選択します。
ステップ2:スキーマ名を入力
「Name」欄に、データベースの名前を入力します。
ステップ3:文字コードを設定
「Charset/Collation」で、文字コードを設定します。
日本語を使う場合は、「utf8mb4」を選択するのが推奨です。
ステップ4:適用
「Apply」ボタンをクリックします。
実行されるSQLが表示されるので、確認して「Apply」をもう一度クリックします。
テーブルの作成
ステップ1:スキーマを展開
左側のパネルで、作成したスキーマを展開し、「Tables」を右クリックします。
ステップ2:新規テーブルを作成
「Create Table…」を選択します。
ステップ3:テーブル情報を入力
下部のパネルにテーブルエディタが表示されます。
Table Name
テーブルの名前を入力します。
Columns(カラム)
「Column Name」の下の空欄をダブルクリックして、列(カラム)を追加します。
- Column Name:列の名前
- Datatype:データ型(INT、VARCHAR、DATEなど)
- PK:主キーにする場合はチェック
- NN:NOT NULL(必須項目)にする場合はチェック
- AI:Auto Increment(自動増加)にする場合はチェック
ステップ4:適用
必要なカラムを追加したら、「Apply」ボタンをクリックします。
データの挿入
ステップ1:テーブルを開く
テーブルを右クリックして、「Select Rows – Limit 1000」を選択します。
ステップ2:データの入力
表示された結果グリッドに、直接データを入力できます。
一番下の空白行に、新しいデータを入力します。
ステップ3:変更を適用
「Apply」ボタンをクリックして、変更を保存します。
実行されるSQLが表示されるので、確認して「Apply」をクリックします。
SQLクエリの実行
ステップ1:クエリタブを開く
画面上部の「Query」メニューから「New Query Tab」を選択するか、Ctrl+T(Mac:Command+T)を押します。
ステップ2:SQLを入力
エディタにSQLクエリを入力します。
例:
SELECT * FROM users WHERE age > 20;
ステップ3:実行
稲妻アイコン(⚡)をクリックするか、Ctrl+Enter(Mac:Command+Enter)を押します。
ステップ4:結果の確認
下部のパネルに、実行結果が表示されます。
複数の結果セットがある場合は、タブで切り替えられます。
ER図の作成と活用

MySQL Workbenchの強力な機能の1つが、ER図の作成です。
既存データベースからER図を生成
ステップ1:データベースを選択
「Database」メニューから「Reverse Engineer…」を選択します。
ステップ2:接続を選択
接続情報を確認して、「Next」をクリックします。
ステップ3:スキーマを選択
ER図を作成したいスキーマを選択して、「Next」をクリックします。
ステップ4:オブジェクトを選択
インポートするオブジェクト(テーブル、ビューなど)を選択します。
通常はすべて選択したままで「Next」をクリックします。
ステップ5:完了
「Execute」をクリックすると、ER図が自動生成されます。
ER図の編集
生成されたER図は、自由に編集できます。
- テーブルをドラッグして配置を変更
- 線(リレーション)をクリックして詳細を表示
- 新しいテーブルを追加
- テーブルをダブルクリックして編集
ER図からデータベースを生成
設計したER図から、実際のデータベースを作成できます。
手順
- 「Database」メニューから「Forward Engineer…」を選択
- 接続情報を確認
- オプションを選択(通常はデフォルトのまま)
- 実行されるSQLを確認
- 「Execute」をクリック
便利な機能
MySQL Workbenchには、作業効率を上げる便利な機能がたくさんあります。
データのエクスポート
CSVやJSON形式でエクスポート
クエリ結果を右クリックして、「Export Recordset to an external file」を選択します。
ファイル形式を選んで保存できます。
データのインポート
CSVファイルからデータをインポート
- テーブルを右クリック
- 「Table Data Import Wizard」を選択
- CSVファイルを指定
- カラムのマッピングを確認
- インポート実行
SQLスクリプトの実行
ファイルからSQLを実行
「File」メニューから「Run SQL Script…」を選択して、.sqlファイルを実行できます。
大量のSQLを一度に実行したい時に便利です。
バックアップの作成
データエクスポート機能
- 「Server」メニューから「Data Export」を選択
- バックアップするスキーマとテーブルを選択
- エクスポート先とオプションを設定
- 「Start Export」をクリック
データベースの復元
データインポート機能
- 「Server」メニューから「Data Import」を選択
- インポート元のファイルを指定
- 復元先のスキーマを選択
- 「Start Import」をクリック
クエリの整形
SQLフォーマッター
読みにくいSQLを、見やすく整形できます。
SQLを選択して、「Edit」メニューから「Format」→「Beautify Query」を選択します。
お気に入りクエリ
よく使うSQLを保存しておけます。
- SQLエディタでクエリを入力
- 「Query」メニューから「Add to Favorites」を選択
- 名前を付けて保存
よくあるトラブルと解決方法
MySQL Workbenchを使っていて困った時の対処法を紹介します。
接続できない
症状
「Can’t connect to MySQL server」というエラーが表示される。
原因と解決方法
MySQLサーバーが起動していない
- Windowsの場合:「サービス」でMySQLサービスが実行中か確認
- Mac/Linuxの場合:ターミナルで
sudo service mysql statusを実行
ファイアウォールの問題
- ファイアウォール設定で、ポート3306を許可
接続情報の間違い
- ホスト名、ポート番号、ユーザー名、パスワードを再確認
- localhostで接続できない場合は、127.0.0.1を試す
パスワードが合わない
症状
「Access denied for user」というエラーが出る。
解決方法
- MySQLにコマンドラインから直接ログインして、パスワードが正しいか確認
- 必要に応じて、パスワードをリセット
- MySQL 8.0以降では、認証方式が変わっているので注意
日本語が文字化けする
症状
日本語のデータが「???」や意味不明な文字で表示される。
原因と解決方法
データベースの文字コードが適切に設定されていません。
新規データベースの場合
- 作成時に、Charset を「utf8mb4」に設定
既存データベースの場合
以下のSQLで変更できます:
ALTER DATABASE データベース名 CHARACTER SET utf8mb4 COLLATE utf8mb4_unicode_ci;
ALTER TABLE テーブル名 CONVERT TO CHARACTER SET utf8mb4 COLLATE utf8mb4_unicode_ci;
起動が遅い・動作が重い
症状
MySQL Workbenchの起動に時間がかかる、または動作が重い。
解決方法
- 大量のデータを表示している場合は、LIMIT句で制限
- 不要な接続タブを閉じる
- MySQL Workbenchを再起動
- パソコンのメモリが不足していないか確認
- 古いバージョンを使っている場合は、最新版にアップデート
クエリが実行されない
症状
SQLを書いて実行ボタンを押しても、何も起こらない。
原因
デフォルトスキーマが設定されていない可能性があります。
解決方法
- SQLに明示的にスキーマ名を含める(例:
SELECT * FROM mydb.users;) - または、スキーマを右クリックして「Set as Default Schema」を選択
他のツールとの比較

MySQL管理ツールは、MySQL Workbench以外にもあります。
phpMyAdmin
特徴
- ウェブブラウザで動作
- PHPで書かれている
- レンタルサーバーでよく使われる
- シンプルで軽量
MySQL Workbenchとの違い
- phpMyAdmin:ブラウザベースで手軽
- MySQL Workbench:デスクトップアプリで高機能
HeidiSQL
特徴
- Windows専用
- 軽量で高速
- MySQL以外にもMariaDB、PostgreSQLに対応
- 無料でオープンソース
MySQL Workbenchとの違い
- HeidiSQL:シンプルで軽い
- MySQL Workbench:公式で機能が豊富
DBeaver
特徴
- 複数のデータベースに対応(MySQL、PostgreSQL、SQLiteなど)
- クロスプラットフォーム
- 無料版と有料版
MySQL Workbenchとの違い
- DBeaver:汎用的
- MySQL Workbench:MySQL専用で最適化
どれを選ぶべき?
MySQL Workbenchがおすすめな人
- MySQLの公式ツールを使いたい
- ER図を活用したい
- データベース設計も行う
- サーバー管理機能が必要
他のツールを検討すべき人
- ブラウザで手軽に使いたい(phpMyAdmin)
- より軽量なツールが良い(HeidiSQL)
- 複数のデータベースシステムを使う(DBeaver)
セキュリティの注意点
MySQL Workbenchを使う際、セキュリティに気をつけるべき点があります。
パスワードの管理
接続情報に含まれるパスワードは、厳重に管理しましょう。
- 推測されにくいパスワードを使う
- パスワードを保存する機能は、信頼できるパソコンでのみ使う
- 共用パソコンでは、毎回パスワードを入力する
ユーザー権限の適切な設定
rootユーザーは、すべての操作ができる強力な権限を持っています。
日常的な作業には、制限された権限のユーザーを作成して使うのが安全です。
リモート接続の注意
インターネット経由でデータベースに接続する場合は、特に注意が必要です。
- SSL接続を使用する
- VPNを経由する
- 信頼できないネットワークでは接続しない
- ファイアウォールで適切に保護する
SQLインジェクション対策
MySQL Workbenchでアプリケーションを開発する場合、SQLインジェクション(悪意のあるSQL文の挿入)に注意しましょう。
- ユーザー入力を直接SQLに埋め込まない
- プリペアドステートメントを使用する
まとめ:MySQL Workbenchでデータベース管理を効率化
MySQL Workbenchは、MySQLを使いやすくする強力な公式ツールです。
この記事のポイント
- MySQL WorkbenchはMySQLの公式管理ツール
- データベース作成、クエリ実行、ER図作成が可能
- Windows、Mac、Linuxに対応
- 接続情報の正確な設定が重要
- ER図でデータベース構造を視覚化できる
- バックアップ・復元機能が充実
- 文字コードはutf8mb4を推奨
- セキュリティに注意して使用する
コマンドラインでのデータベース操作は、慣れるまで大変です。MySQL Workbenchを使えば、視覚的に分かりやすく、マウス操作だけで多くのことができます。
MySQLを使ったWebアプリケーション開発や、データ分析の勉強をしている方は、ぜひMySQL Workbenchを活用してみてください。データベース管理が、ずっと楽になるはずです。特にER図機能は、データベース設計を学ぶ上で非常に役立ちますよ。

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