「モジュラス」という言葉を聞いたことはありますか?
数学の授業や、プログラミング、物理学など、さまざまな分野で登場する用語なんです。でも、分野によって意味が少しずつ違うので、混乱することもありますよね。
今回は、モジュラスの基本的な意味から使い方まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
モジュラスの基本的な意味

モジュラス(modulus、複数形:moduli)は、ラテン語で「測る単位」を意味する言葉です。
英語では「モジュラス」、フランス語では「モジュール(module)」と呼ばれます。日本でよく耳にする「モジュール」も、同じ語源から来ているんですよ。
数学や物理学では、この言葉がいくつかの異なる概念を表すために使われています。主な使い方は次の3つです。
モジュラスの主な意味
- 複素数の絶対値(大きさ)
- 剰余演算における除数(法)
- 物理学における各種係数
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 複素数のモジュラス(絶対値)
数学において、もっとも一般的なモジュラスの使い方は複素数の絶対値を表す場合です。
複素数って何?
まず、複素数について簡単に説明しますね。
複素数とは、実数と虚数を組み合わせた数のことです。一般的に次のような形で表されます。
z = a + bi
ここで、aは実部(実数部分)、bは虚部(虚数部分)、iは虚数単位(i² = -1)を表します。
たとえば、「3 + 4i」や「2 – 5i」などが複素数の例です。
モジュラスの定義
複素数 z = a + bi のモジュラスは、記号「|z|」で表され、次の式で計算されます。
|z| = √(a² + b²)
つまり、実部の2乗と虚部の2乗を足して、その平方根を取ったものがモジュラスです。
具体例で考えてみよう
複素数 z = 3 + 4i のモジュラスを求めてみましょう。
- 実部:a = 3
- 虚部:b = 4
計算式に当てはめると:
|z| = √(3² + 4²)
= √(9 + 16)
= √25
= 5
したがって、3 + 4i のモジュラスは5です。
幾何学的な意味
複素数は、複素平面(アルガン図)上の点として表すことができます。
横軸を実数軸、縦軸を虚数軸とすると、複素数 3 + 4i は座標(3, 4)の点に対応します。
このとき、モジュラスは原点からその点までの距離を表しているんです。
まさにピタゴラスの定理ですね。原点からの距離なので、モジュラスは常に0以上の値になります。
モジュラスの性質
複素数のモジュラスには、いくつか重要な性質があります。
基本的な性質
- |z| ≥ 0(常に0以上)
- |z| = 0 ⟺ z = 0(モジュラスが0なのは、複素数自体が0のときだけ)
- |z| = |−z|(符号を変えてもモジュラスは同じ)
- |z| = |z̄|(共役複素数のモジュラスは元の複素数と同じ)
積と商の性質
- |z₁ × z₂| = |z₁| × |z₂|(積のモジュラスは、モジュラスの積)
- |z₁ ÷ z₂| = |z₁| ÷ |z₂|(商のモジュラスは、モジュラスの商)
これらの性質は、複素数の計算をする上でとても便利なんですよ。
2. 剰余演算のモジュラス(法)
次に、整数の計算で使われるモジュラスについて説明します。
合同式とモジュラス
数学には「合同式」という概念があります。
たとえば、「26を7で割った余り」と「12を7で割った余り」は、どちらも5ですよね。このとき、26と12は7を法として合同であると言います。
これを記号で表すと:
26 ≡ 12 (mod 7)
ここで、「mod」は「modulo(モジュロ)」の略で、7のことをモジュラスまたは法と呼びます。
modの意味
「mod」は「modulo」というラテン語の略で、「~を法として」「~において」という意味です。
この「modulo」は「modulus」の活用形なんです。だから、合同式で使われる除数のことをモジュラスと呼ぶわけですね。
モジュラス演算(剰余演算)
プログラミングでは、「モジュラス演算」または「剰余演算」として登場することが多いです。
n = kp + m
この式で、nを除数pで割ったときの商がk、余りがmとなります。このpがモジュラスです。
プログラミング言語では、通常「%」記号で表されます。
具体例
26 % 7 = 5
これは「26を7で割った余りは5」という意味です。
実用的な使い道
モジュラス演算は、プログラミングで非常によく使われます。
よくある使い方
- 偶数・奇数の判定:n % 2 == 0なら偶数、n % 2 == 1なら奇数
- 配列のインデックス管理:配列の長さで割った余りを使って、循環的にアクセス
- ハッシュテーブル:データの格納位置を決定
- 周期的なパターン:繰り返すパターンを簡単に実装
たとえば、時計の計算もモジュラス演算です。13時は「13 mod 12 = 1」で午後1時、と考えることができますね。
3. 物理学のモジュラス(弾性係数)
物理学や材料工学では、モジュラスは係数や率を意味します。
(Young’s Modulus)
もっとも有名なのはヤング率(ヤングモジュラス)です。
これは、材料の硬さや剛性を表す指標で、材料が変形しにくいかどうかを示します。
具体的には、材料に力を加えたときに、どれだけ伸びるか(または縮むか)を数値化したものです。
ヤング率が大きい=材料が硬く、変形しにくい
ヤング率が小さい=材料が柔らかく、変形しやすい
たとえば、鋼鉄のヤング率は約200GPa(ギガパスカル)で、ゴムは数MPa(メガパスカル)程度です。鋼鉄の方が圧倒的に硬いことがわかりますね。
その他の弾性係数
物理学では、他にもさまざまな「モジュラス」が使われます。
体積弾性率(Bulk Modulus)
圧力をかけたときに、材料がどれだけ体積変化するかを表す係数です。
せん断弾性率(Shear Modulus)
材料をねじったり、せん断したりしたときの変形のしにくさを表します。
これらはすべて、材料の機械的な性質を数値化するために使われる重要な指標なんです。
モジュラスという言葉の語源
ここまで3つの異なる「モジュラス」を見てきました。
なぜ同じ言葉が、こんなに違う意味で使われるのでしょうか?
語源はラテン語の「modus」で、「測る単位」「基準」「尺度」といった意味があります。
- 複素数のモジュラス:複素数の「大きさを測る尺度」
- 剰余演算のモジュラス:割り算の「基準となる除数」
- 弾性係数のモジュラス:材料の性質を「測る係数」
すべて「何かを測る基準」という共通点があるんですね。
まとめ:モジュラスは「測る基準」
モジュラスという言葉は、分野によって意味が変わりますが、根本にあるのは「測る基準」という概念です。
この記事の重要ポイント
- モジュラスはラテン語で「測る単位」を意味する言葉です
- 複素数のモジュラスは、原点からの距離(絶対値)を表し、|z| = √(a² + b²)で計算されます
- 剰余演算のモジュラスは、合同式における除数(法)のことで、a ≡ b (mod n)のnを指します
- 物理学のモジュラスは、ヤング率などの弾性係数を指し、材料の性質を測る指標です
- プログラミングでは、モジュラス演算(%演算子)として頻繁に使われます
文脈によって意味が変わるので、「どの分野のモジュラスか」を意識することが大切です。
数学の問題で「モジュラスを求めよ」と言われたら複素数の絶対値を、プログラミングで「modulo」と言われたら剰余演算を、物理の教科書で「モジュラス」と出てきたら弾性係数を思い浮かべましょう。
最初は少し混乱するかもしれませんが、慣れてくれば自然と使い分けられるようになりますよ!

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