Microsoft 365を利用していて「Modern認証」「先進認証」という言葉を目にしたことはありませんか?
Microsoftは2022年10月に基本認証(レガシー認証)を廃止し、より安全なModern認証への完全移行を実施しました。
この記事では、Modern認証とは何か、現在の設定状況の確認方法、そして有効化の手順をわかりやすく解説します。
Modern認証(先進認証)とは?
Modern認証は、従来の「基本認証」に代わる、より安全な認証方式です。
英語では「Modern Authentication」、日本語では「先進認証」や「モダン認証」とも呼ばれます。
Modern認証の特徴
従来の基本認証との違い:
| 項目 | 基本認証 | Modern認証 |
|---|---|---|
| 認証方式 | ユーザー名+パスワードのみ | OAuth 2.0トークンベース |
| 多要素認証 | 非対応 | 対応 |
| 条件付きアクセス | 非対応 | 対応 |
| セキュリティ | 低い | 高い |
| サインイン画面 | 従来のダイアログ | Webベースの認証画面 |
Modern認証が提供する機能
1. 多要素認証(MFA)のサポート
パスワードに加えて、SMSコードや認証アプリなど、追加の本人確認を行えます。
2. 条件付きアクセス
「誰が」「どこから」「どのデバイスで」などの条件に基づいて、アクセスを許可または拒否できます。
3. トークンベースの認証
ユーザー名とパスワードを直接サーバーに送信せず、信頼できる認証サービス経由でトークンを取得します。
4. シングルサインオン(SSO)
一度のサインインで複数のMicrosoft 365サービスにアクセスできます。
なぜModern認証が必要なのか
基本認証では「ユーザーID」と「パスワード」さえ知っていれば誰でもログインできてしまいます。
パスワード総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)によって、不正アクセスされるリスクが高いのです。
Modern認証なら、多要素認証や条件付きアクセスを組み合わせることで、このリスクを大幅に軽減できます。
基本認証廃止のタイムライン
Microsoftの基本認証に関する重要な変更を押さえておきましょう。
これまでの経緯
2017年8月:
- 新規作成テナントでModern認証がデフォルト有効に
2022年10月:
- Exchange Online、SharePoint Online、Skype for Business Onlineで基本認証が廃止
- SMTPを除くすべてのプロトコルで基本認証がブロック
現在:
- 基本認証は完全に廃止済み
- Modern認証が必須
影響を受けるサービス
- Exchange Online(Outlook接続)
- SharePoint Online
- Skype for Business Online / Microsoft Teams
- Exchange ActiveSync(モバイルメール)
- POP3 / IMAP4(セキュリティの既定値が有効な場合は無効化)
Modern認証の有効状態を確認する方法
まず、自社のMicrosoft 365テナントでModern認証が有効になっているか確認しましょう。
確認方法は2つあります。
方法1:Microsoft 365管理センターで確認(推奨)
GUIで簡単に確認できる方法です。
手順
- グローバル管理者アカウントでMicrosoft 365管理センターにサインイン
- URL: https://admin.microsoft.com
- 左側メニューから 「設定」 をクリック
- 「組織設定」 を選択
- 「サービス」 タブをクリック
- 一覧から 「Modern authentication」 を探してクリック
- 表示される設定画面で状態を確認
確認ポイント
以下の項目にチェックが入っていれば、Modern認証は有効です:
✅ 「Outlook 2013 for Windows 以降の先進認証をオンにする(推奨)」
チェックが入っていない場合は、Modern認証が無効になっています。
方法2:PowerShellで確認
より詳細な情報を確認したい場合や、スクリプトで自動化したい場合に便利です。
事前準備
Exchange Online PowerShell モジュールがインストールされている必要があります。
# モジュールのインストール(初回のみ)
Install-Module -Name ExchangeOnlineManagement
確認手順
# Exchange Online に接続
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName admin@yourdomain.com
# Modern認証の状態を確認
Get-OrganizationConfig | Format-Table Name, OAuth2ClientProfileEnabled
# 接続を切断
Disconnect-ExchangeOnline
結果の見方
OAuth2ClientProfileEnabled の値:
- True → Modern認証が有効
- False → Modern認証が無効
より詳細な確認
# 組織設定の詳細を確認
Get-OrganizationConfig | Select-Object OAuth*
出力例:
OAuth2ClientProfileEnabled : True
Modern認証を有効化する方法
Modern認証が無効になっている場合は、以下の手順で有効化しましょう。
方法1:Microsoft 365管理センターで有効化(推奨)
最も簡単で確実な方法です。
手順
- グローバル管理者アカウントでMicrosoft 365管理センターにサインイン
- URL: https://admin.microsoft.com
- 左側メニューから 「設定」 → 「組織設定」 をクリック
- 「サービス」 タブを選択
- 「Modern authentication」 をクリック
- 「Outlook 2013 for Windows 以降の先進認証をオンにする(推奨)」 にチェックを入れる
- 画面下部の 「保存」 をクリック
設定変更は即座に反映されます。
方法2:PowerShellで有効化
コマンドラインで有効化したい場合はこちらを使用します。
有効化コマンド
# Exchange Online に接続
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName admin@yourdomain.com
# Modern認証を有効化
Set-OrganizationConfig -OAuth2ClientProfileEnabled $true
# 設定が反映されたか確認
Get-OrganizationConfig | Format-Table Name, OAuth2ClientProfileEnabled
# 接続を切断
Disconnect-ExchangeOnline
無効化する場合(非推奨)
セキュリティ上の理由から推奨されませんが、無効化が必要な場合:
Set-OrganizationConfig -OAuth2ClientProfileEnabled $false
注意: 基本認証は廃止されているため、Modern認証を無効にすると接続できなくなる可能性があります。
有効化後の影響と注意点
Modern認証を有効化した後に起こる変化と、注意すべき点を解説します。
ユーザーへの影響
1. 再サインインが必要になる場合がある
Modern認証に対応したクライアント(Outlook 2013以降)では、再度サインインを求められることがあります。
新しいWebベースの認証ダイアログが表示されるので、資格情報を入力してください。
2. サインイン画面の変化
| 変更前(基本認証) | 変更後(Modern認証) |
|---|---|
| 従来のシンプルなダイアログ | Webブラウザスタイルの認証画面 |
| ユーザー名とパスワードのみ | 多要素認証にも対応 |
3. 接続が切れる可能性
Outlookで「切断済み」と表示される場合があります。この場合は、プロファイルを再作成するか、再度サインインしてください。
対応クライアントバージョン
Modern認証をサポートしているクライアント:
| クライアント | 対応バージョン |
|---|---|
| Outlook for Windows | 2013以降(2016以降推奨) |
| Outlook for Mac | 2016以降 |
| Outlook Mobile | iOS/Android標準対応 |
| Mail for Windows 10/11 | 標準対応 |
| Outlook on the web | 標準対応 |
非対応クライアントへの影響
以下のクライアントはModern認証に対応していないため、接続できなくなります:
- Office 2010以前
- Office for Mac 2011
- 一部の古いサードパーティ製メールアプリ
これらを使用している場合は、アップグレードが必要です。
Outlookでの認証方式の確認方法
Outlookが実際にModern認証を使用しているか確認する方法です。
Windows版Outlookの場合
- Outlookを起動
- Ctrl キーを押しながら システムトレイのOutlookアイコンを右クリック
- 「接続状態」 をクリック
- 「Authn」列を確認
表示内容の意味:
- Bearer → Modern認証を使用中
- クリア または 空白 → 基本認証を使用中
Mac版Outlookの場合
- 「ツール」 メニューから 「アカウント」 をクリック
- アカウント情報でメールアドレスの下の表示を確認
表示内容の意味:
- Microsoft Exchange → Modern認証
- Office 365 または Microsoft同期テクノロジ → Modern認証
トラブルシューティング
Modern認証に関連するよくある問題と解決方法です。
問題1:Outlookで「切断済み」と表示される
原因:
Modern認証への切り替え時に、既存の接続情報が古くなっている。
解決方法:
- Outlookを完全に終了
- コントロールパネル → メール → プロファイルの表示
- 既存のプロファイルを削除
- Outlookを再起動して新規プロファイルを作成
問題2:サインインがループする
原因:
多要素認証の設定や条件付きアクセスポリシーとの競合。
解決方法:
- ブラウザのキャッシュとCookieをクリア
- Microsoft Entra管理センターで条件付きアクセスポリシーを確認
- 該当ユーザーのMFA設定を確認
問題3:モバイルアプリで接続できない
原因:
アプリが古いバージョンで、Modern認証に対応していない。
解決方法:
- App StoreまたはGoogle Playでアプリを最新版に更新
- Outlook Mobileの使用を推奨
- アカウントを削除して再設定
問題4:サードパーティアプリが接続できない
原因:
アプリが基本認証のみ対応している。
解決方法:
- アプリのベンダーにModern認証対応を確認
- 対応していない場合は、代替アプリへの移行を検討
- どうしても必要な場合は、アプリパスワードの使用を検討(非推奨)
セキュリティ強化のための追加設定
Modern認証を有効にしたら、さらにセキュリティを強化する設定も検討しましょう。
1. 多要素認証(MFA)の有効化
Modern認証の最大のメリットを活かすため、MFAを有効にしましょう。
設定場所:
- Microsoft Entra管理センター → ユーザー → 多要素認証
2. 条件付きアクセスの設定
特定の条件でのみアクセスを許可するポリシーを設定できます。
設定例:
- 社内ネットワークからのみアクセス許可
- 管理対象デバイスからのみアクセス許可
- 特定の国/地域からのアクセスをブロック
3. セキュリティの既定値の有効化
Microsoft 365の基本的なセキュリティ機能をまとめて有効にできます。
含まれる機能:
- すべてのユーザーにMFAを要求
- 管理者に追加のMFAを要求
- レガシー認証プロトコルのブロック
4. サインインログの監視
不審なサインイン試行を検出するため、定期的にログを確認しましょう。
確認場所:
- Microsoft Entra管理センター → サインインログ
よくある質問(FAQ)
Q1. Modern認証を有効にするとデータは消えますか?
いいえ、消えません。認証方式が変わるだけで、メールやファイルなどのデータには影響ありません。
Q2. 有効化後、すぐに全員に影響がありますか?
Modern認証対応のクライアント(Outlook 2013以降)を使用しているユーザーは、次回接続時に再サインインを求められる場合があります。
Q3. 古いバージョンのOfficeを使っているユーザーはどうなりますか?
Office 2010以前など、Modern認証非対応のクライアントは接続できなくなります。アップグレードが必要です。
Q4. POP3やIMAP4を使っているユーザーへの影響は?
Modern認証の有効/無効は、POP3やIMAP4クライアントには直接影響しません。ただし、セキュリティの既定値が有効な場合は、これらのプロトコル自体が無効になります。
Q5. 一度有効にしたら無効にできますか?
技術的には可能ですが、基本認証は廃止されているため、無効にすると接続に問題が発生する可能性があります。無効化は推奨されません。
まとめ
Modern認証(先進認証)は、Microsoft 365のセキュリティを大幅に向上させる重要な機能です。
この記事のポイント
Modern認証とは:
- OAuth 2.0ベースの安全な認証方式
- 多要素認証や条件付きアクセスに対応
- 2022年10月以降、Microsoft 365では必須
確認方法:
- Microsoft 365管理センター → 設定 → 組織設定 → Modern authentication
- PowerShellで
Get-OrganizationConfigを実行
有効化方法:
- 管理センターでチェックボックスをオン
- または
Set-OrganizationConfig -OAuth2ClientProfileEnabled $true
今すぐやるべきこと
- ✅ Modern認証の有効状態を確認
- ✅ 無効であれば有効化
- ✅ 古いクライアントを使用しているユーザーを特定
- ✅ 必要に応じてクライアントのアップグレードを計画
- ✅ 多要素認証の導入を検討
Modern認証を適切に設定して、組織のセキュリティを強化しましょう!
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