「メールプロバイダー」という言葉、聞いたことはありますか?
実は、私たちが毎日使っているメールの裏側には、必ず「メールプロバイダー」の存在があるんです。でも、この言葉には2つの異なる意味があって、それが混乱の原因になっています。
この記事では、メールプロバイダーの2つの意味をはっきりさせた上で、それぞれの特徴や使い分け方を詳しく解説していきます。
「@の後ろにocn.ne.jpって書いてあるメールと、Gmailって何が違うの?」
「メールマーケティングをするならどのサービスを選べばいいの?」
そんな疑問にすべて答えます。
メールプロバイダーの2つの意味

意味1:プロバイダメール(ISPメール)
インターネット接続サービスを提供する会社から貰えるメールアドレスのことです。
インターネット回線を契約すると、多くの場合、その会社(プロバイダ)から専用のメールアドレスが提供されます。これを「プロバイダメール」または「ISPメール」と呼びます。
代表的なプロバイダメール:
- OCN(@ocn.ne.jp)
- BIGLOBE(@biglobe.ne.jp)
- Nifty(@nifty.com)
- So-net(@so-net.ne.jp)
- eo光(@eonet.ne.jp)
- BBIQ(@bbiq.jp)
- ドコモ光(各プロバイダによる)
これらのメールアドレスは、インターネット回線の契約とセットで提供されるのが特徴です。
意味2:ESP(Email Service Provider)
企業がメールマーケティング(広告メールの配信)を行うためのサービスです。
ESPは「イーエスピー」と読み、主に企業やマーケティング担当者が使う専門的なメール配信システムのこと。メルマガやキャンペーンメールを大量に送るための仕組みを提供しています。
代表的なESP:
- Mailchimp(メールチンプ)
- HubSpot(ハブスポット)
- SendGrid(センドグリッド)
- Klaviyo(クラビヨ)
- ActiveCampaign(アクティブキャンペーン)
- Benchmark Email(ベンチマークイーメール)
この記事では、まず一般ユーザー向けの「プロバイダメール」について詳しく解説し、その後、企業向けの「ESP」について説明していきます。
プロバイダメールとは?
プロバイダメールの仕組み
プロバイダメールは、インターネット接続サービス(光回線など)を提供する会社が、契約者に無料または低価格で提供するメールサービスです。
提供される内容:
- メールアドレス(通常1〜5個程度)
- メールサーバー(メールを送受信する設備)
- メールボックス(メールを保存する場所、容量制限あり)
契約すると自動的に使えるようになるので、特別な申し込みは不要なことが多いです。
フリーメールとの違い
プロバイダメールとよく比較されるのが「フリーメール」です。この2つの違いを見ていきましょう。
フリーメール(無料メール)の例:
- Gmail(@gmail.com)
- Yahoo!メール(@yahoo.co.jp)
- Outlook.com(@outlook.com、旧Hotmail)
- iCloudメール(@icloud.com)
主な違い
取得方法
- プロバイダメール:インターネット回線を契約すると自動的に貰える
- フリーメール:誰でも無料で登録できる
費用
- プロバイダメール:インターネット回線の料金に含まれている(追加料金なしの場合が多い)
- フリーメール:完全無料
信頼性
- プロバイダメール:本人確認済みなので信頼度が高い
- フリーメール:誰でも作れるため、信頼度は相対的に低い
継続性
- プロバイダメール:プロバイダを変更すると使えなくなる
- フリーメール:プロバイダを変更しても使い続けられる
容量
- プロバイダメール:1〜5GB程度(プロバイダによる)
- フリーメール:15GB〜無制限(Gmailは15GB)
広告
- プロバイダメール:広告なし
- フリーメール:広告が表示される場合がある
キャリアメールとの違い
携帯電話会社から提供される「キャリアメール」もよく使われています。
キャリアメールの例:
- ドコモメール(@docomo.ne.jp)
- au(@au.com、@ezweb.ne.jp)
- ソフトバンク(@softbank.ne.jp)
- 楽天モバイル(@rakumail.jp)
主な特徴:
- 携帯電話の契約に紐付いている
- 携帯会社を変更すると使えなくなる
- セキュリティが高い
- ガラケー時代からの名残で、今でも公式サイトの登録などに使える
プロバイダメールとキャリアメールは似ていますが、プロバイダメールは「インターネット回線」、キャリアメールは「携帯電話回線」に紐付いている点が違います。
プロバイダメールのメリット
1. 信頼性が高い
プロバイダメールは、インターネット回線の契約時に本人確認を経て発行されるため、信頼性が高いとされています。
具体的な場面:
- 銀行口座の開設
- クレジットカードの申し込み
- 公的機関への登録
- 企業の会員登録
これらの重要な手続きでは、フリーメールよりもプロバイダメールの方が信頼されやすい傾向があります。
2. セキュリティが高い
プロバイダが提供するメールサーバーは、迷惑メールフィルターやウイルスチェックなどのセキュリティ機能が充実していることが多いです。
また、フリーメールのように不特定多数の人が使うわけではないため、セキュリティ的に安全性が高いと言えます。
3. 広告が表示されない
フリーメールの中には、メールボックスに広告が表示されるものもあります。プロバイダメールは基本的に広告が表示されません。
4. サポート体制が整っている
プロバイダのカスタマーサポートに電話やメールで問い合わせができます。設定方法が分からない時や、トラブルが発生した時に助けてもらえるのは安心です。
5. 複数のアドレスを取得できる
プロバイダによっては、1つの契約で複数のメールアドレスを作ることができます。
使い分けの例:
- 仕事用
- プライベート用
- ネットショッピング用
- 家族用
プロバイダメールのデメリット
1. プロバイダを変更すると使えなくなる
これが最大のデメリットです。
引っ越しなどでインターネット回線を別のプロバイダに変更すると、今まで使っていたメールアドレスは使えなくなります。
影響を受けるもの:
- 各種サービスの登録メールアドレス
- 友人・知人との連絡先
- メールマガジンの配信先
- 仕事の連絡先
すべてのサービスでメールアドレスを変更する必要があり、非常に手間がかかります。
2. 外出先からのアクセスが面倒な場合がある
プロバイダメールは、設定によってはパソコンのメールソフト(Outlook、Thunderbirdなど)でしか見られないことがあります。
スマートフォンで見るには、別途設定が必要になる場合があります。
3. 容量が少ない場合がある
フリーメール(特にGmail)と比べると、保存できるメールの容量が少ない場合があります。
容量の目安:
- Gmail:15GB
- Yahoo!メール:10GB
- プロバイダメール:1〜5GB程度
古いメールを定期的に削除する必要があるかもしれません。
4. メールボックスの確認を忘れやすい
フリーメールに慣れていると、プロバイダメールのチェックを忘れてしまうことがあります。
重要な連絡を見逃す可能性があるため、定期的に確認する習慣をつける必要があります。
プロバイダメールの設定方法
プロバイダメールを使うには、メールソフトやスマートフォンに設定が必要です。
必要な情報
プロバイダから提供される以下の情報が必要になります。
基本情報:
- メールアドレス
- パスワード
- 受信メールサーバー(POPまたはIMAP)
- 送信メールサーバー(SMTP)
- ポート番号
- セキュリティ設定(SSL/TLS)
これらの情報は、プロバイダから送られてくる「契約書類」や「設定ガイド」、プロバイダの公式サイトに記載されています。
POPとIMAPの違い
メールを受信する方法には、POPとIMAPの2種類があります。
POP(Post Office Protocol)
- メールをパソコンやスマホに「ダウンロード」する方式
- ダウンロード後、サーバーからメールが削除される(設定で残すことも可能)
- 1台のデバイスでしか使わない人向け
IMAP(Internet Message Access Protocol)
- メールをサーバーに「保管」したまま見る方式
- 複数のデバイスで同じメールを確認できる
- パソコン、スマホ、タブレットなど複数の端末で使う人向け
現在は、IMAPの方が主流になっています。
スマートフォンでの設定
iPhoneやAndroidスマートフォンでプロバイダメールを使う場合は、以下の手順で設定します。
iPhone(iOS)の場合:
- 「設定」アプリを開く
- 「メール」をタップ
- 「アカウント」をタップ
- 「アカウントを追加」をタップ
- 「その他」を選択
- 「メールアカウントを追加」をタップ
- プロバイダから提供された情報を入力
Androidの場合:
- Gmailアプリを開く
- 右上のプロフィールアイコンをタップ
- 「別のアカウントを追加」をタップ
- 「その他」を選択
- プロバイダから提供された情報を入力
設定が難しい場合は、プロバイダのサポートに問い合わせれば、丁寧に教えてもらえます。
ESP(メールマーケティングサービス)とは?

ここからは、企業向けのメールプロバイダー「ESP」について解説します。
ESPの定義
ESP(Email Service Provider)は、企業がメールマーケティングを行うための専門的なプラットフォームです。
主な用途:
- メールマガジン(メルマガ)の配信
- キャンペーン情報の一斉送信
- 顧客へのお知らせメール
- 購入後のフォローメール
- カート放棄メール(買い物かごに入れたまま購入しなかった人へのリマインド)
個人が友達にメールを送るのとは違い、何千人、何万人という大勢の人に一度にメールを送ることができます。
GmailやOutlookとの違い
「Gmailから一斉送信すればいいんじゃないの?」と思うかもしれません。でも、それは現実的ではありません。
GmailやOutlookの制限:
- 1日に送信できるメール数に制限がある(Gmailは1日500通まで)
- 大量送信すると迷惑メール扱いされる可能性がある
- 送信結果を分析する機能がない
- 自動化できない
ESPなら、これらの問題を解決できます。
ESPの主な機能
1. 大量配信機能
1回の操作で、何千人、何万人にメールを送ることができます。
配信規模の例:
- 小規模:1,000通/月
- 中規模:10,000通/月
- 大規模:100,000通以上/月
ESPによって料金プランが異なり、配信数に応じて価格が変わります。
2. リスト管理機能
顧客のメールアドレスを一括で管理できます。
できること:
- CSVファイルからのインポート
- 登録フォームの作成
- グループ分け(セグメンテーション)
- 重複アドレスの自動削除
- 配信停止(オプトアウト)の管理
3. テンプレート機能
プロのデザイナーが作ったような、きれいなメールを簡単に作れます。
利用できるテンプレート:
- ニュースレター型
- セール告知型
- イベント招待型
- 商品紹介型
HTMLの知識がなくても、ドラッグ&ドロップで画像やテキストを配置できます。
4. パーソナライゼーション(個別化)
受信者一人ひとりに合わせた内容のメールを送れます。
個別化の例:
- 「山田様へ」のように名前を入れる
- 過去の購入履歴に基づいたおすすめ商品を表示
- 誕生日月にクーポンを送る
- 居住地域に合わせたイベント情報を送る
同じメールでも、受け取る人によって内容が変わるんです。
5. 自動化(オートメーション)機能
特定の条件を満たしたときに、自動的にメールを送る設定ができます。
自動化の例:
- 新規会員登録後すぐに「ようこそメール」を送る
- 商品購入後3日後に「レビュー依頼メール」を送る
- カートに商品を入れたまま24時間経過したら「リマインドメール」を送る
- 誕生日の1週間前に「バースデークーポン」を送る
一度設定すれば、あとは自動で動いてくれます。
6. 分析機能(アナリティクス)
メールの効果を数値で確認できます。
測定できる指標:
- 配信数:何通送ったか
- 開封率:何%の人がメールを開いたか
- クリック率:何%の人がリンクをクリックしたか
- コンバージョン率:何%の人が購入や登録などのアクションをしたか
- エラー率:届かなかったメールの割合
- 配信停止率:何%の人が配信を停止したか
これらのデータを見ながら、次のメールを改善していけます。
7. A/Bテスト機能
2つの異なるバージョンのメールを送って、どちらの反応が良いかを試せます。
テストできる要素:
- 件名(タイトル)
- 送信者名
- 本文の内容
- 画像の有無
- ボタンの色や配置
- 送信時間
データに基づいて最適な方法を見つけられます。
8. 到達率(デリバラビリティ)の向上
メールが迷惑メールフォルダに入らず、ちゃんと受信トレイに届くようにする技術です。
ESPが行う対策:
- SPF、DKIM、DMARCなどの認証設定
- IPアドレスの評価管理
- 送信元ドメインの管理
- スパム判定されにくい文章の提案
専門的な知識がなくても、ESPが自動的に対応してくれます。
主要なESPサービス
日本語対応の主なESP
Benchmark Email(ベンチマークイーメール)
- 日本語サポートあり
- 無料プランで月3,500通まで送信可能
- 初心者にも使いやすいインターフェース
SendGrid(センドグリッド)
- 世界最大級のメール配信サービス
- 無料プランで月100通まで
- 技術者向けの高度な機能が充実
MailChimp(メールチンプ)
- 世界で最も人気のあるESPの1つ
- 無料プランで月500通まで(日本語サポートは限定的)
- 直感的なデザインツール
世界的に人気のESP
HubSpot(ハブスポット)
- CRM(顧客管理)機能と統合
- マーケティング全般をサポート
- 月2,000通まで無料
Klaviyo(クラビヨ)
- EC(ネットショップ)に特化
- 高度なパーソナライゼーション機能
- Shopifyなどとの連携が強い
ActiveCampaign(アクティブキャンペーン)
- 自動化機能が強力
- CRM機能も充実
- 中小企業に人気
Brevo(旧Sendinblue)
- SMS送信にも対応
- チャット機能もある
- ヨーロッパで人気
ESPの選び方
1. 予算を決める
まず、月にいくらまで使えるかを決めましょう。
料金の目安:
- 無料プラン:月0〜500通程度
- 小規模プラン:月1,000〜2,000円(1万通程度)
- 中規模プラン:月5,000〜10,000円(5万通程度)
- 大規模プラン:月3万円以上(10万通以上)
最初は無料プランで試してみて、必要に応じてアップグレードするのがおすすめです。
2. 配信数を見積もる
月にどれくらいのメールを送るかを計算します。
計算例:
- 顧客リスト:5,000人
- 配信頻度:月4回
- 合計配信数:5,000人 × 4回 = 20,000通/月
この場合、20,000通以上送れるプランが必要です。
3. 必要な機能を確認する
自分のビジネスに必要な機能があるかチェックしましょう。
チェックポイント:
- 日本語対応しているか
- テンプレートは豊富か
- 自動化機能はあるか
- 分析機能は充実しているか
- 既存のツール(Shopify、WordPressなど)と連携できるか
4. サポート体制を確認する
困ったときに助けてくれるサポートがあるかは重要です。
サポート形式:
- 日本語チャットサポート
- メールサポート
- 電話サポート
- ヘルプセンター・FAQの充実度
- オンラインセミナーやチュートリアル動画
5. 無料トライアルを試す
ほとんどのESPには無料プランや無料トライアル期間があります。
実際に使ってみて、操作性や機能を確認してから本格導入しましょう。
メールプロバイダーの使い分け

最後に、3種類のメールサービスをどう使い分けるか、まとめておきます。
プロバイダメール
おすすめの用途:
- 公的機関への登録
- 銀行・金融機関とのやり取り
- 重要な契約関連の連絡
- 仕事用メール(小規模事業主)
こんな人におすすめ:
- 信頼性を重視する人
- インターネット回線を長期間変更する予定がない人
- セキュリティを重視する人
フリーメール
おすすめの用途:
- 友人・家族との連絡
- ネットショッピングの登録
- SNSやアプリの登録
- メールマガジンの受信
こんな人におすすめ:
- 引っ越しや転職が多い人
- 複数の端末で同じメールを見たい人
- 大容量のメールボックスが必要な人
ESP
おすすめの用途:
- メールマガジンの配信
- 顧客へのキャンペーン告知
- 商品・サービスの宣伝
- 自動化されたフォローメール
こんな人・会社におすすめ:
- ネットショップを運営している
- メールマーケティングを本格的に始めたい
- 顧客リストが100人以上いる
- メールの効果を数値で測定したい
まとめ
メールプロバイダーについて、重要なポイントをおさらいしましょう。
メールプロバイダーには2つの意味がある
- プロバイダメール:インターネット回線契約時に貰えるメールサービス
- ESP:企業向けのメールマーケティングサービス
プロバイダメールの特徴
- 信頼性が高い
- セキュリティが良い
- プロバイダを変更すると使えなくなる
- 容量が少ない場合がある
フリーメールとの違い
- プロバイダメール:契約が必要、信頼性高い、プロバイダ変更で使えなくなる
- フリーメール:誰でも作れる、無料、ずっと使える
ESPの主な機能
- 大量配信
- リスト管理
- テンプレート
- パーソナライゼーション
- 自動化
- 分析
- A/Bテスト
- 到達率向上
ESPの選び方
- 予算を決める
- 配信数を見積もる
- 必要な機能を確認する
- サポート体制を確認する
- 無料トライアルを試す
使い分けのポイント
- プロバイダメール:信頼性が求められる重要な登録に
- フリーメール:日常的な連絡や各種サービスの登録に
- ESP:ビジネスでのメールマーケティングに
メールプロバイダーは、用途に応じて適切に選ぶことが大切です。
個人利用なら、メインにプロバイダメールかフリーメール、サブにもう一方を持っておくと便利でしょう。
ビジネスでメール配信をするなら、ESPは必須のツールです。まずは無料プランから始めて、徐々に規模を拡大していくのがおすすめです。
自分の目的に合ったメールプロバイダーを選んで、快適なメール生活を送りましょう!

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