「MACアドレスって何?」「IPアドレスとは違うの?」
ネットワーク設定やWi-Fi接続の際に「MACアドレス」という言葉を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
MACアドレスは、あなたのパソコンやスマホに割り当てられた世界で唯一の識別番号で、ネットワーク通信において重要な役割を果たしています。
この記事では、MACアドレスの基本から確認方法、セキュリティ上の注意点まで、分かりやすく解説していきます。
MACアドレスとは

まず、MACアドレスの基本的な定義から理解していきましょう。
MACアドレスの正式名称
MAC(マック)アドレスの正式名称は、Media Access Control address(メディア・アクセス・コントロール・アドレス)です。
日本語では「物理アドレス」や「ハードウェアアドレス」とも呼ばれます。
簡単に言うと
MACアドレスは、ネットワーク機器に割り当てられた固有の識別番号のこと。
身近な例え:
人間でいう「マイナンバー」や、車の「車体番号」のようなものです。
製造時に機器に刻印され、基本的には変更できない世界で唯一の番号になっています。
どんな機器に付いている?
MACアドレスは、ネットワークに接続できる機器すべてに割り当てられています。
MACアドレスを持つ機器の例:
- パソコン(ノートPC、デスクトップPC)
- スマートフォン、タブレット
- Wi-Fiルーター
- ゲーム機(PlayStation、Nintendo Switchなど)
- スマートテレビ
- プリンター(ネットワーク対応)
- IoT機器(スマートスピーカー、スマート家電など)
1台の機器が複数のMACアドレスを持つこともあります。
例えば、ノートPCには有線LAN用とWi-Fi用の2つのMACアドレスが存在することが一般的です。
MACアドレスの構造と見方
MACアドレスがどのような形式になっているか見ていきましょう。
MACアドレスの形式
MACアドレスは、48ビット(6バイト)の数値で構成されています。
通常は、16進数で以下のような形式で表示されます:
例:
00:1A:2B:3C:4D:5E
または
00-1A-2B-3C-4D-5E
6つのグループに分かれた12桁の英数字で表現されます。
前半と後半の意味
MACアドレスは、前半と後半で異なる意味を持ちます。
前半24ビット(最初の3グループ):OUI(組織固有識別子)
製造メーカーを識別する番号です。
例えば、Apple製品なら特定の番号範囲、Dell製品なら別の番号範囲が割り当てられています。
例:
00:1A:2B
の部分
後半24ビット(後の3グループ):デバイス固有番号
そのメーカーが製造した個々の機器を識別する番号です。
例:
3C:4D:5E
の部分
この組み合わせにより、世界中で重複しない固有の番号が実現されています。
16進数とは
MACアドレスに使われる16進数とは、0~9とA~Fの16種類の文字で数を表す方法です。
16進数の対応:
- 0~9:そのまま0~9
- A~F:10~15を表す
普段使っている10進数とは異なる数え方ですが、コンピュータの世界では一般的です。
MACアドレスの役割と用途
MACアドレスは、ネットワーク通信でどのような役割を果たしているのでしょうか。
役割1:データ送信先の特定
ネットワーク上で、データを正しい機器に届けるために使われます。
例え:
郵便物を届ける時、住所(IPアドレス)だけでなく、建物の部屋番号(MACアドレス)も必要なイメージです。
同じネットワーク内で、「この機器に情報を送る」という指定をする際に、MACアドレスが使われます。
役割2:機器の識別
ルーターやネットワーク管理者が、どの機器がネットワークに接続しているかを把握するために使います。
会社や学校のネットワークでは、MACアドレスを登録しないと接続できない設定になっていることもあります。
役割3:アクセス制御
特定のMACアドレスだけにネットワーク接続を許可する「MACアドレスフィルタリング」という機能があります。
例:
自宅のWi-Fiルーターで、家族の機器のMACアドレスだけを登録し、それ以外の機器は接続できないようにするなど。
IPアドレスとの違い
MACアドレスとよく混同される「IPアドレス」との違いを理解しましょう。
MACアドレスとIPアドレスの比較
項目 | MACアドレス | IPアドレス |
---|---|---|
役割 | ネットワーク機器の物理的な識別 | ネットワーク上の論理的な住所 |
変更 | 基本的に変更不可(製造時に固定) | 変更可能(ネットワークによって変わる) |
範囲 | 同じネットワーク内(ローカル) | インターネット全体(グローバル) |
例 | 00:1A:2B:3C:4D:5E | 192.168.1.10 |
割当 | 製造メーカー | DHCP、手動設定など |
郵便の例えで理解する
MACアドレス:
建物の固有番号(変更できない、建物そのものの識別)
IPアドレス:
郵便番号と住所(引っ越したら変わる、場所の識別)
両方が協力して、正確に情報を届けることができるわけです。
どちらも必要な理由
MACアドレス:
同じネットワーク内(家庭内や社内など)での機器の識別に使います。
IPアドレス:
インターネット全体での通信相手の特定に使います。
例えば、あなたがWebサイトを見る時:
- IPアドレスで、インターネット上のサーバーを探す
- データが届いたら、MACアドレスで家の中のどの機器に渡すか判断
このように、2つが協力して通信が成立します。
MACアドレスの確認方法(OS別)

自分の機器のMACアドレスを確認する方法を紹介します。
Windows
方法1:コマンドプロンプトで確認
手順:
- Windowsキー+Rで「ファイル名を指定して実行」を開く
cmd
と入力してEnter- コマンドプロンプトが開く
- 以下のコマンドを入力してEnter:
ipconfig /all
- 「物理アドレス」という項目を探す
- 表示される値がMACアドレス(例:00-1A-2B-3C-4D-5E)
方法2:設定画面から確認
手順(Windows 11):
- 「設定」を開く
- 「ネットワークとインターネット」を選択
- 接続している方法(Wi-Fiまたはイーサネット)をクリック
- 「プロパティ」を開く
- 下にスクロールして「物理アドレス(MAC)」を確認
Mac
ターミナルで確認
手順:
- Finder→「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ターミナル」を開く
- 以下のコマンドを入力してEnter:
ifconfig
- Wi-Fiの場合は「en0」または「en1」セクションを探す
ether
という項目の横に表示される値がMACアドレス
システム環境設定で確認
手順:
- Appleメニュー→「システム設定」(または「システム環境設定」)
- 「ネットワーク」をクリック
- 接続している方法(Wi-Fiなど)を選択
- 「詳細」または「ハードウェア」タブで確認
スマートフォン
iPhone
手順:
- 「設定」アプリを開く
- 「一般」→「情報」をタップ
- 「Wi-Fiアドレス」を確認(これがMACアドレス)
注意:
iOS 14以降では、プライバシー保護のため「プライベートアドレス」機能があり、ネットワークごとに異なるアドレスを使用することがあります。
Android
手順(機種によって異なる):
- 「設定」アプリを開く
- 「端末情報」または「デバイス情報」をタップ
- 「ステータス」または「Wi-Fi」をタップ
- 「MACアドレス」または「Wi-Fi MACアドレス」を確認
MACアドレスは変更できる?
製造時に固定されているMACアドレスですが、変更は可能なのでしょうか。
物理的には変更できない
ネットワークカード(NIC)に焼き付けられているMACアドレスは、物理的に変更できません。
これは、製造時にハードウェアに刻まれているためです。
ソフトウェアで偽装は可能
OSの設定やソフトウェアを使って、見かけ上のMACアドレスを変更することは可能です。
これを「MACアドレスのスプーフィング」と呼びます。
変更する理由:
- プライバシー保護(追跡を避ける)
- ネットワークテスト
- 特定のネットワークへのアクセス
注意点:
- 一部のネットワークでは、MACアドレス変更が規約違反になる場合がある
- 悪意のある使用(なりすましなど)は違法
変更方法(Windows)
手順:
- デバイスマネージャーを開く
- 「ネットワークアダプター」を展開
- 該当のアダプターを右クリック→「プロパティ」
- 「詳細設定」タブで「Network Address」または「Locally Administered Address」を探す
- 値を入力して変更
ただし、通常のユーザーが変更する必要はほとんどありません。
セキュリティとプライバシー
MACアドレスに関するセキュリティ上の知識です。
MACアドレスは個人情報?
MACアドレス自体は、個人を直接特定する情報ではありません。
しかし、以下のような形で個人の行動追跡に使われる可能性があります。
追跡の例:
- 店舗のWi-Fiが、来店客のスマホのMACアドレスを記録
- 同じMACアドレスが再度検出されたら「リピーター」と判断
- 店内での行動パターンを分析
このような追跡を防ぐため、最近のスマートフォンには「ランダムMACアドレス」機能が搭載されています。
MACアドレスフィルタリングの限界
「自宅Wi-FiをMACアドレスでフィルタリングすれば安全」と考える方もいますが、完全ではありません。
理由:
- MACアドレスは偽装可能
- 暗号化の代わりにはならない
推奨するセキュリティ対策:
- WPA3やWPA2などの強力な暗号化を使用
- 強力なパスワードを設定
- MACアドレスフィルタリングは補助的に使用
プライバシー保護機能
最近のデバイスには、プライバシーを保護する機能があります。
ランダムMACアドレス(iPhone、Android):
公共Wi-Fiに接続する際、本当のMACアドレスではなく、ランダムな値を使用します。
有効化方法(iPhone):
- 「設定」→「Wi-Fi」
- 接続するネットワークの「i」アイコンをタップ
- 「プライベートアドレス」をオンにする
よくある質問
Q. MACアドレスは世界中で重複しない?
A. 理論上は重複しないように管理されています。
製造メーカーにOUI(前半24ビット)が割り当てられ、メーカーが重複しないように後半を管理します。
ただし、ごく稀に製造ミスや意図的な変更で重複することもあります。
Q. Wi-FiとBluetoothで同じMACアドレス?
A. いいえ、通常は異なります。
Wi-Fi、Bluetooth、有線LANなど、それぞれのネットワークインターフェースごとに別のMACアドレスが割り当てられています。
Q. ルーターのMACアドレスはどこで確認できる?
A. ルーターの本体ラベルまたは管理画面で確認できます。
多くのルーターは、本体の裏面や底面にMACアドレスが記載されたシールが貼ってあります。
また、ルーターの管理画面(192.168.1.1など)にアクセスしても確認できます。
Q. MACアドレスでインターネット上の個人は特定される?
A. 直接は特定されませんが、間接的に追跡される可能性があります。
MACアドレスは同じネットワーク内でのみ使われるため、インターネット越しに直接見られることはありません。
ただし、Wi-Fiアクセスポイントのログなどから、行動パターンを追跡される可能性はあります。
Q. 「有効なMACアドレスではありません」というエラーが出た
A. 入力形式が間違っている可能性があります。
MACアドレスを入力する際は、以下の点に注意:
- 12桁の16進数(0~9、A~F)を使用
- 区切り文字は「:」または「-」
- 大文字・小文字は通常区別されない
正しい形式:00:1A:2B:3C:4D:5E
または 00-1A-2B-3C-4D-5E
まとめ:MACアドレスはネットワーク機器の身分証明書
MACアドレスは、ネットワークに接続する機器すべてに割り当てられた固有の識別番号です。
MACアドレスの要点:
- 物理アドレス:製造時に機器に刻まれる固有番号
- 48ビット(12桁の16進数):例 00:1A:2B:3C:4D:5E
- ローカルネットワーク内で機器を識別する役割
- IPアドレスとは異なる:補完的に動作
確認方法:
- Windows:
ipconfig /all
コマンド - Mac:
ifconfig
コマンドまたはシステム設定 - スマホ:設定アプリの「端末情報」
セキュリティとプライバシー:
- MACアドレスフィルタリングは補助的なセキュリティ対策
- ランダムMACアドレス機能でプライバシー保護
- 変更(スプーフィング)は可能だが注意が必要
MACアドレスは、普段意識することは少ないですが、ネットワーク通信の基盤を支える重要な仕組みです。
この記事を参考に、MACアドレスの基本を理解して、ネットワーク設定やトラブルシューティングに役立ててくださいね!
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