「Macを売りたいけど、データが心配…」
「動作が重いから一度まっさらにしたい」
そんなときに必要なのが、Macの工場出荷時リセットです。
この作業をすると、Mac内のすべてのデータが完全に消去され、新品で購入したときと同じ状態に戻ります。
大切な作業なので、失敗しないように手順をしっかり確認してから実行しましょう。
この記事では、初心者でも安全にMacをリセットできる方法を、準備から完了まで詳しく解説します。
工場出荷時リセットについて知ろう

工場出荷時リセットとは
Macを工場出荷時の状態に戻すことです。
つまり、お店で新品を買ったときと全く同じ状態にすることを意味します。
削除される内容
リセットを実行すると、以下のものがすべて削除されます:
個人データ
- 写真、動画、音楽ファイル
- 文書、スプレッドシート、プレゼンテーション
- デスクトップやダウンロードフォルダの中身
- メール、連絡先、カレンダー
アプリとその設定
- インストールしたアプリ(Adobe、Office、ゲームなど)
- アプリの設定や保存データ
- ブラウザのブックマークや履歴
- 各種ログイン情報
システム設定
- ユーザーアカウント情報
- Wi-Fi パスワード
- プリンター設定
- 壁紙やスクリーンセーバー
Apple サービスとの関連付け
- iCloud アカウント
- App Store の購入履歴
- Apple Music の設定
- Find My Mac の設定
リセットが必要なタイミング
Macを手放すとき
- 売却、譲渡、返却する前
- 修理に出す前(サービス店による)
- 会社のMacを退職時に返却
システムの問題解決
- 動作が非常に重い
- 頻繁にクラッシュする
- ウイルス感染の疑い
- 設定が複雑になりすぎた
絶対に忘れてはいけない事前準備

リセットを実行すると、データは二度と戻ってきません。
必ず以下の準備を完了してからリセットしましょう。
重要なデータのバックアップ
Time Machineでの自動バックアップ
- 外付けHDDまたはSSDを用意(最低でもMacの容量と同じサイズ)
- システム設定→「一般」→「Time Machine」
- 「バックアップディスクを選択」で外付けドライブを選択
- 「バックアップを自動作成」をオンにする
- 初回バックアップの完了を待つ(数時間かかる場合があります)
手動でのファイルコピー Time Machineと併用して、特に重要なファイルは手動でもコピーしておきましょう。
- 写真:「写真」アプリから外付けドライブにエクスポート
- 文書:「書類」フォルダを外付けドライブにコピー
- ブラウザブックマーク:Safari、Chromeからエクスポート
- メール:メールアプリからメールボックスをエクスポート
クラウドストレージの活用
- iCloud:重要なファイルをiCloud Driveに保存
- Google Drive、Dropbox:写真や文書をアップロード
- OneDrive:Microsoft Officeファイルをクラウド保存
Apple IDとの関連付け解除
iCloudからのサインアウト
- システム設定を開く
- 「Apple ID」をクリック
- 「サインアウト」をクリック
- データをこのMacに残すかどうか選択(通常は残さない)
- Apple IDのパスワードを入力して確認
iMessageからのサインアウト
- 「メッセージ」アプリを開く
- メニューバーの「メッセージ」→「設定」
- 「iMessage」タブを選択
- 「サインアウト」をクリック
FaceTimeからのサインアウト
- 「FaceTime」アプリを開く
- メニューバーの「FaceTime」→「設定」
- 「サインアウト」をクリック
iTunes/Music からのサインアウト
- 「Music」アプリ(またはiTunes)を開く
- メニューバーの「アカウント」→「サインアウト」
Bluetoothデバイスの解除
他の人がMacを使うときに、あなたのデバイスが勝手に接続されないようにします。
手順
- システム設定→「Bluetooth」
- 接続されているデバイスの「i」ボタンをクリック
- 「このデバイスを削除」をクリック
特に重要なデバイス
- Apple Watch(最重要)
- AirPods、AirPods Pro
- Magic Mouse、Magic Keyboard
- iPhone、iPad
その他の重要な準備
アプリのライセンス確認
- Adobe Creative Cloud:ライセンス認証解除
- Microsoft Office:プロダクトキーの確認
- 有料アプリ:再インストール方法の確認
設定情報のメモ
- Wi-Fiパスワード
- プリンター設定
- 特殊な設定項目
インターネット接続の確認 macOSの再インストール時にインターネット接続が必要です。Wi-Fiがつながることを確認してください。
Macをリセットする手順

Macの機種によって手順が少し異なります。お使いのMacがどのタイプか確認してから進めてください。
自分のMacの種類を確認する方法
- 画面左上のAppleマーク→「このMacについて」
- 「プロセッサ」または「チップ」の項目を確認
- Apple M1、M2、M3 などと表示→Appleシリコン Mac
- Intel Core i5、i7 などと表示→Intel Mac
Appleシリコン Mac(M1、M2、M3 など)の場合
手順
- すべてのアプリを終了し、Macをシャットダウン
- 保存していない作業があれば保存
- Appleメニュー→「シャットダウン」
- 電源ボタンを長押し
- 電源ボタンを10秒程度長押し
- 「起動オプションを読み込み中」と表示されるまで待つ
- 起動オプション画面で「オプション」を選択
- 「オプション」をクリック
- 「続ける」をクリック
- ユーザーを選択してパスワード入力
- 管理者ユーザーを選択
- ログインパスワードを入力
- macOSユーティリティ画面で「ディスクユーティリティ」を選択
- 内蔵ディスクを完全消去
- 左側のリストから「Macintosh HD」を選択
- 上部メニューの「消去」をクリック
- 名前:「Macintosh HD」
- フォーマット:「APFS」
- 「消去」をクリックして実行
- ディスクユーティリティを終了
- メニューバーの「ディスクユーティリティ」→「ディスクユーティリティを終了」
- macOSを再インストール
- 「macOS○○を再インストール」を選択(○○はバージョン名)
- 「続ける」をクリック
- 使用許諾契約に同意
- インストール先ディスクを選択(通常は「Macintosh HD」)
- インストール開始(30分〜1時間程度)
Intel Mac の場合
手順
- Macをシャットダウン
- 復旧モードで起動
- 電源ボタンを押した直後に「Command + R」キーを長押し
- Appleロゴまたは回転する地球が表示されるまで押し続ける
- macOSユーティリティ画面で「ディスクユーティリティ」を選択
- 内蔵ディスクを消去
- 左側のリストから「Macintosh HD」を選択
- 「消去」をクリック
- 名前:「Macintosh HD」
- フォーマット:「Mac OS拡張(ジャーナリング)」または「APFS」
- 「消去」をクリック
- ディスクユーティリティを終了
- macOSを再インストール
- 「macOSを再インストール」を選択
- 画面の指示に従ってインストール実行
T2チップ搭載Intel Macの特別な手順
一部のIntel Mac(2017年後期〜2020年)にはT2セキュリティチップが搭載されており、少し手順が異なります。
該当機種
- MacBook Pro(2018年、2019年)
- MacBook Air(2018年、2019年、2020年)
- iMac Pro(2017年)
- Mac mini(2018年)
- Mac Pro(2019年)
手順
- 電源ボタンを押した直後に「Command + R」を長押し
- セキュアブートの設定
- ユーティリティメニュー→「起動セキュリティユーティリティ」
- 「セキュアブートなし」を選択
- 「外部メディアからの起動を許可」をチェック
- 上記のIntel Macと同じ手順でディスク消去とmacOS再インストール
リセット後の確認と注意点

初期設定画面での対応
macOSの再インストールが完了すると、初期設定画面が表示されます。
自分で使い続ける場合
- 言語選択から順番に設定を進める
- Apple IDでサインイン
- バックアップからデータを復元
他の人に譲渡する場合
- 言語選択画面で電源を切る
- 「command + Q」で強制終了、または電源ボタン長押し
- 次のユーザーが最初から設定できる状態になる
重要な確認ポイント
Apple IDの完全な解除確認
- 新しい初期設定を少し進める
- システム設定→「Apple ID」を確認
- 「サインイン」と表示されていればOK
Find My Macの解除確認
- 別のデバイス(iPhone、iPad、Web)から「探す」アプリまたはiCloud.comにアクセス
- デバイス一覧にリセットしたMacが表示されていないことを確認
アクティベーションロックの解除確認
- Macが正常に初期設定を進められることを確認
- Apple IDの入力を求められない状態であることを確認
データが完全に消去されたことの確認
個人ファイルの確認
- デスクトップ、書類、ダウンロードフォルダが空であること
- 写真アプリに個人の写真がないこと
- メールアプリに過去のメールがないこと
アプリの確認
- プリインストールアプリのみが存在すること
- 追加でインストールしたアプリがないこと
設定の確認
- Wi-Fi設定がクリアされていること
- ブラウザにブックマークや履歴がないこと
トラブルシューティング

よくある問題と解決方法
「ディスクを消去できません」エラー
原因:FileVaultが有効になっている
解決方法:
- macOSユーティリティで「ターミナル」を開く
- 以下のコマンドを入力:
diskutil list
- 内蔵ディスクの識別子を確認(通常はdisk0)
diskutil unmountDisk /dev/disk0
を実行- ディスクユーティリティに戻って再度消去を試す
インターネットに接続できない
原因:Wi-Fi設定が保存されていない
解決方法:
- 画面右上のWi-Fiアイコンをクリック
- ネットワークを選択してパスワードを入力
- 有線接続が可能な場合はEthernetケーブルを使用
macOSのダウンロードが進まない
原因:インターネット速度が遅い、またはAppleサーバーの混雑
解決方法:
- インターネット接続を確認
- 時間を置いて再度試行
- 別のネットワーク(テザリングなど)を試す
復旧モードに入れない
原因:キーの押し方が正しくない
解決方法:
- Macの電源を完全に切る
- 電源ボタンを押した瞬間から「Command + R」を長押し
- 画面に何かが表示されるまで押し続ける(30秒程度)
緊急時の対処法
リセットが途中で止まってしまった場合
- 強制再起動
- 電源ボタンを10秒長押しして強制終了
- 再度復旧モードで起動して最初からやり直し
- 外部起動ディスクの作成
- 別のMacでmacOSインストーラーをダウンロード
- USBメモリに起動可能なインストーラーを作成
- 外部ディスクから起動してリセット実行
データを残したまま問題解決したい場合
リセットせずに問題を解決する方法もあります:
- セーフモードでの起動
- 起動時にShiftキーを長押し
- 問題のあるアプリや設定を特定
- NVRAM/PRAMリセット
- 起動時に「Command + Option + P + R」を20秒間長押し
- システム設定の一部をリセット
- SMCリセット
- Macの種類によって方法が異なるため、Appleサポートページを確認
データ復旧について

バックアップからの復元
Time Machineからの復元
- 初期設定の「移行アシスタント」で「Mac、Time Machine バックアップ、または起動ディスクから」を選択
- Time Machineバックアップを選択
- 復元したいデータを選択(全部または一部)
- 復元完了まで待機(数時間かかる場合あり)
手動での復元
- 外付けドライブを接続
- 必要なファイルを手動でコピー
- アプリは App Store または公式サイトから再ダウンロード
注意点
完全復元は推奨しません
せっかくリセットしたのに、問題のあった設定まで復元してしまう可能性があります。
選択的復元がおすすめ
- ユーザーファイル(写真、文書など)のみ復元
- アプリは新規インストール
- 設定は最低限のもののみ復元
セキュリティ上の注意点
個人情報の完全削除
Macをリセットしても、専門的な技術があれば一部のデータを復旧される可能性があります。
より安全な消去方法
- FileVaultの有効化(リセット前)
- システム設定→「プライバシーとセキュリティ」→「FileVault」
- ディスク暗号化により、消去後のデータ復旧を困難にする
- 複数回の上書き
- ディスクユーティリティの「セキュリティオプション」
- 「最も安全」を選択(時間がかかりますが確実)
- 物理的な破壊(売却しない場合)
- 内蔵SSDを物理的に破壊
- 専門業者に依頼することも可能
まとめ
Macの工場出荷時リセットは、正しい手順で行えば安全かつ確実に完了できます。
事前準備が最重要
- バックアップは複数の方法で確実に
- Apple IDやiCloudからの完全なサインアウト
- Bluetoothデバイスの解除も忘れずに
機種別の手順を確認
- Appleシリコン:電源ボタン長押しで起動オプション
- Intel Mac:Command + R で復旧モード
- T2チップ搭載機:セキュアブート設定に注意
リセット後の確認
- Apple IDが完全に解除されているか
- Find My Macから削除されているか
- 譲渡する場合は初期設定画面で停止
トラブル時の対処
- FileVaultが原因のエラーはターミナルで解決
- インターネット接続の確認
- 時間をかけて確実に実行
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