「Macのパーティションを分けたいけど、どうやるの?」
「そもそもパーティションって何?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
Macのパーティション管理でよくある困りごと
- パーティション分割の方法がわからない
- データ消失のリスクが心配
- どのファイルシステムを選べばいいかわからない
- 容量配分の決め方がわからない
パーティションを活用すると、Macをもっと効率的に、安全に使うことができます。しかし、やり方を間違えるとデータが消えてしまうリスクもあります。適切な知識と手順を身につけることで、安全にパーティション管理を行えます。
この記事で身につく知識
- パーティションの基本概念と仕組み
- 安全なパーティション作成・管理手順
- APFSとHFS+の違いと使い分け
- トラブル予防と復旧方法
パーティションの基本概念と技術背景

パーティションとは何か
物理ストレージと論理分割 パーティションとは、1台の物理的なストレージデバイス(HDD・SSD)を、複数の論理的な領域に分割する技術です。各パーティションは独立したボリュームとして扱われ、異なる用途やファイルシステムを設定できます。
わかりやすい例え
- 物理ストレージ:1つの大きな倉庫
- パーティション:倉庫内の仕切られた部屋
- ボリューム:各部屋に付けられた名前と用途
macOSでのパーティション技術の進化
従来のパーティション方式(HFS+時代)
- 固定サイズのパーティション
- 容量変更が困難
- ファイルシステムの制限
現代のAPFS(Apple File System)
- 動的なスペース共有
- コンテナとボリュームの2層構造
- スナップショット・クローン機能
- 高速な容量調整
APFSコンテナとボリュームの関係
APFSの階層構造
- 物理ディスク:ハードウェア
- APFSコンテナ:物理領域の論理分割
- APFSボリューム:コンテナ内の論理領域
従来パーティションとの違い
- 従来:固定境界での分割
- APFS:スペースプールからの動的割り当て
パーティション分割の戦略的メリット・デメリット
具体的なメリット
用途別データ管理
- システム領域:macOS + アプリケーション
- データ領域:ドキュメント・メディアファイル
- 作業領域:一時ファイル・キャッシュ
- バックアップ領域:Time Machine専用
セキュリティとプライバシー強化
- 仕事用とプライベート用データの物理分離
- FileVault暗号化の個別適用
- アクセス権限の細かい制御
開発・テスト環境の構築
- 本番環境とテスト環境の分離
- 複数バージョンのmacOS共存
- Boot Campによる Windows環境
バックアップ戦略の最適化
- 重要度に応じた差分バックアップ
- 高速な部分復旧
- ディザスタリカバリ計画
潜在的なデメリットと対策
容量管理の複雑化
- 問題:パーティション間の容量不均衡
- 対策:APFSボリュームでの動的スペース共有活用
設定ミスによるデータ損失リスク
- 問題:誤ったパーティション削除・フォーマット
- 対策:段階的な作業と十分なバックアップ
パフォーマンスへの影響
- 問題:断片化による読み込み速度低下
- 対策:SSDの活用と定期的なメンテナンス
運用コストの増加
- 問題:管理の複雑さと学習コスト
- 対策:明確な運用ルールと文書化
安全なパーティション作成の詳細手順

事前準備と重要な注意事項
必須のバックアップ作業
- Time Machine全体バックアップ
- 最新の完全バックアップ実行
- 復旧テストの実施
- 外部ストレージの動作確認
- 重要データの別途保存
- 外部SSD・HDDへのコピー
- クラウドストレージへのアップロード
- 複数箇所での冗長保存
- システム状態の記録
- 現在のディスク使用量確認
- インストール済みアプリ一覧
- システム設定のスクリーンショット
ハードウェア・ソフトウェア要件
- macOS 10.13 High Sierra以降(APFS対応)
- 十分な空き容量(分割予定容量の1.5倍以上推奨)
- 安定した電源供給
- 作業時間の確保(2-4時間程度)
ディスクユーティリティでの基本作成手順
ディスクユーティリティの起動
- 通常起動時:アプリケーション → ユーティリティ → ディスクユーティリティ
- 復旧モード起動:⌘ Command + R 押しながら起動 → ディスクユーティリティ選択
APFSボリューム作成(推奨方法)
- 左サイドバーでAPFSコンテナを選択
- 「ボリューム」ボタンをクリック
- 「APFSボリュームを追加」を選択
- 以下を設定:
- 名前:わかりやすい名前(例:WorkData、MediaFiles)
- フォーマット:APFS(推奨)
- サイズオプション:必要に応じて設定
- 暗号化:セキュリティ要件に応じて選択
従来パーティション作成(特別な用途)
- 物理ディスクを選択
- 「パーティション」ボタンをクリック
- 「+」ボタンで新しいパーティション追加
- 円グラフでサイズ調整
- 名前・フォーマット設定後「適用」
ファイルシステムの選択基準
APFS(Apple File System)
- 適用場面:一般的なmacOS使用
- メリット:高速、スナップショット、動的サイズ
- 制限事項:macOS 10.12以前では非対応
Mac OS拡張(HFS+)
- 適用場面:古いmacOSとの互換性が必要
- メリット:広い互換性、実績
- 制限事項:機能制限、パフォーマンス
ExFAT
- 適用場面:Windows・macOS間でのデータ共有
- メリット:クロスプラットフォーム対応
- 制限事項:macOS特有機能未対応
高度なパーティション管理テクニック
Boot Campでの Windows共存
Boot Camp Assistantを使った分割
- アプリケーション → ユーティリティ → Boot Camp Assistant
- 「続ける」でアシスタント開始
- Windows ISOファイルの選択
- パーティションサイズの設定
- 自動的な分割・Windowsインストール
注意事項
- Intel Mac専用機能(Apple Silicon Macでは利用不可)
- 十分な容量確保(Windows用に最低64GB推奨)
- ライセンス認証の準備
複数macOSバージョンの共存
開発・テスト環境構築
- 別パーティション作成
- macOS Installerでの別バージョンインストール
- 起動ディスクの選択
- Optionキー起動での切り替え
バージョン管理のベストプラクティス
- 明確な命名規則(例:macOS_Monterey_Dev)
- 用途別の設定プロファイル
- データ同期の仕組み構築
コマンドラインでの高度な操作
diskutilコマンドの活用
# ディスク情報の確認
diskutil list
# APFSボリューム作成
diskutil apfs addVolume disk1 APFS "NewVolume"
# パーティション分割
diskutil partitionDisk disk2 2 GPT APFS "Volume1" 50% APFS "Volume2" 50%
メリット
- 自動化・スクリプト化が可能
- 詳細な制御
- バッチ処理での効率化
トラブルシューティングと復旧方法

よくある問題と解決手順
問題1:パーティション作成中のエラー
- 症状:「操作を完了できませんでした」エラー
- 原因:ディスクエラー、容量不足、システムファイルの使用中
- 解決法:
- First Aid での ディスク修復
- 十分な空き容量の確保
- セーフモードでの再試行
問題2:パーティションが認識されない
- 症状:Finderでボリュームが表示されない
- 原因:マウントエラー、ファイルシステム破損
- 解決法:
diskutil mount /dev/disk1s2diskutil verifyVolume /dev/disk1s2
問題3:データアクセス不可
- 症状:ファイルが開けない、フォルダにアクセスできない
- 原因:権限問題、ファイルシステム破損
- 解決法:
- ディスクユーティリティでのFirst Aid実行
- ターミナルでの権限修復
- データ復旧ソフトウェアの使用
緊急時の復旧手順
Time Machineからの復旧
- ⌘ Command + R で復旧モード起動
- 「Time Machineバックアップから復元」選択
- 復旧対象とタイムポイントの選択
- 復旧の実行と検証
Target Disk Modeでの データ救出
- 問題のMacを T キー押しながら起動
- 他のMacにThunderbolt/USB-Cで接続
- 外部ディスクとして認識・データアクセス
- 重要データの救出
セキュリティとプライバシーの強化
FileVault暗号化の活用
ボリューム単位での暗号化
- システム設定 → プライバシーとセキュリティ → FileVault
- 暗号化対象ボリュームの選択
- 復旧キーの安全な保管
- 暗号化プロセスの完了待ち
セキュリティのベストプラクティス
- 強力なパスワード設定
- 復旧キーの複数箇所保管
- 定期的なパスワード変更
アクセス権限の管理
ボリューム単位での権限設定
- ボリュームを選択してcommand + I
- 「共有とアクセス権」セクション
- ユーザー・グループ別権限設定
- 「エンクロージングフォルダに適用」実行
パフォーマンス最適化とメンテナンス
定期的なメンテナンス作業
ディスクの健康状態確認
- First Aid の定期実行
- S.M.A.R.T.ステータスの監視
- 空き容量の適切な維持
APFSスナップショット管理
# スナップショット一覧表示
tmutil listlocalsnapshots /
# 古いスナップショット削除
tmutil deletelocalsnapshots 2023-01-01-120000
パフォーマンス監視
Activity Monitorでの監視項目
- ディスクI/O使用率
- 空き容量の推移
- システムリソース使用状況
サードパーティツールの活用
- DiskSensei:ディスク最適化
- Disk Diag:詳細な診断情報
- CleanMyMac:システムクリーンアップ
実用的な活用事例

職業別パーティション構成例
クリエイター向け構成
- システム(100GB):macOS + アプリケーション
- プロジェクト(300GB):進行中の作業ファイル
- アーカイブ(500GB):完了プロジェクトの保存
- スクラッチ(100GB):一時ファイル・キャッシュ
開発者向け構成
- システム(150GB):macOS + 開発環境
- プロジェクト(200GB):ソースコード・リポジトリ
- テスト(100GB):テスト環境・仮想マシン
- データ(残容量):ドキュメント・参考資料
一般ユーザー向け構成
- システム(120GB):macOS + アプリケーション
- ドキュメント(200GB):仕事・学習関連ファイル
- メディア(残容量):写真・動画・音楽
まとめ:安全で効果的なパーティション管理
重要ポイントの復習
基本原則
- 事前バックアップは絶対必須
- APFSボリュームを優先的に使用
- 段階的な作業で安全性確保
実践的な運用
- 用途に応じた適切な構成設計
- 定期的なメンテナンスとモニタリング
- セキュリティとプライバシーの考慮
トラブル対応
- 問題の早期発見と対処
- 適切な復旧手順の理解
- 予防策の継続的実施
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