Linuxをインストールしようとして、起動画面の後に画面が真っ黒になってしまった経験はありませんか?
そんな時に役立つのが「nomodeset」というオプションです。
「何それ?呪文みたい…」と思うかもしれませんが、これはLinuxの起動時に指定できる特別な設定なんです。
今回は、nomodesetが何をするものなのか、いつ使うべきなのか、そして具体的な設定方法まで分かりやすく解説していきます。
nomodesetとは何か?
グラフィック機能を一時的にオフにする指令
nomodeset(ノーモードセット)は、Linuxカーネルに渡す起動パラメータの一つです。
正式には「Kernel Mode Setting(KMS)を無効にする」という機能になります。
難しく聞こえますが、簡単に言うと:
「グラフィックの高度な機能を使わずに、シンプルなモードで画面を表示してね」
という指示を出すものなんです。
Kernel Mode Settingとは
KMS(カーネルモードセッティング)は、Linuxカーネルがグラフィック表示の解像度や画面モードを直接制御する仕組みです。
従来は、グラフィックドライバが読み込まれてから画面設定を行っていましたが、KMSではカーネルレベルで早期に画面設定を行います。
これにより:
- 起動画面がスムーズに表示される
- 解像度の切り替えが素早い
- 画面のちらつきが減る
といったメリットがあります。
なぜnomodesetが必要なのか?
グラフィックドライバとの相性問題
KMSは便利な機能ですが、一部のグラフィックカード(GPU)と相性が悪いことがあります。
特に以下のような場合に問題が起きやすいです:
NVIDIAのグラフィックカード
- オープンソースドライバ(nouveau)との相性問題
- 特定の世代のGPUで起動時にフリーズ
古いグラフィックカード
- ドライバのサポートが不完全
- KMSに対応していない
ハイブリッドGPU構成
- ノートPCなど、内蔵GPUと外部GPUを切り替える環境
仮想マシン
- VMware、VirtualBoxなどでの互換性問題
よくある症状
nomodesetが必要な状況では、以下のような症状が出ます:
- 起動画面の後、画面が真っ黒になる
- カーソルだけが表示され、それ以外は真っ暗
- 起動途中で画面がフリーズする
- 画面が乱れる、色がおかしい
- 解像度がおかしい状態で表示される
こうした症状が出た時、nomodesetを設定することで問題を回避できることが多いんです。
nomodesetを使うべき場面
Linuxのインストール時
Live USBやDVDからの起動時に画面が映らない場合、まずnomodesetを試してみましょう。
インストーラーが起動できれば、その後に適切なグラフィックドライバをインストールすることで、本格的に使えるようになります。
インストール後の初回起動
Linuxのインストールは成功したのに、再起動後に画面が映らない場合もあります。
この場合も、nomodesetを設定してから起動し、その後にグラフィックドライバをインストールするという流れになります。
グラフィックドライバ更新後のトラブル
ドライバを更新した後、突然起動しなくなることがあります。
一時的にnomodesetで起動して、ドライバを元に戻したり、設定を修正したりできます。
nomodesetの設定方法
Live USB/DVDでの一時的な設定
インストールメディアから起動する際に、nomodesetを追加する方法です。
Ubuntu系の場合:
- 起動メニューを表示
- USBやDVDから起動すると、GRUBメニューが表示されます
- 「Try Ubuntu」や「Install Ubuntu」などの選択肢が出ます
- 編集モードに入る
- 起動したい項目を選択した状態で「E」キーを押します
- カーネルパラメータの編集画面が開きます
- nomodesetを追加
- 「linux」または「linuz」で始まる行を探します
- 「quiet splash」などの記述がある行です
- その行の最後に「nomodeset」と追加します 変更前:
linux /boot/vmlinuz ... quiet splash
変更後:
linux /boot/vmlinuz ... quiet splash nomodeset
- 起動する
- 「Ctrl + X」または「F10」キーを押して起動します
これで、nomodesetが有効な状態で起動されます。
インストール済みシステムでの恒久的な設定
Linuxをインストール済みで、毎回nomodesetが必要な場合は、恒久的に設定を追加します。
GRUBの設定ファイルを編集:
- ターミナルを開く
- リカバリーモードや、nomodesetで一時的に起動した状態で行います
- 設定ファイルを開く
sudo nano /etc/default/grub
- GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT行を編集 変更前:
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash"
変更後:
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash nomodeset"
- ファイルを保存
- Ctrl + O で保存
- Ctrl + X で終了
- GRUBを更新
sudo update-grub
- 再起動
sudo reboot
これで、次回以降の起動時も自動的にnomodesetが適用されます。
nomodesetの代替オプション
より詳細な制御が必要な場合
nomodesetだけでは解決しない場合、他のカーネルパラメータと組み合わせることもあります。
acpi=off
電源管理機能(ACPI)を無効にします。
特定のノートPCで有効な場合があります。
noacpi
acpi=offと似ていますが、より限定的な無効化を行います。
nouveau.modeset=0
NVIDIAのオープンソースドライバ(nouveau)のKMSだけを無効にします。
nomodesetより限定的な対処です。
radeon.modeset=0
AMDのradeonドライバのKMSだけを無効にします。
i915.modeset=0
Intel内蔵グラフィックのKMSだけを無効にします。
複数オプションの指定
複数のオプションをスペースで区切って指定できます。
例:
quiet splash nomodeset acpi=off
nomodesetを使った後にすべきこと
適切なグラフィックドライバのインストール
nomodesetはあくまで一時的な回避策です。
本格的に使うためには、お使いのグラフィックカードに合った適切なドライバをインストールしましょう。
NVIDIAの場合:
- プロプライエタリドライバを検索
ubuntu-drivers devices
- 推奨ドライバを自動インストール
sudo ubuntu-drivers autoinstall
または:
- 特定バージョンを指定してインストール
sudo apt install nvidia-driver-535
- 再起動
sudo reboot
AMDの場合:
最近のAMD GPUは、標準のオープンソースドライバで十分動作することが多いです。
必要に応じてAMD公式のAMDGPU-PROドライバをインストールします。
Intelの場合:
Intel内蔵グラフィックは、通常、追加ドライバのインストールは不要です。
nomodesetの解除
適切なドライバをインストールできたら、nomodesetを外してみましょう。
恒久的に設定していた場合:
/etc/default/grub
を再度編集nomodeset
の記述を削除sudo update-grub
で更新- 再起動
正常に起動できれば、nomodesetなしで使えるようになります。
トラブルシューティング
nomodesetを設定しても画面が映らない
他のオプションと組み合わせるnomodeset acpi=off
のように複数オプションを試してみてください。
別のUSBポートを試す
USBポートによって動作が変わることがあります。
BIOSの設定を確認
- Secure Bootを無効にする
- CSMを有効にする(UEFIモードの場合)
- 内蔵グラフィックの設定を確認
nomodesetで起動できるが、解像度がおかしい
nomodesetモードでは、低解像度(VESAモード)で動作します。
これは正常な動作です。
適切なグラフィックドライバをインストールすれば、本来の解像度で使えるようになります。
ドライバインストール後、起動しなくなった
リカバリーモードで起動:
- GRUBメニューで「Advanced options」を選択
- 「Recovery mode」を選択
- 「root」を選択してrootシェルに入る
- ドライバを削除または再インストール
NVIDIAドライバの削除例:
sudo apt remove --purge nvidia-*
sudo apt autoremove
sudo reboot
よくある質問
nomodesetは性能に影響する?
はい、nomodesetを使用すると:
- 3Dアクセラレーションが使えない
- 動画再生のハードウェア支援が使えない
- 画面の描画が遅くなる
あくまで一時的な対処として使い、最終的には適切なドライバをインストールしましょう。
Waylandとnomodesetの関係は?
Waylandは、Linuxの新しいディスプレイサーバープロトコルです。
nomodesetを使用すると、Waylandが正常に動作しない場合があります。
その場合、X11セッションを使用することになります。
仮想マシンでもnomodesetが必要?
VirtualBoxやVMwareなどの仮想マシンでも、nomodesetが必要になることがあります。
ただし、Guest Additions(VirtualBox)やVMware Toolsをインストールすれば、通常はnomodesetなしで動作します。
まとめ:nomodesetは起動トラブルの強い味方
nomodesetは、Linuxのインストール時や起動時に画面が映らない問題を解決するための重要なオプションです。
グラフィックの高度な機能を一時的にオフにすることで、互換性を高めて起動できるようにしてくれます。
この記事のポイント:
- nomodesetはKMS(カーネルモードセッティング)を無効にするオプション
- グラフィックカードとの相性問題を回避できる
- Live USBでの起動時や初回起動時に特に有用
- GRUBの起動メニューで「E」キーを押して追加
- 恒久的な設定は
/etc/default/grub
を編集 - あくまで一時的な対処で、最終的には適切なドライバをインストール
- NVIDIAカードでは特に必要になることが多い
- 他のオプション(acpi=offなど)と組み合わせることも可能
Linuxをインストールしようとして画面が真っ暗になったら、まずはnomodesetを試してみてください。
多くの場合、これだけで問題が解決しますよ。
その後、適切なグラフィックドライバをインストールすれば、快適なLinux環境が整います!
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