「Linuxを試してみたい」「古いPCを再生させたい」「Windowsの調子が悪いからLinuxに乗り換えたい」と思ったとき、まず必要なのがLinuxのインストールUSBです。
LinuxインストールUSBがあれば
- 新しいPCにLinuxをインストールできる
- Live起動でお試し利用ができる(HDDを変更せずに体験)
- トラブル時のレスキュー用として使える
- 複数のPCに同じ環境をインストールできる
- Windowsと並行して使うデュアルブートも可能
この記事では、パソコン初心者でもできるLinuxインストールUSBの作り方を、Windows・Linux・Macそれぞれの環境で詳しく解説します。
手順通りに進めれば、誰でもLinuxインストールUSBが作れますよ!
LinuxインストールUSBとは?

USBブートの仕組み
通常、パソコンはハードディスクからOSを起動しますが、USBブートではUSBメモリからOSを起動できます。
メリット
- ハードディスクを変更せずにLinuxを体験できる
- 複数のPCで同じ環境を使える
- システムトラブル時の復旧ツールとして活用
- 持ち運びが簡単
注意点
- USBメモリの速度によって動作が左右される
- 作成時にUSBメモリの中身は全て消去される
必要なものを準備しよう

用意するもの
USBメモリ
- 容量:4GB以上(8GB以上推奨)
- 速度:USB 3.0以上(USB 2.0でも可能だが遅い)
- 注意:中身のデータは全て消去されます
LinuxのISOイメージファイル
- Ubuntu、Fedora、Debian、Linux Mint など
- 公式サイトからダウンロード
- ファイルサイズは通常1.5GB〜4GB程度
USB書き込みツール
- Windows:Rufus、balenaEtcher
- Linux:dd コマンド、balenaEtcher
- Mac:balenaEtcher、dd コマンド
おすすめLinuxディストリビューション
初心者向け
- Ubuntu:最も人気、日本語サポート充実
- Linux Mint:Windowsライクで使いやすい
- Zorin OS:Windowsからの移行に最適
中級者向け
- Fedora:最新技術をいち早く体験
- openSUSE:企業利用にも適している
- Debian:安定性重視
手順1:LinuxのISOファイルをダウンロード
Ubuntu の場合
- 公式サイトにアクセス
https://ubuntu.com/download/desktop
- 最新LTS版をダウンロード
- LTS(Long Term Support)版は5年間サポート
- ファイル名例:
ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso
- ダウンロード時間の目安
- 光回線:10〜20分程度
- ファイルサイズ:約3.5GB
その他のディストリビューション
Linux Mint
https://linuxmint.com/download.php
Fedora
https://getfedora.org/
Debian
https://www.debian.org/distrib/
ISOファイルの確認
ダウンロード後、ファイルが破損していないか確認することが重要です。
ファイルサイズを確認
- 公式サイト記載のサイズと一致するか確認
- 極端に小さい場合はダウンロードが不完全
チェックサムの確認(推奨)
# Windowsの場合(PowerShell)
Get-FileHash ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso -Algorithm SHA256
# Linuxの場合
sha256sum ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso
手順2:Windows でUSBを作成する方法

Rufus を使用(推奨)
Rufusの特徴
- 完全無料
- 高速書き込み
- 日本語対応
- 軽量(約1MB)
ダウンロードと準備
- Rufus公式サイトからダウンロード
https://rufus.ie/
- USBメモリを挿入
- Rufus を管理者権限で実行
具体的な手順
- 「デバイス」でUSBメモリを選択
- 間違ったドライブを選ばないよう注意
- 「ブートの種類」で「ディスクまたはISOイメージ」を選択
- 「選択」ボタンでISOファイルを指定
- 「パーティション構成」を選択
- MBR:古いPC(BIOS)向け
- GPT:新しいPC(UEFI)向け
- 迷ったら「MBR」を選択
- 「ファイルシステム」は「FAT32」のまま
- 「スタート」をクリック
- 警告が出たら「OK」
- USBの中身が消去される旨の確認
書き込み時間
- USB 3.0:5〜10分程度
- USB 2.0:15〜30分程度
balenaEtcher を使用
特徴
- クロスプラットフォーム対応
- シンプルなインターフェース
- 自動ベリファイ機能
手順
- 公式サイトからダウンロード
https://www.balena.io/etcher/
- 「Flash from file」でISOを選択
- 「Select target」でUSBを選択
- 「Flash!」をクリック
手順3:Linux でUSBを作成する方法
dd コマンドを使用
事前準備:デバイス名の確認
# USBを挿す前
lsblk
# USBを挿した後
lsblk
差分を確認して、USBのデバイス名(例:/dev/sdb
)を特定します。
書き込みコマンド
# 基本的な書き込み
sudo dd if=ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso of=/dev/sdb bs=4M status=progress
# 書き込み完了後の同期
sync
オプションの説明
- if=:入力ファイル(ISOファイル)
- of=:出力先(USBデバイス)
- bs=4M:ブロックサイズ(4MBずつ書き込み)
- status=progress:進行状況を表示
注意事項
- デバイス名を間違えると大変危険
/dev/sda
はメインHDDの場合が多いので要注意- 必ず
/dev/sdb
や/dev/sdc
など、USBのデバイス名を確認
より安全な方法:balenaEtcher
# Ubuntu/Debianの場合
sudo apt update
sudo apt install balena-etcher-electron
# Fedoraの場合
sudo dnf install balena-etcher
GUI操作でWindows版と同じように使用できます。
手順4:Mac でUSBを作成する方法
dd コマンドを使用
デバイス名の確認
# USBを挿す前
diskutil list
# USBを挿した後
diskutil list
アンマウント
sudo diskutil unmountDisk /dev/disk2
書き込み
sudo dd if=ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso of=/dev/rdisk2 bs=4m
Macでのポイント
/dev/rdisk2
の「r」は高速書き込みのためbs=4m
は小文字(Linuxは大文字)
balenaEtcher を使用
Mac版も同様にGUIで簡単に操作できます。
手順5:USBから起動してLinuxをインストール
BIOS/UEFI 設定でUSBブートを有効にする
起動時のキー操作
メーカー | 起動時押すキー |
---|---|
ASUS | F2, Delete |
MSI | F2, Delete |
Gigabyte | F2, F12, Delete |
HP | F9, F10, F12, ESC |
Dell | F2, F12 |
Lenovo | F1, F2, F12 |
Acer | F2, F12, Delete |
BIOS/UEFI での設定
- Boot メニューに移動
- Boot Priority(起動順序)を変更
- USB を最優先に設定
- 設定を保存して再起動
一時的なブートメニューを使用(推奨)
多くのPCでは、BIOS設定を変更せずに一時的にUSBから起動できます。
起動時に F12 キー(メーカーによって異なる)を押してブートメニューを表示し、USBデバイスを選択します。
Linux の起動とインストール
Live起動での確認
- 「Try Ubuntu」を選択
- デスクトップが表示されたら成功
- 日本語環境や無線LANの動作確認
インストールの実行
- デスクトップの「Install Ubuntu」をダブルクリック
- 言語選択:日本語
- キーボードレイアウト:Japanese
- インストールタイプを選択
- 通常インストール:推奨
- 最小インストール:軽量版
パーティション設定
- ディスク全体を使用:Linux専用PC
- WindowsとLinuxを並行利用:デュアルブート
- その他:手動パーティション(上級者向け)
トラブルシューティング

よくある問題と対処法
Q:USBから起動しない A:以下を確認してください
- BIOS/UEFIでUSBブートが有効になっているか
- Secure Bootが無効になっているか
- USBが正しく作成されているか
- 異なるUSBポートで試す
Q:「Secure Boot」エラーが出る A:BIOS/UEFIでSecure Bootを無効にしてください
BIOS → Security → Secure Boot → Disabled
Q:書き込み中にエラーが発生 A:以下を試してください
- USBメモリを別のものに変更
- 管理者権限で実行
- セキュリティソフトを一時停止
- ISOファイルを再ダウンロード
Q:「Not enough space」エラー A:USBメモリの容量不足です
- 8GB以上のUSBメモリを使用
- 不要なファイルを削除してから再実行
書き込み速度が遅い場合
原因と対処法
- USB 2.0 → USB 3.0に変更
- 別のUSBポートを使用
- 高速なUSBメモリに交換
- ddコマンドのブロックサイズを調整
応用:複数のLinuxディストリビューションを1つのUSBに
Ventoy を使用
特徴
- 1つのUSBに複数のISOファイルを格納
- ブート時にISOを選択
- ISOファイルをコピーするだけ
使用方法
- Ventoy をUSBにインストール
- ISOファイルをUSBにコピー
- 起動時にISOを選択
メリット
- 複数のディストリビューションを試せる
- レスキュー用ツールも一緒に格納
- USBの残り容量をデータ保存に使用可能
セキュリティとプライバシーの考慮事項
インストール前の確認
データのバックアップ
- 既存データを必ずバックアップ
- デュアルブートでも念のためバックアップ推奨
セキュアブートの理解
- Windows 11では有効が標準
- Linuxインストール時は無効化が必要な場合
プライバシー設定
- インストール時にプライバシー設定を確認
- 不要なデータ送信は無効化
よくある質問

Q:Linuxインストール後、Windowsが起動しなくなりました
A:ブートローダーの問題です。以下を試してください
- BIOS/UEFIの起動順序を確認
- Windows回復環境からブート修復を実行
- GRUBメニューからWindowsを選択
Q:Live起動は問題ないが、インストールで失敗します
A:以下を確認してください
- ディスクの空き容量(20GB以上推奨)
- メモリ容量(2GB以上推奨)
- ハードウェアの互換性
Q:無線LANが認識されません
A:以下を試してください
- 有線LANでドライバーをダウンロード
- インストール完了後に追加ドライバーをインストール
- USB Wi-Fiアダプターを使用
Q:作成したUSBは再利用できますか?
A:はい、以下の方法で通常のUSBメモリに戻せます
- Windows:ディスクの管理でフォーマット
- Linux:
fdisk
やgparted
でパーティション削除
まとめ:LinuxインストールUSBで新しい世界を体験しよう
この記事のポイント
作成環境 | おすすめツール | 特徴 |
---|---|---|
Windows | Rufus | 高速、軽量、日本語対応 |
Linux | dd コマンド | 標準装備、確実 |
Mac | balenaEtcher | GUI、安全 |
全環境 | balenaEtcher | 統一操作、ベリファイ機能 |
成功のポイント
- USBメモリは8GB以上の高速タイプを選ぶ
- ISOファイルの整合性を確認する
- BIOS/UEFI設定を正しく行う
- 初回はLive起動で動作確認
- 重要データは事前にバックアップ
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