Linuxを使い始めると必ず触れるのが「テキストエディタ」です。
こんな場面で必要になります
- 設定ファイル(nginx.conf、sshd_config等)を編集したい
- スクリプト(.sh、.py、.rb等)を書きたい
- ログファイルをちょっと加工したい
- プログラムのソースコードを修正したい
- システム管理でファイルを素早く編集したい
でも、Linuxには複数のエディタがあり「vi?vim?nano?何が違うの?」「どれを覚えればいいの?」と混乱しがちです。
この記事では、Linuxでよく使われる代表的なエディタを特徴とともに詳しく紹介します。あなたの用途に合ったエディタが見つかりますよ!
Linuxエディタの基本知識

CUIエディタとGUIエディタ
CUI(Character User Interface)エディタ
- ターミナル上で動作
- リモートサーバーでも使える
- キーボードのみで操作
- 軽量で高速
GUIエディタ
- デスクトップ環境で動作
- マウスでも操作可能
- 視覚的にわかりやすい
- 高機能だが重い
エディタの分類
初心者向け
- nano、gedit、kate
中級者向け
- vim、micro
上級者向け
- emacs、neovim
vi(ヴィーアイ)
基本特徴
メリット
- ほとんどのLinux・Unix系システムに最初から入っている
- 軽量でサクサク動く
- 古いサーバーでも確実に使える
- 操作を覚えると非常に高速
デメリット
- 操作が特殊で初心者には難しい
- モードという概念がわかりにくい
- 機能が最小限
基本的な使い方
ファイルを開く
vi sample.conf
基本操作の流れ
- ノーマルモード:起動時の状態
i
キー:インサートモード(編集モード)に切り替え- 文字入力:普通にタイピング
Esc
キー:ノーマルモードに戻る:wq
:保存して終了
最低限覚えておきたいコマンド
モード切り替え
- i:カーソル位置から入力開始
- a:カーソルの次の文字から入力開始
- o:新しい行を作って入力開始
- Esc:ノーマルモードに戻る
保存と終了
- :w:保存(write)
- :q:終了(quit)
- :wq:保存して終了
- :q!:保存せずに強制終了
移動
- h j k l:左下上右(矢印キーでも可)
- 0:行の先頭
- $:行の末尾
nano(ナノ)

基本特徴
メリット
- 初心者にやさしいメニュー表示
- 直感的な操作
- 下部にコマンドガイドが常に表示
- 学習コストが低い
デメリット
- 高度な編集機能は限定的
- 大きなファイルでは動作が重い場合がある
- カスタマイズ性が低い
基本的な使い方
ファイルを開く
nano /etc/hosts
基本操作
- 文字入力:そのまま入力(モード切り替え不要)
- Ctrl + O:保存(Output)
- Ctrl + X:終了(Exit)
- Ctrl + K:行の切り取り
- Ctrl + U:貼り付け
便利なショートカット
編集操作
- Ctrl + W:文字列検索
- Ctrl + \:文字列置換
- Ctrl + G:ヘルプ表示
- Ctrl + C:現在の行・列番号表示
移動操作
- Ctrl + A:行の先頭
- Ctrl + E:行の末尾
- Ctrl + Y:前のページ
- Ctrl + V:次のページ
実用例
# 設定ファイルを安全に編集
sudo nano /etc/nginx/nginx.conf
# スクリプトファイルを作成
nano myscript.sh
vim(ヴィム)
基本特徴
メリット
- viの拡張版で高機能
- シンタックスハイライト(色付け)が美しい
- 強力な検索・置換機能
- 豊富なプラグインとカスタマイズ
- 高速な編集が可能
デメリット
- 学習コストが高い
- 初期設定が必要な場合がある
- モードの概念が必要
インストール
Ubuntu/Debian系
sudo apt update
sudo apt install vim
CentOS/RHEL系
sudo yum install vim
# または
sudo dnf install vim
viとの違い
vim の追加機能
- カラーシンタックス:プログラムコードが色分けされる
- 行番号表示:
:set number
で行番号表示 - 検索ハイライト:検索結果がハイライトされる
- アンドゥ/リドゥ:複数回の取り消し・やり直し
- ビジュアルモード:範囲選択が可能
基本的な使い方
ファイルを開く
vim sample.sh
便利なコマンド
# 行番号を表示
:set number
# シンタックスハイライト有効
:syntax on
# 設定を保存(.vimrcに記述)
echo "set number" >> ~/.vimrc
echo "syntax on" >> ~/.vimrc
プログラミングでの活用
Python ファイルの編集
vim hello.py
vim での編集例
#!/usr/bin/env python3
# -*- coding: utf-8 -*-
def main():
print("Hello, World!")
if __name__ == "__main__":
main()
色付けにより、キーワード、文字列、コメントが見やすく表示されます。
emacs(イーマックス)

基本特徴
メリット
- 超多機能な統合環境
- メール、ニュース、カレンダーまで使える
- 強力なプログラミング支援機能
- 高度なカスタマイズが可能
- 豊富なパッケージ(拡張機能)
デメリット
- 学習コストが非常に高い
- メモリ使用量が多い
- 独特なキーバインド
- 起動が少し重い
インストール
Ubuntu/Debian系
sudo apt update
sudo apt install emacs
CentOS/RHEL系
sudo yum install emacs
# または
sudo dnf install emacs
基本的な使い方
ファイルを開く
# GUI版
emacs file.txt
# CUI版(ターミナル内)
emacs -nw file.txt
基本操作
- Ctrl + X, Ctrl + F:ファイルを開く
- Ctrl + X, Ctrl + S:保存
- Ctrl + X, Ctrl + C:終了
- Ctrl + K:行の切り取り
- Ctrl + Y:貼り付け
プログラミング環境としての活用
Python 開発環境
# Pythonファイルを開く
emacs -nw program.py
emacsは多くのプログラミング言語をサポートし、デバッグやバージョン管理との連携も可能です。
その他の便利なエディタ
micro(マイクロ)
特徴
- 現代的なCUIエディタ
- 直感的な操作(Ctrl+S保存、Ctrl+Q終了)
- マウス操作対応
- シンタックスハイライト標準装備
インストール
# Ubuntuの場合
sudo apt install micro
# 直接ダウンロード
curl https://getmic.ro | bash
gedit(ジーエディット)
特徴
- GNOME環境の標準GUIエディタ
- シンプルで使いやすい
- プラグインで機能拡張可能
起動
gedit filename.txt
kate(ケート)
特徴
- KDE環境の高機能GUIエディタ
- プログラマー向け機能が充実
- タブ表示対応
エディタの選び方ガイド
用途別おすすめ
用途 | おすすめエディタ | 理由 |
---|---|---|
設定ファイルの簡単な編集 | nano | 直感的で安全 |
リモートサーバーでの作業 | vi/vim | どこでも使える |
プログラミング学習 | vim/micro | シンタックスハイライト |
本格的なソフトウェア開発 | vim/emacs | 高機能・カスタマイズ可能 |
GUI環境での快適な編集 | gedit/kate | マウス操作対応 |
スキルレベル別おすすめ
Linux初心者
- nano:まずはここから始める
- micro:現代的で使いやすい
- gedit:GUI環境なら
中級者
- vim:効率的な編集を覚える
- vi:どこでも使えるスキル
上級者・開発者
- vim + プラグイン:カスタマイズして効率化
- emacs:統合環境として活用
実践例:各エディタでの作業フロー

設定ファイル編集(nano使用)
# Apache設定ファイルを安全に編集
sudo cp /etc/apache2/apache2.conf /etc/apache2/apache2.conf.backup
sudo nano /etc/apache2/apache2.conf
# 編集後、設定チェック
sudo apache2ctl configtest
スクリプト作成(vim使用)
# バックアップスクリプトを作成
vim backup.sh
# 実行権限を付与
chmod +x backup.sh
プログラム開発(emacs使用)
# Pythonプロジェクトディレクトリで作業
cd myproject
emacs -nw main.py
# emacsから直接実行も可能
# M-x shell でシェル起動
# python main.py で実行
エディタ設定のカスタマイズ
vim の基本設定
~/.vimrc ファイルの作成
" 行番号表示
set number
" シンタックスハイライト
syntax on
" インデント設定
set autoindent
set smartindent
set tabstop=4
set shiftwidth=4
" 検索設定
set ignorecase
set smartcase
set hlsearch
" その他便利設定
set showmatch
set ruler
set wildmenu
nano の設定
~/.nanorc ファイルの作成
# 行番号表示
set linenumbers
# ソフトラップ
set softwrap
# シンタックスハイライト
include /usr/share/nano/*.nanorc
よくある質問

Q:viとvimの違いは何ですか?
A:vimはviの拡張版です。
主な違いは:
- シンタックスハイライト
- 複数のアンドゥ・リドゥ
- ビジュアルモード
- より豊富な機能
Q:初心者はどのエディタから始めるべきですか?
A:nanoがおすすめです。
理由:
- 操作が直感的
- 危険な操作をしにくい
- コマンドガイドが表示される
Q:プログラミングにはどのエディタがいいですか?
A:以下がおすすめです:
- 学習目的:vim(シンタックスハイライト)
- 本格開発:vim + プラグイン、emacs
- 簡単に始めたい:micro、gedit
Q:リモートサーバーで使えないエディタはありますか?
A:以下は注意が必要です:
- GUIエディタ(gedit、kate):X11転送が必要
- emacs GUI版:リモートでは重い
- vi/vim/nano:どこでも使用可能
まとめ:あなたに合ったLinuxエディタを見つけよう
この記事のポイント
エディタ | 難易度 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
vi | ★★★ | 軽量、どこでも使える | サーバー管理者 |
nano | ★ | 直感的、初心者向け | Linux初心者 |
vim | ★★★ | 高機能、カスタマイズ可能 | プログラマー |
emacs | ★★★★ | 超多機能、統合環境 | 開発者、上級者 |
micro | ★ | 現代的、使いやすい | vim前の練習 |
学習ステップの提案
- nano で基本操作を覚える(1週間程度)
- vi の基本コマンドを覚える(緊急時用)
- vim でプログラミングを始める(1ヶ月程度)
- 必要に応じて emacs や IDE を検討
用途別クイック選択
- 設定ファイルをちょっと編集:nano
- スクリプトファイルを書く:vim
- 大規模なプログラム開発:vim + プラグイン、emacs
- GUI環境で快適に編集:gedit、kate
覚えておくべき最重要コマンド
# nano
nano filename # 開く
Ctrl+O # 保存
Ctrl+X # 終了
# vi/vim
vi filename # 開く
i # 編集モード
Esc # ノーマルモード
:wq # 保存して終了
Linuxには多様なエディタがありますが、それぞれに適した場面があります。まずは簡単なものから始めて、徐々にステップアップしていくのがおすすめです。
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