「機械学習を勉強し始めたけど、KNNって何?」
「アルゴリズムって難しそう…」
「数式が苦手でも理解できる?」
そんな疑問を抱えていませんか?
KNN(K-Nearest Neighbors、K近傍法)は、機械学習の中でも最もシンプルでわかりやすいアルゴリズムの一つです。
「似ているものは近くにある」という人間の直感的な考え方をそのままアルゴリズムにしたもので、プログラミング初心者でもすぐに理解できます。
実は、KNNは私たちの日常生活の中でも広く使われています。
NetflixやAmazonのおすすめ機能、手書き文字認識、画像検索、スパムメール判定など、身近なところで活躍しているんです。
この記事では、KNNの基本的な仕組みから実用例まで、専門用語を極力避けて、中学生でも理解できるようにわかりやすく解説します。
数式が苦手な方でも大丈夫です。
図や具体例を使いながら、じっくり丁寧に説明していきます。
この記事を読めば、KNNの仕組みを完全に理解し、実際にどのように使われているかがわかるようになります。
KNNとは
基本的な定義
KNN(K-Nearest Neighbors、K近傍法)は、機械学習の教師あり学習アルゴリズムの一つです。
簡単に言うと:
「新しいデータがどのグループに属するかを、周りにある既知のデータを見て多数決で決める」方法です。
具体例で理解しよう:
あなたが新しい果物を見つけたとします。
その果物が「リンゴ」「オレンジ」「バナナ」のどれに近いかを判断する時、あなたはどうしますか?
きっと、色・形・大きさ・味などの特徴を、すでに知っているリンゴ・オレンジ・バナナと比較して、「一番似ているもの」を探すはずです。
KNNは、まさにこの考え方をアルゴリズムにしたものです。
名前の意味
K-Nearest Neighbors:
- K: 参考にする近くのデータの数
- Nearest: 最も近い
- Neighbors: 隣人、近所のデータ
例えば、K=3なら「最も近い3つのデータを参考にする」という意味です。
開発の歴史
1951年:
統計学者のEvelyn Fix(イブリン・フィックス)とJoseph Hodges(ジョセフ・ホッジス)が、アメリカ軍の研究でKNNの基本的なアイデアを発表しました。
1967年:
Thomas Cover(トーマス・カバー)とPeter Hart(ピーター・ハート)が、KNNを拡張した論文「Nearest Neighbor Pattern Classification(最近傍パターン分類)」を発表しました。
1980年代後半:
James Keller(ジェームズ・ケラー)が「ファジーKNN」を開発し、エラー率を低減しました。
現在:
KNNは、そのシンプルさと正確さから、今でもデータサイエンスで最初に学ぶアルゴリズムの一つとして広く使われています。
KNNの分類
教師あり学習:
KNNは教師あり学習の一種です。
つまり、事前に「これはリンゴ」「これはオレンジ」といったラベル付きのデータ(訓練データ)を学習し、そのデータを元に新しいデータを分類します。
怠惰学習(Lazy Learning):
KNNは「怠惰学習」とも呼ばれます。
これは、学習段階で複雑な計算をせず、予測が必要になった時にだけ計算を行うという特徴があるためです。
訓練データをそのまま保存しておき、新しいデータが来た時に初めて距離を計算します。
ノンパラメトリック:
KNNはノンパラメトリックなアルゴリズムです。
つまり、データの分布について特定の仮定を置かず、データそのものから直接予測を行います。
KNNの仕組み
基本的な考え方
KNNの基本原理は非常にシンプルです。
「類は友を呼ぶ」
似ているものは近くにある、という考え方です。
具体例:
天気予報を例に考えてみましょう。
過去100日間の気温・湿度・風速と、その日の天気(晴れ・曇り・雨)が記録されているとします。
今日の天気を予測したい場合、KNNは以下のように動作します。
- 今日の気温・湿度・風速を測定
- 過去100日間の中から、今日と似た気候の日を5日分ピックアップ(K=5の場合)
- その5日間の天気を確認: 雨・雨・晴れ・雨・雨
- 多数決で「雨」と予測
これがKNNの基本的な仕組みです。
アルゴリズムの流れ
KNNのアルゴリズムは、以下の5つのステップで動作します。
ステップ1: K値の決定
最初に、参考にする近くのデータの数「K」を決めます。
K=3、K=5、K=7など、奇数を選ぶことが一般的です。
ステップ2: 距離の計算
新しいデータと、すべての訓練データとの「距離」を計算します。
ここでいう距離とは、データの特徴がどれだけ似ているかを数値化したものです。
ステップ3: 近傍の選択
計算した距離を小さい順に並べ替え、最も近いK個のデータを選びます。
ステップ4: 多数決または平均
- 分類問題の場合: K個のデータの中で最も多いクラスを選ぶ(多数決)
- 回帰問題の場合: K個のデータの値の平均を計算
ステップ5: 予測結果の出力
ステップ4で決定したクラスまたは値を、新しいデータの予測結果として出力します。
視覚的な理解
グラフで考えてみましょう。
例: 身長と体重から性別を予測
横軸を「身長」、縦軸を「体重」としたグラフに、男性と女性のデータが点で表示されているとします。
- 青い丸: 男性
- 赤い三角: 女性
新しいデータ(星マーク)が追加されました。
この星は男性でしょうか? 女性でしょうか?
K=3の場合:
星に最も近い3つのデータを見ます。
青い丸が2つ、赤い三角が1つだとします。
多数決で青い丸(男性)が多いので、星は「男性」と予測されます。
K=7の場合:
星に最も近い7つのデータを見ます。
青い丸が3つ、赤い三角が4つだとします。
多数決で赤い三角(女性)が多いので、星は「女性」と予測されます。
このように、K値によって予測結果が変わることがあります。
距離の計算方法
KNNでは、データ間の「距離」を計算することが重要です。
距離が近いほど、データが似ていることを意味します。
ユークリッド距離
最も一般的な距離の計算方法です。
2つのデータポイント間の「直線距離」を測ります。
中学校で習う三平方の定理(ピタゴラスの定理)を使います。
2次元の場合:
点A(x1, y1)と点B(x2, y2)の距離は:
距離 = √((x2-x1)² + (y2-y1)²)
例:
点A(3, 4)と点B(6, 8)の距離:
距離 = √((6-3)² + (8-4)²)
= √(3² + 4²)
= √(9 + 16)
= √25
= 5
3次元以上の場合:
特徴が3つ以上ある場合も同じ考え方です。
距離 = √((x2-x1)² + (y2-y1)² + (z2-z1)² + ...)
マンハッタン距離
街区距離とも呼ばれます。
碁盤の目のような街を移動する時の距離を測ります。
直線ではなく、縦と横の移動距離の合計です。
2次元の場合:
点A(x1, y1)と点B(x2, y2)の距離は:
距離 = |x2-x1| + |y2-y1|
例:
点A(3, 4)と点B(6, 8)の距離:
距離 = |6-3| + |8-4|
= 3 + 4
= 7
使い分け:
- ユークリッド距離: 一般的な場合に使用
- マンハッタン距離: 座標軸に沿った移動が自然な場合に使用
その他の距離
ミンコフスキー距離:
ユークリッド距離とマンハッタン距離を一般化したもの。
コサイン類似度:
テキストデータや高次元データでよく使われる。
ベクトルの方向の類似度を測る。
ハミング距離:
カテゴリカルデータ(性別、色など)で使われる。
異なる要素の数を数える。
K値の選び方
K値の選択は、KNNの性能に大きく影響します。
K値が小さい場合
例: K=1(最近傍法)
メリット:
- データの細かいパターンを捉えられる
- 境界線が複雑になる
デメリット:
- ノイズ(外れ値)の影響を受けやすい
- 予測が不安定
- 過学習(オーバーフィッティング)のリスクが高い
具体例:
K=1の場合、たまたま近くにあった1つのデータだけで判断するため、そのデータが間違っていると予測も間違います。
K値が大きい場合
例: K=50
メリット:
- ノイズの影響を受けにくい
- 予測が安定
- 境界線が滑らか
デメリット:
- データの細かいパターンを見逃す可能性
- 境界が不明瞭になる
- 過小学習(アンダーフィッティング)のリスクが高い
具体例:
K=50の場合、遠くのデータまで参考にするため、本来の境界線がぼやけてしまいます。
適切なK値の決め方
1. 平方根法
訓練データ数の平方根を使う簡易的な方法です。
K = √(訓練データ数)
例: 訓練データが100個なら、K = √100 = 10
2. 交差検証(Cross-Validation)
最も推奨される方法です。
- データを複数のグループに分割
- K=1, 3, 5, 7, 9…と色々な値で試す
- 各K値での精度を測定
- 最も精度が高いK値を採用
3. 奇数を選ぶ
2クラス分類の場合、K値を奇数にすることで、同票を避けられます。
例: K=3なら、2対1で必ず多数派が決まる
4. データセットのサイズを考慮
- 小規模データ: K=3〜7
- 中規模データ: K=10〜30
- 大規模データ: より大きなK値を試す
分類と回帰
KNNは、分類問題と回帰問題の両方に使えます。
分類問題
目的:
データを特定のカテゴリー(クラス)に分類する。
動作:
K個の近傍の中で、最も多いクラスを選ぶ(多数決)。
具体例1: スパムメール判定
- クラス: スパム or 正常
- 特徴: メール内の特定の単語の出現頻度
- K=5で判定: スパム3件、正常2件 → スパムと判定
具体例2: 手書き数字認識
- クラス: 0〜9の数字
- 特徴: ピクセルの明るさ
- K=7で判定: 数字「3」が4件、「8」が3件 → 「3」と判定
具体例3: 花の種類の分類
- クラス: アヤメの3種類
- 特徴: がく片の長さ、花弁の長さ
- K=3で判定: A種2件、B種1件 → A種と判定
回帰問題
目的:
連続的な数値を予測する。
動作:
K個の近傍の値の平均(または加重平均)を計算。
具体例1: 住宅価格の予測
- 予測対象: 住宅価格(円)
- 特徴: 広さ、築年数、駅からの距離
- K=5の近傍の価格: 3000万、3200万、2900万、3100万、3300万
- 平均: (3000+3200+2900+3100+3300) / 5 = 3100万円
具体例2: 気温の予測
- 予測対象: 明日の最高気温(℃)
- 特徴: 今日の気温、湿度、気圧
- K=3の近傍の気温: 25℃、27℃、26℃
- 平均: (25+27+26) / 3 = 26℃
具体例3: 売上の予測
- 予測対象: 来月の売上(万円)
- 特徴: 広告費、季節、過去の売上
- K=7の近傍の売上を平均して予測
加重平均
回帰問題では、近いデータにより大きな重みをつける「加重平均」を使うこともあります。
例:
- データ1(距離2): 価格3000万円 → 重み = 1/2 = 0.5
- データ2(距離5): 価格3500万円 → 重み = 1/5 = 0.2
- データ3(距離10): 価格4000万円 → 重み = 1/10 = 0.1
加重平均 = (3000×0.5 + 3500×0.2 + 4000×0.1) / (0.5+0.2+0.1)
近いデータほど予測に強く影響します。
メリットとデメリット
メリット
1. シンプルで理解しやすい
アルゴリズムが非常に単純なため、初心者でもすぐに理解できます。
数学的な前提知識もほとんど必要ありません。
2. 実装が簡単
プログラミングの実装も簡単です。
数行のコードで動作します。
3. 訓練不要
複雑な学習プロセスがありません。
データを保存しておくだけで使えます。
4. 柔軟性が高い
- 分類と回帰の両方に使える
- 距離の計算方法を変更できる
- K値を調整して性能を改善できる
5. ノンパラメトリック
データの分布について仮定を置かないため、様々なデータに適用できます。
6. 非線形データに対応
データが直線的でなくても、柔軟に境界を作れます。
7. 多クラス分類に対応
2つ以上のクラスがある場合でも、追加の調整なしで使えます。
8. 新しいデータへの適応が早い
新しい訓練データを追加すれば、すぐに反映されます。
デメリット
1. 計算コストが高い
予測のたびに、すべての訓練データとの距離を計算する必要があります。
データが増えると、非常に遅くなります。
計算量: O(n × d)
- n: 訓練データ数
- d: 特徴の次元数
2. メモリ消費が大きい
すべての訓練データをメモリに保存する必要があります。
大規模データには不向きです。
3. 次元の呪い
特徴の数が増えると、性能が著しく低下します。
高次元空間では、すべてのデータが等距離に見えてしまうためです。
4. スケーリングが必須
特徴のスケール(単位や範囲)が異なると、正しく動作しません。
事前に標準化や正規化が必要です。
例:
- 身長: 150〜190cm
- 体重: 40〜90kg
- 年収: 200〜1000万円
年収の値が大きいため、身長・体重の影響が無視されてしまいます。
5. 不均衡なデータに弱い
あるクラスのデータが極端に多い場合、常にそのクラスに分類されやすくなります。
例:
- クラスA: 90個
- クラスB: 10個
K=11の場合、クラスAに分類される可能性が非常に高くなります。
6. ノイズに敏感
K値が小さいと、外れ値(ノイズ)の影響を受けやすくなります。
7. 最適なK値を見つけるのが難しい
K値の選択には試行錯誤が必要です。
8. 欠損値の処理が必要
データに欠損値がある場合、事前に補完する必要があります。
実用例
KNNは、様々な分野で実際に使われています。
1. 推奨システム(レコメンデーション)
Netflix、Amazon、YouTube
「あなたにおすすめ」の機能に使われています。
仕組み:
- あなたの視聴履歴を分析
- 似た視聴履歴を持つユーザーを見つける(近傍)
- その人たちが見ている作品を推奨
協調フィルタリング:
「似たユーザーは似た好みを持つ」という考え方です。
2. 画像認識
手書き文字認識
iPadの手書き文字のテキスト変換などで使われています。
仕組み:
- 手書き文字を画像データに変換
- ピクセルの明るさを特徴として抽出
- 既知の数字データと比較
- 最も似ている数字を判定
顔認識:
スマホのロック解除、写真の自動タグ付けなどに応用されています。
3. 医療診断
がんの診断
腫瘍が良性か悪性かを判定します。
仕組み:
- 腫瘍の細胞の特徴(サイズ、形、密度など)を測定
- 過去の症例データベースと比較
- 似た症例を探し、良性・悪性を判定
遺伝子発現の予測:
特定の遺伝子発現の可能性を計算し、病気のリスクを予測します。
4. テキスト分類
スパムメール判定
メールがスパムかどうかを自動判定します。
仕組み:
- メール内の単語の出現頻度を特徴として抽出
- 既知のスパムメール・正常メールと比較
- 似たメールを探し、スパム判定
感情分析:
SNSの投稿が「ポジティブ」「ネガティブ」「中立」かを判定します。
5. 金融
株価予測
過去の株価データから、将来の株価を予測します。
信用スコアリング:
顧客の信用リスクを評価し、ローンの承認を判断します。
為替レート予測:
為替の動きを予測するのに使われます。
6. 異常検知
工場の品質管理
製品が正常か異常かを自動検知します。
仕組み:
- 製品のセンサーデータを収集
- 正常な製品データと比較
- 大きく離れている場合、異常と判定
侵入検知:
ネットワークの異常なアクセスを検知します。
7. パターン認識
音声認識:
音声をテキストに変換する技術に使われます。
ジェスチャー認識:
手の動きを認識して、コンピュータを操作します。
8. 地理情報
土地利用分類:
衛星画像から、森林・都市・農地などを分類します。
地質調査:
地下の資源探査に使われます。
9. データ補完
欠損値の補完
データに欠けている値を、周りのデータから推定します。
10. 不動産
住宅価格の推定
立地・広さ・築年数などから、住宅の適正価格を予測します。
データの前処理
KNNを正しく動作させるためには、データの前処理が重要です。
1. スケーリング(標準化・正規化)
なぜ必要?
特徴のスケールが異なると、大きな値の特徴だけが距離に影響してしまいます。
例:
- 身長: 150〜190cm(範囲40)
- 年収: 200〜1000万円(範囲800)
年収の影響が圧倒的に大きくなります。
標準化(Standardization):
平均0、標準偏差1に変換します。
標準化後の値 = (元の値 - 平均) / 標準偏差
正規化(Normalization):
0〜1の範囲に変換します。
正規化後の値 = (元の値 - 最小値) / (最大値 - 最小値)
2. 欠損値の処理
方法1: 削除
欠損値を含む行を削除します。
データが十分にある場合のみ推奨。
方法2: 平均値で補完
その特徴の平均値で埋めます。
方法3: KNNで補完
KNN自体を使って、欠損値を推定します。
3. カテゴリカルデータの変換
カテゴリカルデータ:
性別(男/女)、色(赤/青/緑)など、カテゴリーを表すデータ。
One-Hotエンコーディング:
カテゴリーを0と1の数値に変換します。
例: 色
- 赤: [1, 0, 0]
- 青: [0, 1, 0]
- 緑: [0, 0, 1]
4. 外れ値の処理
外れ値(アウトライヤー):
極端に大きい、または小さい値。
処理方法:
- 削除する
- 上限・下限値でクリッピング
- 対数変換
実装例(概念)
プログラミングの知識がなくても理解できるよう、概念的に説明します。
基本的な流れ
ステップ1: データの準備
- 訓練データ: ラベル付きのデータ
- テストデータ: 予測したいデータ
ステップ2: K値の決定
K=3、K=5など、適切な値を選びます。
ステップ3: 距離の計算
テストデータと、すべての訓練データとの距離を計算します。
ステップ4: ソート
距離を小さい順に並べ替えます。
ステップ5: K個選択
最も近いK個のデータを選びます。
ステップ6: 多数決または平均
- 分類: 最も多いクラスを選ぶ
- 回帰: 値の平均を計算
ステップ7: 予測結果
決定したクラスまたは値を出力します。
Pythonライブラリ
実際の実装では、以下のライブラリがよく使われます。
scikit-learn:
最も人気のある機械学習ライブラリです。
from sklearn.neighbors import KNeighborsClassifier
# モデルの作成
knn = KNeighborsClassifier(n_neighbors=5)
# 訓練
knn.fit(X_train, y_train)
# 予測
predictions = knn.predict(X_test)
数行のコードで実装できます。
よくある質問
Q1: KNNはどんな問題に適していますか?
A: 以下のような場合に適しています:
適している:
- データセットが小〜中規模(数千〜数万件)
- 特徴の数が少ない(10〜100程度)
- データの境界が複雑で非線形
- 学習時間を短くしたい
- 解釈可能性を重視する
適していない:
- データセットが非常に大きい(数百万件以上)
- 特徴の数が非常に多い(高次元)
- リアルタイム予測が必要
- メモリが限られている
Q2: K値はどうやって決めればいいですか?
A: 以下の方法を試してください:
- 交差検証で最適値を探す(推奨)
K=1, 3, 5, 7, 9…と色々試して、最も精度が高い値を選びます。 - 平方根法を使う
K = √(訓練データ数)
簡易的な目安として使えます。 - 奇数を選ぶ
2クラス分類では、K=3, 5, 7など奇数が推奨されます。 - データセットのサイズを考慮
小規模: K=3〜7
中規模: K=10〜30
Q3: KNNは遅いと聞きましたが、高速化できますか?
A: はい、いくつかの高速化手法があります:
1. KD木(K-dimensional tree)
データを木構造で整理し、近傍探索を高速化します。
2. ボール木(Ball tree)
高次元データで有効な木構造です。
3. 近似最近傍探索(ANN)
完全に正確ではないが、高速に近傍を見つける手法です。
4. 次元削減
PCAなどで特徴の数を減らします。
5. データのサンプリング
訓練データの一部だけを使います。
Q4: 距離の計算方法はどれを使えばいいですか?
A: データの種類によって使い分けます:
ユークリッド距離(最も一般的):
- 連続的な数値データ
- 特徴間に特別な関係がない場合
マンハッタン距離:
- 座標軸に沿った移動が自然な場合
- 高次元データ
コサイン類似度:
- テキストデータ
- ベクトルの方向が重要な場合
ハミング距離:
- カテゴリカルデータ
- バイナリデータ
Q5: KNNと他のアルゴリズムの違いは?
A: 代表的なアルゴリズムとの比較です:
KNN vs 決定木:
- KNN: 境界が滑らか、ノイズに敏感、遅い
- 決定木: ルールベース、解釈しやすい、速い
KNN vs SVM:
- KNN: 局所的、単純、訓練不要
- SVM: 大域的、マージン最大化、訓練必要
KNN vs K-Means:
- KNN: 教師あり学習、分類・回帰
- K-Means: 教師なし学習、クラスタリング
KNN vs ナイーブベイズ:
- KNN: 距離ベース、遅い、高精度
- ナイーブベイズ: 確率ベース、速い、独立性の仮定
Q6: 訓練データはどのくらい必要ですか?
A: 問題の複雑さによります:
一般的な目安:
- 単純な問題: 100〜1000件
- 中程度の問題: 1000〜10000件
- 複雑な問題: 10000件以上
注意点:
- クラスごとに十分なデータが必要
- 不均衡なデータは避ける
- 質の高いデータが重要
Q7: KNNは過学習しますか?
A: はい、K値が小さいと過学習します。
過学習とは:
訓練データに適合しすぎて、新しいデータに対する性能が低下すること。
防ぐ方法:
- K値を大きくする
- 交差検証で適切なK値を選ぶ
- データを増やす
- 特徴選択を行う
Q8: カテゴリカルデータに使えますか?
A: 使えますが、前処理が必要です。
方法:
- One-Hotエンコーディング
カテゴリーを0と1の数値に変換 - ハミング距離の使用
異なるカテゴリーの数を距離として使用 - ラベルエンコーディング
カテゴリーに番号を割り当てる(順序がある場合のみ)
Q9: 時系列データに使えますか?
A: 使えますが、工夫が必要です。
方法:
- ラグ特徴の作成
過去の値を特徴として追加 - 移動平均の使用
短期・長期の移動平均を特徴として使用 - DTW距離
Dynamic Time Warping距離を使用
注意:
時系列データには、ARIMA、LSTMなどの専用手法の方が適していることが多いです。
Q10: 重み付きKNNとは何ですか?
A: 近いデータほど強く影響する改良版です。
通常のKNN:
K個のデータすべてが同じ重みを持つ。
重み付きKNN:
近いデータほど大きな重みを持つ。
重みの例:
距離の逆数を重みとして使用。
- 距離2のデータ: 重み = 1/2 = 0.5
- 距離5のデータ: 重み = 1/5 = 0.2
- 距離10のデータ: 重み = 1/10 = 0.1
メリット:
より滑らかで正確な予測が可能。
Q11: KNNは特徴選択が必要ですか?
A: はい、特に高次元データでは重要です。
特徴選択とは:
予測に重要な特徴だけを選ぶこと。
理由:
- 不要な特徴はノイズになる
- 計算コストを削減
- 次元の呪いを避ける
方法:
- 相関係数による選択
- 重要度による選択
- 再帰的特徴削除(RFE)
- PCA(主成分分析)
Q12: 不均衡データにはどう対処しますか?
A: 以下の方法があります:
1. リサンプリング
- 多数派クラスを減らす(アンダーサンプリング)
- 少数派クラスを増やす(オーバーサンプリング)
2. クラス重み付け
少数派クラスに大きな重みをつける。
3. SMOTE
Synthetic Minority Over-sampling Technique
少数派クラスの合成データを生成。
4. K値の調整
小さめのK値を試す。
5. 閾値の調整
分類の閾値を変更する。
まとめ
KNN(K-Nearest Neighbors、K近傍法)は、機械学習の中で最もシンプルでわかりやすいアルゴリズムの一つです。
KNNの要点:
基本原理:
- 「似ているものは近くにある」という考え方
- 新しいデータを、周りのK個のデータで多数決(または平均)して予測
- 教師あり学習、怠惰学習、ノンパラメトリック
仕組み:
- K値を決める
- 距離を計算
- 近いK個を選ぶ
- 多数決または平均
- 予測結果を出力
距離の計算:
- ユークリッド距離(最も一般的)
- マンハッタン距離
- その他(コサイン、ハミングなど)
K値の選び方:
- 交差検証で最適値を探す(推奨)
- 平方根法: K = √(訓練データ数)
- 奇数を選ぶ(2クラス分類)
分類と回帰:
- 分類: 多数決でクラスを決定
- 回帰: 平均(または加重平均)で数値を予測
メリット:
- シンプルで理解しやすい
- 実装が簡単
- 訓練不要
- 柔軟性が高い
- ノンパラメトリック
- 非線形データに対応
デメリット:
- 計算コストが高い
- メモリ消費が大きい
- 次元の呪い
- スケーリングが必須
- 不均衡なデータに弱い
- ノイズに敏感
実用例:
- 推奨システム(Netflix、Amazon)
- 画像認識(手書き文字、顔認識)
- 医療診断(がん判定)
- テキスト分類(スパムメール)
- 金融(株価予測)
- 異常検知(品質管理)
- パターン認識(音声、ジェスチャー)
データの前処理:
- スケーリング(標準化・正規化)が必須
- 欠損値の処理
- カテゴリカルデータの変換
- 外れ値の処理
適している問題:
- 小〜中規模データ
- 低〜中次元データ
- 非線形な境界
- 学習時間を短くしたい場合
適していない問題:
- 大規模データ
- 高次元データ
- リアルタイム予測
- メモリが限られている場合
KNNは、その直感的でわかりやすい仕組みから、機械学習を学び始める際の最初のアルゴリズムとして最適です。
実装も簡単で、様々な問題に適用できるため、実務でもよく使われています。
ただし、大規模データや高次元データには向かないという制限があるため、問題の特性を理解して、適切に使い分けることが重要です。
まずはKNNの基本を理解し、実際に手を動かして試してみることで、機械学習の基礎をしっかり身につけることができます。
他のより複雑なアルゴリズムを学ぶ際の土台にもなるので、ぜひマスターしてください!
機械学習の世界への第一歩として、KNNから始めてみましょう!

コメント