JavaとKotlinの違いとは？初心者にもわかる徹底比較

Androidアプリ開発やWebアプリケーション開発を学ぼうとすると、必ず耳にする2つのプログラミング言語、「Java」と「Kotlin」。

「どっちを学べばいいの？」「何が違うの？」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

特に、2017年にGoogleがKotlinをAndroid開発の公式言語として採用してから、KotlinとJavaの比較は開発者の間でホットな話題となっています。

この記事では、JavaとKotlinの違いを、初心者にもわかりやすく徹底的に解説していきます。

Javaとは？
Kotlinとは？
JavaとKotlinの主な違い
詳細比較表
それぞれのメリット・デメリット
パフォーマンス比較
よくある質問（FAQ）
まとめ

Javaとは？

基本情報

Java（ジャバ）は、1995年にSun Microsystems（現在はOracle Corporationが管理）が開発した、オブジェクト指向プログラミング言語です。

開発元： Sun Microsystems（現Oracle Corporation）

初登場： 1995年

最新バージョン： Java 21（2023年9月）

スローガン： “Write Once, Run Anywhere”（一度書けば、どこでも動く）

Javaの特徴

1. プラットフォーム非依存

Java仮想マシン（JVM）上で動作
Windows、Mac、Linux、どこでも同じコードが動く

2. オブジェクト指向

クラスとオブジェクトを中心とした設計

3. 豊富なライブラリとフレームワーク

30年近い歴史による膨大なエコシステム

4. 広範な用途

Webアプリケーション
Androidアプリ
企業向けシステム
デスクトップアプリケーション
組み込みシステム

Javaが使われている場面

企業システム： 銀行、証券、大手企業の基幹システム
Androidアプリ： 多くのAndroidアプリ
Webサービス： LinkedIn、Twitter（X）の一部など
ビッグデータ処理： Hadoop、Apache Sparkなど

Kotlinとは？

基本情報

Kotlin（コトリン）は、2011年にJetBrains社が開発した、JVM上で動作する静的型付けプログラミング言語です。

開発元： JetBrains社

初登場： 2011年

公式採用： 2017年、GoogleがAndroid開発の公式言語として採用

最新バージョン： Kotlin 2.0（2024年5月）

設計思想： Javaの課題を解決し、より簡潔で安全なコードを書けるように

Kotlinの特徴

1. Javaとの完全な相互運用性

JavaとKotlinを同じプロジェクトで混在できる
JavaライブラリをKotlinから使える
KotlinコードをJavaから呼び出せる

2. 簡潔な構文

Javaより少ないコードで同じことができる

3. Null安全性

NullPointerExceptionを防ぐ仕組みが組み込まれている

4. 関数型プログラミング対応

ラムダ式、高階関数などをサポート

Kotlinが使われている場面

Androidアプリ： Google公式推奨言語
サーバーサイド： Spring Bootなどのフレームワークで使用
マルチプラットフォーム： iOS、Web、デスクトップアプリ
企業システム： モダンな開発環境を求める企業

JavaとKotlinの主な違い

1. 構文の簡潔さ

Java：冗長（詳細を明示）

Javaは、すべてを明示的に記述する必要があります。

// Javaでのクラス定義
public class Person {
    private String name;
    private int age;

    public Person(String name, int age) {
        this.name = name;
        this.age = age;
    }

    public String getName() {
        return name;
    }

    public void setName(String name) {
        this.name = name;
    }

    public int getAge() {
        return age;
    }

    public void setAge(int age) {
        this.age = age;
    }
}

Kotlin：簡潔（自動で処理）

Kotlinは、同じことをたった1行で書けます。

// Kotlinでのデータクラス定義
data class Person(var name: String, var age: Int)

違いのポイント：

Javaは約20行必要
Kotlinは1行で完結
Kotlinは自動でgetter/setterを生成

2. Null安全性

最も重要な違いの一つがNull安全性です。

Java：NullPointerExceptionの危険性

// Javaでは、このコードは実行時にエラーになる可能性がある
String text = null;
int length = text.length();  // NullPointerException発生！

Javaでは、実行してみるまでエラーに気づかないことがあります。

Kotlin：コンパイル時にNullをチェック

// Kotlinでは、このコードはコンパイルエラーになる
var text: String = null  // エラー！Stringはnullを許可しない

// nullを許可する場合は「?」を付ける
var text: String? = null  // OK

// Null安全な呼び出し
val length = text?.length  // textがnullなら、lengthもnullになる

違いのポイント：

Javaはnullチェックを忘れるとクラッシュ
Kotlinはコンパイル時にnullエラーを検出
Kotlinは「?」でnull許可を明示

3. 変数の宣言

Java：型を明示

String name = "太郎";
int age = 20;
final int MAX_VALUE = 100;  // 定数

Kotlin：型推論

var name = "太郎"  // 型推論でString型
val age = 20       // 型推論でInt型
val MAX_VALUE = 100  // valは再代入不可（定数）

違いのポイント：

var：再代入可能な変数
val：再代入不可能な定数（Javaのfinalに相当）
セミコロン不要

4. 文字列操作

Java：文字列結合

String name = "太郎";
int age = 20;
String message = "私の名前は" + name + "、年齢は" + age + "歳です。";

Kotlin：文字列テンプレート

val name = "太郎"
val age = 20
val message = "私の名前は$name、年齢は${age}歳です。"

違いのポイント：

Kotlinは$で変数を埋め込める
より読みやすく、書きやすい

5. 関数（メソッド）の定義

Java

public int add(int a, int b) {
    return a + b;
}

Kotlin

fun add(a: Int, b: Int): Int {
    return a + b
}

// さらに簡潔に書ける
fun add(a: Int, b: Int) = a + b

違いのポイント：

Kotlinはfunキーワードで関数を定義
引数の型は後ろに書く
式として関数を定義できる

6. 条件分岐

Java：三項演算子

int max = (a > b) ? a : b;

Kotlin：ifは式

val max = if (a > b) a else b

Kotlin：when式（Javaのswitch文の強化版）

val result = when (x) {
    1 -> "one"
    2 -> "two"
    in 3..10 -> "3から10"
    else -> "その他"
}

違いのポイント：

Kotlinのifは値を返せる
whenはswitchより柔軟で強力

7. クラスの継承

Java：デフォルトで継承可能

public class Animal {
    public void sound() {
        System.out.println("動物の音");
    }
}

public class Dog extends Animal {
    @Override
    public void sound() {
        System.out.println("ワンワン");
    }
}

Kotlin：デフォルトで継承不可

// openキーワードで継承を許可
open class Animal {
    open fun sound() {
        println("動物の音")
    }
}

class Dog : Animal() {
    override fun sound() {
        println("ワンワン")
    }
}

違いのポイント：

Kotlinはデフォルトでfinal（継承不可）
継承を許可するにはopenキーワードが必要
安易な継承を防ぐ設計

8. 拡張関数

Kotlin独自の機能

Kotlinでは、既存のクラスに新しいメソッドを追加できます。

// String型に新しい関数を追加
fun String.removeSpaces(): String {
    return this.replace(" ", "")
}

// 使用例
val text = "Hello World"
val result = text.removeSpaces()  // "HelloWorld"

Javaにはこの機能がありません。

9. データクラス

Kotlin：データクラス

data class User(val name: String, val age: Int)

val user1 = User("太郎", 20)
val user2 = User("太郎", 20)

println(user1 == user2)  // true（値が同じ）
println(user1)  // User(name=太郎, age=20)

Java：手動で実装

public class User {
    private String name;
    private int age;

    // コンストラクタ
    public User(String name, int age) {
        this.name = name;
        this.age = age;
    }

    // getter/setter
    // equals()メソッド
    // hashCode()メソッド
    // toString()メソッド
    // などを全て手動で実装
}

違いのポイント：

Kotlinのdata classは自動で以下を生成：
equals()
hashCode()
toString()
copy()
componentN()

10. 並行処理

Java：Thread、ExecutorService、CompletableFuture

CompletableFuture.supplyAsync(() -> {
    // 重い処理
    return "結果";
}).thenAccept(result -> {
    System.out.println(result);
});

Kotlin：Coroutines（コルーチン）

GlobalScope.launch {
    val result = async {
        // 重い処理
        "結果"
    }.await()
    println(result)
}

違いのポイント：

Kotlinのコルーチンは軽量で使いやすい
非同期処理をシンプルに書ける

詳細比較表

項目	Java	Kotlin
登場年	1995年	2011年
開発元	Sun Microsystems（現Oracle）	JetBrains
構文	冗長、明示的	簡潔、型推論
Null安全性	手動でチェック必要	コンパイル時にチェック
セミコロン	必要	不要
型推論	限定的（Java 10以降は`var`）	強力
クラス継承	デフォルトで可能	`open`キーワード必要
データクラス	手動実装	`data class`で自動生成
拡張関数	なし	あり
関数型プログラミング	Java 8以降で対応	最初から対応
並行処理	Thread、CompletableFuture	Coroutines
三項演算子	あり（`? :`）	なし（ifが式）
switch/when	switch文	when式（より強力）
static	あり	なし（companion object）
検査例外	あり（強制）	なし
プリミティブ型	あり	なし（すべてオブジェクト）
相互運用性	–	Javaと100%互換
コンパイル速度	高速	やや遅い
学習曲線	緩やか	やや急
コミュニティ	非常に大きい	成長中
求人数	多い	増加中

それぞれのメリット・デメリット

Javaのメリット

1. 巨大なコミュニティとエコシステム

30年近い歴史
膨大な数のライブラリとフレームワーク
豊富な情報とサンプルコード

2. 求人が多い

企業の基幹システムで広く使われている
就職・転職に有利

3. 学習リソースが豊富

書籍、オンライン講座、チュートリアルが充実
初心者向けの情報が多い

4. 安定性と信頼性

長年の実績
大規模システムでの運用ノウハウが蓄積

5. パフォーマンス

JVMの最適化技術が成熟

Javaのデメリット

1. 冗長なコード

同じことをするのに多くの行数が必要
ボイラープレート（定型文）が多い

2. NullPointerException

実行時エラーの原因になりやすい

3. 関数型プログラミングへの対応が遅れた

Java 8でようやくラムダ式が導入

4. モダンな機能の追加が遅い

後方互換性を重視するため

Kotlinのメリット

1. 簡潔で読みやすいコード

Javaの半分程度のコード量で同じことができる
生産性が向上

2. Null安全性

NullPointerExceptionを大幅に削減
より安全なコード

3. Javaとの互換性

既存のJavaコードと混在できる
Javaライブラリをそのまま使える
段階的な移行が可能

4. モダンな機能

関数型プログラミング
コルーチン
拡張関数
データクラス

5. GoogleのAndroid公式言語

Androidアプリ開発で推奨

6. マルチプラットフォーム対応

Kotlin Multiplatformで、iOS、Web、デスクトップアプリも開発可能

Kotlinのデメリット

1. 学習曲線がやや急

多機能なため、最初は戸惑う可能性
Javaの知識があると学びやすい

2. コンパイル速度

Javaより遅い場合がある
大規模プロジェクトでは顕著

3. コミュニティがJavaより小さい

情報がJavaほど豊富ではない
特に日本語の情報が少ない

4. 求人数

Javaより少ない（ただし増加中）

5. 複雑さ

多機能すぎて、コードの書き方が統一されにくい

パフォーマンス比較

実行速度

JavaとKotlinは、どちらもJVM上で動作し、最終的に同じバイトコードにコンパイルされるため、実行速度はほぼ同じです。

細かい違い：

項目	Java	Kotlin
基本的な処理	ほぼ同じ	ほぼ同じ
inline関数	なし	関数呼び出しのオーバーヘッド削減
Null安全チェック	–	若干のオーバーヘッド（微小）

コンパイル速度

Java：速い

シンプルな言語仕様
長年の最適化

Kotlin：やや遅い

複雑な言語機能（型推論、Null安全性など）
ただし、Kotlin 2.0のK2コンパイラで大幅に改善

メモリ使用量

ほぼ同じですが、Kotlinの一部の機能（ラムダ式など）で若干のオーバーヘッドがある場合があります。

結論： パフォーマンスの違いはほとんど気にする必要はありません。

よくある質問（FAQ）

Q1. KotlinはJavaを置き換えるの？

A: 完全に置き換えるわけではありません。

Kotlinは、特定の分野（Androidアプリ開発など）で主流になっていますが、Javaも：

企業の基幹システム
レガシーシステム
大規模なエコシステム

といった強みがあり、当面はJavaとKotlinが共存します。

Q2. Javaができれば、Kotlinは簡単？

A: はい、比較的簡単に習得できます。

理由：

基本的な概念は同じ
オブジェクト指向の考え方は共通
Javaコードを自動変換する機能がある（Android Studio）

ただし、Kotlin独自の機能（拡張関数、コルーチンなど）は別途学習が必要です。

Q3. どちらの方が年収が高い？

A: 日本では現状、Javaの方がやや高い傾向。

理由：

Javaの求人数が多い
企業の基幹システムでJavaが使われている

ただし、Kotlinエンジニアの需要も増加中で、Androidアプリ開発分野では高収入の案件も増えています。

Q4. Kotlinの方が書きやすいなら、なぜJavaを使うの？

A: いくつかの理由があります。

1. レガシーシステム

すでにJavaで書かれたシステムを維持

2. チームの習熟度

既存のJava開発者が多い

3. 安定性重視

長年の実績があるJavaを選ぶ

4. ツールの成熟度

Javaのエコシステムが非常に成熟

Q5. AndroidアプリはJavaで開発できる？

A: できますが、Kotlinが推奨されています。

現状：

Google公式はKotlinを推奨
新しいAndroid機能はKotlin優先でサポート
ただし、Javaでも開発可能

推奨： これから学ぶならKotlin

Q6. Kotlinの「?」って何？

A: null許容型を示す記号です。

var name: String = "太郎"  // nullは代入できない
var name: String? = null   // nullを代入できる

これにより、コンパイル時にnullエラーを防げます。

Q7. JavaとKotlinを混在させられる？

A: はい、同じプロジェクト内で混在できます。

プロジェクト
├── UserService.java   (Java)
├── UserRepository.kt  (Kotlin)
└── UserModel.kt       (Kotlin)

Javaで書かれた既存プロジェクトに、Kotlinで新機能を追加することも可能です。

Q8. Kotlinの情報は少ない？

A: 以前より増えましたが、Javaよりは少ないです。

日本語情報：

書籍：増加中
ブログ記事：充実してきた
公式ドキュメント：日本語化進行中

英語情報：

公式ドキュメントは充実
Stack Overflowなどで質問可能

まとめ

JavaとKotlinの違いについて、重要なポイントをまとめます。

1. 基本情報：

Java：1995年登場、30年近い歴史
Kotlin：2011年登場、2017年にGoogle公式採用

2. 構文：

Java：冗長で明示的
Kotlin：簡潔で型推論

3. Null安全性：

Java：手動でチェック（NullPointerExceptionの危険）
Kotlin：コンパイル時にチェック（より安全）

4. 相互運用性：

KotlinとJavaは100%互換
同じプロジェクトで混在可能

5. メリット：

Java：巨大なエコシステム、豊富な求人、安定性
Kotlin：簡潔なコード、Null安全、モダンな機能

6. デメリット：

Java：冗長、NullPointerException、古い機能
Kotlin：学習曲線、コンパイル速度、情報量

7. 用途：

Java：企業システム、レガシーシステム
Kotlin：Androidアプリ、モダンな開発

8. パフォーマンス：

実行速度はほぼ同じ
コンパイル速度はJavaがやや速い

JavaとKotlinは、競合関係というより補完関係にあります。

Javaの豊富なエコシステムと、Kotlinのモダンな機能を組み合わせることで、より効率的な開発が可能です。

Javaとは？

基本情報

Javaの特徴

Javaが使われている場面

Kotlinとは？

基本情報

Kotlinの特徴

Kotlinが使われている場面

JavaとKotlinの主な違い

1. 構文の簡潔さ

2. Null安全性

3. 変数の宣言

4. 文字列操作

5. 関数（メソッド）の定義

6. 条件分岐

7. クラスの継承

8. 拡張関数

9. データクラス

10. 並行処理

詳細比較表

それぞれのメリット・デメリット

Javaのメリット

Javaのデメリット

Kotlinのメリット

Kotlinのデメリット

パフォーマンス比較

実行速度

コンパイル速度

メモリ使用量

よくある質問（FAQ）

Q1. KotlinはJavaを置き換えるの？

Q2. Javaができれば、Kotlinは簡単？

Q3. どちらの方が年収が高い？

Q4. Kotlinの方が書きやすいなら、なぜJavaを使うの？

Q5. AndroidアプリはJavaで開発できる？

Q6. Kotlinの「?」って何？

Q7. JavaとKotlinを混在させられる？

Q8. Kotlinの情報は少ない？

まとめ

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