iPhoneが起動しなくなった、リンゴマークで固まってしまった——そんなとき、「リカバリーモード」が役立ちます。
でも、「リカバリーモードって何?」「どうやって使うの?」と疑問に思う方も多いはずです。今回は、リカバリーモードの基本から使い方、トラブル対処法まで、分かりやすく解説していきます。
リカバリーモードとは?

リカバリーモードは、iPhoneに深刻な不具合が発生したときに使う、特殊な起動モードです。
パソコンと接続することで、iPhoneを強制的にアップデートまたは初期化できます。通常の操作では解決できない問題を、このモードで修復することができるんです。
リカバリーモードでできること
リカバリーモードでは、以下の2つの選択肢があります。
アップデート(更新)
データを残したまま、iOSを再インストールします。
可能な限りデータを保持しようとするため、まずはこちらを試すことをおすすめします。
復元(初期化)
iPhoneを工場出荷状態に戻します。
すべてのデータが削除されますが、深刻な問題を解決できる可能性が高まります。
リカバリーモードが必要になるケース
リカバリーモードは、以下のような状況で使います。
1. リンゴループから抜け出せない
Appleのロゴマーク(リンゴマーク)が表示されたまま、起動が進まない状態です。
iOSのアップデート失敗や、容量不足が原因で発生することがあります。
2. iOSアップデートが失敗した
アップデート中にエラーが発生し、iPhoneが動かなくなった場合です。
画面がフリーズしたり、進行バーが進まなくなったりします。
3. 画面が真っ暗で反応しない
電源が入っているのに、画面に何も表示されない状態です。
強制再起動でも改善しない場合、リカバリーモードを試しましょう。
4. パスコードを何度も間違えて使用不能になった
「iPhoneは使用できません」と表示され、操作できなくなった場合です。
リカバリーモードで初期化することで、再び使えるようになります。
5. iTunesやFinderで「リカバリーモードのiPhoneを検出」と表示された
パソコンに接続したときに、勝手にリカバリーモードと認識されることがあります。
この場合も、リカバリーモードでの処理が必要です。
リカバリーモードの準備
リカバリーモードを使う前に、以下を準備しましょう。
必要なもの
パソコン(MacまたはWindows)
リカバリーモードは、パソコンなしでは使えません。
- Mac(macOS Catalina 10.15以降):Finder を使用
- Mac(macOS Mojave 10.14以前):iTunes を使用
- Windows:iTunes を使用(Apple公式サイトからダウンロード)
Lightning ケーブルまたはUSB-Cケーブル
iPhoneとパソコンを接続するために必要です。
純正品または高品質のケーブルを使うことをおすすめします。
十分な時間
アップデートや復元には、数分から数十分かかることがあります。
時間に余裕があるときに実行しましょう。
事前の確認事項
iTunesを最新版にアップデート
古いバージョンだと、正常に動作しない可能性があります。
データのバックアップ(可能な場合)
復元を選ぶとデータがすべて消えます。
事前にiCloudやパソコンにバックアップを取っておくと安心です。
バッテリー残量を確認
残量が少ない状態で実行すると、途中で電源が切れる危険があります。
できれば50%以上にしておきましょう。
リカバリーモードの入り方(モデル別)
iPhoneの機種によって、リカバリーモードへの入り方が異なります。
iPhone 8以降(iPhone SE 第2・第3世代を含む)
対象機種: iPhone 8、8 Plus、X、XS、XR、11、12、13、14、15、16シリーズ、iPhone SE(第2・第3世代)
手順:
- iPhoneをパソコンに接続
- パソコンでFinderまたはiTunesを起動
- 音量を上げるボタンを押してすぐ放す
- 音量を下げるボタンを押してすぐ放す
- サイドボタンを長押し
- 「コンピュータに接続」画面が表示されるまでボタンを押し続ける
音量ボタンは「ポン、ポン」と素早く操作し、サイドボタンは画面が切り替わるまで(約10〜15秒)押し続けます。
iPhone 7、iPhone 7 Plus
手順:
- iPhoneをパソコンに接続
- パソコンでFinderまたはiTunesを起動
- 音量を下げるボタンとサイドボタンを同時に長押し
- 「コンピュータに接続」画面が表示されるまで両方のボタンを押し続ける
両方のボタンを同時に、約10秒以上押し続けます。
iPhone 6s以前、iPhone SE(第1世代)
手順:
- iPhoneをパソコンに接続
- パソコンでFinderまたはiTunesを起動
- ホームボタンとトップボタン(またはサイドボタン)を同時に長押し
- 「コンピュータに接続」画面が表示されるまで両方のボタンを押し続ける
物理的なホームボタンがある古いモデルでは、ホームボタンを使います。
リカバリーモード画面の見分け方
正常にリカバリーモードに入ると、iPhoneの画面に以下のいずれかが表示されます:
- ケーブルとパソコンのアイコン
- 「iTunesに接続」という文字(古いiOSバージョン)
- 「コンピュータに接続」という文字(新しいiOSバージョン)
- support.apple.com/iphone/restore というURL
この画面が表示されたら、リカバリーモード成功です。
リカバリーモードでの復元・アップデート方法
リカバリーモードに入ったら、パソコン側で操作します。
パソコン側の操作手順
Macの場合(Finderを使用):
- FinderウィンドウのサイドバーでiPhoneを選択
- 「iPhoneに問題があります」というメッセージが表示される
- 「アップデート」または「復元」を選択
- 処理が完了するまで待つ
WindowsまたはMacの場合(iTunesを使用):
- iTunesでiPhoneのアイコンをクリック
- 「iTunesはリカバリーモードのiPhoneを見つけました」というメッセージが表示される
- 「アップデート」または「復元」を選択
- 処理が完了するまで待つ
アップデートと復元の違い
「アップデート」を選択した場合:
- データを残したまま、iOSを再インストールします
- 処理時間は短め(数分〜10分程度)
- 写真、アプリ、設定などは保持されます
- まずはこちらを試すことをおすすめします
「復元」を選択した場合:
- iPhoneが工場出荷状態に戻ります
- すべてのデータが削除されます
- 処理時間は長め(10分〜30分程度)
- アップデートで解決しない場合に使います
処理中の注意点
絶対にケーブルを抜かない
処理中にケーブルを抜くと、iPhoneが起動しなくなる可能性があります。
処理が終わるまで待つ
進行状況がパソコン画面に表示されます。焦らず待ちましょう。
15分以上かかる場合
アップデートや復元に15分以上かかると、リカバリーモードが自動的に終了することがあります。
その場合は、もう一度最初からやり直してください。
リカバリーモードの解除方法
リカバリーモードを解除するには、2つの方法があります。
方法1:アップデートまたは復元を実行する
パソコンで「アップデート」または「復元」を実行すると、処理完了後に自動的に通常モードに戻ります。
これが最も確実な方法です。
方法2:強制再起動で解除する
アップデートや復元をせずに、リカバリーモードだけ解除したい場合は、強制再起動を試しましょう。
iPhone 8以降:
- 音量を上げるボタンを押してすぐ放す
- 音量を下げるボタンを押してすぐ放す
- Appleロゴが表示されるまでサイドボタンを長押し
iPhone 7:
- 音量を下げるボタンとサイドボタンを同時に長押し
- Appleロゴが表示されたら両方のボタンを放す
iPhone 6s以前:
- ホームボタンとトップボタン(またはサイドボタン)を同時に長押し
- Appleロゴが表示されたら両方のボタンを放す
この方法は、リカバリーモードに誤って入ってしまった場合に便利です。ただし、根本的な問題が解決されるわけではありません。
リカバリーモードとDFUモードの違い
リカバリーモードと似た機能に「DFUモード」があります。違いを理解しておきましょう。
リカバリーモード
- 画面に「コンピュータに接続」アイコンが表示される
- iBootという起動プログラムが動作している
- 一般的な不具合の修復に使う
- 操作が比較的簡単
- Appleが公式にサポートしている方法
DFUモード(Device Firmware Update モード)
- 画面は完全に真っ暗なまま
- iBootすらスキップして、より低レベルで動作する
- リカバリーモードで解決しない深刻な問題に使う
- 操作が難しく、タイミングがシビア
- Appleが公式に文書化していない方法
- iOSのダウングレードなど、特殊な操作が可能
どちらを使うべき?
まずはリカバリーモードを試す
ほとんどの場合、リカバリーモードで問題は解決します。
リカバリーモードで解決しない場合のみDFUモード
何度試してもダメな場合や、より深刻な問題がある場合にDFUモードを検討しましょう。
DFUモードは操作が複雑なので、リカバリーモードで解決できるなら、そちらを使う方が安全です。
トラブルシューティング
リカバリーモードに入れない
ケーブルを確認する
断線していたり、接続が緩かったりすると、正常に認識されません。
別のケーブルで試してみましょう。
iTunesを最新版にする
古いバージョンでは、新しいiPhoneが認識されないことがあります。
パソコンを再起動する
パソコン側に問題がある場合もあります。一度再起動してみましょう。
ボタンの操作タイミングを見直す
特にiPhone 8以降は、ボタン操作のタイミングがシビアです。
音量ボタンは素早く「ポン、ポン」、サイドボタンは画面が切り替わるまでしっかり長押しです。
リカバリーモードから抜け出せない
強制再起動を繰り返す
何度か繰り返すことで、正常に戻ることがあります。
アップデートを実行する
パソコンで「アップデート」を選択して、iOSを再インストールしましょう。
復元を実行する
アップデートでも解決しない場合は、「復元」を試します。データは失われますが、多くの場合これで解決します。
アップデートや復元が失敗する
エラーメッセージを確認する
iTunesに表示されるエラー番号で、原因を特定できることがあります。
セキュリティソフトを一時的に無効にする
ファイアウォールやウイルス対策ソフトが干渉している可能性があります。
別のパソコンで試す
パソコン側の問題の可能性もあります。
DFUモードを試す
リカバリーモードで何度試してもダメな場合、DFUモードが最後の手段になります。
勝手にリカバリーモードになってしまう
ソフトウェアの問題
iOSの破損やアップデート失敗が原因です。
リカバリーモードでアップデートまたは復元を実行しましょう。
ハードウェアの問題
バッテリーの劣化や内部の物理的損傷が原因の可能性があります。
何度やってもリカバリーモードに戻ってしまう場合は、Apple Storeや修理店に相談しましょう。
注意点とよくある質問
データのバックアップは必須
復元を選ぶと、すべてのデータが消えます。
定期的にiCloudやパソコンにバックアップを取る習慣をつけましょう。
Windows版iTunesの注意点
Microsoft Storeからダウンロードした iTunesではなく、Apple公式サイトからダウンロードした iTunesを使ってください。
Microsoft Store版では、正常に動作しないことがあります。
リカバリーモードで解決できない場合
ハードウェアの故障の可能性があります。
- バッテリーの膨張や劣化
- 内部基板の損傷
- コネクタの破損
このような場合は、Apple公式の修理サービスや正規サービスプロバイダに相談しましょう。
データは消えるの?
「アップデート」を選べば、データは保持されます。
「復元」を選ぶと、すべてのデータが削除されます。
まずは「アップデート」を試し、それでもダメなら「復元」を検討しましょう。
まとめ
iPhoneのリカバリーモードについて、重要なポイントをおさらいします。
リカバリーモードとは:
- iPhoneに深刻な不具合が発生したときに使う特殊モード
- パソコンと接続して、アップデートまたは復元を実行
- リンゴループやアップデート失敗などの問題を解決できる
リカバリーモードの入り方(iPhone 8以降):
- パソコンに接続してFinderまたはiTunesを起動
- 音量上→音量下とすばやく押す
- サイドボタンを「コンピュータに接続」画面が出るまで長押し
アップデートと復元の違い:
- アップデート:データを残してiOSを再インストール
- 復元:すべてのデータを削除して工場出荷状態に戻す
まずはアップデートを試す:
- データを失わずに問題解決を試みる
- それでもダメなら復元を検討
DFUモードとの違い:
- リカバリーモード:画面にアイコン表示、一般的な不具合に使用
- DFUモード:画面真っ暗、より深刻な問題に使用
準備を忘れずに:
- 事前にデータのバックアップ
- 最新版のiTunesを使用
- 純正または高品質のケーブルを使用
- 時間に余裕を持って実行
リカバリーモードは、iPhoneが動かなくなったときの強力な救済手段です。正しい手順で実行すれば、多くの問題を解決できます。
ただし、何度試しても改善しない場合は、ハードウェアの故障も考えられるので、専門家に相談することをおすすめします。

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