iPhoneの電源を入れたとき、Appleのロゴマーク(リンゴマーク)が表示されますよね。通常なら数秒でホーム画面に切り替わるはずですが、リンゴマークが何度も表示され続けて、その先に進めなくなってしまうことがあります。
この症状は「リンゴループ」と呼ばれ、iPhoneユーザーにとって非常に厄介なトラブルの一つです。一度リンゴループになると、iPhoneを操作することができず、データのバックアップすら取れなくなってしまいます。
この記事では、リンゴループとは何か、なぜ起こるのか、そして自分でできる対処法から修理が必要なケースまで、詳しく解説していきます。
リンゴループとは

リンゴループとは、iPhoneやiPad、MacなどのApple製品で発生する不具合の一つで、起動時にAppleのロゴマーク(リンゴマーク)が繰り返し表示され、ホーム画面に進めなくなる症状のことです。
正常な起動の流れ
- 電源ボタンを押す
- Appleのロゴマークが表示される
- 数秒後にロック画面やホーム画面に切り替わる
リンゴループの状態
- 電源ボタンを押す
- Appleのロゴマークが表示される
- 画面が暗くなる
- 再びAppleのロゴマークが表示される(以降、繰り返し)
この状態では、iPhoneを一切操作できなくなります。電話もメールもできず、写真も見られません。さらに、データのバックアップを取ることもできないため、データを失うリスクもあります。
リンゴループが起こる原因
リンゴループが発生する原因はさまざまです。大きく分けると、「ソフトウェアの問題」と「ハードウェアの故障」の2つに分類できます。
ソフトウェアが原因のリンゴループ
1. ストレージ容量不足
iPhoneのストレージ(保存容量)が不足していると、リンゴループが発生することがあります。
写真や動画をたくさん撮影したり、アプリをたくさんインストールしたりすると、ストレージがいっぱいになってしまいます。特にiOSのアップデート時にストレージが不足すると、アップデートに失敗してリンゴループになる可能性が高まります。
2. iOSアップデートの失敗
iOSアップデート中に何らかのトラブルが発生すると、リンゴループになることがあります。
よくあるケースとしては、アップデート中にWi-Fiが切れてしまった、バッテリーが切れてしまった、アップデート中に電源を切ってしまった、などが挙げられます。
3. iOSやシステムの不具合
iOSやシステムファイルにバグや破損が発生すると、正常に起動できなくなることがあります。
アップデート直後に不具合が見つかることもあれば、長く使っているうちにシステムファイルが破損してしまうこともあります。
4. アプリの不具合
特定のアプリが原因で、起動時にエラーが発生してリンゴループになることもあります。
新しくインストールしたアプリや、アップデートしたアプリが原因になっているケースがあります。
5. SIMカードの読み取りエラー
SIMカードの読み取りに失敗すると、起動時にエラーが発生してリンゴループになることがあります。
SIMカードの接触不良や、SIMカード自体の故障が原因です。
ハードウェアが原因のリンゴループ
1. 水没や浸水
iPhoneを水の中に落としたり、雨に濡れたりすると、内部の基板や部品が損傷してリンゴループになることがあります。
水没した直後は正常に動作していても、数時間後や数日後にリンゴループになるケースもあります。
2. 落下や衝撃
iPhoneを落としたり、強い衝撃を与えたりすると、内部の基板や接続部分が損傷してリンゴループになることがあります。
特に基板(ロジックボード)はiPhoneの心臓部にあたる部品で、ここが損傷するとリンゴループをはじめとするさまざまなトラブルが発生します。
3. バッテリーの劣化
バッテリーが劣化して電力を安定供給できなくなると、起動時に十分な電力が得られずリンゴループになることがあります。
iPhoneのバッテリーは消耗品なので、使い続けるうちに劣化していきます。
4. その他の部品の故障
ディスプレイ、カメラ、スピーカーなど、他の部品の故障が原因でリンゴループになることもあります。
リンゴループになったときの対処法
リンゴループになってしまった場合、以下の対処法を順番に試してみましょう。ソフトウェアが原因の場合は、自分で解決できる可能性があります。
対処法1:強制再起動を試す
まず最初に試すべきなのが、強制再起動です。一時的なシステムエラーが原因の場合、強制再起動で復旧することがあります。
強制再起動の方法は、iPhoneの機種によって異なります。
iPhone 8以降(iPhone X、11、12、13、14、15、16シリーズなど)
- 音量を上げるボタンを押してすぐに放す
- 音量を下げるボタンを押してすぐに放す
- サイドボタン(電源ボタン)を長押しする
- Appleロゴが表示されるまで押し続ける
iPhone 7 / 7 Plus
- 音量を下げるボタンとサイドボタンを同時に長押しする
- Appleロゴが表示されるまで押し続ける
iPhone 6s以前(SE第1世代を含む)
- ホームボタンと上部ボタン(またはサイドボタン)を同時に長押しする
- Appleロゴが表示されるまで押し続ける
この方法で正常に起動できれば、一時的なエラーが原因だった可能性が高いです。
対処法2:SIMカードを抜いて再起動
SIMカードの読み取りエラーが原因の場合、SIMカードを抜いてから再起動すると復旧することがあります。
手順
- iPhoneの電源が完全に切れるまで待つ(放置する)
- SIMトレイを取り出す(本体側面の小さな穴にSIMピンを差し込む)
- SIMカードを取り出す
- SIMトレイだけを戻す
- 強制再起動を試す
この方法で正常に起動できた場合、SIMカードの接触不良やSIMカード自体の故障が原因だった可能性があります。
SIMカードを軽く拭いてから再度挿入してみましょう。それでもダメな場合は、SIMカードの交換が必要かもしれません。
注意点
iPhoneの電源が入っている状態でSIMカードを抜き差しすると、静電気などで故障するリスクがあります。必ず電源が切れた状態で作業してください。
対処法3:充電してから再起動
バッテリー残量が少ない、またはバッテリーの劣化が原因の場合、十分に充電してから強制再起動すると復旧することがあります。
手順
- iPhoneを充電器に接続する
- 30分〜1時間ほど充電する
- 充電中のまま強制再起動を試す
バッテリーが劣化している場合、この方法で一時的に復旧しても、また同じ症状が出る可能性があります。その場合は、バッテリー交換を検討しましょう。
対処法4:リカバリモードで復元(PCが必要)
ここからは、PCを使った対処法です。リカバリモードを使うと、iOSを再インストールしてリンゴループから復旧できる可能性があります。
必要なもの
- PC(WindowsまたはMac)
- Lightning to USBケーブル(またはUSB-C to USB-Cケーブル)
- iTunes(Windows)またはFinder(Mac)
手順
- PCでiTunes(Windows)またはFinder(Mac)を起動する
- iPhoneをPCに接続する
- iPhoneをリカバリモードにする
リカバリモードの入り方(iPhone 8以降)
- 音量を上げるボタンを押してすぐに放す
- 音量を下げるボタンを押してすぐに放す
- サイドボタンを長押しし続ける
- リカバリモードの画面(PCとケーブルのアイコン)が表示されるまで押し続ける
リカバリモードの入り方(iPhone 7)
- 音量を下げるボタンとサイドボタンを同時に長押しする
- リカバリモードの画面が表示されるまで押し続ける
リカバリモードの入り方(iPhone 6s以前)
- ホームボタンと上部(またはサイド)ボタンを同時に長押しする
- リカバリモードの画面が表示されるまで押し続ける
- PC画面に「iTunesはリカバリーモードのiPhoneを見つけました」と表示される
- 「アップデート」を選択する(「復元」ではなく「アップデート」を選ぶのが重要)
「アップデート」を選ぶと、データを残したまま、iOSを再インストールできる可能性があります。
一方、「復元」を選ぶと、iPhoneが初期化され、すべてのデータが消えてしまいます。
対処法5:iTunesで復元(データは消える)
リカバリモードでのアップデートでも直らない場合は、iPhoneを復元(初期化)することになります。
ただし、この方法を実行すると、iPhone内のすべてのデータが消えてしまいます。事前にバックアップを取っている場合や、どうしても直らない場合の最終手段として考えましょう。
手順
- リカバリモードに入る(対処法4と同じ手順)
- PC画面で「復元」を選択する
- 画面の指示に従って復元を完了させる
復元が完了すると、iPhoneは工場出荷時の状態に戻ります。
バックアップがある場合は、復元後にバックアップからデータを復元できます。
対処法6:DFUモード(上級者向け)
DFU(Device Firmware Update)モードは、リカバリモードよりもさらに深いレベルでiPhoneを復元できるモードです。
リカバリモードでも直らない場合に試す、最終手段の一つです。ただし、操作を間違えるとiPhoneが完全に使えなくなるリスクもあるため、慎重に行ってください。
iPhone 8以降のDFUモード入り方
- iPhoneをPCに接続する
- 音量を上げるボタンを押してすぐに放す
- 音量を下げるボタンを押してすぐに放す
- サイドボタンを10秒ほど長押しする
- 画面が真っ暗になったら、サイドボタンを押したまま音量を下げるボタンを5秒間押す
- サイドボタンだけを放し、音量を下げるボタンをさらに10秒ほど押し続ける
- 画面が真っ暗なまま、PCがiPhoneを認識すれば成功
DFUモードに入ると、PC画面に「iTunesはリカバリーモードのiPhoneを見つけました」と表示されます。その後、「復元」を選択してください。
対処法7:セーフモードで起動(診断用)
セーフモードは、iPhoneを最小限の機能だけで起動するモードです。
アプリが原因でリンゴループになっている場合、セーフモードなら起動できる可能性があります。ただし、セーフモードはリンゴループを直接解決するものではなく、原因を特定するための診断用モードです。
セーフモードの入り方(iPhone 8以降)
- iPhoneの電源を切る
- 音量を上げるボタンとサイドボタンを同時に押す
- Appleロゴが表示されるまで押し続ける
- Appleロゴが表示されたらサイドボタンを放し、音量を下げるボタンだけを押し続ける
- ホーム画面が表示されるまで押し続ける
セーフモードで起動できた場合、最近インストールしたアプリやアップデートしたアプリをアンインストールしてから、通常モードで再起動してみましょう。
水没した場合の注意点

iPhoneを水没させた後にリンゴループになった場合は、すぐに操作しないでください。
水没直後は正常に動作していても、内部に水分が残っている状態で電源を入れると、ショートして完全に故障してしまうリスクがあります。
水没時の対応
- すぐに電源を切る(または切れるまで待つ)
- 水分を拭き取る
- 風通しの良い場所で24時間以上乾燥させる
- 完全に乾いてから電源を入れる
やってはいけないこと
- ドライヤーで乾かす(熱で部品が損傷する)
- 米や乾燥剤の中に入れる(内部に細かい粒子が入り込むリスク)
- 濡れたまま充電する(ショートのリスク)
水没後のリンゴループは、ハードウェアの故障が原因の可能性が高いため、修理が必要になるケースがほとんどです。
修理が必要な場合
ここまで紹介した対処法を試しても直らない場合は、ハードウェアの故障が原因の可能性が高いため、修理を検討しましょう。
修理の選択肢
1. Apple正規サービスプロバイダ(Apple Store、カメラのキタムラなど)
- メリット:純正部品を使用、Apple公式の保証がある
- デメリット:修理費用が高い、データは初期化される可能性が高い
2. 総務省登録修理業者(iPhone修理専門店)
- メリット:修理費用が比較的安い、データを残せる可能性がある、即日修理できることが多い
- デメリット:Apple公式の保証が切れる可能性がある
修理費用の目安
修理費用は、故障の原因や修理内容によって大きく異なります。
- バッテリー交換:5,000円〜15,000円程度
- 画面修理:10,000円〜40,000円程度
- 基板修理:20,000円〜50,000円程度
AppleCare+に加入している場合は、修理費用が大幅に安くなることがあります。
リンゴループを予防する方法
リンゴループは突然発生することが多いですが、日頃から以下のことを心がけることで、リスクを減らせます。
1. ストレージ容量を確保する
iPhoneのストレージに余裕を持たせておくことが大切です。
不要な写真や動画を削除したり、使っていないアプリをアンインストールしたりして、常に10GB以上の空き容量を確保しておきましょう。
ストレージ容量の確認方法
- 「設定」アプリを開く
- 「一般」をタップ
- 「iPhoneストレージ」をタップ
ここで、どのアプリがどれだけ容量を使っているか確認できます。
2. 定期的にバックアップを取る
リンゴループになると、データのバックアップが取れなくなります。
普段から定期的にバックアップを取っておけば、万が一のときもデータを失わずに済みます。
バックアップの方法
- iCloudバックアップ:Wi-Fi環境で自動的にバックアップ
- iTunesバックアップ:PCに接続して手動でバックアップ
どちらか一方、または両方を使って、定期的にバックアップを取りましょう。
3. 安定した環境でiOSアップデートを行う
iOSアップデート中のトラブルは、リンゴループの大きな原因です。
アップデートを行うときは、以下の点に注意しましょう。
- 安定したWi-Fi環境で行う
- 充電器に接続した状態で行う
- ストレージに十分な空き容量がある状態で行う
- アップデート中は他の操作をしない
4. 保護ケースや保護フィルムを使う
落下や衝撃からiPhoneを守るために、保護ケースや保護フィルムを使いましょう。
特に基板は衝撃に弱いため、落下によるリンゴループを防ぐには、しっかりとした保護ケースが効果的です。
5. 水濡れに注意する
iPhoneには耐水性能がありますが、完全防水ではありません。
雨の日や水回りでの使用には十分注意し、濡れてしまった場合はすぐに水分を拭き取りましょう。
まとめ
iPhoneのリンゴループは、ソフトウェアの不具合からハードウェアの故障まで、さまざまな原因で発生する厄介なトラブルです。
リンゴループの対処法まとめ
- 強制再起動を試す
- SIMカードを抜いて再起動
- 充電してから再起動
- リカバリモードで「アップデート」
- iTunesで「復元」(データは消える)
- DFUモード(上級者向け)
- セーフモードで起動(診断用)
まずは強制再起動から試して、それでもダメなら順番に対処法を試してみましょう。
ただし、水没や落下が原因の場合、自分で対処するのは難しいため、早めに修理を検討することをおすすめします。
予防策も忘れずに
- ストレージ容量を確保する
- 定期的にバックアップを取る
- 安定した環境でアップデートする
- 保護ケースを使う
- 水濡れに注意する
日頃からこれらの予防策を実践して、リンゴループのリスクを減らしましょう。万が一リンゴループになってしまっても、慌てずにこの記事の対処法を試してみてくださいね!


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