iPhoneを売却するとき、不具合が起きたとき、「リセット」が必要になることがあります。
でも、「リセット」には実はいくつかの種類があることをご存知ですか?今回は、iPhoneのリセットについて、その種類から具体的な手順、注意点まで、分かりやすく解説していきます。
iPhoneの「リセット」とは?

「リセット」という言葉は、実は複数の異なる操作を指しています。まずは、それぞれの違いを理解しましょう。
完全初期化(すべてのコンテンツと設定を消去)
iPhoneを工場出荷時の状態に戻す操作です。すべてのデータと設定が削除されます。
売却や譲渡の前、または深刻な不具合がある場合に使います。
設定のリセット
データは残したまま、特定の設定だけを初期状態に戻す操作です。
ネットワーク設定のトラブルなど、部分的な問題を解決したいときに便利です。
強制再起動
画面がフリーズして操作できないときに使う、特別な再起動方法です。
データは削除されず、動作がおかしくなったiPhoneを正常に戻すために使います。
完全初期化の手順
それでは、iPhoneを完全に初期化する方法を見ていきましょう。
初期化前の準備が超重要!
初期化を実行する前に、必ず以下の準備を済ませてください。
1. データのバックアップ
初期化するとすべてのデータが消えます。iCloudまたはパソコンにバックアップを取りましょう。
iCloudでバックアップする方法:
- Wi-Fiに接続
- 「設定」→「ユーザー名」→「iCloud」→「iCloudバックアップ」をタップ
- 「今すぐバックアップを作成」をタップ
- バックアップ完了まで待つ
2. Apple Watchのペアリング解除
Apple Watchを使っている場合は、先にペアリングを解除しておきましょう。
これを忘れると、次のiPhoneとのペアリングに問題が出ることがあります。
3. iMessageの登録解除(Androidへ機種変更する場合)
AndroidスマホへiPhoneから機種変更する予定なら、iMessageの登録を解除してください。
これをしないと、他のiPhoneユーザーからのメッセージが届かなくなることがあります。
4. LINEなどのアプリ引き継ぎ設定
LINEなど、個別に引き継ぎ設定が必要なアプリは、事前に手続きを済ませましょう。
アカウント引き継ぎ設定をオンにすることを忘れずに。
5. 十分な充電
初期化中にバッテリーが切れると、iPhoneが起動しなくなる可能性があります。
最低でも50%以上、できれば80%以上充電しておくと安心です。
完全初期化の実行手順
準備が整ったら、いよいよ初期化を実行します。
- 「設定」アプリを開く
- 「一般」をタップ
- 「転送またはiPhoneをリセット」をタップ
- 「すべてのコンテンツと設定を消去」をタップ
- 「続ける」をタップ
- パスコード(画面ロック解除用のパスワード)を入力
- Apple Accountのパスワードを入力
eSIMについての選択
eSIMを使っている場合、「eSIMを削除」または「eSIMを保持」を選べます。
同じiPhoneでeSIMを使い続けるなら「保持」を、新しいiPhoneに変える場合は通信事業者の指示に従いましょう。
初期化が始まると、iPhoneは自動的に再起動します。画面に「こんにちは」と表示されたら、初期化完了です。
設定のみをリセットする方法
データを残したまま、特定の設定だけを初期状態に戻すこともできます。
リセットできる設定の種類
「設定」→「一般」→「転送またはiPhoneをリセット」→「リセット」から、以下の項目を選べます。
すべての設定をリセット
ネットワーク設定、キーボードの変換学習、位置情報設定、プライバシー設定などがリセットされます。
写真や音楽などのデータは削除されません。Wi-Fiパスワードなどは再入力が必要になります。
ネットワーク設定をリセット
Wi-Fiやモバイルデータ通信の設定がリセットされます。
インターネットに繋がらない、Wi-Fiが不安定などの問題を解決したいときに使いましょう。今まで接続したWi-Fiのパスワードは削除されます。
キーボードの変換学習をリセット
入力中に表示される予測変換の学習内容がリセットされます。
変な単語ばかり予測されるようになったときに便利です。
ホーム画面のレイアウトをリセット
ホーム画面上の標準アプリの配置が初期状態に戻ります。
自分でインストールしたアプリは削除されません。
位置情報とプライバシーをリセット
位置情報サービスとプライバシーの設定が初期化されます。
アプリへの位置情報提供許可などがリセットされます。
すべてのeSIMを削除
iPhoneに保存されているすべてのeSIMが削除されます。
新しいeSIMまたは物理SIMカードの設定が必要になります。
強制再起動の方法(モデル別)
画面がフリーズして操作できないとき、強制再起動を試しましょう。データは削除されません。
iPhone 8以降(iPhone SE 第2・第3世代を含む)
対象機種: iPhone 8、8 Plus、X、XS、XR、11、12、13、14、15、16シリーズ、iPhone SE(第2・第3世代)
- 音量を上げるボタンを押してすぐ放す
- 音量を下げるボタンを押してすぐ放す
- サイドボタン(電源ボタン)を長押し
- Appleロゴが表示されたらボタンを放す
ポイントは、音量ボタンは「ポンポン」と素早く押して放すことです。サイドボタンは10秒程度押し続ける必要があります。
iPhone 7、iPhone 7 Plus
- 音量を下げるボタンとサイドボタンを同時に長押し
- Appleロゴが表示されたら両方のボタンを放す
音量を下げるボタンとサイドボタンを同時に、10秒程度押し続けます。
iPhone 6s以前、iPhone SE(第1世代)
- ホームボタンとサイドボタン(またはトップボタン)を同時に長押し
- Appleロゴが表示されたら両方のボタンを放す
物理的なホームボタンがある古いモデルでは、ホームボタンを使います。
強制再起動の注意点
強制再起動は、通常の再起動と違い、アプリやシステムの終了処理を行わずに電源を落とします。
そのため、作業中のデータが保存されていないと消える可能性があります。できる限り通常の再起動を試し、どうしても動かないときの最終手段として使いましょう。
パスコードを忘れた場合の初期化

パスコードを忘れてiPhoneが操作できない場合でも、初期化は可能です。
ロック画面から初期化する方法(iOS 15.2以降)
- パスコードを何度も間違えて入力する
- 「iPhoneは使用できません」と表示されたら、「iPhoneを消去」をタップ
- もう一度「iPhoneを消去」をタップ
- Apple Accountのパスワードを入力
- 初期化が実行される
この方法は、iPhoneがインターネットに接続されている必要があります。
パソコンを使って初期化する方法
Macの場合(macOS Catalina以降):
- iPhoneをMacに接続
- Finderを開く
- サイドバーからiPhoneを選択
- 「iPhoneを復元」をクリック
- 指示に従って初期化を実行
Windowsの場合:
- iTunesをインストール(最新版)
- iPhoneをパソコンに接続
- iTunesでiPhoneを選択
- 「iPhoneを復元」をクリック
- 指示に従って初期化を実行
遠隔で初期化する方法
iPhoneを紛失した場合、別のデバイスから遠隔で初期化できます。
手順:
- 別のiPhoneやパソコンでiCloud.comにアクセス
- Apple Accountでサインイン
- 「探す」をクリック
- 「すべてのデバイス」から該当のiPhoneを選択
- 「iPhoneを消去」をクリック
この方法を使えば、iPhoneが手元になくても個人情報を保護できます。
初期化後のデータ復元方法
初期化したiPhoneにデータを戻す方法です。
iCloudバックアップから復元
- 初期化後の「こんにちは」画面から初期設定を開始
- 「Appとデータ」画面で「iCloudバックアップから復元」を選択
- Apple Accountでサインイン
- 復元したいバックアップを選択
- 復元完了まで待つ
Wi-Fi接続が必要です。復元には時間がかかることがあります。
パソコンのバックアップから復元
Macの場合:
- iPhoneをMacに接続
- Finderを開いてiPhoneを選択
- 「バックアップを復元」をクリック
- 復元したいバックアップを選択
- 復元完了まで待つ
Windowsの場合:
- iPhoneをパソコンに接続
- iTunesを開く
- iPhoneのアイコンをクリック
- 「バックアップを復元」をクリック
- 復元したいバックアップを選択
- 復元完了まで待つ
クイックスタートで新しいiPhoneにデータ移行
新しいiPhoneを購入した場合、古いiPhoneから直接データを転送できます。
- 新しいiPhoneの電源を入れる
- 古いiPhoneを近づける
- 画面の指示に従ってペアリング
- データ転送方法を選択(iCloudまたは直接転送)
- 転送完了まで待つ
この方法なら、バックアップを取らなくても直接データを移行できます。
リセットが必要になる主なケース
1. iPhoneを手放すとき
売却、譲渡、下取りに出す場合は、必ず完全初期化が必要です。
個人情報の流出を防ぐため、初期化は絶対に忘れないでください。多くの買取業者は、初期化されていないiPhoneは買い取りません。
2. 深刻な不具合が発生したとき
再起動しても直らない不具合がある場合、初期化で解決することがあります。
アプリが頻繁にクラッシュする、動作が異常に遅いなどの症状が改善されることがあります。
3. iPhoneを紛失・盗難されたとき
遠隔初期化で個人情報を守りましょう。
すぐに回収できない場合は、個人情報保護のために遠隔初期化を検討してください。
4. 中古でiPhoneを購入したとき
前の持ち主のデータが残っている可能性があるので、初期化してから使い始めましょう。
アクティベーションロックがかかっている場合は、前の持ち主に解除してもらう必要があります。
リセット時の注意点
初期化で消えるもの・残るもの
消えるもの:
- 写真、動画、音楽
- インストールしたアプリ
- 連絡先
- メッセージ
- 各種設定
- パスコード
残るもの:
- iCloudに保存されたデータ
- Apple Music、Apple TV+などのサブスクリプション(再ログインすれば使える)
- iOSのバージョン(初期化しても最新のままです)
iCloudに保存されているデータは、初期化しても消えません。バックアップをしっかり取っていれば、データは復元できます。
「iPhoneを探す」は自動でオフになる
以前は初期化前に手動で「iPhoneを探す」をオフにする必要がありましたが、現在は初期化時に自動的にオフになります。
ただし、Apple Accountのパスワード入力が必要です。
時間に余裕を持って実行する
初期化とデータ復元には、それぞれ時間がかかります。
急いでいるときではなく、時間に余裕があるときに実行しましょう。途中で中断することはできません。
リセットできない場合の対処法
ボタンが反応しない場合
ボタンの故障で強制再起動ができない場合は、AssistiveTouch(画面上の仮想ボタン)を使って再起動を試みることができます。
ただし、画面操作ができることが前提です。
何をしても改善しない場合
Appleサポートや正規サービスプロバイダに相談しましょう。
ハードウェアの故障の可能性があります。自分で無理に対処しようとすると、状況が悪化することもあります。
リンゴループに陥った場合
Appleロゴが表示されては消える「リンゴループ」に陥った場合の対処法です。
1. 強制再起動を試す
まず強制再起動を試してみましょう。これで解決することが多いです。
2. SIMカードを抜いて再起動
通信エラーが原因の可能性があります。SIMカードを一度抜いて再起動してみましょう。
3. パソコンで復元
iTunes(Windows)またはFinder(Mac)で復元を試みます。
これでもダメな場合は、ハードウェアの故障が疑われます。
まとめ
iPhoneのリセットについて、重要なポイントをおさらいしましょう。
リセットには3種類ある:
- 完全初期化:すべてのデータと設定を削除
- 設定のリセット:データは残して設定だけ初期化
- 強制再起動:フリーズ時の緊急対応、データは残る
初期化前の準備を忘れずに:
- データのバックアップ(iCloudまたはパソコン)
- Apple Watchのペアリング解除
- LINEなどのアプリ引き継ぎ設定
- 十分な充電
強制再起動の方法はモデルで異なる:
- iPhone 8以降:音量上→音量下→サイドボタン長押し
- iPhone 7:音量下+サイドボタン同時長押し
- iPhone 6s以前:ホームボタン+サイドボタン同時長押し
パスコード忘れでも初期化可能:
- ロック画面から消去
- パソコンで復元
- iCloud.comから遠隔消去
iPhoneのリセットは、正しい手順で行えば難しくありません。ただし、データのバックアップだけは絶対に忘れないでください。
売却前、不具合発生時、紛失時など、必要なタイミングで適切なリセット方法を選んで実行しましょう。

コメント