「ちょっとコードを試したいだけなのに、環境構築が大変…」
「Pythonのバージョン違いで動かない!」
「友達にコードを見せたいけど、どうやって共有すればいい?」
プログラミングを始めるとき、最初の壁になるのが開発環境の構築です。
でも、もしブラウザだけで、すぐにプログラムを書いて実行できたらどうでしょう?
その答えがIdeone(アイデオン)です。
この記事では、Ideoneとは何か、どう使うのか、そして他のオンラインコンパイラとの違いを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
環境構築なしで今すぐプログラミングを始めたい方は、ぜひ最後までお読みください!
Ideoneとは?基本を理解しよう
まず、Ideoneがどんなサービスなのか見ていきましょう。
Ideoneの定義
Ideone(アイデオン)とは、ブラウザ上でプログラムを書いて実行できる無料のオンラインコンパイラ・IDEです。
正式名称:
- Ideone.com
- 「IDE(統合開発環境)」+ 「One(一つ)」を組み合わせた造語
開発・運営:
- Sphere Research Labs社
- ポーランドの企業
- 2007年からサービス開始
オンラインコンパイラとは
オンラインコンパイラとは、インターネット経由でプログラムをコンパイル・実行できるサービスのことです。
従来の方法:
1. コンパイラをインストール
2. エディタを設定
3. コードを書く
4. コンパイル
5. 実行
オンラインコンパイラ:
1. ブラウザを開く
2. コードを書く
3. 実行ボタンを押す
これだけ!
Ideoneの特徴
1. インストール不要
- ブラウザだけで使える
- Windows、Mac、Linuxどれでも
2. 60以上の言語に対応
- C、C++、Java、Python、JavaScript…
- マイナーな言語も多数
3. 無料で使える
- 基本機能は完全無料
- 有料プランもあり
4. コード共有機能
- URLで簡単に共有
- SNSに投稿できる
5. APIも提供
- プログラムから使える
- 自動テストなどに活用
Ideoneの使い方
実際に使ってみましょう。
ステップ1:アクセス
ブラウザで以下にアクセスします。
https://ideone.com/
ステップ2:言語を選択
ページ上部の「Language」ドロップダウンから、使いたいプログラミング言語を選びます。
例:
- C++
- Python
- Java
- JavaScript
- Ruby
ステップ3:コードを書く
真ん中の大きなテキストエリアにコードを書きます。
例(Python):
print("Hello, Ideone!")
name = input("あなたの名前は? ")
print(f"こんにちは、{name}さん!")
ステップ4:入力データを設定(必要な場合)
プログラムが標準入力を使う場合、「stdin」タブに入力データを書きます。
例:
太郎
ステップ5:実行
「Run」ボタンをクリックします。
数秒待つと、右側に実行結果が表示されます。
ステップ6:結果を確認
出力例:
Hello, Ideone!
こんにちは、太郎さん!
ステップ7:共有(オプション)
コードを共有したい場合:
1. 公開設定を選ぶ
- Public(誰でも見られる)
- Secret(URLを知っている人だけ)
- Private(ログインユーザーのみ、有料プラン必要)
2. URLをコピー
実行すると、専用のURLが生成されます。
例:
https://ideone.com/aBc123
このURLを友達に送れば、同じコードと実行結果が見られます!
サポートしている言語
Ideoneは驚くほど多くの言語をサポートしています。
主要な言語
コンパイル言語:
- C
- C++(複数のバージョン)
- C#
- Java
- Go
- Rust
- Swift
- Objective-C
- D
スクリプト言語:
- Python(2と3)
- JavaScript(Node.js)
- Ruby
- PHP
- Perl
- Lua
- Bash
その他:
- Haskell
- Scala
- Kotlin
- F#
- OCaml
- Clojure
- Erlang
- Lisp
マイナー言語も充実
古典的な言語:
- FORTRAN
- COBOL
- Pascal
- Ada
教育用言語:
- Scheme
- Prolog
- Smalltalk
趣味的な言語:
- Brainfuck
- Whitespace
- Intercal
合計60以上の言語!
言語のバージョン
多くの言語で、複数のバージョンが選べます。
例:
- C++:C++14、C++17
- Python:Python 2.7、Python 3.8
- Java:Java 8、Java 11
注意:
最新バージョンには対応していない場合があります。
Ideoneでできること
どんな場面で使えるか見てみましょう。
1. コードの動作確認
シーン:
「このアルゴリズム、本当に動くかな?」
Ideoneで:
# クイックソートの実装を試す
def quicksort(arr):
if len(arr) <= 1:
return arr
pivot = arr[len(arr) // 2]
left = [x for x in arr if x < pivot]
middle = [x for x in arr if x == pivot]
right = [x for x in arr if x > pivot]
return quicksort(left) + middle + quicksort(right)
print(quicksort([3, 6, 8, 10, 1, 2, 1]))
すぐに結果が見られます!
2. 質問サイトでのコード共有
Stack OverflowやTeratailで質問するとき:
「このコードでエラーが出ます」
→ IdeoneのURLを貼る
→ 他の人が実際に動かして確認できる
3. 勉強会やブログでのコード例
ブログ記事やスライドに:
「実際に動くコードはこちら:https://ideone.com/xxxxx」
→ 読者が試せる
4. 複数の言語での比較
同じ処理を違う言語で書いてみる:
- C++版:https://ideone.com/aaaa
- Python版:https://ideone.com/bbbb
- JavaScript版:https://ideone.com/cccc
パフォーマンスや書きやすさを比較!
5. 面接やコーディングテスト
オンライン面接で:
- 画面を共有
- リアルタイムでコードを書く
- その場で実行して見せる
6. 軽量なスクリプトの実行
環境がない場所で:
- 図書館のPC
- ネットカフェ
- 友達のパソコン
ブラウザさえあれば使える!
無料版と有料版の違い
Ideoneには有料プランもあります。
無料版(Free)
できること:
- 基本的なコード実行
- PublicまたはSecretでの共有
- 実行時間:5秒まで
- メモリ:256MB
- 広告表示あり
制限:
- 実行回数に制限あり(1日100回程度)
- 長時間実行はできない
- Privateでの保存はできない
有料版(Individual / Team)
Individual(個人向け):
- 月額$7程度
- 広告なし
- Privateでコード保存
- 実行時間:15秒
- メモリ:512MB
- 実行回数無制限
Team(チーム向け):
- 月額$49程度
- チームでの共有機能
- より多くのリソース
- 優先サポート
どっちを選ぶ?
無料版で十分な人:
- たまにしか使わない
- 学習目的
- 簡単なコードの確認
有料版が向いている人:
- 頻繁に使う
- 長時間実行が必要
- プライベートなコードを扱う
- 広告が邪魔
他のオンラインコンパイラとの比較
Ideone以外にも、たくさんのオンラインコンパイラがあります。
主要なサービス比較
Paiza.IO
- 日本製
- 日本語対応
- 動画学習機能あり
- 初心者向け
Wandbox
- 日本製
- コンパイラのバージョンが豊富
- C++に強い
- Boost対応
Compiler Explorer(Godbolt)
- アセンブリコードが見られる
- コンパイラの最適化を研究
- 上級者向け
Replit(旧Repl.it)
- IDE機能が充実
- ファイル管理
- プロジェクト全体を作れる
- 有料プランは高機能
JDoodle
- 多言語対応
- シンプルな UI
- API提供
OnlineGDB
- デバッガー機能
- ステップ実行
- C/C++に強い
比較表
| サービス | 言語数 | 日本語 | 特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|
| Ideone | 60+ | × | 軽量、共有機能 | ★★★★ |
| Paiza.IO | 30+ | ○ | 初心者向け | ★★★★★ |
| Wandbox | 40+ | △ | コンパイラ豊富 | ★★★★ |
| Compiler Explorer | 20+ | × | アセンブリ表示 | ★★★ |
| Replit | 50+ | △ | IDE機能 | ★★★★ |
| OnlineGDB | 20+ | △ | デバッガー | ★★★★ |
どれを選ぶべき?
Ideoneが向いている人:
- 素早くコードを試したい
- URLで簡単に共有したい
- 多様な言語を使いたい
- シンプルなUIが好き
Paiza.IOが向いている人:
- 日本語で使いたい
- プログラミング学習中
- 動画教材も見たい
Wandboxが向いている人:
- C++を本格的に学習
- 最新のコンパイラを試したい
- Boostライブラリを使いたい
Replitが向いている人:
- プロジェクト全体を作りたい
- ファイル管理が必要
- 本格的な開発
Ideoneの便利な機能
知っておくと便利な機能を紹介します。
1. シンタックスハイライト
コードが色分けされて読みやすくなります。
自動で適用されます。
2. 自動インデント
Tabキーを押すと、適切にインデントされます。
3. 実行時間の表示
コードの実行にかかった時間が表示されます。
例:
time: 0.02s, memory: 5120KB
パフォーマンスの比較に便利!
4. エラーメッセージの表示
コンパイルエラーや実行時エラーが表示されます。
例(C++):
prog.cpp: In function 'int main()':
prog.cpp:5:5: error: 'x' was not declared in this scope
5. ダウンロード機能
書いたコードをファイルとしてダウンロードできます。
「Download」ボタンをクリックすると、ソースファイルが保存されます。
6. フォーク機能
他の人のコードを元に、自分のバージョンを作れます。
例:
- 他の人のコードを開く
- 「Fork」ボタンをクリック
- 自分のアカウントにコピーされる
- 自由に編集できる
7. 埋め込み機能
ブログやウェブサイトに、Ideoneのコードを埋め込めます。
iframeタグが生成されます:
<iframe src="https://ideone.com/embed/aBc123"
width="600" height="400">
</iframe>
Ideoneの制限と注意点
便利ですが、いくつか制限があります。
制限1:実行時間
無料版:5秒まで
長時間実行するプログラムは途中で停止されます。
例:
- 複雑な計算
- 大量のデータ処理
- 無限ループ(すぐに停止)
制限2:メモリ
無料版:256MB
大きなデータを扱うプログラムは動きません。
例:
- 巨大な配列
- 大量の画像データ
制限3:ファイルシステム
ファイルの入出力には制限があります。
- 標準入出力は使える
- ファイルの読み書きは基本的にできない
制限4:ネットワーク
インターネット接続はできません。
- APIを叩くコードは動かない
- Webスクレイピングは不可能
制限5:外部ライブラリ
標準ライブラリのみ使えます。
使える例:
- C++のSTL
- Pythonの標準ライブラリ
- Javaのjava.util
使えない例:
- NumPy、Pandas(Python)
- Boost(C++、Wandboxなら使える)
- 自作ライブラリ
制限6:GUI
グラフィカルな出力はできません。
コンソール(テキスト)出力のみです。
制限7:公開されるリスク
Publicで投稿すると、誰でも見られます。
注意:
- パスワードを書かない
- 個人情報を含めない
- 会社の機密コードは書かない
Secret設定でも:
- URLを知っている人は見られる
- 完全に秘密にしたいなら有料版のPrivate
Ideoneの活用シーン
実際の使用例を見てみましょう。
シーン1:プログラミング学習
状況:
「Pythonを勉強し始めたけど、環境構築が分からない…」
Ideoneの使い方:
- いきなりIdeoneでコードを書き始める
- 基本を学ぶ
- 慣れてから自分のPCに環境を作る
メリット:
- すぐに始められる
- 挫折しにくい
シーン2:アルゴリズムの学習
状況:
「競技プログラミングの問題を解きたい」
Ideoneの使い方:
- 問題を読む
- Ideoneでコードを書く
- テストケースで確認
- 正解したら本番環境に提出
メリット:
- 素早く試せる
- 複数の言語で挑戦できる
シーン3:バグの報告
状況:
「このコード、エラーが出るんですけど…」
Ideoneの使い方:
- 問題のコードをIdeoneに貼る
- URLを質問に添付
- 他の人が実際に実行して確認できる
メリット:
- 再現手順が明確
- 質問が具体的になる
シーン4:技術面接
状況:
「オンラインで技術面接を受ける」
Ideoneの使い方:
- 画面共有をオン
- Ideoneでコードを書く
- 面接官とリアルタイムで議論
メリット:
- 環境に依存しない
- すぐに実行結果を見せられる
シーン5:言語の比較研究
状況:
「C++とRustのパフォーマンスを比較したい」
Ideoneの使い方:
- 同じアルゴリズムを両方の言語で実装
- それぞれ実行
- 実行時間を比較
例:
C++版:0.02s
Rust版:0.03s
Python版:0.15s
シーン6:授業やセミナー
状況:
「プログラミング講座で例を示したい」
Ideoneの使い方:
- あらかじめコードを準備
- URLを配布
- 受講者が各自で実行できる
メリット:
- 環境の違いを気にしなくていい
- 全員が同じ結果を得られる
Ideone API
プログラムから使えるAPIも提供されています。
APIとは
API(Application Programming Interface)を使うと、プログラムから自動でIdeoneを操作できます。
できること:
- コードを送信
- 実行
- 結果を取得
使用例
自動テストシステム:
- 学生が提出したコードを受け取る
- Ideone APIで実行
- テストケースと照合
- 採点を自動化
オンラインジャッジシステムの構築に便利!
API利用の注意
有料です:
APIの利用には有料プランが必要です。
レート制限:
1分間に実行できる回数に制限があります。
よくある質問と回答
Q. アカウント登録は必要ですか?
登録なしでも使えますが、登録すると便利です。
登録なし:
- 基本的な実行は可能
- コードの保存はできない
登録あり:
- コードの履歴を保存
- Privateでの投稿(有料プランのみ)
- お気に入り機能
Q. 日本語のコメントは使えますか?
はい、使えます。
ただし、文字コードの問題で文字化けすることがあります。
Q. 複数のファイルを扱えますか?
基本的には1ファイルのみです。
ただし:
複数のクラスや関数を同じファイルに書けば、擬似的に複数ファイルのような動作は可能です。
Q. スマホでも使えますか?
はい、使えます。
ただし、画面が小さいので、長いコードは書きにくいです。
Q. コードは保存されますか?
Publicで投稿した場合:
- URLが生成される
- 永続的に保存される
- 検索エンジンに引っかかる可能性あり
保存しない場合:
- ページを閉じると消える
- 注意!
Q. 商用利用できますか?
規約を確認する必要があります。
基本的には、教育や個人使用を想定しています。
商用目的なら:
有料プランの利用を検討しましょう。
Q. IdeoneとIDEの違いは?
IDE(統合開発環境):
- 本格的な開発ツール
- Visual Studio、PyCharmなど
- ファイル管理、デバッグ、バージョン管理
Ideone:
- オンラインコンパイラ
- 簡単な実行に特化
- ブラウザだけで動く
用途が違います!
Q. セキュリティは大丈夫?
Public投稿は誰でも見られます。
注意すべきこと:
- パスワードやAPIキーを書かない
- 個人情報を含めない
- 機密情報は扱わない
重要なコードは:
- Secret設定を使う
- または有料版のPrivate
- または別のサービス(ローカル環境)
まとめ:Ideoneは気軽なプログラミングの味方
Ideoneについて、基本から実用まで解説してきました。
この記事のポイント:
✓ Ideoneはブラウザだけで使えるオンラインコンパイラ
✓ 60以上の言語に対応
✓ インストール不要で今すぐ使える
✓ URLでコードを簡単に共有できる
✓ 無料版でも基本機能は十分
✓ 学習、質問、面接など様々な場面で活用
✓ 実行時間やメモリに制限あり
✓ Paiza.IO、Wandboxなど他の選択肢もある
最も大切なこと:
Ideoneは、「ちょっと試してみたい」を叶えてくれるツールです。
環境構築の面倒さから解放され、プログラミングの本質に集中できます。
今日から実践すること:
- Ideone.comにアクセスしてみる
- Hello Worldを書いて実行
- 自分が学びたい言語のコードを試す
- 質問サイトでコードを共有してみる
プログラミング学習が、Ideoneでもっと気軽になりますよ!

コメント