「Gitのインデックスって何ですか?」
この質問、Git初心者の方から本当によく聞かれます。git addというコマンドは使っているけど、実際に何が起こっているのか分からない…そんな方も多いのではないでしょうか?
この記事では、Gitの「インデックス」という概念を、初心者の方にも分かりやすく解説します。読み終わる頃には、「なるほど!だからgit addが必要なんだ!」とスッキリするはずです。
インデックスとは?一言で言うと「コミット前の準備エリア」

Gitのインデックスとは、コミットする前にファイルの変更を一時的に登録しておく場所のことです。
料理に例えるなら、こんな感じ:
- キッチン全体(いろんな材料が散らかってる)→ ワーキングツリー(作業中のフォルダ)
- まな板の上(これから調理する材料だけを置く)→ インデックス(次にコミットする変更)
- 完成した料理(お皿に盛り付けて提供)→ リポジトリ(記録された履歴)
キッチンには、今日使う予定の野菜、明日使う肉、調味料など、いろんな材料があります。でも今作る料理に必要なのは一部だけ。だから、まな板の上に必要な材料だけを選んで置くんですね。
これがインデックスの役割です!
インデックスの別名がいっぱい?
実は、インデックスには複数の呼び方があります:
- インデックス(Index)← 正式名称
- ステージングエリア(Staging Area)← よく使われる
- ステージ(Stage)← 短縮形
- キャッシュ(Cache)← 昔の呼び方
全部同じものを指しています! この記事では主に「インデックス」と「ステージングエリア」を使いますが、どれも同じ意味だと覚えておいてください。
なぜインデックスが必要なの?直接コミットじゃダメ?
「わざわざインデックスに登録しなくても、直接コミットすればいいじゃん!」
その気持ち、すごく分かります。実際、他のバージョン管理システムにはインデックスがないものも多いんです。
でも、インデックスがあることで、こんな便利なことができるんです!
メリット1:必要な変更だけをコミットできる
例えば、あなたが以下の3つの変更を同時に行ったとします:
- ユーザー登録機能のバグ修正
- ログイン画面のデザイン変更
- デバッグ用のconsole.logを追加
でも、デバッグ用のconsole.logはコミットしたくないですよね?
インデックスがあれば、1と2だけを選んでコミットできます。3は作業中のまま残しておけるんです。
メリット2:コミット前に内容を確認できる
インデックスを使うことで、「今からコミットしようとしている内容」を事前に確認できます。
これは、郵便局で手紙を出す前に封筒の中身を最終確認するようなもの。「あれ、住所書き忘れてた!」みたいなミスを防げます。
メリット3:大きな作業を小さなコミットに分けられる
一日中コーディングして、気づいたら100ファイルが変更されていた…なんてこと、ありませんか?
でも、コミットは小さく、意味のあるまとまりで分けるのがベストプラクティスです。
インデックスがあれば、変更を少しずつ選んでコミットできるので、きれいな履歴が作れます!
Gitの3つのエリアを理解しよう
Gitでは、ファイルは3つのエリアを移動します。この流れを理解することが、Gitマスターへの第一歩です!
エリア1:ワーキングツリー(Working Tree)
ワーキングツリーは、あなたが実際にファイルを編集している場所です。パソコンの普通のフォルダと同じです。
エディタでコードを書いたり、ファイルを削除したり、新しいファイルを作ったり…こうした作業はすべてワーキングツリーで行われます。
例:
App.jsを開いて、新しい機能を追加README.mdに説明を書き足すtest.jsという新しいテストファイルを作成
これらの変更は、まだGitに登録されていません。ただファイルが変わっただけの状態です。
エリア2:インデックス(Index / Staging Area)
インデックスは、次にコミットする予定の変更を登録しておく場所です。
git addコマンドを使うと、ワーキングツリーの変更がインデックスに登録されます。この作業をステージングと呼びます。
例:
# App.jsの変更をインデックスに登録
git add App.js
# 複数のファイルを一度に登録
git add App.js README.md
# すべての変更を登録
git add .
インデックスに登録された変更は、「次のコミットに含める予定」というマークが付いた状態です。
エリア3:リポジトリ(Repository)
リポジトリは、コミットされた履歴が保存される場所です。ここまで来ると、変更は正式に記録されます。
git commitコマンドを使うと、インデックスに登録されている内容がリポジトリに記録されます。
例:
# インデックスの内容をコミット
git commit -m "ユーザー登録機能を追加"
コミットすると、その時点のスナップショット(写真のようなもの)が永久に保存されます。
3つのエリアの流れ(図解風)
[ワーキングツリー] --(git add)--> [インデックス] --(git commit)--> [リポジトリ]
ファイルを編集 変更を登録 履歴に記録
この流れが、Gitの基本です!
実際に使ってみよう:基本的なワークフロー
理論は分かったけど、実際にどう使うの?という方のために、具体的な使い方を見ていきましょう。
ステップ1:ファイルを編集する
まず、普通にファイルを編集します。
例えば、index.htmlというファイルを開いて、タイトルを変更したとします。
ステップ2:変更内容を確認する
編集が終わったら、何が変わったかを確認しましょう。
git status
すると、こんな表示が出ます:
On branch main
Changes not staged for commit:
modified: index.html
「Changes not staged for commit」というのは、「変更はあるけど、まだインデックスに登録されていないよ」という意味です。
具体的にどこが変わったか見たい場合は:
git diff
このコマンドで、ワーキングツリーとインデックスの差分が表示されます。
ステップ3:インデックスに登録する(ステージング)
変更内容を確認して問題なければ、インデックスに登録します。
git add index.html
もう一度git statusを実行すると:
On branch main
Changes to be committed:
modified: index.html
「Changes to be committed」に変わりました!これは「コミット準備完了」という意味です。
ステップ4:インデックスの内容を確認する
コミット前に、インデックスに何が入っているか確認できます。
git diff --staged
または
git diff --cached
このコマンドで、インデックスと最新のコミットの差分が表示されます。つまり、「今からコミットされる内容」が見られるんです!
ステップ5:コミットする
最後に、インデックスの内容をコミットします。
git commit -m "トップページのタイトルを変更"
これで完了!変更がリポジトリに記録されました。
全体の流れ(まとめ)
# 1. ファイルを編集(エディタで)
# 2. 変更を確認
git status
git diff
# 3. インデックスに登録
git add index.html
# 4. インデックスを確認
git diff --staged
# 5. コミット
git commit -m "変更内容の説明"
この流れが、Gitの基本ワークフローです!
ちょっと便利:複数のファイルをまとめてステージング

実際の開発では、複数のファイルを変更することがほとんどです。一つずつgit addするのは面倒ですよね。
すべての変更をステージング
git add .
カレントディレクトリ以下のすべての変更をステージングします。最もよく使うパターンです。
特定の種類のファイルだけステージング
# すべてのJavaScriptファイル
git add *.js
# すべてのCSSファイル
git add *.css
ワイルドカードを使えば、特定のパターンに合うファイルをまとめてステージングできます。
対話的に選択する
git add -i
このコマンドを実行すると、対話モードが開始されます。ファイルを番号で選んでステージングできるので、細かく制御したい時に便利です。
超便利!ファイルの一部だけをステージングする方法
実は、ファイル全体ではなく、変更の一部だけをステージングすることもできるんです!
git add -p の魔法
git add -p ファイル名
または
git add --patch ファイル名
このコマンドを実行すると、変更がハンク(変更の塊)ごとに表示されて、一つずつステージングするか選べます。
実際の使用例
例えば、app.jsに以下の2つの変更を加えたとします:
- バグ修正(10行目)
- 新機能の追加(50行目)
でも、バグ修正だけを先にコミットしたい!
git add -p app.js
すると、こんな画面が表示されます:
diff --git a/app.js b/app.js
@@ -8,7 +8,7 @@
function calculate() {
- return x + y; // バグ:yが未定義
+ return x + (y || 0); // 修正:yが未定義の場合0を使う
}
Stage this hunk [y,n,q,a,d,s,e,?]?
ここで選択肢を選びます:
- y = Yes、このハンクをステージング
- n = No、このハンクはスキップ
- q = Quit、終了
- ? = ヘルプ表示
yを押せば、このバグ修正だけがステージングされます。次のハンク(50行目の新機能)ではnを押せば、それはステージングされません。
なぜこれが便利?
- バグ修正と新機能を別々のコミットにできる
- デバッグコードを除外してコミットできる
- 関係ない変更を混ぜずに、きれいなコミット履歴が作れる
プロの開発者は、この機能をよく使います!
インデックスからファイルを取り消す方法
「間違ってgit addしちゃった!」
大丈夫です。インデックスから取り消せます。
特定のファイルをアンステージ
git restore --staged ファイル名
または、古いGitバージョンでは:
git reset HEAD ファイル名
これで、指定したファイルがインデックスから取り除かれます。ただし、ワーキングツリーの変更はそのまま残ります。
すべてのファイルをアンステージ
git restore --staged .
または
git reset HEAD
インデックスが空っぽになって、すべての変更がワーキングツリーだけにある状態に戻ります。
インデックスの中身を覗いてみよう(上級編)
「インデックスって、実際にはどこに保存されてるの?」
気になる方のために、ちょっと上級者向けの内容も。
インデックスファイルの場所
インデックスは、.git/indexというバイナリファイルに保存されています。
ls -la .git/index
このファイルには、ステージングされたファイルの情報が記録されています。
インデックスの内容を確認
git ls-files --stage
このコマンドで、インデックスに登録されているファイルの一覧が表示されます。
出力例:
100644 a1b2c3d4... 0 README.md
100644 e5f6g7h8... 0 app.js
100644 i9j0k1l2... 0 style.css
各行の意味:
100644= ファイルのモード(パーミッション)a1b2c3d4...= ファイル内容のSHA-1ハッシュ値0= ステージ番号(マージ時に使用)README.md= ファイル名
よくある質問(Q&A)
Q1:git commit -a って何?インデックスをスキップしてるの?
はい、git commit -aは変更されたファイルをインデックスに登録してコミットするショートカットです。
# 通常の流れ
git add .
git commit -m "メッセージ"
# ショートカット
git commit -a -m "メッセージ"
ただし、新しく作成したファイル(untracked files)は含まれません。あくまで「すでにGitが追跡している&変更されたファイル」だけが対象です。
Q2:インデックスとキャッシュは同じもの?
はい、同じです!
実は、Gitの内部コマンドや古いドキュメントでは「キャッシュ」という名前が使われていました。
例えば:
git diff --cached=git diff --staged(同じ意味)
今は「ステージングエリア」や「インデックス」という名前が一般的ですが、「キャッシュ」も正式な別名です。
Q3:なぜステージングするとBlobオブジェクトができるの?
少し技術的な話になりますが、git addを実行すると、Gitは以下の処理を行います:
- ファイルの内容をもとにBlobオブジェクトを作成
- そのBlobをGitのオブジェクトデータベース(
.git/objects)に保存 - インデックスに「ファイル名とBlobのハッシュ値」を登録
つまり、インデックスには「ファイルの内容そのもの」ではなく、「内容へのポインタ(参照)」が保存されているんです。
これにより、同じ内容のファイルは一度しか保存されないため、効率的なんですね。
Q4:マージ中のインデックスはどうなるの?
通常、インデックスの各ファイルは「ステージ0」に登録されています。
でも、マージで競合が発生すると、インデックスには複数のステージが作られます:
- ステージ1 = 共通の祖先(マージベース)のバージョン
- ステージ2 = 現在のブランチのバージョン
- ステージ3 = マージしようとしているブランチのバージョン
競合を解決してからgit addすると、ステージ0に戻ります。
つまり、インデックスはマージの進行状況も管理しているんです!
インデックスを使いこなすためのコツ
最後に、実践的なコツをいくつか紹介します。
コツ1:こまめに git status を実行する
git status
このコマンドは何度実行してもタダです。迷ったらとにかくgit status!
- 何がステージングされているか
- 何がまだステージングされていないか
- 何がGitに追跡されていないか
すべてが一目で分かります。
コツ2:コミット前に必ず git diff –staged
git diff --staged
コミットする前に、必ずこのコマンドで「今からコミットされる内容」を確認しましょう。
意図しないファイルやデバッグコードが混ざっていないか、最終チェックです。
コツ3:大きな変更は git add -p で分割
一度に大量の変更をコミットするのではなく、git add -pを使って意味のあるまとまりに分けましょう。
理想は、1つのコミットが1つの論理的な変更を表すこと。
コツ4:.gitignore を活用
ビルド生成物やログファイルなど、コミットしたくないファイルは.gitignoreに書いておきましょう。
# .gitignore の例
node_modules/
*.log
.env
dist/
こうすることで、git add .を実行しても、これらのファイルはインデックスに登録されません。
まとめ:インデックスは「コミット前の下ごしらえ」
長くなりましたが、まとめます!
インデックスとは
- コミット前に変更を一時登録する場所
- 「ステージングエリア」「ステージ」「キャッシュ」とも呼ばれる
- すべて同じものを指している
なぜ必要か
- 必要な変更だけを選んでコミットできる
- コミット前に内容を確認できる
- 大きな作業を小さなコミットに分割できる
基本的な流れ
1. ファイルを編集(ワーキングツリー)
↓
2. git add でインデックスに登録
↓
3. git commit でリポジトリに記録
覚えておきたいコマンド
# 基本
git add ファイル名 # ステージング
git commit -m "メッセージ" # コミット
# 確認
git status # 状態確認
git diff # ワーキングツリーとインデックスの差分
git diff --staged # インデックスと最新コミットの差分
# 便利
git add -p # 部分的にステージング
git add -i # 対話的にステージング
# 取り消し
git restore --staged ファイル名 # アンステージ
おわりに:インデックスを味方につけよう
最初は「なんでわざわざインデックスなんてあるの?」と思うかもしれません。
でも、使いこなせるようになると、Gitがグッと使いやすくなります。
- きれいなコミット履歴が作れる
- レビューがしやすくなる
- 間違いが減る
ぜひ、インデックスを味方につけて、快適なGitライフを送ってください!
何か分からないことがあれば、まずはgit statusとgit diff。この2つのコマンドが、あなたの強い味方になります。
Happy Coding! 🚀

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