「GIMPで丸い図形を描きたいけど、どのツールを使えばいいの?」
「きれいな正円が描けない」
「丸の中を塗りつぶしたり、枠線だけ描いたりするには?」
という人に向けて、この記事では、無料画像編集ソフトGIMPで丸や円を描く方法を、基本操作から高度なテクニックまで、初心者にもわかりやすく詳しく解説します。
GIMP で図形を描く基本

GIMPの図形描画の特徴
選択範囲ベースの描画システム
GIMPは Photoshop のような「シェイプツール」を持たず、「選択範囲」を作成してから「塗りつぶし」や「ストローク」を行う方式を採用しています。
これは以下のような特徴があります:
利点
- 柔軟な編集が可能
- 複雑な選択範囲の組み合わせが簡単
- レイヤーとの連携がスムーズ
- 非破壊編集がしやすい
初心者が戸惑う理由
- 2段階の操作が必要(選択→描画)
- 直感的でない場合がある
- 選択範囲の概念の理解が必要
丸を描く基本ワークフロー
1. 楕円選択ツールで選択範囲を作成
↓
2. 選択範囲を調整(位置、サイズ、形状)
↓
3. 描画方法を選択
├── 塗りつぶし(中を塗る)
├── ストローク(輪郭線のみ)
└── グラデーション(特殊効果)
↓
4. 選択範囲を解除して完成
楕円選択ツールの基本操作

ツールの選択と基本設定
楕円選択ツールの起動方法
- ツールボックスから選択
- 左側のツールボックスで楕円アイコンをクリック
- アイコンは楕円形の点線で表示
- ショートカットキーを使用
- キーボードで
E
を押す - 他のツールからすぐに切り替え可能
- キーボードで
- メニューから選択
- ツール → 選択ツール → 楕円選択
ツールオプションの重要設定
描画モード
- 置換:新しい選択範囲で既存を置き換え
- 追加:既存の選択範囲に追加(
Shift
キー) - 減算:既存の選択範囲から削除(
Ctrl
キー) - 交差:重複部分のみ選択(
Shift + Ctrl
キー)
その他の重要オプション
- アンチエイリアス:滑らかな境界線(通常はオンを推奨)
- 境界をぼかす:選択範囲の境界をソフトにする
- 固定:縦横比やサイズを固定
正円を描く基本テクニック
完璧な正円を作る方法
- Shift キーを使った描画
- 楕円選択ツールを選択
Shift
キーを押しながらドラッグ- ドラッグ中は
Shift
キーを離さない - マウスを離してから
Shift
キーを離す
- 固定比率の設定
- ツールオプションで「固定」を「縦横比」に設定
- 比率を「1:1」に設定
- ドラッグするだけで正円を作成
- 中心から描画
Ctrl
キーを押しながらドラッグ- 開始点が円の中心になる
Shift + Ctrl
で中心から正円を描画
描画時のコツ
- ドラッグは対角線方向に行う
- 開始点と終了点の距離が円の直径
- ゆっくりとしたドラッグで正確な位置決め
選択範囲の調整と移動
選択範囲の移動方法
- 楕円選択ツールでの移動
- 楕円選択ツールが選択された状態
- 選択範囲の内側をドラッグ
- 選択範囲が移動(中身は移動しない)
- 移動ツールでの移動
- 移動ツール(
M
キー)を選択 - 選択範囲内をドラッグ
- 選択範囲とその中身が一緒に移動
- 移動ツール(
選択範囲のサイズ変更
- 変形ツールを使用
- 変形ツール(
Shift + T
)を選択 - 選択範囲のハンドルをドラッグ
Shift
キーで縦横比を維持
- 変形ツール(
- 境界の修正
- 選択 → 境界の変更 → 拡張/縮小
- ピクセル単位での微調整が可能
丸の塗りつぶし方法
基本的な塗りつぶし
塗りつぶしツールを使用
- 楕円選択範囲を作成
- 前述の方法で丸い選択範囲を作成
- 塗りつぶしツールを選択
- ツールボックスからバケツアイコンを選択
- ショートカット:
Shift + B
- 色の選択
- 前景色をクリックして色選択ダイアログを表示
- 希望する色を選択
- 塗りつぶし実行
- 選択範囲内をクリック
- 一瞬で塗りつぶしが完了
編集メニューから塗りつぶし
- 前景色で塗りつぶし
- 編集 → 前景色で塗りつぶし
- ショートカット:
Ctrl + ,
(カンマ)
- 背景色で塗りつぶし
- 編集 → 背景色で塗りつぶし
- ショートカット:
Ctrl + .
(ピリオド)
- パターンで塗りつぶし
- 編集 → パターンで塗りつぶし
- ショートカット:
Ctrl + ;
(セミコロン)
グラデーション塗りつぶし
円形グラデーションの作成
- グラデーションツールを選択
- ツールボックスからグラデーションアイコン
- ショートカット:
G
- グラデーションの種類を選択
- ツールオプションで「円形(放射状)」を選択
- 「前景色から透明」などを選択
- グラデーション適用
- 選択範囲の中心からドラッグ
- ドラッグの長さがグラデーションの範囲
人気のグラデーション効果
- 立体感のある円
- 白から灰色の円形グラデーション
- 中心を明るくして立体感演出
- 光沢のある球体
- 白いハイライトを上部に配置
- 下部を暗くして影を表現
- ガラス効果
- 透明から白の線形グラデーション
- 複数のレイヤーで光沢感を表現
丸の輪郭線(ストローク)を描く方法

基本的なストローク
選択範囲をストロークする手順
- 楕円選択範囲を作成
- 前述の方法で丸い選択範囲を作成
- ストロークメニューにアクセス
- 編集 → ストローク選択範囲
- ショートカット:
Alt + E
→S
- ストローク設定ダイアログ
- 線の太さ:1〜100ピクセル程度
- ストローク方法:純色で描画 or ペイントツールで描画
- ストロークスタイル:実線、点線、破線など
- ストローク実行
- 「ストローク」ボタンをクリック
- 選択範囲の境界に線が描画される
ストローク設定の詳細
線の太さの目安
- 細線:1〜3ピクセル(繊細なデザイン)
- 標準:5〜10ピクセル(一般的な用途)
- 太線:15〜30ピクセル(強調したい場合)
線のスタイル
- 実線:通常の連続した線
- 点線:等間隔の点で構成
- 破線:短い線と空白の繰り返し
- カスタム:独自のパターンを定義
高度なストロークテクニック
ブラシを使ったストローク
- ペイントツールで描画を選択
- ストロークダイアログで「ペイントツールで描画」
- 使用するツールでブラシを選択
- ブラシの設定
- ブラシサイズの調整
- 不透明度の設定
- ブラシ形状の選択
- 動的な効果の追加
- 筆圧感知の設定
- 速度による変化
- ランダム要素の追加
多重ストロークによる効果
- 外側に太い線
- 大きめの選択範囲で太い線を描画
- 暗めの色を使用
- 内側に細い線
- 少し小さい選択範囲で細い線を描画
- 明るめの色を使用
- レイヤーを使った重ね合わせ
- 異なるレイヤーで複数のストローク
- ブレンドモードで効果を調整
透明背景での丸作成
透明背景の設定
新規画像での透明背景設定
- 新規画像作成
- ファイル → 新規作成
- ショートカット:
Ctrl + N
- 背景色の設定
- 「塗りつぶし色」で「透明」を選択
- カンバスが透明(市松模様)で表示
- 既存画像での透明化
- レイヤー → 透明部分 → アルファチャンネルの追加
- 背景を削除すると透明になる
アイコン・ロゴ用の丸作成
高品質な円形アイコンの作成手順
- 大きめのキャンバスを作成
- 512×512 ピクセル以上を推奨
- 後でサイズ変更することを考慮
- ガイドラインの設定
- 表示 → ガイド → 新しいガイド
- 中心線を設定して正確な配置
- 選択範囲の微調整
- 表示 → グリッドにスナップ
- ピクセル単位での正確な配置
- エッジの処理
- アンチエイリアスを有効
- 選択範囲の境界を1〜2ピクセルぼかし
保存形式とエクスポート
透明背景を保持する保存方法
- PNG形式でエクスポート
- ファイル → エクスポート
- .png 拡張子を指定
- エクスポート設定
- 「透明度の保存」をチェック
- 圧縮レベルの調整
- 品質の確認
- エクスポート後、他のソフトで透明度を確認
- 必要に応じて設定を調整
高度な円形デザインテクニック

複数の円を使ったデザイン
同心円の作成
- 外側の円を作成
- 大きな楕円選択範囲を作成
- ストロークまたは塗りつぶし
- 内側の円を減算
Ctrl
キーを押しながら小さな円を選択- 外側から内側を引いたリング状に
- レイヤーを使った重ね合わせ
- 各円を別レイヤーで作成
- 異なる色や効果を適用
花びら型・歯車型の作成
- 円を回転複製
- 変形 → 回転
- 複数の円を角度を変えて配置
- パスツールとの組み合わせ
- 円をベースに複雑な図形を作成
- ベジェ曲線で調整
3D効果のある円
立体感のある球体
- ベースの円を作成
- 円形選択範囲に放射状グラデーション
- 中心を明るく、周辺を暗く
- ハイライトの追加
- 小さな白い円を左上に配置
- ぼかし効果で自然なハイライト
- 影の追加
- 円のコピーを下にずらして配置
- 黒色でぼかし効果を適用
ボタン風デザイン
- グラデーションベース
- 上が明るく、下が暗いグラデーション
- 線形グラデーションを使用
- 境界線の追加
- 外側に暗めの細い境界線
- 内側に明るめの細い境界線
- 押された効果
- グラデーションを反転
- 影を内側に移動
プラグインと拡張機能
図形描画プラグイン
Gfig プラグイン
- プラグインの起動
- フィルター → レンダリング → Gfig
- 専用の図形描画インターフェース
- 円の描画
- 円ツールで正確な円を描画
- サイズや位置の数値指定が可能
- 他の図形との組み合わせ
- 四角形、多角形との組み合わせ
- 複雑な図形の作成
Shape Path プラグイン
- インストール方法
- GIMP のプラグインディレクトリに配置
- Windows: C:\Users[ユーザー名].gimp-2.10\plug-ins\
- 使用方法
- ツール → Shape Path
- 様々な形状をパスとして作成
スクリプトによる自動化
Script-Fu による円の自動生成
; 円を自動生成するScript-Fu例
(define (create-circle image drawable radius)
(let* ((width (car (gimp-drawable-width drawable)))
(height (car (gimp-drawable-height drawable)))
(center-x (/ width 2))
(center-y (/ height 2)))
; 楕円選択範囲を作成
(gimp-image-select-ellipse image
CHANNEL-OP-REPLACE
(- center-x radius)
(- center-y radius)
(* radius 2)
(* radius 2))
; 前景色で塗りつぶし
(gimp-edit-fill drawable FOREGROUND-FILL)
; 選択範囲を解除
(gimp-selection-none image)))
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法
正円にならない
原因と対策
- Shift キーの操作ミス
- ドラッグ中に Shift キーを離していないか確認
- マウスを離してから Shift キーを離す
- 固定設定の確認
- ツールオプションの「固定」設定を確認
- 「縦横比」が「1:1」になっているか
- 座標軸の歪み
- 表示 → ズーム → 100% で正確な表示
- 極端なズーム状態では歪んで見える場合
選択範囲が消える
解決方法
- 他のツールでの誤操作
- 移動ツールなどで選択範囲外をクリック
Ctrl + Z
で元に戻す
- 選択範囲の表示設定
- 選択 → 選択範囲の表示をチェック
- 非表示になっている可能性
塗りつぶしができない
原因の特定
- アルファチャンネルの有無
- レイヤー → 透明部分 → アルファチャンネルの追加
- レイヤーのロック
- レイヤーダイアログでロックを確認
- 透明部分のロックを解除
- 選択範囲の有効性
- 選択範囲が正しく作成されているか確認
- 選択 → 選択範囲の表示で確認
パフォーマンスの最適化
大きな円での作業
- メモリ使用量の管理
- 編集 → 設定 → システムリソース
- メモリ使用量を適切に設定
- レイヤーサイズの最適化
- 必要以上に大きなキャンバスは避ける
- 作業後にサイズを調整
- アンドゥ履歴の管理
- 編集 → 設定 → システムリソース
- アンドゥレベル数を調整
まとめ
GIMP で円・丸図形を描く方法は、基本を理解すれば様々な応用が可能です:
基本的な描画フロー
- 楕円選択ツールで選択範囲を作成
- Shift キーを使って正円を描画
- 塗りつぶしまたはストロークで描画
- 選択範囲を解除して完成
重要なテクニック
- 透明背景でのアイコン・ロゴ作成
- グラデーションによる立体感演出
- 複数レイヤーでの複雑なデザイン
- ストローク設定による多様な線表現
応用のポイント
- プラグインによる高度な図形作成
- スクリプトによる作業の自動化
- 他の図形との組み合わせによる複雑なデザイン
- 用途に応じた最適な設定の選択
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