GoogleのAI「Gemini」はとても便利なツールです。でも、こんな不安を感じたことはありませんか?
「入力した内容が、AIの学習データに使われるんじゃないか…」
「会社の機密情報や個人情報が漏れたりしないかな?」
実は、デフォルトの設定ではGeminiに入力した会話内容が、AIモデルのトレーニングに使われる可能性があるんです。
でも安心してください。簡単な設定変更で、データを学習に使わせないようにできます。
今回は、Geminiにデータを学習させない設定方法と、安全に使うためのポイントを詳しく解説していきます。
Geminiはどんなデータを収集しているの?

設定方法の前に、まずGeminiがどんな情報を集めているのか理解しておきましょう。
収集されるデータの種類
Geminiは、サービスの品質向上のために以下のような情報を収集しています。
入力した内容
- チャットで質問した文章
- アップロードしたファイルや画像
- Gemini Liveでの音声会話の録音と文字起こし
- あなたが与えた指示やフィードバック
使用状況に関するデータ
- サービスの利用頻度や使用時間
- 利用した機能の種類
- どのような操作をしたか
デバイス情報
- 使っているデバイスの種類(スマホ、パソコンなど)
- OS(オペレーティングシステム)
- ブラウザの種類
- IPアドレス
その他の情報
- 使用言語
- Geminiを使っている場所(位置情報)
- Googleアカウントの情報(氏名、メールアドレスなど)
なぜデータを収集するの?
これらのデータは、主に以下の目的で使われます。
- AIモデルの精度向上
- 新機能の開発
- サービスの品質改善
- あなた専用にカスタマイズされた回答の提供
Googleは厳格なプライバシーポリシーに基づいてデータを管理していると公表していますが、それでも心配な方は多いですよね。
デフォルト設定の危険性
18歳以上のアカウントでは、「Geminiアプリアクティビティ」がデフォルトでオンになっています。
つまり、何も設定を変えずに使い始めると、自動的にあなたの会話内容がGoogleのサーバーに保存され、モデルのトレーニングに使われる可能性があるんです。
具体的なリスク
個人情報漏洩のリスク
家族構成、住所、電話番号、健康状態などの個人情報を入力した場合、それが学習データとして蓄積されます。
ビジネス機密情報の流出リスク
- 顧客情報
- 契約金額や取引条件
- 新商品の開発計画
- 企業戦略や財務データ
こうした情報を入力すると、学習されたデータが将来的に他のユーザーへの回答に反映される可能性があります。
特に企業で使う場合、個人情報保護法や業界固有の規制に違反する重大な法的責任を負うリスクもあるんです。
Geminiにデータを学習させない設定方法

では、具体的な設定方法を見ていきましょう。デバイスごとに手順を解説します。
パソコン(Web版)での設定方法
ステップ1:Geminiにログイン
- gemini.google.com にアクセス
- Googleアカウントでログイン
- 複数アカウントを持っている場合は、設定を変更したいアカウントでログインしているか確認
ステップ2:設定画面を開く
- 画面左上または右上のメニューアイコン(三本線)をクリック
- 「設定とヘルプ」を選択
- その中の「アクティビティ」をクリック
ステップ3:アクティビティをオフにする
- 「Geminiアプリ アクティビティ」の管理ページが表示される
- 画面上部の「オフにする」ボタンをクリック
- 確認画面が表示されるので、以下のどちらかを選択
- 「オフにする」:今後のデータのみ学習に使わせない
- 「オフにしてアクティビティを削除」:過去のデータも削除
これで完了です!今後の会話内容は、Geminiの学習データとして使われなくなります。
スマートフォン(Android・iPhone)での設定方法
ステップ1:Geminiアプリを起動
- Geminiモバイルアプリを開く
- Googleアカウントでログイン(未ログインだと設定変更できません)
ステップ2:プロフィールメニューを開く
- アプリ画面上部の自分のプロフィール写真(またはイニシャル)をタップ
- メニューから「Geminiアプリ アクティビティ」を選択
ステップ3:アクティビティをオフにする
- アクティビティ管理ページが表示される
- 「オフにする」をタップ
- 必要に応じて「オフにしてアクティビティを削除」を選択
別の方法:Googleアカウント設定から
- スマホの「設定」アプリを開く
- 「Google」→「Googleアカウントを管理」を選択
- 「データとプライバシー」タブを開く
- 「Geminiアプリ アクティビティ」を探してオフにする
API・開発者向けの設定方法
エンジニアやアプリ開発者がGemini APIを使う場合も注意が必要です。
Google AI Studioの場合
重要:Google AI Studio(無料版)では、学習をオフにする設定ができません。
機密情報を扱う場合は、Google AI Studioの使用を避け、Vertex AIなどの有料サービスを利用しましょう。
Vertex AIの場合
Vertex AIは、初期設定で入力データが学習に使用されない仕組みになっています。追加の設定は不要です。
企業で本格的にGemini APIを使う場合は、Vertex AIの利用がおすすめです。
Gemini Code Assistの場合
開発者向けのコード支援ツール「Gemini Code Assist」を使う場合も設定が必要です。
- アカウント設定を開く
- 「モデル改善データの共有」を見つける
- この項目をオフにする
過去の会話履歴を削除する方法

設定をオフにしただけでは、過去のデータはまだ残っています。完全に削除したい場合は、手動で削除しましょう。
個別に削除する方法
- 「Geminiアプリ アクティビティ」の管理画面を開く
- 過去の会話履歴が一覧で表示される
- 削除したい項目の横にある「×」ボタンをクリック
まとめて削除する方法
- 同じく管理画面を開く
- 期間を指定して一括削除することも可能
- 「すべて削除」を選ぶこともできる
会話履歴の自動削除期間を設定する
学習をオフにするだけでなく、会話履歴が自動的に削除される期間を短く設定することもできます。
自動削除の設定方法
- 「Geminiアプリ アクティビティ」の管理画面を開く
- 「自動削除」のオプションを探す
- 以下から選択できます
- 3ヶ月
- 18ヶ月
- 36ヶ月
- 自動削除しない(手動で削除するまで保存)
機密情報を扱う場合は、最短の3ヶ月に設定するのがおすすめです。
設定をオフにしても完全に安全ではない理由
「設定をオフにしたから、もう安心!」と思いたいところですが、実は注意点があります。
72時間はデータが保存される
重要:アクティビティをオフにしても、会話内容は最大72時間Googleのサーバーに保存されます。
この期間中は、以下の目的でデータが利用される可能性があります。
- サービスの改善
- フィードバックの処理
- バグの修正
完全にデータを保存したくない場合は、そもそも機密情報をGeminiに入力しないことが最善の対策です。
人間のレビュアーが確認する場合がある
Googleは公式に「一部の会話は、品質向上のため人間のレビュアー(Googleの訓練を受けたサービスプロバイダーを含む)が確認する場合がある」と明記しています。
レビューされた会話は最大3年間保存されます。
ただし、レビュー前にGoogleアカウントから切り離され、個人を特定できない形で保管されるとのことです。
設定ミスのリスク
複数のGoogleアカウントを使っている場合、間違ったアカウントで設定してしまうことも。設定を変更する際は、必ず正しいアカウントでログインしているか確認しましょう。
学習をオフにするデメリット
プライバシー保護のためには学習をオフにすべきですが、いくつかのデメリットもあります。
会話履歴が保存されない
アクティビティをオフにすると、過去の会話を簡単に参照できなくなります。「前に何て聞いたっけ?」と思っても、履歴から探すことができません。
パーソナライズされた回答が得られない
Geminiが過去の会話の文脈を記憶してくれなくなります。
例:アクティビティがオンの場合
あなた:「日本の有名な観光地を3つ教えて」
Gemini:「東京、京都、大阪が有名です」
あなた:「その中で一番食べ歩きが楽しいのはどこ?」
Gemini:「(東京、京都、大阪の中から)それは大阪でしょう」
例:アクティビティがオフの場合
あなた:「日本の有名な観光地を3つ教えて」
Gemini:「東京、京都、大阪が有名です」
あなた:「その中で一番食べ歩きが楽しいのはどこ?」
Gemini:「どの観光地のことでしょうか?もう少し詳しく教えてください」
毎回文脈を説明し直す必要があるため、少し不便に感じるかもしれません。
拡張機能が使えなくなる
重要:Geminiの拡張機能(Extensions)は、アクティビティがオフだと使えません。
拡張機能とは、GeminiをGmail、Googleドライブ、YouTube、Googleマップなどと連携させる機能です。この機能を使いたい場合は、アクティビティをオンにする必要があります。
安全にGeminiを使うための実践的なポイント

設定だけでは不十分です。日頃から以下のポイントを意識しましょう。
情報を最小限にする
Geminiに渡す情報は、必要最小限にとどめましょう。
悪い例
「私は田中太郎といいます。東京都渋谷区〇〇1-2-3に住んでいて、電話番号は090-1234-5678です。株式会社ABCで営業部長をしています。今度の新商品の企画書を作りたいのですが…」
良い例
「新商品の企画書を作りたいです。ターゲットは30代の女性で、価格帯は5000円程度を想定しています」
個人情報や会社名を出さなくても、AIは十分対応できます。
仮名や記号を使う
どうしても固有名詞を使いたい場合は、仮名や記号で置き換えましょう。
実名を使う場合
「A社の田中さんに、契約金額500万円の提案書を送りたい」
仮名を使う場合
「クライアントX社の担当者Bさんに、契約金額○○万円の提案書を送りたい」
これだけでも、情報漏洩のリスクを大幅に減らせます。
機密情報は絶対に入力しない
以下のような情報は、どんな設定をしていても入力しないでください。
絶対に入力してはいけない情報
- パスワードやAPIキー
- クレジットカード番号
- マイナンバー
- 顧客の個人情報(氏名、住所、電話番号など)
- 契約書の詳細な内容
- 社外秘の財務データ
- 新商品の技術仕様
設定をオフにしても72時間はデータが保存されることを忘れずに。
チャット共有機能に注意
Geminiには、会話を他の人と共有できる機能があります。
共有リンクを作成すると、そのリンクを知っている人は誰でもその会話を読むことができます。機密情報が含まれる会話は、絶対に共有しないようにしましょう。
一時的なチャット機能を活用
プライベートな質問や通常とは異なるアイデアを探りたいときは、「一時的なチャット(Temporary Chat)」機能を使いましょう。
一時的なチャットの特徴
- 会話履歴に表示されない
- 72時間後に自動削除
- パーソナライゼーションに使用されない
- AIモデルのトレーニングに使用されない
完全にプライベートな会話がしたいときに便利です。
企業でGeminiを安全に使うための対策
個人利用だけでなく、企業で導入する場合はさらに厳格な対策が必要です。
Google Workspaceの管理者設定
Google Workspaceを利用している企業の場合、管理者が組織全体の設定を一括で管理できます。
管理コンソールからできること
- 全社員の「Geminiアプリアクティビティ」を一括でオフにする
- 個別の社員が勝手にオンにできないよう制限する
- データの保存期間を短く設定する
社員任せにせず、組織全体で統制することが重要です。
社内ガイドラインの策定
技術的な設定だけでなく、社員への教育も欠かせません。
ガイドラインに含めるべき内容
- Geminiに入力してはいけない情報のリスト
- 違反した場合の罰則
- 安全な使い方の具体例
- 問題が起きた場合の報告先
契約書での明確化
取引先やクライアントとの契約で、AIツールの使用について明確にしておきましょう。
「顧客データや設計図面などの機密情報は、AIツールに入力しない」といった条項を契約書に盛り込むことで、法的リスクを減らせます。
ChatGPTなど他のAIとの比較
Geminiだけでなく、他のAIチャットボットでも学習をオフにできます。
ChatGPTの場合
設定方法
- ChatGPTにログイン
- 右上のプロフィールアイコン→「設定」
- 「データコントロール」→「モデルの改善に協力する」をオフ
違い
- ChatGPTの無料版でも学習オフが可能
- Geminiは有料プラン(Gemini Advanced)でないと一部機能が制限される
Claudeの場合
設定方法
- Claudeにログイン
- 「設定」→「プライバシー」
- 「Claudeの改善に協力する」をオフ
Microsoft Copilotの場合
注意:Microsoft Copilotは、現時点では学習をオフにする設定が提供されていません。
機密情報を扱う場合は、Copilotの使用を避けるか、他のAIツールを検討しましょう。
よくある質問
Q1:設定をオフにすると、完全にデータが残らない?
A:いいえ。アクティビティをオフにしても、最大72時間はデータが保存されます。また、一部の会話は人間のレビュアーによって確認され、最大3年間保存される場合があります。
Q2:過去に入力した機密情報は削除できる?
A:設定画面から過去の会話履歴を手動で削除できます。ただし、すでにレビューされた会話は削除されません。心配な場合は、Googleのサポートに問い合わせましょう。
Q3:無料版と有料版で違いはある?
A:学習をオフにする設定自体は、無料版でも有料版(Gemini Advanced)でも可能です。ただし、有料版では過去のチャットを参照する機能など、より高度なパーソナライゼーション機能が使えます。
Q4:会社で使う場合、個人で設定すれば十分?
A:いいえ。企業で使う場合は、Google Workspaceの管理者が組織全体の設定を管理すべきです。個人任せだと、設定ミスのリスクがあります。
Q5:一度学習されたデータは削除できない?
A:Googleは「学習されたデータを特定して削除することはできない」としています。そのため、機密情報は最初から入力しないことが重要です。
まとめ:設定だけでなく、使い方も見直そう
Geminiにデータを学習させない方法をまとめると、こうなります。
設定のポイント
- 「Geminiアプリ アクティビティ」をオフにする
- 過去の会話履歴を削除する
- 自動削除期間を短く設定する
- 企業では管理者が一括設定する
使い方のポイント
- 機密情報は絶対に入力しない
- 情報を最小限にする
- 仮名や記号を使う
- 一時的なチャット機能を活用する
- チャット共有機能に注意する
忘れてはいけないこと
- 設定をオフにしても72時間はデータが保存される
- 一部の会話は人間のレビュアーが確認する
- 一度学習されたデータは削除できない
Geminiは非常に便利なツールですが、プライバシーとセキュリティを守るには、正しい知識と使い方が欠かせません。
この記事で紹介した設定と対策を実践して、安全にGeminiを活用しましょう!

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