「USBメモリをフォーマットする時にFAT32って出てくるけど何?」「4GB以上のファイルが保存できないって本当?」「FAT32とexFATの違いが分からない」そんな疑問はありませんか?
FAT32は、1996年に登場した歴史あるファイルシステムです。今から約30年前の技術ですが、その高い互換性から、現在でも多くの場面で使われています。
ほぼすべてのパソコン、ゲーム機、デジカメ、テレビなどがFAT32に対応しているため、「とにかくどのデバイスでも使いたい」という場面では最適な選択肢なんです。一方で、古い技術ゆえの制限もあり、現代の用途には向かない場面もあります。
今回は、FAT32の特徴とメリット・デメリット、適切な使い方、そして他のファイルシステムとの比較まで、詳しく解説していきます。
FAT32とは?基本を理解しよう
まずは、FAT32がどんなファイルシステムなのか、基本から見ていきましょう。
FAT32の正式名称と読み方
正式名称:
File Allocation Table 32(ファイル・アロケーション・テーブル・32)
略称:
FAT32(ファット・サーティーツー)
File Allocation Tableは「ファイル配置表」という意味で、データがどこに保存されているかを管理する仕組みを表しています。32という数字は、技術的な仕様(32ビット)を示しているんです。
FAT32の歴史
FAT32は、1996年にMicrosoftがWindows 95 OSR2で導入しました。
それまで使われていたFAT16の制限(最大2GBまでのドライブ)を解消するために開発されました。当時は画期的な技術でしたが、30年近く経った現在では、より新しいファイルシステムに取って代わられつつあります。
なぜ今でも使われているのか
古い技術なのに、なぜFAT32は今でも使われているのでしょうか?
理由は「互換性の高さ」です。
- ほぼすべてのOS(Windows、Mac、Linux)が対応
- ゲーム機(PlayStation、Xboxなど)が対応
- デジタルカメラやビデオカメラが対応
- テレビやカーナビが対応
- 古いデバイスでも確実に動作
どのデバイスでも使える安心感が、FAT32の最大の魅力なんです。
FAT32の特徴とメリット
FAT32の優れている点を詳しく見ていきましょう。
圧倒的な互換性
FAT32の最大のメリットは、ほぼすべてのデバイスで使えることです。
対応デバイスの例:
- Windows(すべてのバージョン)
- Mac(すべてのバージョン)
- Linux(ほぼすべてのディストリビューション)
- PlayStation(PS3、PS4、PS5)
- Xbox(Xbox 360、Xbox One、Xbox Series X/S)
- Nintendo Switch
- デジタルカメラ
- ビデオカメラ
- テレビ
- カーナビ
- プリンター
- 音楽プレーヤー
新しいデバイスも古いデバイスも、ほぼ確実にFAT32を読み書きできます。
シンプルで軽量
FAT32は構造がシンプルなため、処理が軽く、古いデバイスでもスムーズに動作します。
最新の高機能なファイルシステムと比べて、システムへの負担が少ないんです。処理能力が低い機器でも問題なく使えるのは、このシンプルさのおかげでしょう。
どんなOSでも読み書きできる
多くのファイルシステムは「読み取りはできるけど書き込みはできない」という制限がありますが、FAT32はほぼすべてのOSで完全に読み書きできます。
例:
- NTFS:Macでは読み取りのみ(書き込みには追加ソフトが必要)
- APFS:Windowsでは使えない
- FAT32:WindowsでもMacでも完全に読み書きできる
この特性により、データの受け渡しが非常に簡単になります。
フォーマットが速い
FAT32は構造がシンプルなため、フォーマット(初期化)の処理が速く完了します。
大容量のドライブでも、他のファイルシステムと比べて短時間でフォーマットできるんです。
FAT32のデメリットと制限
便利なFAT32ですが、古い技術ゆえの制限もあります。
最大の制限:1ファイル4GBまで
FAT32の最も大きな制限が、1つのファイルが4GBまでしか保存できないことです。
これは技術的な仕様で、どうやっても変更できません。4GB以上のファイルを保存しようとすると、エラーが表示されて失敗します。
4GBを超えやすいファイルの例:
- 高画質の動画ファイル(4K動画など)
- 大容量のゲームデータ
- 大きなディスクイメージ(ISOファイルなど)
- 長時間の録画データ
- まとめた圧縮ファイル(ZIP、RARなど)
最近の高画質動画は、数分の撮影でも4GBを超えることがあります。
ドライブ容量の制限
Windowsの標準フォーマット機能では、32GBまでのドライブしかFAT32でフォーマットできません。
これはWindowsの仕様による制限で、FAT32自体は理論上2TBまで対応しています。32GB以上のドライブをFAT32にしたい場合は、専用のソフトを使う必要があるんです。
ただし、既にFAT32でフォーマットされた32GB以上のドライブは、Windowsでも普通に使えます。制限があるのはフォーマット時だけです。
セキュリティ機能がない
FAT32には、ファイルの暗号化やアクセス権限の設定機能がありません。
できないこと:
- ファイルごとのアクセス許可設定
- ユーザーごとの権限管理
- ファイルの暗号化
- 詳細な監査ログ
誰でもファイルを自由に読み書きできてしまうため、機密情報の保存には向いていません。
ファイル圧縮機能がない
NTFSのような、ファイルを自動的に圧縮して容量を節約する機能がありません。
すべてのファイルが、そのままのサイズで保存されます。
エラー回復機能が弱い
ジャーナリング機能(エラーからの回復を助ける仕組み)がないため、突然の電源断などでデータが壊れやすい傾向があります。
最新のファイルシステムと比べて、データの安全性は低めです。
FAT32と他のファイルシステムの比較
FAT32と、よく比較される他のファイルシステムを見比べてみましょう。
FAT32 vs NTFS
FAT32の優位点:
- MacやLinuxでも書き込みできる
- 古いデバイスで使える
- フォーマットが速い
NTFSの優位点:
- 4GB以上のファイルを扱える
- セキュリティ機能が豊富
- ファイル圧縮ができる
- エラー回復機能がある
使い分け:
- Windows専用なら:NTFS
- 複数のデバイスで使うなら:FAT32(ただしファイルサイズに注意)
FAT32 vs exFAT
exFATは、FAT32の制限を解消した新しいバージョンです。
FAT32の優位点:
- より古いデバイスでも使える
- 互換性が最も高い
exFATの優位点:
- 4GB以上のファイルを扱える
- 大容量ドライブに対応
- 外部ストレージに最適化
使い分け:
- 古いデバイス(2000年代以前)で使うなら:FAT32
- 大きなファイルを扱うなら:exFAT
- 最近のデバイスで使うなら:exFAT
基本的には、exFATの方が現代の用途に適しています。
FAT32 vs APFS/HFS+
Mac専用のファイルシステムとの比較です。
FAT32の優位点:
- Windowsでも使える
- 幅広いデバイスに対応
APFS/HFS+の優位点:
- Macで最高のパフォーマンス
- 高度な機能(暗号化、スナップショットなど)
- 大きなファイルを扱える
使い分け:
- Mac専用なら:APFS/HFS+
- WindowsやMacの両方で使うなら:FAT32またはexFAT
FAT32が適している用途
FAT32を使うべき場面を具体的に紹介します。
小さいファイル専用のUSBメモリ
4GB未満のファイルしか扱わない場合、FAT32は優れた選択肢です。
適している例:
- 文書ファイル(Word、Excel、PDFなど)
- 写真(JPEG、PNG)
- 音楽ファイル(MP3、AAC)
- 短い動画クリップ
これらのファイルは通常4GB以下なので、FAT32の制限に引っかかりません。
古いデバイスとのデータ共有
2000年代のデバイスや、古い組み込み機器では、FAT32しか対応していないことがあります。
例:
- 古いデジカメ
- 古いカーナビ
- 古いテレビ
- 工業用機器
- 古いゲーム機
こうしたデバイスで使うなら、FAT32一択です。
最大限の互換性が必要な場合
「とにかくどんなデバイスでも使えるようにしたい」という場合、FAT32が最も確実です。
例:
- 不特定多数の人と共有するUSBメモリ
- イベント会場での写真配布用メディア
- 複数の異なるデバイスで使う可能性がある場合
相手の環境が分からない時は、FAT32が安全な選択でしょう。
デジタルカメラのSDカード
多くのデジカメは、FAT32を推奨または要求しています。
特に古いデジカメや、安価なモデルでは、FAT32以外を受け付けないことがあるんです。カメラの説明書を確認して、推奨されているファイルシステムを使いましょう。
FAT32が適していない用途
逆に、FAT32を避けるべき場面も知っておきましょう。
大きな動画ファイルを扱う場合
4K動画や長時間の録画など、4GBを超える動画ファイルを扱う場合、FAT32は使えません。
代替案:
- WindowsとMacの両方で使う:exFAT
- Windows専用:NTFS
- Mac専用:APFS
システムドライブ(CドライブやMacintosh HD)
パソコンの内蔵ドライブには、FAT32を使うべきではありません。
理由:
- セキュリティ機能がない
- エラー回復機能が弱い
- 大きなプログラムファイルが保存できない
推奨:
- Windows:NTFS
- Mac:APFS
大容量のバックアップドライブ
大量のデータをバックアップする外付けハードディスクでは、4GBの制限が大きな問題になります。
バックアップ用途には、NTFSやexFATを使いましょう。
機密情報を保存する場合
暗号化やアクセス権限の設定ができないため、重要なデータには向きません。
推奨:
- 暗号化が必要:NTFSまたはAPFS
- アクセス制御が必要:NTFSまたはAPFS
FAT32へのフォーマット方法
USBメモリや外付けドライブをFAT32でフォーマットする手順を説明します。
Windowsでのフォーマット方法(32GB以下)
- USBメモリを接続:パソコンに挿し込みます
- エクスプローラーを開く:Windowsキー + Eを押しましょう
- ドライブを右クリック:フォーマットしたいドライブを右クリックします
- 「フォーマット」を選択:メニューから選びましょう
- ファイルシステムで「FAT32」を選択:ドロップダウンメニューから選びます
- ボリュームラベルを入力:好きな名前を付けられます(省略可)
- 「開始」をクリック:警告メッセージを読んで実行します
- 完了を待つ:終わるまで待ちましょう
Windowsでのフォーマット方法(32GB以上)
32GB以上のドライブをFAT32でフォーマットするには、専用ツールが必要です。
推奨ツール:
- FAT32 Format GUI(無料ソフト)
- Rufus(USBメモリ用、無料)
- コマンドプロンプトの
formatコマンド
コマンドプロンプトでの方法:
- コマンドプロンプトを管理者権限で開く
format /FS:FAT32 ドライブ名:と入力(例:format /FS:FAT32 E:)- 警告を確認してYを押す
- 完了を待つ
Macでのフォーマット方法
- ディスクユーティリティを起動:アプリケーション→ユーティリティから開きます
- 対象ドライブを選択:左側のリストから選びましょう
- 「消去」をクリック:上部のツールバーにあります
- フォーマットで「MS-DOS (FAT)」を選択:これがFAT32です
- 方式で「マスター・ブート・レコード」を選択:互換性が高い方式です
- 名前を入力:ドライブの名前を付けます
- 「消去」をクリック:実行します
- 完了を待つ:終わるまで待ちましょう
フォーマット時の注意事項
必ず確認すること:
- フォーマットすると全データが消える
- 正しいドライブを選んでいるか確認
- 重要なデータはバックアップ済みか確認
- 他のアプリを閉じてから作業
間違ったドライブをフォーマットすると、大切なデータを失うので、慎重に確認しましょう。
FAT32でよくあるトラブルと解決方法
実際に遭遇しやすい問題と、その対処法を紹介します。
Q1:4GB以上のファイルが保存できない
エラーメッセージ例:
「ファイルが大きすぎて、対象のファイルシステムに入りません」
原因:
FAT32の1ファイル4GBまでという制限です。
解決方法:
方法1:exFATでフォーマットし直す
- データをバックアップ
- exFATでフォーマット
- データを戻す
方法2:ファイルを分割する
- 動画なら編集ソフトで分割
- 圧縮ファイルなら分割圧縮機能を使う
方法3:別のドライブを使う
- NTFSやexFATの別のドライブに保存する
Q2:32GB以上のUSBメモリがFAT32でフォーマットできない
原因:
Windowsの標準フォーマット機能は32GBまでしか対応していません。
解決方法:
方法1:専用ツールを使う
- FAT32 Format GUIなどの無料ソフトをダウンロード
- そのソフトでフォーマット
方法2:コマンドプロンプトを使う
- 管理者権限でコマンドプロンプトを開く
format /FS:FAT32 ドライブ名:コマンドを実行
方法3:exFATを検討する
- 用途によってはexFATの方が適切な場合も
Q3:MacでフォーマットしたFAT32がWindowsで認識されない
原因:
パーティション方式が適切でない可能性があります。
解決方法:
Macで再度フォーマットする際:
- ディスクユーティリティで物理ドライブ自体を選択
- 「消去」を選択
- フォーマット:MS-DOS (FAT)
- 方式:「マスター・ブート・レコード」を必ず選択
GUIDパーティションマップではなく、マスター・ブート・レコードを選ぶことがポイントです。
Q4:FAT32のドライブが「RAW」と表示される
原因:
ファイルシステムの情報が破損しています。
解決方法:
方法1:チェックディスクを実行(Windows)
- コマンドプロンプトを管理者権限で開く
chkdsk ドライブ名: /fを実行(例:chkdsk E: /f)- エラー修復を待つ
方法2:First Aidを実行(Mac)
- ディスクユーティリティを開く
- 対象ドライブを選択
- 「First Aid」を実行
方法3:フォーマットし直す
修復できない場合は、データを諦めて再フォーマットします。
Q5:ファイル名が文字化けする
原因:
FAT32は古い文字コードを使っているため、一部の文字が正しく表示されないことがあります。
解決方法:
予防策:
- ファイル名に日本語を使わない
- 英数字とアンダースコア、ハイフンのみを使う
- 特殊記号を避ける
既に文字化けしている場合:
- 元のパソコンで正しい名前に変更
- 文字コードを扱えるツールで修正
FAT32からの移行を検討すべきタイミング
以下の状況に当てはまる場合、exFATやNTFSへの移行を検討しましょう。
大きなファイルを頻繁に扱うようになった
4GB以上のファイルを定期的に扱う場合、FAT32は不便です。
移行先の推奨:
- WindowsとMac両方で使う:exFAT
- Windows専用:NTFS
- Mac専用:APFS
新しいデバイスばかりで使っている
2010年以降のデバイスであれば、ほとんどがexFATに対応しています。
古いデバイスを使わなくなったら、exFATに移行しても問題ありません。
セキュリティが気になる
暗号化やアクセス権限が必要になった場合、FAT32では不十分です。
より高度なセキュリティ機能を持つNTFSやAPFSに移行しましょう。
データの安全性を高めたい
ジャーナリング機能など、エラー回復機能を持つファイルシステムへの移行を検討してください。
まとめ
FAT32は古いですが、今でも重要な役割を果たしているファイルシステムです。
重要なポイントをおさらいしましょう:
- FAT32は1996年登場の古いが互換性の高いファイルシステム
- ほぼすべてのデバイスで読み書きできる最大のメリット
- 1ファイル4GBまでという重大な制限がある
- Windowsでは32GBまでしか標準フォーマットできない
- セキュリティ機能やエラー回復機能が弱い
- 小さいファイル専用や古いデバイスで使う場合に最適
- 大きな動画ファイルや機密情報には向かない
- 現代の用途では、多くの場合exFATの方が適している
FAT32を使うべきか、それとも別のファイルシステムを選ぶべきか判断する際は、以下を確認しましょう:
- 扱うファイルは4GB未満か?
- 古いデバイスでも使う必要があるか?
- 最大限の互換性が必要か?
これらすべてに「はい」なら、FAT32が適しています。一つでも「いいえ」なら、exFATやNTFSを検討した方が良いでしょう。
自分の用途に合わせて、適切なファイルシステムを選んでくださいね!

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