Excelでプルダウンリスト(ドロップダウンリスト)を作成した後、「設定を変更したい」「もう不要になった」という場面はよくあります。しかし、プルダウンの解除方法を知らないと、意外と困ってしまうものです。
この記事では、Excelのプルダウン設定を解除する方法を、基本的な単一セルから複数セルの一括解除まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
プルダウン解除の基本知識

プルダウンの仕組み
Excelのプルダウンリストは、「データの入力規則」(データの検証)という機能によって実現されています。そのため、プルダウンを解除するには、この入力規則を削除する必要があります。
入力規則の種類
リスト形式
- 最も一般的なプルダウン
- あらかじめ定義された選択肢から選択
- 直接入力を制限
その他の規則
- 整数・小数点数の範囲指定
- 日付の範囲指定
- 文字列の長さ制限
- カスタム数式による条件
解除前の確認事項
現在の設定確認
プルダウンを解除する前に、現在の設定を確認しておくことをおすすめします。
確認手順
- 対象セルを選択
- 「データ」タブ → 「データの入力規則」
- 現在の設定内容を確認
- 必要に応じてメモやスクリーンショットを取得
バックアップの作成
重要なファイルの場合
- ファイル全体のコピーを作成
- または該当シートをコピー
- 「名前を付けて保存」で別名保存
基本的な解除方法
単一セルのプルダウン解除
手順(Excel 2016以降)
ステップ1:セルの選択
- プルダウンを解除したいセルをクリック
- セルが選択状態(枠線が表示)になることを確認
ステップ2:入力規則の画面を開く
- 上部のリボンで「データ」タブをクリック
- 「データツール」グループの「データの入力規則」をクリック
ステップ3:規則の削除
- 「データの入力規則」ダイアログボックスが開く
- 左下の「すべてクリア」ボタンをクリック
- 「OK」ボタンをクリック
手順(Excel 2013以前)
操作の違い
- メニュー項目が「データの検証」となっている場合がある
- 基本的な手順は同じ
- UIのデザインが若干異なる
キーボードショートカットによる解除
ショートカットキーの活用
基本的なショートカット
Alt → A → V → V
(データタブ → データの入力規則)
効率的な操作
Ctrl + G
でセルの選択ダイアログを開く- 特定の範囲を指定
Alt + A + V + V
で入力規則を開くAlt + C
で「すべてクリア」Enter
で確定
複数セルの一括解除方法

連続範囲の一括解除
基本的な範囲選択
ドラッグによる選択
- 開始セル(例:B2)をクリック
- マウスを押したまま終了セル(例:B10)まで移動
- マウスを離して範囲を確定
Shiftキーを使用した選択
- 開始セル(B2)をクリック
- Shiftキーを押しながら終了セル(B10)をクリック
- 範囲B2:B10が選択される
セル範囲の直接指定
名前ボックスでの指定
- 左上の名前ボックス(通常はセル番地が表示)をクリック
- 範囲を直接入力(例:
B2:D20
) - Enterキーで確定
Ctrl+Gでの移動
Ctrl + G
でジャンプダイアログを開く- 参照先に範囲を入力(例:
B2:D20
) - OKをクリック
非連続範囲の一括解除
Ctrlキーを使用した複数選択
手順
- 最初の範囲(例:B2:B5)を選択
- Ctrlキーを押しながら次の範囲(例:D2:D5)をクリック
- 必要なすべての範囲を選択完了
- 「データの入力規則」→「すべてクリア」で一括解除
列全体・行全体の選択
列全体の選択
- 列見出し(A、B、Cなど)をクリック
- 複数列の場合はCtrlキーを押しながら追加選択
- 入力規則を一括解除
行全体の選択
- 行番号(1、2、3など)をクリック
- 複数行の場合はCtrlキーを押しながら追加選択
- 入力規則を一括解除
シート全体の一括解除
全セル選択による解除
手順
Ctrl + A
でシート全体を選択- または左上角の全選択ボタンをクリック
- 「データの入力規則」→「すべてクリア」
注意点
- シート全体に影響するため要注意
- 必要な入力規則まで削除される可能性
- 事前にバックアップを推奨
部分的な設定変更方法
選択肢のみを変更
既存リストの編集
プルダウン全体を削除せず、選択肢だけを変更したい場合の手順:
直接編集方式
- 対象セルを選択
- 「データの入力規則」を開く
- 「元の値」欄で選択肢を編集
- カンマ区切りで項目を修正
例:変更前と変更後
変更前:りんご,みかん,ばなな
変更後:りんご,みかん,ばなな,ぶどう,いちご
参照範囲の変更
手順
- 別の場所に新しい選択肢リストを作成
- プルダウン設定セルを選択
- 「データの入力規則」を開く
- 「元の値」で新しい範囲を指定
範囲指定の例
変更前:=$G$1:$G$5
変更後:=$H$1:$H$8
条件の変更
入力制限の種類変更
リストから数値範囲へ
- 対象セルを選択
- 「データの入力規則」を開く
- 「入力値の種類」を「整数」に変更
- 最小値・最大値を設定
エラーメッセージの変更
- 「エラーメッセージ」タブをクリック
- タイトルとメッセージを編集
- 表示スタイルを選択
よくあるトラブルと解決方法

解除できない場合の対処法
シートの保護が原因の場合
症状
- 「データの入力規則」がグレーアウトして選択できない
- 操作しようとするとエラーメッセージが表示
解決方法
- 「校閲」タブ → 「シート保護の解除」
- パスワードが設定されている場合は入力
- 入力規則を解除後、必要に応じて再度保護
ブックの共有が原因の場合
症状
- 複数人で編集中にデータの入力規則が変更できない
解決方法
- 「校閲」タブ → 「ブックの共有」
- 共有を一時的に解除
- 入力規則を変更後、再度共有設定
解除後の表示に関する問題
プルダウン矢印が残る場合
原因
- 表示の更新が完了していない
- Excelの一時的な表示エラー
解決方法
- ファイルを保存
- シートを切り替えて戻る
- Excelを再起動
- F5キーで画面更新
データが消えてしまった場合
予防策
- 解除前にデータのバックアップを作成
- 「すべてクリア」ではなく個別設定の変更を検討
復旧方法
Ctrl + Z
で操作を元に戻す- バックアップファイルからデータを復元
- 自動保存ファイルの確認
パフォーマンスに関する問題
大量データでの処理が重い場合
対策方法
- 小分けして処理を実行
- 不要なアプリケーションを終了
- Excelの自動計算を一時的に無効化
効率的な操作順序
- 自動計算をオフ(数式タブ → 計算方法 → 手動)
- 入力規則の一括解除
- 自動計算をオンに戻す
高度なテクニック
VBAによる自動化
基本的なマクロ
単一セルの解除
Sub RemoveDataValidation()
Selection.Validation.Delete
End Sub
指定範囲の一括解除
Sub RemoveValidationRange()
Range("B2:B100").Validation.Delete
End Sub
条件付き解除
Sub RemoveSpecificValidation()
Dim cell As Range
For Each cell In Selection
If cell.Validation.Type = xlValidateList Then
cell.Validation.Delete
End If
Next cell
End Sub
マクロの実行方法
手順
Alt + F11
でVBAエディタを開く- 新しいモジュールを挿入
- コードをコピー&ペースト
- F5で実行またはExcelに戻ってマクロ実行
条件付きフォーマットとの連携
入力規則削除時の書式保持
問題
- 入力規則を削除すると関連する条件付きフォーマットが残る
解決方法
- 「ホーム」タブ → 「条件付きフォーマット」
- 「ルールのクリア」→「選択したセルからルールをクリア」
- または特定のルールのみを選択削除
入力規則の移行
他のセル・シートへの移行
コピー&ペースト方式
- 元のセルをコピー
- 移行先セルを選択
- 「形式を選択して貼り付け」
- 「入力規則」のみを選択して貼り付け
- 元のセルの規則を削除
手動再設定方式
- 元の設定内容をメモ
- 元のセルの規則を削除
- 新しいセルに同じ設定を適用
実践的な活用例

業務でよくあるシナリオ
マスターデータの変更に伴う更新
シナリオ 部署名が変更になり、既存のプルダウンリストを更新する必要がある
効率的な手順
- 新しい部署名リストを別の場所に作成
- 既存のプルダウン設定セルをすべて選択
- 「データの入力規則」で参照範囲を新しいリストに変更
- 古いリストを削除
テンプレートファイルの準備
目的 他の人が使いやすいように、不要なプルダウンを削除したテンプレートを作成
手順
- 必要な入力規則と不要な入力規則を整理
- 不要な規則を一括削除
- 残す規則の設定を最適化
- テンプレートとして保存
エラー予防のベストプラクティス
作業前のチェックリスト
データのバックアップ
- [ ] ファイル全体のコピー作成
- [ ] 重要なシートの複製
- [ ] 現在の入力規則設定の記録
影響範囲の確認
- [ ] 削除対象セルの特定
- [ ] 関連する数式や参照の確認
- [ ] 他のユーザーへの影響評価
実行後の確認
- [ ] 意図した結果になっているか
- [ ] データの整合性に問題がないか
- [ ] 他の機能に影響がないか
まとめ
Excelでプルダウンリスト(データの入力規則)を解除する方法について、基本から応用まで詳しく解説しました。
重要なポイント
基本的な解除方法
- 「データ」タブ → 「データの入力規則」→「すべてクリア」
- 単一セルから複数セルまで同じ手順で対応可能
- バージョンによる表記の違いに注意
効率的な一括処理
- 範囲選択での一括解除
- 非連続範囲の選択テクニック
- VBAによる自動化の活用
トラブル対応
- シート保護やブック共有の影響
- 表示に関する問題の解決
- データ消失の予防と復旧
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