Excel(エクセル)でデータ分析や計算をしていると、「この数値の平方根を出したい」と思うことはありませんか?例えば、統計や面積計算、工学的な計算では平方根がよく登場します。
実はExcelなら、平方根を簡単に計算できる関数や計算式があり、誰でもすぐに使えます。
この記事では、以下について詳しく解説します:
- Excelで平方根を計算する3つの方法
- それぞれの方法の使い分けとメリット
- 実務で役立つ平方根の活用例
- エラーが出る場合の対処法
- 応用的な計算テクニック
これを読めば、平方根を使った計算を自在に操れるようになり、データ分析の幅がぐっと広がりますよ。
平方根とは何か?

基本的な概念
平方根の定義
平方根とは、ある数を2乗したときに元の数になる値のことです。例えば、5×5=25なので、25の平方根は5です。
数学記号と表記
- 数学記号:√(ルート記号)
- 表記例:√25 = 5
- 英語:Square Root
日常での活用例
- 面積計算:正方形の一辺の長さを求める
- 距離計算:直線距離(ピタゴラスの定理)
- 統計分析:標準偏差の計算
- 工学計算:電気回路や物理計算
なぜExcelで平方根を計算するのか
手計算の限界
- 複雑な数値:17.6の平方根など、暗算では困難
- 大量データ:数百行のデータを一度に処理
- 精度の重要性:小数点以下の正確な値が必要
Excelを使うメリット
- 高精度計算:15桁程度の精密な計算が可能
- 一括処理:数式をコピーして大量データを処理
- 他の関数との組み合わせ:複雑な計算式の一部として活用
Excelで平方根を計算する3つの方法
方法1:SQRT関数を使う(最も基本的な方法)
基本的な書式
=SQRT(数値)
実用例
直接数値を指定
=SQRT(25)
結果:5
=SQRT(144)
結果:12
=SQRT(2)
結果:1.414213562…
セル参照を使用
A1セルに「16」が入っている場合:
=SQRT(A1)
結果:4
計算結果の平方根
=SQRT(B1*C1)
B1×C1の計算結果の平方根を求める
SQRT関数のメリット
- 分かりやすい:関数名から用途が明確
- エラー処理:負の数に対して適切なエラーメッセージ
- Excel標準:すべてのExcelバージョンで利用可能
方法2:POWER関数を使う
基本的な書式
=POWER(数値, 0.5)
平方根は「0.5乗」(1/2乗)と数学的に同じ意味です。
実用例
基本的な使用
=POWER(25, 0.5)
結果:5
セル参照での使用
=POWER(A1, 0.5)
他の指数との比較
=POWER(8, 1/3) // 立方根
=POWER(16, 1/4) // 4乗根
=POWER(25, 0.5) // 平方根
POWER関数のメリット
- 汎用性:様々な指数計算に対応
- 明確な数学表現:0.5乗という数学的意味が明確
- 拡張性:立方根や4乗根など他の計算にも応用可能
方法3:^(キャレット)演算子を使う
基本的な書式
=数値^0.5
実用例
直接計算
=25^0.5
結果:5
セル参照
=A1^0.5
複雑な計算式の一部として
=(B1+C1)^0.5
B1+C1の合計の平方根
キャレット演算子のメリット
- 簡潔性:最も短い記述
- 直感的:数学の表記に近い
- 計算速度:わずかに高速(大量データで差が出る)
3つの方法の使い分け

場面別の推奨方法
初心者・学習目的
推奨:SQRT関数
- 理由:用途が明確で理解しやすい
- 例:
=SQRT(A1)
複雑な数式の一部
推奨:キャレット演算子
- 理由:式がシンプルになる
- 例:
=(X1^2 + Y1^2)^0.5
(距離計算)
他の指数計算と組み合わせ
推奨:POWER関数
- 理由:統一性と拡張性
- 例:立方根も同時に計算する場合
性能面での比較
方法 | 記述の簡潔さ | 理解しやすさ | 計算速度 | 拡張性 |
---|---|---|---|---|
SQRT | ○ | ◎ | ◎ | △ |
POWER | △ | ○ | ○ | ◎ |
^ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
実務で役立つ平方根の活用例
幾何学的計算
正方形の一辺の長さ
面積から一辺の長さを求める:
=SQRT(面積)
例:面積が100㎡の正方形の一辺
=SQRT(100)
結果:10m
円の半径から面積を逆算
面積から半径を求める(面積 = π × r²):
=SQRT(面積/PI())
例:面積が50㎡の円の半径
=SQRT(50/PI())
結果:約3.99m
三平方の定理(ピタゴラスの定理)
直角三角形の斜辺を求める:
=SQRT(A1^2 + B1^2)
例:縦3m、横4mの直角三角形の斜辺
=SQRT(3^2 + 4^2)
結果:5m
統計計算での活用
標準偏差の計算
分散から標準偏差を求める:
=SQRT(VAR.P(データ範囲))
例:A1:A10の標準偏差
=SQRT(VAR.P(A1:A10))
変動係数の計算
平均に対する標準偏差の割合:
=SQRT(VAR.P(A1:A10))/AVERAGE(A1:A10)
信頼区間の計算
統計的推定での誤差範囲:
=1.96 * SQRT(分散/サンプル数)
工学・物理計算
自由落下の時間計算
高さから落下時間を求める(h = 1/2 × g × t²):
=SQRT(2*高さ/9.8)
例:20mの高さからの落下時間
=SQRT(2*20/9.8)
結果:約2.02秒
電気回路の計算
インピーダンス計算(Z = √(R² + X²)):
=SQRT(抵抗^2 + リアクタンス^2)
速度と加速度の関係
等加速度運動での速度計算:
=SQRT(初期速度^2 + 2*加速度*距離)
ビジネス計算での活用
ポートフォリオリスク計算
投資リスクの計算:
=SQRT(重み1^2*リスク1^2 + 重み2^2*リスク2^2 + 2*重み1*重み2*相関係数*リスク1*リスク2)
在庫最適化(EOQ計算)
経済的発注量の計算:
=SQRT(2*年間需要*発注費用/保管費用率)
品質管理(管理限界線)
統計的品質管理での管理限界:
=平均値 + 3*SQRT(分散)
エラーが出る場合の対処法

#NUM!エラーの原因と対策
負の数の平方根
問題:負の数の平方根は実数では定義されない
=SQRT(-25) // #NUM!エラー
対策1:絶対値を使用
=SQRT(ABS(-25))
結果:5
対策2:条件分岐を使用
=IF(A1>=0, SQRT(A1), "負の数です")
対策3:IFERROR関数を使用
=IFERROR(SQRT(A1), 0)
エラーの場合は0を表示
文字列や空白セルの処理
問題:数値以外のデータに平方根を適用
=SQRT("文字") // #VALUE!エラー
対策:データ型の確認と変換
=IF(ISNUMBER(A1), SQRT(A1), "数値ではありません")
精度の問題
非常に大きな数値
Excelの精度限界(15桁)を超える場合:
=SQRT(999999999999999999) // 精度が落ちる
対策:科学的記数法での記録
=SQRT(1E+18) // 1×10^18
非常に小さな数値
=SQRT(1E-200) // アンダーフロー
対策:適切なスケールでの計算
応用的な計算テクニック
配列数式での一括計算
複数セルの平方根を一度に計算
=SQRT(A1:A10)
Ctrl+Shift+Enterで配列数式として実行
条件付きの平方根計算
=IF(A1:A10>0, SQRT(A1:A10), 0)
立方根・n乗根の計算
立方根(3乗根)
=POWER(数値, 1/3)
または
=数値^(1/3)
n乗根の一般形
=POWER(数値, 1/n)
例:5乗根
=POWER(32, 1/5)
結果:2
複素数の平方根
Excel 2013以降では複素数関数が利用可能:
複素数の平方根
=IMSQRT("3+4i")
複素数の絶対値
=IMABS("3+4i")
結果:5
実用的な関数の組み合わせ
統計関数との組み合わせ
RMS(実効値)の計算
=SQRT(SUMSQ(A1:A10)/COUNT(A1:A10))
幾何平均との比較
=SQRT(GEOMEAN(A1:A10))
三角関数との組み合わせ
極座標から直交座標への変換
距離: =SQRT(X座標^2 + Y座標^2)
角度: =ATAN2(Y座標, X座標)
正弦波の振幅計算
=SQRT(A成分^2 + B成分^2)
日付・時間計算との組み合わせ
時間間隔の計算
=SQRT((終了時刻-開始時刻)*24*60) // 分単位の平方根
VBAでの平方根計算

基本的なVBAコード
単純な平方根計算
Function MySquareRoot(value As Double) As Double
If value >= 0 Then
MySquareRoot = Sqr(value)
Else
MySquareRoot = CVErr(xlErrNum)
End If
End Function
配列での一括計算
Sub CalculateSquareRoots()
Dim i As Integer
For i = 1 To 10
Cells(i, 2).Value = Sqr(Cells(i, 1).Value)
Next i
End Sub
まとめ
Excelで平方根を計算する方法は複数あり、用途に応じて使い分けることが重要です。
3つの主要な方法
基本的な計算方法
- SQRT関数:
=SQRT(数値)
– 最も直感的で初心者向け - POWER関数:
=POWER(数値, 0.5)
– 他の指数計算との統一性 - キャレット演算子:
=数値^0.5
– 最も簡潔な記述
実用的な活用場面
幾何学・物理計算
- 面積から一辺の長さ:正方形、円の計算
- 距離計算:ピタゴラスの定理の応用
- 物理現象:自由落下、振動計算
統計・データ分析
- 標準偏差:分散からの変換
- 品質管理:管理限界線の計算
- リスク分析:ポートフォリオ理論
ビジネス応用
- 在庫管理:経済的発注量(EOQ)
- 財務分析:リスク評価
- 工程管理:品質指標
注意すべきポイント
エラー対策
- 負の数:絶対値やエラー処理の活用
- データ型:数値以外のデータへの対処
- 精度問題:非常に大きい・小さい数値の処理
効率的な使用法
- 配列数式:大量データの一括処理
- 関数の組み合わせ:複雑な計算の実現
- 条件分岐:エラーの予防と処理
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