「Excelで散布図を作りたいけど、どこからやればいいの?」
「棒グラフや折れ線は作れるけど、散布図って何が違うの?」
そんなふうに思ったことはありませんか?
よくある散布図への疑問
データ分析を始めると、こんな場面に遭遇することがあります:
グラフ選択での迷い
- 売上と広告費:投資効果を確認したいが、どのグラフが適切?
- 身長と体重:相関関係を調べたいが、棒グラフでは変
- 気温と売上:季節要因の影響を視覚的に確認したい
- 勉強時間と成績:努力と結果の関係を分析したい
既存グラフの限界
- 棒グラフ:カテゴリ別比較には良いが、相関は見えない
- 折れ線グラフ:時系列には適しているが、2つの変数の関係は不明
- 円グラフ:構成比は分かるが、変数間の関係は表現できない
散布図で解決できること
散布図を使うことで:
データの関係性を視覚化
- 正の相関:一方が増えるともう一方も増える傾向
- 負の相関:一方が増えるともう一方が減る傾向
- 無相関:特に関係性が見られない
- 非線形関係:複雑な関係パターンの発見
ビジネスでの意思決定支援
- 投資効果の分析:広告費と売上の関係
- 品質管理:製造条件と品質の関係
- 人事分析:経験年数と給与の関係
- マーケティング:価格と販売数の関係
この記事で学べること
この記事では、以下について詳しく解説します:
- 散布図の特徴と他のグラフとの違い
- Excelで散布図を作成する具体的手順
- 見やすくて分かりやすい散布図に調整する方法
- 実際のビジネスシーンでの活用例
- よくあるトラブルとその解決方法
最後まで読めば、データの相関を効果的に表現できる散布図を作成できるようになります。
散布図とは?他のグラフとの違い

散布図の基本概念
散布図は、2つの量的データの関係を点で表現するグラフです。
基本的な構造
- X軸(横軸):説明変数(原因となる要素)
- Y軸(縦軸):目的変数(結果となる要素)
- プロット点:各データペアを座標上の点として表示
散布図で分かること
相関の種類 | 点の分布パターン | ビジネス例 |
---|---|---|
強い正の相関 | 右上がりの直線状 | 広告費↑ → 売上↑ |
弱い正の相関 | 右上がりのばらつき | 気温↑ → アイス売上↑ |
強い負の相関 | 右下がりの直線状 | 価格↑ → 販売数↓ |
弱い負の相関 | 右下がりのばらつき | 年齢↑ → 運動量↓ |
無相関 | ランダムな分布 | 身長と学力 |
他のグラフとの比較
棒グラフとの違い
棒グラフの特徴
- 用途:カテゴリ別の数値比較
- X軸:カテゴリ(文字列)
- 例:部門別売上、月別来店者数
散布図の特徴
- 用途:2つの数値データの関係分析
- X軸:数値データ
- 例:広告費と売上、勉強時間と成績
折れ線グラフとの違い
折れ線グラフの特徴
- 用途:時系列変化の表示
- X軸:時間(順序性がある)
- 線の意味:時間的な変化の流れ
散布図の特徴
- 用途:2変数の相関関係
- X軸:任意の数値データ
- 点の意味:データペアの組み合わせ
散布図が適している場面
ビジネス分析
マーケティング分析
- 広告費用 vs 売上増加
- 価格設定 vs 販売数量
- 顧客満足度 vs リピート率
品質管理
- 製造温度 vs 不良品率
- 作業時間 vs エラー発生数
- 原材料コスト vs 製品品質
人事・組織分析
- 勤続年数 vs 年収
- 研修時間 vs パフォーマンス向上
- チームサイズ vs プロジェクト成功率
学術・研究分野
健康・医療
- 身長 vs 体重(BMI分析)
- 運動時間 vs 血圧
- 睡眠時間 vs 集中力
教育・学習
- 勉強時間 vs テスト成績
- 出席率 vs 最終成績
- 読書量 vs 語彙力
Excelで散布図を作成する基本手順
データの準備
適切なデータ形式
散布図作成には、以下の形式でデータを整理します:
A列(X軸データ) | B列(Y軸データ) |
---|---|
身長(cm) | 体重(kg) |
160 | 55 |
165 | 60 |
170 | 65 |
175 | 70 |
180 | 75 |
データ準備のポイント
データの質を確認
- 欠損値:空白セルがないかチェック
- 異常値:明らかにおかしなデータの確認
- データ型:数値として正しく認識されているか
関係性の仮説を立てる
- どちらが原因でどちらが結果か考える
- X軸(説明変数)とY軸(目的変数)を明確にする
散布図の作成手順
ステップ1:データ範囲の選択
- データ範囲を選択
- ヘッダー行を含めてA1:B6を選択
- ドラッグまたはShift+矢印キーで範囲選択
- 選択範囲の確認
- X軸データ(A列)とY軸データ(B列)が正しく選択されているか確認
ステップ2:グラフの挿入
- 「挿入」タブをクリック
- 「グラフ」グループ内の「散布図」をクリック
- 散布図の種類を選択
散布図の種類と用途
種類 | 表示 | 用途 |
---|---|---|
散布図(マーカーのみ) | 点のみ | 基本的な相関確認 |
散布図(平滑線) | 点+曲線 | トレンドを強調 |
散布図(平滑線とマーカー) | 点+曲線 | 詳細な分析 |
散布図(直線) | 点+直線 | 線形関係の確認 |
散布図(直線とマーカー) | 点+直線 | 線形関係の詳細分析 |
ステップ3:基本的な調整
グラフの配置
- グラフをクリックして選択
- ドラッグして適切な位置に移動
- 角をドラッグしてサイズを調整
散布図を見やすく調整する方法

グラフタイトルの設定
タイトルの変更
- グラフタイトルをクリック
- 新しいタイトルを入力
- 例:「身長と体重の関係」
- 例:「広告費と売上の相関分析」
- タイトルの書式設定
- フォントサイズ:14pt以上推奨
- 太字設定で視認性向上
効果的なタイトルの付け方
具体的で分かりやすく
- ❌ 悪い例:「グラフ」「データ」
- ⭕ 良い例:「広告投資額と月間売上の関係(2024年1-6月)」
軸ラベルの設定
軸ラベルの追加
- グラフを選択
- 「グラフ要素」ボタン(+マーク)をクリック
- 「軸ラベル」にチェック
軸ラベルの編集
X軸ラベル
- X軸ラベルをクリック
- 適切な名前を入力(例:「身長(cm)」)
- 単位も含めて明記
Y軸ラベル
- Y軸ラベルをクリック
- 適切な名前を入力(例:「体重(kg)」)
- 単位の統一を確認
軸の設定とカスタマイズ
軸の範囲設定
手動での範囲設定
- 軸を右クリック → 「軸の書式設定」
- 「軸のオプション」で範囲を設定
- 最小値:データの最小値より少し小さく
- 最大値:データの最大値より少し大きく
効果的な範囲設定
身長データが160-180cmの場合
- 最小値:150cm
- 最大値:190cm
- 主目盛:5cm間隔
目盛りの調整
目盛り間隔の設定
- 主目盛:大きな区切り(例:10単位)
- 補助目盛:細かい区切り(例:2単位)
読みやすい目盛りにするコツ
- キリの良い数字を使用(1、2、5、10の倍数)
- データの桁数に応じて調整
- 軸ラベルが重ならないように間隔を調整
近似曲線(回帰直線)の追加
近似曲線の基本
近似曲線は、データ点の傾向を線で表現する機能です。
追加手順
- グラフを選択
- 「グラフ要素」ボタン(+マーク)をクリック
- 「近似曲線」にチェック
- 「その他のオプション」で詳細設定
近似曲線の種類
種類 | 用途 | 適用場面 |
---|---|---|
線形 | 直線関係 | 最も一般的、単純な比例関係 |
指数 | 急激な増加/減少 | 成長率、減衰現象 |
対数 | 初期急増後緩やか | 学習効果、収穫逓減 |
多項式 | 複雑な曲線関係 | 非線形な関係 |
べき乗 | 比例関係の変形 | 物理現象、経済法則 |
R²値(決定係数)の表示
- 近似曲線を右クリック
- 「近似曲線の書式設定」
- 「グラフにR-2乗値を表示する」にチェック
R²値の読み方
- 1.0に近い:強い相関関係
- 0.8以上:かなり強い相関
- 0.5前後:中程度の相関
- 0.2以下:弱い相関
実際のビジネスシーンでの活用例
マーケティング分析
広告費と売上の関係分析
データ例
月 | 広告費(万円) | 売上(万円) |
---|---|---|
1月 | 50 | 200 |
2月 | 80 | 280 |
3月 | 60 | 240 |
4月 | 100 | 350 |
5月 | 70 | 260 |
6月 | 120 | 400 |
分析のポイント
- X軸:広告費(投入要素)
- Y軸:売上(結果要素)
- 近似曲線:ROI(投資効果)の算出
- R²値:予測精度の評価
価格と販売数量の関係
需要曲線の可視化
X軸:商品価格
Y軸:販売数量
期待される関係:負の相関(価格↑→販売数↓)
品質管理での活用
製造条件と品質の関係
温度管理の例
製造温度(℃) | 不良品率(%) |
---|---|
180 | 5.2 |
185 | 3.8 |
190 | 2.1 |
195 | 1.5 |
200 | 2.8 |
205 | 4.5 |
分析のポイント
- 最適温度の特定
- 品質とコストのバランス
- 管理限界値の設定
人事・組織分析
経験年数と年収の関係
キャリア分析の例
X軸:勤続年数
Y軸:年収
分析目的:昇進・昇格の妥当性確認
研修効果の測定
スキル向上の可視化
X軸:研修時間
Y軸:業績向上率
目的:研修投資の効果測定
財務分析での活用
売上と利益の関係
収益性分析
X軸:売上高
Y軸:営業利益
分析:利益率の安定性確認
投資と成果の関係
設備投資効果
X軸:設備投資額
Y軸:生産性向上率
目的:投資判断の根拠作り
高度な散布図テクニック

複数系列の散布図
異なるグループの比較
商品別売上分析
- 系列1:商品A(赤いマーカー)
- 系列2:商品B(青いマーカー)
- 系列3:商品C(緑のマーカー)
作成手順
- データを系列別に準備
広告費 | 商品A売上 | 商品B売上 | 商品C売上 |
---|---|---|---|
50 | 100 | 80 | 60 |
100 | 180 | 140 | 100 |
150 | 250 | 200 | 140 |
- 散布図作成後に系列を追加
- グラフを右クリック → データの選択
- 追加で系列を設定
散布図マトリックス
多変量分析
複数の変数間の関係を一度に確認する方法:
変数:身長、体重、年齢、血圧
マトリックス:各変数ペアの散布図を作成
バブルチャート
3次元データの表現
バブルチャートは散布図の拡張版で、第3の変数をバブルサイズで表現します。
例:企業分析
- X軸:売上高
- Y軸:利益率
- バブルサイズ:従業員数
よくあるトラブルと解決方法
データが正しくプロットされない
原因1:データ型の問題
症状
- 数値のつもりがテキストとして認識
- 軸に期待通りの値が表示されない
解決方法
=VALUE(A1) # テキストを数値に変換
または
- セルを選択 → データ → 区切り位置 → 完了
原因2:空白セルの存在
症状
- グラフに空白部分ができる
- 系列が途切れる
解決方法
- データ範囲から空白行を除外
- 空白セルに適切な値を補完
軸の設定がおかしい
X軸とY軸が入れ替わった
解決方法
- グラフを右クリック → データの選択
- 「行/列の切り替え」をクリック
または
- データ系列を選択
- 系列X値とY値を適切に設定
軸の範囲が不適切
症状
- データが画面の隅に集まって見える
- 軸の範囲が広すぎる/狭すぎる
解決方法
- 軸を右クリック → 軸の書式設定
- 最小値・最大値を手動設定
- 「自動」のチェックを外して調整
近似曲線が適切でない
R²値が低い
原因と対策
- 非線形関係:多項式や指数関数を試す
- 外れ値の影響:異常データを除外して再分析
- サンプル数不足:データ量を増やす
改善例
線形回帰:R² = 0.3(低い)
↓
2次多項式:R² = 0.8(改善)
グラフの見た目が悪い
マーカーが見にくい
改善方法
- マーカーのサイズを大きくする
- 色を変更して視認性向上
- 枠線を追加して強調
軸ラベルが重なる
解決方法
- 軸の書式設定で角度を調整
- フォントサイズを小さくする
- 目盛り間隔を広くする
まとめ
Excelでの散布図作成について、重要なポイントをまとめます:
散布図の特徴と用途
基本概念
- 2つの量的データの関係を視覚化
- 相関関係の強さを直感的に把握
- 外れ値や異常データの発見
適用場面
- マーケティング分析(広告費vs売上)
- 品質管理(製造条件vs品質)
- 人事分析(経験年数vs年収)
- 財務分析(投資vs成果)
作成の基本手順
データ準備
- X軸・Y軸のデータを2列に整理
- 欠損値や異常値の確認
- データ型の統一
グラフ作成
- データ範囲選択
- 挿入 → 散布図 → 種類選択
- 基本的な調整
見やすさの向上
- グラフタイトルと軸ラベルの設定
- 軸の範囲と目盛り調整
- 近似曲線とR²値の表示
効果的な活用のコツ
分析の観点
- 仮説を立ててから作成:何を確認したいか明確にする
- 適切な近似曲線の選択:データの性質に応じた曲線
- R²値による関係性の定量評価
見せ方の工夫
- 目的に応じたタイトル設定
- 単位の明記
- 色分けによる系列の区別
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