Excelで表を作るとき、セルを色で塗りつぶして見やすくしますよね。
でもいざ印刷すると「背景色まで印刷されてインクがもったいない」「モノクロ印刷だと逆に見づらい」と感じたことはありませんか?
よくある困った状況
Excel作業でこんな経験をしたことがある人は多いはずです:
インク・トナーのコスト問題
- カラー印刷:背景色でインク消費量が大幅に増加
- トナー交換:頻繁な交換で維持費が高額
- 予算超過:印刷コストが予想以上にかかる
- 環境配慮:無駄な印刷を減らしたい
印刷品質の問題
- モノクロ印刷:色付きセルがグレーになって文字が読みにくい
- コントラスト不足:背景色が濃すぎて文字が見えない
- 印刷ムラ:プリンターによって色の濃淡が不均一
- 用紙選択:普通紙では色が鮮明に出ない
業務での制約
- 社内規定:カラー印刷の制限がある
- 配布資料:大量印刷でコストを抑えたい
- 外部提出:モノクロ指定の書類がある
- アーカイブ:長期保存用にシンプルな印刷が必要
塗りつぶしを印刷しないメリット
背景色を印刷しない設定にすることで:
コスト削減
- インク節約:カラーインクの消費量を大幅削減
- 印刷速度向上:モノクロ印刷で処理時間短縮
- 用紙の選択肢拡大:安価な普通紙でも十分な品質
見やすさの向上
- 文字の視認性:背景色がないことで文字がくっきり
- コピー適性:コピー機でも鮮明に複製可能
- ファックス対応:モノクロファックスでも読みやすい
この記事で学べること
この記事では、以下について詳しく解説します:
- Excelの印刷設定による背景色非表示の方法
- 代替手段による見やすい表作成テクニック
- 条件付き書式を活用した効率的な色分け
- よくあるトラブルとその解決方法
- 業務で使える実践的な活用例
最後まで読めば、画面では見やすく、印刷ではシンプルな理想的なExcel資料を作成できるようになります。
Excelの塗りつぶし印刷の基本理解

デフォルトの動作
Excelでは、セルに設定した塗りつぶし(背景色)は印刷時にもそのまま反映されます。
印刷される要素
要素 | 印刷結果 | 備考 |
---|---|---|
セルの背景色 | そのまま印刷 | カラー・モノクロ両対応 |
文字色 | そのまま印刷 | 背景色とのコントラストに注意 |
罫線 | そのまま印刷 | 線の太さ・色も反映 |
図形・画像 | そのまま印刷 | 別途設定で非表示可能 |
印刷時の色の変換
カラー印刷の場合
- RGB色がCMYK色に自動変換
- 画面表示と若干の色差が発生する可能性
モノクロ印刷の場合
- 明度に応じてグレースケールに変換
- 薄い色→薄いグレー、濃い色→濃いグレー
インク消費量への影響
背景色による消費量の違い
背景色 | インク消費量 | 適用場面 |
---|---|---|
なし(白) | 0% | 最も経済的 |
薄い色 | 10-30% | 軽い強調 |
中程度の色 | 40-60% | 明確な区分 |
濃い色 | 70-90% | 強い強調 |
コスト計算の例
A4用紙1枚あたりのインクコスト(概算)
- 文字のみ:約2-3円
- 薄い背景色あり:約5-8円
- 濃い背景色あり:約15-25円
印刷設定による背景色非表示の方法
方法1:Excelの印刷設定を使用
基本的な設定手順
- ファイルタブをクリック
- 「印刷」を選択
- 「設定」セクションで詳細設定
詳細な設定方法
ページ設定からの設定
- 「ページ設定」をクリック
- 「シート」タブを選択
- 「白黒印刷」にチェック
- 「OKボタン」で確定
この設定により、すべての色が白黒で印刷されます。
モノクロ印刷の効果
白黒印刷の特徴
- 背景色は白または薄いグレーに変換
- 文字色は黒に統一
- 罫線も黒色で印刷
- グラフの色も白黒パターンに変換
方法2:プリンターの設定を利用
Windowsでの設定
- 印刷ダイアログで「プリンターのプロパティ」
- 「色」または「カラー」タブ
- 「モノクロ」または「グレースケール」を選択
Macでの設定
- 印刷ダイアログで「詳細設定」
- 「カラー設定」で「モノクロ」を選択
- 「印刷品質」で適切な設定を選択
プリンター別の設定例
Canon製プリンター
- プリンタードライバーで「モノクロ印刷」
- 「カラー文書をモノクロで印刷」を選択
EPSON製プリンター
- 「印刷品質」で「モノクロ」
- 「高速印刷」で処理時間も短縮
HP製プリンター
- 「カラーオプション」で「グレースケール印刷」
- 「印刷品質」で「標準」または「高品質」
方法3:一時的な背景色削除
印刷前の一括削除
全セルの背景色を一括削除
- Ctrl + A で全セル選択
- ホームタブ → 塗りつぶしの色
- 「塗りつぶしなし」を選択
- 印刷実行
- Ctrl + Z で元に戻す
範囲指定での削除
特定範囲のみ削除
- 背景色を削除したい範囲を選択
- 右クリック → セルの書式設定
- 「塗りつぶし」タブで「色なし」
- 印刷後に手動で復元
マクロによる自動化
Sub 印刷用背景色削除()
' 現在の背景色を保存
Dim 元の色 As Range
Set 元の色 = Selection
' 背景色を削除
Selection.Interior.ColorIndex = xlNone
' 印刷実行
ActiveWindow.SelectedSheets.PrintOut
' 背景色を復元(手動で色を再設定)
MsgBox "印刷完了。背景色を手動で復元してください。"
End Sub
代替手段による見やすい表作成

罫線を活用した区分け
効果的な罫線の使い方
太さの使い分け
- 太い線:大分類の区切り
- 中線:中分類の区切り
- 細線:項目間の区切り
線種の活用
- 実線:標準的な区切り
- 破線:補助的な区切り
- 二重線:重要な区切り
具体的な設定方法
- 範囲を選択
- ホーム → 罫線の矢印
- 「その他の罫線」を選択
- 線の太さ・種類を指定
- 適用する位置を選択
パターン・網掛けの活用
パターンの種類と効果
パターン | 印刷での見え方 | 適用場面 |
---|---|---|
25%グレー | 薄いドット | 軽い強調 |
50%グレー | 中程度の網掛け | 明確な区分 |
斜線 | ハッチングパターン | 特別項目 |
格子 | 細かいグリッド | データ項目 |
設定手順
- セル範囲を選択
- 右クリック → セルの書式設定
- 「塗りつぶし」タブ
- 「パターンの色」でパターンを選択
- 「パターンの種類」で網掛けパターンを選択
条件付き書式の活用
印刷に適した条件付き書式
データバー(薄い色)
条件:値が入力されている
書式:薄いブルーのデータバー
効果:モノクロ印刷でも薄いグレーで表示
カラースケール(グレー系)
条件:数値の大小
書式:白から黒へのグラデーション
効果:モノクロ印刷でもコントラストが保たれる
設定例:入力済みセルの強調
- 対象範囲を選択
- ホーム → 条件付き書式 → 新しいルール
- 「数式を使用して…」を選択
- 数式:
=$A1<>""
- 書式:薄いグレーの背景色
業務での実践的な活用方法
会議資料での活用
Before:カラー印刷前提の資料
問題点
- 背景色が多用されてインク消費量が多い
- モノクロ印刷すると見にくくなる
- 印刷コストが高額
After:印刷を考慮した資料
改善点
- 重要な区分は太い罫線で表現
- 強調は太字や斜体で対応
- 背景色は最小限に抑える
報告書での活用
レイアウト設計の工夫
見出し部分
太い罫線 + 太字フォント
背景色:なし
効果:モノクロでも明確に区分
データ部分
細い罫線 + 適切な余白
背景色:なし(必要に応じて薄いパターン)
効果:データが読みやすい
強調部分
太字 + アンダーライン
背景色:なし
効果:注目すべき箇所が明確
家計簿・管理表での活用
項目別の区分け
収入・支出の区分
- 太い罫線による明確な分離
- フォントサイズの差による階層表現
- 必要に応じて薄いパターンで背景設定
月別の区分
- 二重線による月の区切り
- 小計行は太字で強調
- 背景色は使用せず、文字装飾で対応
よくあるトラブルと解決方法

白黒印刷設定が反映されない
原因1:プリンタードライバーの設定
症状
- Excelで白黒印刷を設定したが色が印刷される
- プリンターの設定が優先されている
解決方法
- プリンターのプロパティを確認
- 「カラー印刷」が強制設定されていないかチェック
- プリンタードライバーでモノクロ設定
原因2:PDF経由の印刷
症状
- PDFに変換すると色が残る
- PDF印刷時に設定が反映されない
解決方法
- Excel印刷設定を確認後にPDF変換
- PDFビューアーの印刷設定でモノクロ指定
- Adobe Acrobatの場合:「詳細設定」→「グレースケールで印刷」
文字が読みにくくなる
原因:色とモノクロの変換問題
症状
- 背景色が濃いグレーになって文字が見えない
- 文字色とのコントラストが不足
解決方法
事前対策
- 明度の高い背景色を使用
- 薄い青、薄い緑、薄い黄色など
- 文字色は黒または濃い色を使用
- 印刷プレビューで事前確認
事後対策
- 条件付き書式で文字色を自動調整
条件:背景色がある場合書式:文字色を黒に設定
罫線が印刷されない
原因:線の太さ・色の問題
症状
- 画面では見える罫線が印刷されない
- 薄い色の罫線が見えない
解決方法
- 罫線の太さを「細線」以上に設定
- 罫線色を黒または濃いグレーに変更
- 印刷品質を「標準」以上に設定
パターンが正しく印刷されない
プリンター性能による制限
症状
- 細かいパターンが潰れる
- パターンが均一に印刷されない
解決方法
- より粗いパターンを使用
- 印刷解像度を上げる
- パターンの代わりに罫線を活用
高度なテクニックと自動化
マクロによる印刷設定の自動化
印刷用設定の一括適用
Sub 印刷用設定適用()
With ActiveSheet.PageSetup
.BlackAndWhite = True
.PrintGridlines = True
.PrintQuality = 300
End With
' 背景色を一時的に削除
Range("A:Z").Interior.ColorIndex = xlNone
' 印刷実行
ActiveSheet.PrintOut
' 元に戻す
Application.Undo
End Sub
カスタム印刷ボタンの作成
- 開発タブ → 挿入 → ボタン
- マクロを割り当て
- ワンクリックで印刷用設定が適用
テンプレートの作成
印刷対応テンプレートの設計
基本方針
- 背景色は最小限
- 罫線と文字装飾で構造化
- モノクロ印刷でも見やすいデザイン
作成手順
- 標準的なレイアウトを設計
- 印刷設定を含めて保存
- テンプレートファイルとして登録
条件分岐による動的な書式設定
印刷モード切り替え機能
Sub 印刷モード切替()
Dim 印刷モード As Boolean
印刷モード = Not 印刷モード
If 印刷モード Then
' 印刷用設定
Range("A:Z").Interior.ColorIndex = xlNone
ActiveSheet.PageSetup.BlackAndWhite = True
Else
' 通常表示に戻す
' 元の色設定を復元
Application.Undo
End If
End Sub
まとめ
Excelで塗りつぶしを印刷しない方法について、重要なポイントをまとめます:
基本的な方法
印刷設定の活用
- ページ設定で「白黒印刷」を選択
- プリンタードライバーでモノクロ設定
- 一時的な背景色削除で確実に対応
代替手段の活用
- 罫線による効果的な区分け
- パターン・網掛けの適切な使用
- 条件付き書式での柔軟な表現
実用的な活用方法
業務での応用
- 会議資料のコスト削減
- 報告書の視認性向上
- 管理表の印刷最適化
設計のコツ
- モノクロ印刷を前提としたレイアウト
- 文字装飾による階層表現
- 適切なコントラストの確保
トラブル回避のポイント
事前確認
- 印刷プレビューでの外観チェック
- プリンター設定の確認
- 文字色と背景色のコントラスト検証
効率化
- マクロによる設定自動化
- テンプレートの活用
- 条件分岐による動的設定
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