「前月よりどれだけ増えたか、すぐに分かるようにしたい」
「プラスとマイナスで見やすく差を出したい」
そんなときに便利なのが、増減(プラスマイナス)を数値で表すテクニックです。
Excelには、差分や変化率を一目でわかるようにする方法がいくつも用意されています。この記事では、実例付きで「±記号の付け方」「差の計算式」「色分け」まで、分かりやすく解説します。
増減表示が重要な理由

ビジネスでの活用場面
売上分析での使用例:
- 月次売上の前月比較
- 四半期業績の前年同期比
- 商品別売上の伸び率分析
- 地域別業績の変動確認
その他の業務での活用:
- 在庫数の増減管理
- 予算と実績の差異分析
- 人事評価での成績変動
- コスト削減効果の測定
視覚的な効果
増減表示のメリット:
- 変化の方向が瞬時に分かる
- 数値の大小関係が明確
- レポートの読みやすさ向上
- 意思決定の迅速化
基本:増減の計算式は「今月 − 前月」
基本的な差分計算
例:売上の増減計算
A列(前月売上) | B列(今月売上) | C列(増減) |
---|---|---|
100,000 | 120,000 | =B2-A2 → 20,000 |
80,000 | 75,000 | =B3-A3 → -5,000 |
150,000 | 180,000 | =B4-A4 → 30,000 |
結果の見方:
- 結果がプラスなら「増加」
- 結果がマイナスなら「減少」
- ゼロなら「変化なし」
より詳細な計算パターン
複数期間の比較:
前年同月比: =B2-D2 (D列が前年同月)
前週比: =B2-E2 (E列が前週)
累計比較: =SUM(B2:B5)-SUM(A2:A5)
絶対値での比較:
絶対差: =ABS(B2-A2)
最大変動: =MAX(C:C)-MIN(C:C)
±記号(プラスマイナス)をつけて表示する方法
方法1:ユーザー定義の書式設定を使う
基本的な設定手順:
- 増減セル(C列など)を選択
- 右クリック → 「セルの書式設定」
- 「表示形式」タブ → 「ユーザー定義」
- 以下の書式コードを入力
書式コードの例:
+#,##0;-#,##0;0
結果:
+20,000
(正の値)-5,000
(負の値)0
(ゼロの値)
より高度な書式設定
単位付きの表示:
+#,##0"円";-#,##0"円";"変化なし"
パーセント表示:
+0.0%;-0.0%;0.0%
色付きの表示:
[緑]+#,##0;[赤]-#,##0;[青]0
方法2:関数で±付きの文字列にする
基本的なIF関数を使用:
=IF(B2-A2>0,"+"&(B2-A2),B2-A2)
より詳細な条件分岐:
=IF(B2-A2>0,"+"&TEXT(B2-A2,"#,##0"),
IF(B2-A2<0,TEXT(B2-A2,"#,##0"),"変化なし"))
TEXT関数を活用した表示:
=IF(B2-A2=0,"±0",
IF(B2-A2>0,"+"&TEXT(B2-A2,"#,##0"),
TEXT(B2-A2,"#,##0")))
方法3:条件付き関数の組み合わせ
CHOOSE関数を使った表示:
=CHOOSE(SIGN(B2-A2)+2,"-","±0","+")&ABS(B2-A2)
複雑な条件での表示:
=IF(ABS(B2-A2)<1000,"微増減",
IF(B2-A2>0,"大幅増↑+"&(B2-A2),"大幅減↓"&(B2-A2)))
増減率(パーセンテージ)の表示方法
基本的な増減率計算
計算式:
A列(前月売上) | B列(今月売上) | C列(増減率) |
---|---|---|
100,000 | 120,000 | =(B2-A2)/A2 → 0.2 |
パーセント表示への変換:
- 増減率セルを選択
- 「ホーム」タブ → 「%」ボタンをクリック
- または「セルの書式設定」で「パーセント」を選択
高度な増減率表示
±付きパーセント表示:
=IF((B2-A2)/A2>0,"+"&TEXT((B2-A2)/A2,"0.0%"),
TEXT((B2-A2)/A2,"0.0%"))
前年同期比の計算:
前年同期比: =(B2-D2)/D2 (D列が前年同期)
累積増減率:
=((SUM(B2:B5)-SUM(A2:A5))/SUM(A2:A5))
エラー処理を含む増減率
ゼロ除算エラー対策:
=IF(A2=0,"N/A",IF((B2-A2)/A2>0,"+"&TEXT((B2-A2)/A2,"0.0%"),
TEXT((B2-A2)/A2,"0.0%")))
IFERROR関数の活用:
=IFERROR(TEXT((B2-A2)/A2,"+0.0%;-0.0%"),"計算不可")
見やすくするための工夫

条件付き書式で色分け
基本的な色分け設定:
- 増減列を選択
- 「ホーム」タブ → 「条件付き書式」
- 「新しいルール」をクリック
- 条件を設定
具体的な条件設定:
プラス値を緑色に:
- 条件:「セルの値が次の値より大きい」
- 値:0
- 書式:緑色の背景、白文字
マイナス値を赤色に:
- 条件:「セルの値が次の値より小さい」
- 値:0
- 書式:赤色の背景、白文字
アイコンセットの活用
3つのアイコンセット:
- 条件付き書式 → 「アイコンセット」
- 「3つの矢印」を選択
- 自動的に上向き・横向き・下向き矢印が表示
カスタマイズしたアイコン条件:
- 上向き矢印:5%以上の増加
- 横向き矢印:-5%~+5%の範囲
- 下向き矢印:-5%以下の減少
データバーでの可視化
データバーの設定:
- 増減列を選択
- 条件付き書式 → 「データバー」
- 色を選択(プラス用とマイナス用で異なる色も可能)
効果:
- 数値の大きさが棒の長さで視覚化
- プラスマイナスが直感的に理解できる
- 複数行の比較が容易
実務での応用例
売上分析レポート
月次売上比較表:
商品名 前月売上 今月売上 増減額 増減率
商品A 100,000 120,000 +20,000 +20.0%
商品B 80,000 75,000 -5,000 -6.3%
商品C 150,000 180,000 +30,000 +20.0%
年間トレンド分析:
- 12ヶ月の推移を±表示
- 季節性の把握
- 成長パターンの分析
予算実績比較
部門別予算達成度:
達成度 = (実績-予算)/予算
表示例: +15.3%(予算超過)、-8.7%(予算未達)
コスト削減効果:
削減効果 = 前年同期-今期
表示例: +50,000円(削減成功)
KPI(重要業績指標)の管理
目標達成度の表示:
=IF((実績-目標)/目標>=0.1,"大幅達成↑↑",
IF((実績-目標)/目標>=0,"達成↑",
IF((実績-目標)/目標>=-0.1,"惜敗↓","大幅未達↓↓")))
高度なテクニック
動的な基準値の設定
移動平均との比較:
=B2-AVERAGE(OFFSET(B2,-3,0,3,1)) '3期移動平均との差
前年同月自動選択:
=B2-INDEX(前年データ,MONTH(今月日付),1)
複数条件での増減分析
地域別・商品別の複雑な分析:
=SUMIFS(今月売上,地域,A2,商品,B2)-SUMIFS(前月売上,地域,A2,商品,B2)
グラフとの連動
増減グラフの作成:
- 増減データを選択
- 縦棒グラフを作成
- プラス値を上向き、マイナス値を下向きに表示
- 色分けで視覚効果を強化
マクロでの自動化
自動増減計算マクロ
基本的なマクロ例:
Sub CalculateVariance()
Dim i As Long
For i = 2 To 100
If Cells(i, 1).Value <> "" And Cells(i, 2).Value <> "" Then
Cells(i, 3).Value = Cells(i, 2).Value - Cells(i, 1).Value
If Cells(i, 3).Value > 0 Then
Cells(i, 3).NumberFormat = "+#,##0"
Cells(i, 3).Font.Color = RGB(0, 128, 0)
ElseIf Cells(i, 3).Value < 0 Then
Cells(i, 3).NumberFormat = "#,##0"
Cells(i, 3).Font.Color = RGB(255, 0, 0)
End If
End If
Next i
End Sub
条件付き書式の自動設定
書式自動適用マクロ:
Sub ApplyConditionalFormatting()
With Range("C:C").FormatConditions.Add(xlCellValue, xlGreater, 0)
.Interior.Color = RGB(144, 238, 144)
End With
With Range("C:C").FormatConditions.Add(xlCellValue, xlLess, 0)
.Interior.Color = RGB(255, 182, 193)
End With
End Sub
トラブルシューティング
よくある問題と解決法
計算結果が文字列になってしまう:
- 原因:TEXT関数やIF関数で文字列として処理
- 解決:VALUE関数で数値に変換、または書式設定で対応
ゼロ除算エラー:
- 原因:前月売上が0の場合
- 解決:IFERROR関数でエラー処理
表示がおかしい:
- 原因:書式設定の問題
- 解決:書式をクリアして再設定
パフォーマンスの最適化
大量データでの処理:
- 配列数式の活用
- 不要な条件付き書式の削除
- 計算方法の見直し
まとめ
Excelでの増減表示は、「計算式」+「±記号」+「視覚的な工夫」で、ぐっと見やすくなります。
基本的な手法:
- 差分計算:
=今期-前期
- ±表示: ユーザー定義書式
+#,##0;-#,##0;0
- 増減率:
=(今期-前期)/前期
- 視覚化: 条件付き書式での色分け
効果的な活用のポイント:
- 目的に応じた表示形式の選択
- エラー処理の実装
- 視覚的な工夫による可読性向上
- 自動化による効率化
実務での価値:
- 迅速な意思決定支援
- レポートの品質向上
- データ分析の効率化
- コミュニケーションの円滑化
応用テクニック:
- 複数期間での比較分析
- 動的な基準値設定
- マクロでの自動化
- グラフとの連動
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