「大量のデータを集計したいけど、どこから手をつけたらいいのか分からない…」
「売上データを商品別、月別で分析したいけど、関数が複雑で困っている」
そんなときに役立つのが、ピボットテーブルです。
ピボットテーブルは、データを一瞬で集計・分類・分析できる機能です。難しそうに見えますが、実はマウス操作だけで直感的に扱える便利ツールです。
この記事でわかること
- ピボットテーブルの基本的な仕組みと概念
- 実際の作成手順を画面操作とともに解説
- よく使う集計方法と設定のコツ
- 実務で役立つ応用テクニック
- よくあるトラブルとその解決方法
データ分析が初めての方でも、この記事を読めばピボットテーブルを自在に使いこなせるようになります。
ピボットテーブルとは?

一言でいうと「自動で集計表を作る機能」
ピボットテーブルは、大量のデータをもとに以下のような作業を瞬時に実行できる機能です。
できること
- 件数のカウント
- 合計や平均の計算
- カテゴリごとの比較
- 複数の条件での絞り込み
- データの並び替えと分析
これらをドラッグ&ドロップだけで自動集計できるため、複雑な関数を覚える必要がありません。
ピボットテーブルが活躍する場面
売上データの分析
例:月別・商品別の売上分析
- どの商品がよく売れているか
- どの月の売上が高いか
- 地域別の売上傾向は?
顧客データの管理
例:年代別・地域別の顧客分析
- 年代ごとの購入パターン
- 地域別の顧客数
- リピート客の特徴
在庫管理
例:商品別・倉庫別の在庫状況
- 商品別の在庫数
- 倉庫別の在庫配分
- 季節別の在庫変動
ピボットテーブルを使うメリット
時間の大幅短縮
従来の方法
- 関数を使った複雑な計算:30分〜数時間
- 手作業での集計:半日〜1日
ピボットテーブル
- 同じ作業が数分で完了
- 設定変更も瞬時に反映
柔軟な分析
視点の切り替えが簡単
- 商品別→地域別への切り替えが瞬時
- 月別→四半期別への変更も簡単
- 複数の条件を組み合わせた分析
ピボットテーブルの基本操作ステップ
ステップ1:元データを正しく用意する
ピボットテーブルを作成する前に、データの形式を確認しましょう。
正しいデータの形式
基本ルール
- 1行目に項目名(見出し)を入れる
- 2行目以降にデータを入力
- 空白行や空白列を作らない
- 各列には同じ種類のデータのみ入力
良い例
日付 | 商品 | 金額 | 店舗 | 担当者 |
---|---|---|---|---|
2024/7/1 | 商品A | 1000 | 東京店 | 田中 |
2024/7/1 | 商品B | 1500 | 大阪店 | 佐藤 |
2024/7/2 | 商品A | 1200 | 東京店 | 田中 |
避けるべきデータの形式
悪い例
- 途中に空白行がある
- 見出しが複数行にまたがる
- 同じ列に異なる種類のデータが混在
- 結合セルが含まれる
ステップ2:ピボットテーブルを挿入する
手順1:データ範囲を選択
- データ表のどこかのセルをクリック
- Excelが自動的にデータ範囲を認識(通常は手動選択不要)
手順2:ピボットテーブルを作成
- 「挿入」タブをクリック
- 「ピボットテーブル」ボタンをクリック
- 「ピボットテーブルの作成」ダイアログが表示される
手順3:配置場所を選択
選択肢
- 新しいワークシート:おすすめ(元データと分離される)
- 既存のワークシート:特定の場所に配置したい場合
- 「OK」ボタンをクリック
結果 新しいシートにピボットテーブルの枠組みが作成されます。
ステップ3:フィールドを設定する
ピボットテーブル作成後、画面右側に「ピボットテーブルのフィールド」パネルが表示されます。
4つのエリアの役割
フィールドリスト(上部)
- 元データの項目名が表示される
- ここから下の4つのエリアにドラッグして使用
行(下部左上)
- 役割:縦軸に表示する分類項目
- 例:商品名、地域、担当者など
- 表示:各項目が行として縦に並ぶ
列(下部右上)
- 役割:横軸に表示する分類項目
- 例:日付、月、四半期など
- 表示:各項目が列として横に並ぶ
値(下部右下)
- 役割:実際に集計するデータ
- 例:売上金額、数量、件数など
- 表示:数値として集計結果が表示
フィルター(下部左下)
- 役割:データを絞り込む条件
- 例:店舗、年度、商品カテゴリなど
- 表示:ピボットテーブル上部にドロップダウンとして表示
実際の設定例
例1:商品別売上の集計
- 「商品」を行エリアにドラッグ
- 「金額」を値エリアにドラッグ
結果 商品別の売上合計が一目でわかる表が完成
例2:月別・商品別のクロス集計
- 「商品」を行エリアにドラッグ
- 「日付」を列エリアにドラッグ
- 「金額」を値エリアにドラッグ
結果 商品ごとに月別の売上が比較できる表が完成
実践的な活用方法

集計方法を変更する
デフォルトの集計方法
数値データ:合計(SUM)
文字データ:個数(COUNT)
集計方法の変更手順
- 値エリアの項目をクリック
- 「値フィールドの設定」を選択
- 以下から選択可能
- 合計:数値の総和
- 個数:データの件数
- 平均:数値の平均値
- 最大値:最も大きい値
- 最小値:最も小さい値
- 標準偏差:データのばらつき
活用例
売上分析での使用例
- 合計:総売上を知りたい
- 平均:平均売上を把握したい
- 個数:取引件数を確認したい
- 最大値:最高売上を見つけたい
データの並び替えとフィルター
並び替え機能
手順
- 並び替えたい項目の▼をクリック
- 「昇順」または「降順」を選択
活用例
- 売上の高い順に商品を表示
- アルファベット順に地域を並べる
フィルター機能
手順
- フィルターしたい項目の▼をクリック
- 表示したい項目のチェックボックスを選択
- 「OK」をクリック
活用例
- 特定の商品のみ表示
- 直近3ヶ月のデータのみ表示
- 特定の担当者のデータのみ表示
グループ化機能
日付のグループ化
月別にグループ化
- 日付欄を右クリック
- 「グループ化」を選択
- 「月」を選択して「OK」
年別、四半期別なども同様に可能
数値のグループ化
売上金額の範囲別グループ化
- 金額欄を右クリック
- 「グループ化」を選択
- 開始値、終了値、単位を設定
例:0-10万円、10-20万円、20万円以上
応用テクニック
計算フィールドの作成
新しい計算項目を追加
例:利益率の計算
- ピボットテーブル内をクリック
- 「ピボットテーブル分析」タブ→「フィールド、アイテム、セット」→「計算フィールド」
- 計算式を入力:
=利益/売上*100
条件付き書式
数値に色を付けて視覚化
- 数値部分を選択
- 「ホーム」タブ→「条件付き書式」
- 「データバー」「カラースケール」「アイコンセット」から選択
効果
- 高い値は濃い色、低い値は薄い色で表示
- 一目で数値の大小が分かる
スライサーの活用
視覚的なフィルター機能
- ピボットテーブルを選択
- 「ピボットテーブル分析」タブ→「スライサーの挿入」
- フィルターしたい項目を選択
メリット
- ボタンクリックで簡単にフィルター変更
- 複数条件の組み合わせが直感的
- 現在の選択状態が分かりやすい
データ更新と管理
ピボットテーブルの更新
手動更新
方法1:右クリックメニュー
- ピボットテーブル内を右クリック
- 「更新」を選択
方法2:リボンから
- 「ピボットテーブル分析」タブ
- 「更新」ボタンをクリック
自動更新の設定
- ピボットテーブルを右クリック
- 「ピボットテーブルのオプション」
- 「データ」タブで「ファイルを開くときにデータを更新する」にチェック
データ範囲の拡張
テーブル機能を活用
メリット
- データを追加すると自動的に範囲が拡張
- ピボットテーブルも自動的に新しいデータを認識
設定方法
- 元データを選択
- 「挿入」タブ→「テーブル」
- ピボットテーブル作成時にこのテーブルを指定
よくあるトラブルと解決方法
データが反映されない
原因1:更新していない
解決方法 ピボットテーブルを右クリック→「更新」
原因2:データ範囲が不適切
解決方法
- 「ピボットテーブル分析」タブ→「データソースの変更」
- 正しい範囲を選択し直す
期待した集計結果にならない
原因1:データの形式が不統一
問題例
- 数値が文字列として入力されている
- 同じ商品名なのにスペースの有無で違って認識される
解決方法
- 元データの形式を統一する
- TRIM関数で余分なスペースを削除
- VALUE関数で文字列を数値に変換
原因2:空白セルの存在
解決方法
- 空白セルを削除または「0」で埋める
- フィルター機能で空白を除外
レイアウトが崩れる
原因:不適切なフィールド配置
解決方法
- 行と列の配置を見直す
- 不要なフィールドを削除
- グループ化を活用して項目数を減らす
実務での活用事例

売上分析レポート
月次売上レポートの作成
データ項目
- 日付、商品名、売上金額、担当者、店舗
ピボットテーブル設定
- 行:商品名
- 列:月(日付をグループ化)
- 値:売上金額(合計)
- フィルター:店舗
得られる情報
- 商品別・月別の売上推移
- 店舗別の売上比較
- 季節性の把握
顧客分析レポート
年代別・地域別の顧客分析
データ項目
- 顧客ID、年代、地域、購入金額、購入日
ピボットテーブル設定
- 行:年代
- 列:地域
- 値:購入金額(平均)、顧客ID(個数)
得られる情報
- 年代別の平均購入金額
- 地域別の顧客数
- ターゲット層の特定
在庫管理レポート
商品別・倉庫別の在庫状況
データ項目
- 商品コード、商品名、倉庫、在庫数、最終入庫日
ピボットテーブル設定
- 行:商品名
- 列:倉庫
- 値:在庫数(合計)
得られる情報
- 商品別の総在庫数
- 倉庫別の在庫配分
- 在庫切れリスクの把握
効率を上げるコツ
ショートカットキーの活用
よく使うショートカット
- Alt + N + V:ピボットテーブルの挿入
- F5:ピボットテーブルの更新
- Ctrl + A:ピボットテーブル全体の選択
テンプレートの作成
定型レポートのテンプレート化
- よく使うピボットテーブルの設定を保存
- データ部分のみ差し替えて再利用
- 書式設定も含めて保存
複数のピボットテーブルの連携
同一データソースからの複数分析
- 売上分析用
- 顧客分析用
- 商品分析用
それぞれ異なる視点での分析が可能
まとめ
ピボットテーブルは、Excelでの集計や分析を飛躍的に効率化してくれる強力な機能です。
重要なポイント
- データを自動で集計・分類できる
- ドラッグ操作で誰でも使える
- 合計、平均、件数など柔軟に応用可能
- 視点を変えた分析が瞬時にできる
- 大量データの処理に最適
今すぐできること
- 手持ちのデータでピボットテーブルを作成してみる
- 行と列を入れ替えて違う視点で分析する
- フィルター機能で条件を絞って分析する
- よく使う設定をテンプレートとして保存
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