日常生活での「OR」の考え方:
- 「雨または雪が降ったら外出を控える」
- 「国語または数学で90点以上なら合格」
- 「土曜日または日曜日なら休み」
Excelでの活用場面:
- Aさんの点数が国語または数学で合格点なら合格にしたい
- 商品が在庫切れ or 発注済みのいずれかで強調表示したい
- 休日 or 遅刻の社員だけをリストアップしたい
こうした「どれか1つでもOK」という条件処理に使います。
OR関数の基本構文

基本の書き方
=OR(条件1, 条件2, 条件3, ...)
重要なポイント:
- 条件は最大255個まで指定可能
- 1つでもTRUEがあれば、全体がTRUE
- すべてFALSEの場合のみ、全体がFALSE
例1:基本的な数値比較
データ例:
A2: 田中 B2: 70(国語) C2: 85(数学)
=OR(B2>=80, C2>=80)
解説:
- B2>=80 → 70>=80 → FALSE
- C2>=80 → 85>=80 → TRUE
- 結果:TRUE(数学が80点以上なので)
例2:文字列の条件
データ例:
A2: 商品A B2: 在庫切れ
=OR(B2="在庫切れ", B2="販売停止", B2="廃盤")
解説:
- B2が「在庫切れ」「販売停止」「廃盤」のいずれかならTRUE
- この場合、B2は「在庫切れ」なのでTRUE
例3:空白チェック
=OR(A2="", B2="", C2="")
解説:
- A2、B2、C2のいずれかが空白ならTRUE
- データ入力の必須チェックなどに使用
IF関数と組み合わせるのが基本パターン!

基本の組み合わせ
=IF(OR(条件1, 条件2), "条件を満たす場合", "満たさない場合")
例1:合格判定
データ例:
A2: 田中 B2: 70(国語) C2: 85(数学)
=IF(OR(B2>=80, C2>=80), "合格", "不合格")
結果: 合格 理由: 数学が85点で80点以上なので
例2:アラート表示
データ例:
A2: 商品A B2: 在庫切れ C2: 2023/12/31
=IF(OR(B2="在庫切れ", C2<TODAY()), "要確認", "正常")
解説:
- 在庫が「在庫切れ」または有効期限が今日より前なら「要確認」
- そうでなければ「正常」
例3:社員の勤務状況チェック
データ例:
A2: 田中 B2: 遅刻 C2: 土曜日
=IF(OR(B2="遅刻", B2="欠勤", C2="土曜日", C2="日曜日"), "注意対象", "")
結果: 注意対象 理由: 「遅刻」と「土曜日」の両方が該当するため
複数条件を指定したいときの注意点

ANDとORの違い
関数 | 条件の意味 | 例 | 結果 |
---|---|---|---|
OR | 1つでも満たせばOK | 数学≥80 または 英語≥80 | どちらか一方が80点以上で合格 |
AND | すべての条件を満たす | 数学≥80 かつ 英語≥80 | 両方とも80点以上で合格 |
具体例での比較
データ例:
A2: 田中 B2: 75(数学) C2: 85(英語)
OR関数の場合
=IF(OR(B2>=80, C2>=80), "合格", "不合格")
結果: 合格(英語が85点なので)
AND関数の場合
=IF(AND(B2>=80, C2>=80), "合格", "不合格")
結果: 不合格(数学が80点未満なので)
ANDとORの組み合わせ
複雑な条件も表現できます。
=IF(AND(A2="営業部", OR(B2="在庫切れ", B2="未入荷")), "至急対応", "")
解説:
- A2が「営業部」かつ
- B2が「在庫切れ」または「未入荷」
- この両方の条件を満たす場合に「至急対応」
実際の例:
A2: 営業部 B2: 在庫切れ
→ 結果:至急対応
A2: 総務部 B2: 在庫切れ
→ 結果:(空白)
A2: 営業部 B2: 正常
→ 結果:(空白)
OR関数を使った条件付き書式
基本的な設定方法
例:成績表で80点未満があると赤くする
手順:
- 対象セル範囲(B2:C2など)を選択
- ホーム → 条件付き書式 → 新しいルール
- 「数式を使用して書式設定するセルを決定」を選択
- 数式に以下を入力:
=OR(B2<80, C2<80)
- 書式で「塗りつぶし(赤)」を設定
- OK をクリック
結果:
- 国語または数学のいずれかが80点未満なら、その行が赤くなる
応用例:複数条件での色分け
商品管理での警告表示
データ例:
A2: 商品名 B2: 在庫数 C2: ステータス D2: 最終更新日
条件:在庫が10以下 または ステータスが「要確認」 または 最終更新が1週間以上前
=OR(B2<=10, C2="要確認", D2<TODAY()-7)
設定手順:
- データ範囲を選択
- 条件付き書式で上記の数式を設定
- 黄色の背景色を適用
ネスト(入れ子)で複雑な判定

基本的なネスト構造
=IF(条件1, 結果1, IF(条件2, 結果2, 結果3))
例1:3段階の評価
データ例:
A2: 田中 B2: 65(英語) C2: 75(数学)
=IF(AND(B2<60, C2<60), "再試験",
IF(OR(B2<60, C2<60), "追試", "合格"))
判定ロジック:
- 英語かつ数学が両方60点未満 → 「再試験」
- 英語または数学のいずれかが60点未満 → 「追試」
- 両方とも60点以上 → 「合格」
結果: 追試(数学は60点以上だが、英語が60点未満)
例2:営業成績の評価
データ例:
A2: 田中 B2: 85(売上達成率%) C2: 12(契約件数)
=IF(AND(B2>=100, C2>=15), "優秀",
IF(OR(B2>=90, C2>=10), "良好",
IF(OR(B2>=70, C2>=5), "普通", "要改善")))
判定ロジック:
- 売上100%以上かつ契約15件以上 → 「優秀」
- 売上90%以上または契約10件以上 → 「良好」
- 売上70%以上または契約5件以上 → 「普通」
- それ以外 → 「要改善」
結果: 普通
実際の業務での活用例
活用例1:勤怠管理
データ例:
A2: 社員名 B2: 出勤時刻 C2: 曜日 D2: 有給フラグ
遅刻者のチェック
=IF(OR(AND(C2<>"土", C2<>"日", B2>TIME(9,0,0)), D2="有給"), "要確認", "")
解説:
- 平日(土日以外)で9時以降の出勤または有給取得者を「要確認」
休日出勤のチェック
=IF(AND(OR(C2="土", C2="日"), B2<>""), "休日出勤", "")
活用例2:在庫管理
データ例:
A2: 商品名 B2: 在庫数 C2: 発注点 D2: ステータス
発注が必要な商品
=IF(OR(B2<=C2, D2="廃盤予定"), "発注検討", "")
解説:
- 在庫が発注点以下または廃盤予定の商品を「発注検討」
緊急対応が必要な商品
=IF(OR(B2=0, D2="緊急", B2<C2*0.5), "緊急対応", "")
解説:
- 在庫ゼロまたは緊急ステータスまたは在庫が発注点の半分未満
活用例3:成績管理
データ例:
A2: 生徒名 B2: 国語 C2: 数学 D2: 英語 E2: 出席率
補習対象者の判定
=IF(OR(B2<60, C2<60, D2<60, E2<0.8), "補習対象", "")
解説:
- いずれかの科目が60点未満または出席率80%未満なら補習対象
表彰対象者の判定
=IF(AND(OR(B2>=95, C2>=95, D2>=95), E2>=0.95), "表彰候補", "")
解説:
- いずれかの科目で95点以上かつ出席率95%以上なら表彰候補
よくあるエラーと対処法
エラー1:条件が正しく動作しない
問題のあるコード
=OR(A2="りんご" OR A2="みかん") # エラー
正しいコード
=OR(A2="りんご", A2="みかん")
ポイント: OR関数内では,
で条件を区切る
エラー2:文字列の比較で大文字小文字
問題例
=OR(A2="Apple", A2="apple") # 「APPLE」は該当しない
解決策
=OR(UPPER(A2)="APPLE", A2="apple")
または
=OR(A2="Apple", A2="apple", A2="APPLE")
エラー3:数値の比較での誤差
問題例
=OR(A2=0.1, A2=0.2) # 計算結果の0.1は該当しない場合がある
解決策
=OR(ABS(A2-0.1)<0.001, ABS(A2-0.2)<0.001)
パフォーマンスの考慮
効率的な書き方
避けたい書き方
=IF(A2="条件1", "結果", IF(A2="条件2", "結果", IF(A2="条件3", "結果", "")))
推奨する書き方
=IF(OR(A2="条件1", A2="条件2", A2="条件3"), "結果", "")
大量データでの注意点
配列数式での使用
# 配列数式として入力(Ctrl+Shift+Enter)
=SUM(IF(OR(A2:A100="条件1", A2:A100="条件2"), B2:B100, 0))
注意: 配列数式は処理が重くなる場合があります
まとめ:OR関数の使い方と判断ポイント

使い分けの指針
シーン | おすすめ構文例 | 使用場面 |
---|---|---|
単純な条件判定 | =OR(条件1, 条件2) | 基本的なチェック |
結果を文字で表示 | =IF(OR(...), "該当", "非該当") | 合格判定、ステータス表示 |
条件付き書式 | 条件に OR(...) を使用 | 視覚的な強調表示 |
複雑な条件 | =AND(条件, OR(条件1, 条件2)) | 複合的な判定ロジック |
学習の進め方
初心者向け
- 基本のOR関数から始める
- IF+ORの組み合わせをマスター
- 条件付き書式での活用を試す
中級者向け
- AND+ORの複合条件
- ネスト構造での複雑な判定
- 実務での応用パターン
上級者向け
- 配列数式での活用
- 他の関数との高度な組み合わせ
- パフォーマンス最適化
よく使う組み合わせ関数
- IF + OR:条件分岐の基本
- AND + OR:複雑な条件設定
- COUNTIF + OR:複数条件での件数カウント
- SUMIF + OR:複数条件での合計計算
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